はじめに
概要
この文書は、源泉徴収票の再発行に関する情報をわかりやすくまとめたガイドです。源泉徴収票を無くした、記載内容に不明点がある、申告のために再発行が必要になったといった状況に対応します。実務上の手続き先や依頼方法、期間、受け取り方、注意点までを順を追って解説します。
目的
・源泉徴収票の再発行が可能かどうかを明確にする
・誰に、どのように依頼すればよいかを示す
・手続きで迷わないためのポイントを伝える
対象読者
給与や報酬を受け取る社員・契約者、経理担当者、確定申告を行う方など幅広く役立ちます。例えば、転職や紛失で源泉徴収票が手元にない方にも適します。
本書の構成
第2章〜第8章で、再発行の可否、依頼先、手続き方法、流れ、期間、受け取り方法、注意点を順に解説します。各章で具体的な手順や準備書類の例を挙げますので、実際の手続きにそのまま役立ててください。
源泉徴収票の再発行は可能か
源泉徴収票は給与や年金から差し引かれた所得税の証明書です。紛失した場合でも、原則として再発行が可能です。事実上、過去7年分について再発行を受けられることが多く、税務当局も企業に対して合理的な範囲での再交付を指導しています。
再発行が認められる理由
雇用主(支払者)は所得税法に基づき源泉徴収票を作成・交付する義務があります。したがって、個人が紛失したときに再発行を求めることは正当な権利です。
どのくらいさかのぼれるか
一般的に過去7年分まで対応します。例えば、3年前の源泉徴収票を住宅ローンの手続きで求める場合、勤務先に再発行を依頼できます。
ただし注意点
事業所の保存状況や退職後の連絡先不明などで再発行が難しい場合があります。その際は、勤務先に事情を説明して代替資料(給与明細や源泉徴収票の写し)を相談してください。税務署が直接再発行するわけではないので、まずは支払者に依頼することが大切です。
再発行依頼の申請先
概要
源泉徴収票の再発行は、在職時か退職後か、働き方によって申請先が異なります。まずは自分の雇用形態と在籍状況を確認しましょう。
在職中の方
所属する会社の人事部・総務部、または給与計算を担当する部署に依頼します。支店や店舗で勤務している場合は店舗の責任者や給与担当に相談すると案内してもらえます。連絡時は社員番号・氏名・発行年を伝えると手続きがスムーズです。
退職した方
原則として当時の勤務先に連絡します。会社に連絡先が残っていないときは、離職票や雇用契約書の控え、名刺などで会社の情報を確認してください。
会社が倒産・清算している場合
会社自体が存続していないときは、破産管財人や清算人が対応します。倒産手続きの公告や裁判所で管財人・清算人の連絡先を確認し、問い合わせてください。
公務員の方
各自治体や行政機関の人事課・給与担当窓口が窓口です。部署名は組織ごとに異なるため、所属先の総務に問い合わせると案内されます。
派遣社員の方
源泉徴収票は原則として給与を支払った派遣元(派遣会社)が発行します。就業先ではなく派遣元に依頼してください。
パート・アルバイトの方
雇用主(勤務先の会社や店舗)が発行します。短期や掛け持ちで働いている場合でも雇用主が交付するため、まずは給与担当や店舗責任者に相談しましょう。
会社が合併・吸収された場合
合併先・承継会社が対応します。会社名が変わっているときは、現在の会社の人事・総務に問い合わせてください。
問い合わせの際に準備する情報
氏名(旧姓がある場合はその表記も)、生年月日、社員番号、在籍期間、退職日(該当する場合)を用意すると手続きが早くなります。本人確認書類の提示を求められることがありますので、身分証の準備もおすすめします。
再発行の依頼方法
概要
再発行の依頼は、会社の経理や人事に直接連絡して行います。電話、メール、書面、社内チャットなど、会社ごとに決まった方法があります。郵送で依頼する場合は、返信用封筒や切手を同封するのが一般的です。
連絡手段別の伝え方
- 電話:まずは相手の担当部署に電話して、再発行を希望する旨と必要な年度を伝えます。担当者の名前と対応時間を控えておくと安心です。
- メール:件名に「源泉徴収票再発行依頼(年度)」と明記し、氏名・社員番号(あれば)・住所・連絡先を本文に書きます。返信用の送付先を忘れずに記載してください。
- 書面:会社指定の申請書がある場合はそれを使います。ない場合は依頼書を自署し、受取先住所と連絡先を明記します。
- 社内チャット:簡潔に要件を伝え、必要であれば正式な手続き方法(メールや書面)に移行します。
郵送での注意点
郵送で申請する際は、返信用封筒と切手を同封してください。封筒には返送先の住所を正しく記載し、宛名も忘れずに書きます。
同封・提示が求められる情報
- 再発行を希望する年度を明確にする
- 氏名、生年月日、社員番号や部署名など特定できる情報
- 本人確認書類のコピー(運転免許証や健康保険証など)が求められることがあります
その他の注意点
