源泉徴収票の渡すタイミングと実務上の注意点を徹底解説

目次

はじめに

本書の目的

この文書は、源泉徴収票を従業員に渡す適切なタイミングと関連する法的義務を分かりやすく解説することを目的としています。実務担当者や経理・総務の方が日常業務で迷わないよう、具体的な場面と注意点を整理します。

読者対象

  • 会社の経理・総務担当者
  • 人事担当者
  • フリーランスや個人事業主で従業員を雇用する方
    初心者の方にも読みやすいよう、専門用語は最小限にし、具体例を交えて説明します。

本書で扱う主な内容

主に次の3つの交付タイミングを中心に説明します。
1. 年末調整後(年末調整に伴う交付)
2. 退職時(退職後の交付)
3. 従業員から依頼があったとき(中途交付)
各タイミングごとに交付期限や必要な手続き、よくあるミスとその対処法を詳しく示します。

読み方のポイント

章立てに沿って順に読むと実務で使いやすい情報が得られます。まず第2章で交付のタイミングを確認し、第3章以降で法的義務や年金に関する扱い、実務上の注意点を順に確認してください。

源泉徴収票を渡すべき3つのタイミング

1. 年末調整の計算後(翌年1月31日まで)

年末調整で1年間の給与と源泉徴収税額が確定した時点で交付します。実務では翌年1月31日までに社員全員へ渡します。たとえば、会社が年末調整を1月20日に終えたら、その日から遅くとも1月31日までに交付します。

2. 退職したとき(退職後1か月以内)

従業員が退職したら、退職日から1か月以内に源泉徴収票を交付します。例として、3月10日に退職した場合は4月10日までに交付します。再就職先での年末調整や確定申告に必要なため、速やかに発行してください。

3. 従業員から発行を依頼されたとき

従業員が個別に請求した場合も速やかに交付します。住宅ローンや確定申告のために過去の源泉徴収票を求められることが多いです。請求を受けたら、できるだけ早く対応すると従業員の手続きが円滑になります。

いずれの場面でも、社内の担当者が期限を管理し、速やかに発行することが大切です。

源泉徴収票の対象期間と税務署への提出義務

対象期間と記載内容

源泉徴収票の対象期間は、その年の1月1日から12月31日までの1年間です。1年分の支払金額、社会保険料などの控除額、そして源泉徴収された税額が記載されます。たとえば、1年間で支払った給与総額や、年末調整後の税額が書かれます。

従業員への交付と税務署への提出期限

企業は従業員に源泉徴収票を交付すると同時に、所轄の税務署へも提出する義務があります。提出期限は翌年の1月31日までです。期限を守ることで従業員が確定申告を正しく行えます。

提出方法(e-Tax・紙)

税務署への提出は電子申告(e-Tax)か紙で行えます。電子提出はまとめて送れるため事務負担を減らせます。一方で少人数の事業者や初回は紙での提出を選ぶこともできます。

給与支払報告書との関係

給与支払報告書(市区町村への提出)も同じ期限で提出します。源泉徴収票は国税用、給与支払報告書は地方税用と考えると分かりやすいです。

具体例

例:A社は2024年分の源泉徴収票を2025年1月30日に従業員へ渡し、同日中にe-Taxで提出しました。これで期限内の対応となります。紙で提出する場合は郵送や持参で期限内に届けてください。

公的年金等の源泉徴収票について

概要

公的年金等の源泉徴収票は、年金を支払う機関がその年に支払った金額や差し引かれた税額を記載して送ってくる書類です。給与所得以外に年金を受け取っている方に届きます。受け取り内容を確認し、確定申告の判断材料に使います。

送付時期(具体例)

年金の源泉徴収票は毎年1月中旬〜下旬にかけて送付されることが多いです。たとえば令和6年分は、令和7年1月8日から16日にかけて順次送付される予定です。届かないときは支払元に問い合わせてください。

構成と見方(主な項目)

  • 支払金額:その年に実際に支払われた年金の合計です。税金計算や所得合算で使います。
  • 源泉徴収税額:天引きされた所得税の合計額を示します。過不足があれば確定申告で調整します。
  • 支払者情報:年金を支払った機関名や所在地が書かれています。問い合わせに必要です。
  • その他の欄:雑所得扱いの調整や公的年金等控除の記載がある場合があります。具体的な数字は大切に確認してください。

確定申告との関係

年金のみで税額が適切に差し引かれている場合、必ずしも確定申告は不要です。したがって、給与や不動産収入など他の所得があるとき、税額調整をしたいとき、また還付を受けたいときは申告します。手続きの際は源泉徴収票が必要です。

届かない・記載に誤りがある場合の対処

届かない場合や金額に誤りがある場合は、まず支払元(年金機関)に連絡して再発行を依頼してください。再発行まで時間がかかることがあるので、早めに確認することをおすすめします。必要があれば税務署や税理士に相談してください。

実務上の注意点

発行権限と社内体制

源泉徴収票は勤務先が発行します。担当者と手順を明確にし、給与担当・人事・総務で連携して体制を整えましょう。たとえば給与ソフトの出力手順をマニュアル化すると実務が安定します。

電子交付と紙の請求

電子データでの交付は可能です。従業員が紙を希望した場合は速やかに交付してください。電子交付にあたっては受け取り方法やセキュリティを確認し、本人の同意を得て運用することが望ましいです。

発行タイミングと退職者対応

確定申告に間に合うよう、年明け(例:1月中)を目安に交付するのが一般的です。退職者には退職後速やかに交付し、入社時には前職分の源泉徴収票を提出してもらうよう案内してください。

誤りがあった場合の対応

金額や氏名に誤りが見つかったら、すぐに訂正して再交付します。税務署への手続きが必要な場合は速やかに確認・対応してください。

個人情報の管理

源泉徴収票は重要な個人情報です。保存場所を限定し、電子データは暗号化やアクセス制限を設け、紙はシュレッダー処理や鍵付きキャビネットで管理します。

実務チェックリスト(簡易)

  • 担当者と提出期限の明確化
  • 電子交付の同意確認とセキュリティ対策
  • 退職者・中途入社者の手続き整備
  • 再発行手順と税務対応の確認
  • 保存期間と廃棄方法の周知

これらを日常業務に落とし込み、期限と安全性を優先して運用してください。

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