提出後は担当者にいつ頃発送するか確認しましょう。控えが必要な場合は、依頼時に自分でコピーを残しておくと手続きがスムーズです。
再発行手続きの流れ
1. 全体の流れ(概略)
企業側では、再発行手続きを「受付・本人確認」→「データ確認・作成」→「交付」の順で進めます。各工程で情報の正確さと個人情報保護を重視します。
2. 受付・本人確認
まず依頼を受け付けます。窓口、電話、メール、オンラインフォームなどが一般的です。本人確認では運転免許証やマイナンバーカード、社員番号と生年月日などを確認します。代理人が依頼する場合は委任状と代理人の身分証明が必要です。
3. データ確認・作成
受け付けた情報をもとに、社内の給与データや過去の源泉徴収票と照合します。誤りが見つかれば担当者が修正案を作成し、最終確認を行います。必要に応じて税務担当や管理部門の承認を得ます。
4. 交付(方法と注意点)
交付は手渡し、郵送、電子データ(PDF)送付などがあります。郵送時は追跡可能な方法を用いることが多く、電子送付ではパスワード付きPDFや暗号化で安全性を高めます。受け取りの確認記録を残すと安心です。
5. コンプライアンスと業務効率
個人情報保護や保存期間の遵守を徹底します。また、申請のオンライン化やテンプレート化で作業を効率化し、ミスを減らします。問い合わせ対応のための窓口を明確にすると利用者に親切です。
再発行にかかる期間
概要
法的な定めはありませんが、依頼受付から1〜2週間程度が一般的な目安です。年金受給者や過去の記録確認が必要な場合は、2〜4週間かかることがあります。
期間の目安(具体例)
- 現職の勤務先で再発行:数日〜1週間
- 前職や事業所を経由する場合:1〜2週間
- 年金事務所や年金受給者向け:2〜4週間
- 電子発行(PDF等)が可能な場合:即日〜数日
期間が延びる主な要因
- 書類の不備や本人確認の追加手続き
- 発行元での照合作業(特に古い記録)
- 郵送でのやり取りを選んだ場合や配送遅延
- 年末調整や確定申告時期などの繁忙期
早めに手続きを進めるポイント
- 余裕を持って依頼する(目安より数週間前)
- 依頼時に必要事項(氏名、生年月日、勤務期間、従業員番号など)を正確に伝える
- 電子交付や窓口受取を選べるか確認する
- 受付番号や担当者名を控えておく
問い合わせのタイミング
案内の目安より長くかかる場合は、目安から3営業日〜1週間経ったら問い合わせると安心です。問い合わせ時は申請日と受付番号を伝すれば対応がスムーズです。
再発行書類の受け取り方法
対面受け取り(在職中)
在職中は総務や人事が直接手渡しすることが多いです。昼休みや終業後に窓口で受け取れる場合があります。受け渡しの場で本人確認(社員証や身分証)を求められるので、忘れずに持参してください。
郵送(退職者・郵送希望の場合)
退職者には原則として自宅あてに郵送されます。会社は普通郵便や簡易書留で送ることが多いです。到着までに日数がかかるため、確定申告や各種手続きに間に合わせたい場合は余裕を持って依頼してください。転居している場合は新しい住所を事前に連絡します。
電子交付(PDFや社内システム)
会社によっては電子交付に対応しています。メールでPDFを受け取る、あるいは社内ポータルからダウンロードする方法です。電子版でも所定の要件を満たせば正式書類として扱える場合がありますので、必要に応じて会社に確認してください。
受け取り時の確認事項
受け取ったら氏名、支払金額、支給期間、発行者(会社名や押印)の有無を必ず確認してください。不備があればすぐに連絡して再発行や訂正を依頼しましょう。
受け取りまでの留意点
郵送だと繁忙期や郵便事情で遅れることがあります。期限がある手続きがある場合は早めに請求してください。電子交付を選ぶ場合、パスワードやダウンロード期限の有無も確認しておくと安心です。
再発行時の重要な注意ポイント
1)本人確認は厳格に行う
個人情報保護法や所得税法の観点から、再発行時の本人確認は必須です。具体的には運転免許証、マイナンバーカード、旅券など顔写真付きの公的書類を提示してもらうと安全です。本人確認が難しい場合は、委任状+代理人の身分証で対応します。
2)対応期間を明確に伝える
依頼者に「いつまでに」「どの方法で」受け取れるかを最初に伝えてください。実務では数営業日〜2週間程度かかることが多い点を説明するとトラブルが減ります。
3)退職者には丁寧に対応する
退職者は住所変更や連絡が取れない場合があります。会社側は転送先確認や最終給与の計算結果と合わせて丁寧に案内してください。
4)受け渡し方法とセキュリティ
受け取りは窓口、簡易書留など記録が残る方法を推奨します。メール送付は情報漏えいの危険があるため、控えてください。
5)書類保管と消去
再発行に関わる個人情報は必要最小限で扱い、不要になった情報は適切に廃棄・消去してください。これにより法令順守と信頼確保につながります。


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