はじめに
目的
本資料は、企業の人事・給与担当者が従業員へ源泉徴収票を正しく、確実に渡すための実務ガイドです。源泉徴収票の意味や渡すタイミング、配送方法、送付状の書き方、よくあるトラブルとその回避策まで、実務に役立つ情報をまとめています。
対象読者
人事・給与担当者、総務部門、経営者や小規模事業主、社内で給与事務を担当する方を想定しています。業務に慣れていない方でも分かりやすいように具体例を交えて説明します。
本書の使い方
各章は実務の流れに沿って構成しています。まずは「いつ渡すか」を確認し、その後「どう渡すか」「送付状の書き方」を参照してください。チェックリスト形式のポイントや注意点も載せますので、日々の業務にそのまま利用できます。
留意点
法令や社内規定に基づく取り扱いが必要です。ここでは一般的な実務手順を示しますので、詳細は自社のルールや顧問税理士にご確認ください。
源泉徴収票とは何か
定義
源泉徴収票は、1年間に会社などから支払われた給与や賞与の金額と、その支払いに伴って会社が天引きした所得税の金額を記載した書類です。従業員個人ごとに作成され、年度ごとに交付されます。
主な記載事項
- 支払金額(給与・賞与の合計)
- 源泉徴収税額(会社が天引きした所得税)
- 社会保険料の控除額や扶養親族の数
- 会社名・従業員の氏名・マイナンバーの一部など
使いみち(具体例)
- 退職時:退職後の手続きで必要になります。例えば失業給付申請や年金手続きの場面です。
- 確定申告:医療費控除や副業の申告で、支払われた給与や控除額の証明になります。
企業の責務と従業員の確認ポイント
企業は正確に作成し、所定の期日までに交付する義務があります。受け取ったら金額、氏名、生年月日(あるいは番号の最終桁)などを必ず確認してください。誤りがあれば早めに会社へ訂正を依頼しましょう。
源泉徴収票を渡すべきタイミング
主な交付のタイミング
源泉徴収票は、次の3つの場面で交付することが一般的です。
- 年末調整後(通常時)
-
年末調整が終わった後、12月後半から1月末の間に交付することが多いです。多くの企業は12月分の給与と同封して渡します。受け取る従業員は翌年の確定申告や各種手続きに使います。
-
従業員が退職する時
-
退職時には、その年度の給与と源泉徴収の情報をまとめた源泉徴収票を渡します。退職日までの給与が記載されるため、退職後の転職先や失業保険申請で必要になります。
-
従業員から発行依頼があった時
- 従業員が必要とする場合は、年末以外でも発行を求められます。請求があれば速やかに対応するのが望ましいです(郵送や手渡しの方法を確認してください)。
実務上の注意点
- 発行のタイミングを事前に社内で決め、従業員に周知します。
- 退職者や依頼者には本人確認をし、住所や宛名を確認して送付ミスを防ぎます。
- コピーを保管しておくと再発行時に便利です。
これらを守ることで、従業員の手続きがスムーズになり、トラブルを防げます。
源泉徴収票の配送方法
概要
原則として書面での郵送が一般的です。退職者や在職中の従業員ともに、自宅住所宛に送付します。受け渡し漏れがないよう、住所は社内記録と照合してください。
書面で送る際のポイント
- 送付方法:書留や簡易書留など、追跡できる方法を選ぶと安心です。普通郵便に比べて紛失リスクを下げられます。
- 封筒表示:封筒に「親展」「重要書類在中」と明記します。ただし、封を開けないと分かるように配慮し、給与金額などが外から見えないようにします。
- 宛先と差出人:氏名・現住所を正確に記載し、差出人欄には会社名と担当部署を明記します。転居届などで住所が変わる場合は事前確認します。
個人情報漏洩防止の配慮
社内で受け渡しや封入を行う際は、担当者を限定し、作業場所を分けます。封入ミスがないかダブルチェックの仕組みを作るとよいです。配送伝票や追跡番号は記録しておきます。
電子交付(本人の同意がある場合)
本人が同意すればPDFなどで電子交付できます。事前に同意書を得て、送信日時や送信先メールアドレスの記録を残します。ファイルはパスワード付きにするか、社内のセキュアな送信手段を使い、受領確認を取ります。
送付時のチェックリスト
- 住所・氏名の確認
- 封筒表示の記載
- 追跡方法の選択(書留等)
- 電子同意・送信記録の保存(該当する場合)
- 封入・発送のダブルチェック
上記を守ることで配送時のトラブルや情報漏洩リスクを減らせます。
送付状の必要性と書き方
なぜ送付状が必要か
源泉徴収票を郵送するとき、送付状を添えるのは基本的なビジネスマナーです。受け取る側が何をいつ、誰から受け取ったかをすぐに把握できます。誤配や添付漏れの確認にも役立ちます。
送付状に記載する7項目
以下の7項目を記載すると分かりやすくなります。
- 送付年月日
-
文書の作成日を明記します。例:2025年4月1日
-
送付先
-
会社名・部署名・担当者名を正確に書きます。例:株式会社○○ 総務部 山田太郎 様
-
差出人情報
-
会社名、担当者名、住所、電話番号を記載します。例:株式会社△△ 総務部 佐藤花子
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タイトル
-
一目で目的が分かる短いタイトルを付けます。例:「源泉徴収票送付の件」
-
頭語と結語・挨拶文
-
頭語は「拝啓」など、結語は「敬具」などを使います。簡単な挨拶文で始めます。例:「拝啓 いつもお世話になっております。」
-
本文
-
送付の目的、件数(枚数)、特記事項を簡潔に書きます。例:「下記の書類をお送りいたします。ご確認ください。」
-
送付内容
- 同封物を箇条書きで明記します。例:1. 源泉徴収票 1通
書き方の例(簡易テンプレート)
送付年月日
送付先
差出人
タイトル
拝啓 前略
本文(送付目的・枚数・お願い)
敬具
同封書類:源泉徴収票 1通
丁寧に書くことで受け手が安心します。手書きでもパソコンでも、見やすさを重視してください。
トラブル回避のための注意点
1. 住所確認は本人から必ず行う
退職者の住所は郵便物の送付前に必ず本人から確認してください。電話で確認した場合も、確認した内容をメールや書面で残すと安心です。旧住所への送付は避けます。
2. 確認方法の具体例
- 電話:要点をメモし、後でメールで要約を送る
- メール・書面:例文「源泉徴収票の送付先をご教示ください。お手数ですが氏名・新住所・電話番号をお知らせください。」
3. 封筒の差出人情報を正確に記載
封筒には会社名、担当部署、担当者名、連絡先電話番号を明記してください。配達で問題が発生した際にすぐ対応できます。
4. 配送方法と記録管理
追跡できる方法(簡易書留や配達記録、宅配便)を選び、発送控えをファイルしておきます。発送日、宛先、方法、追跡番号を記録してください。
5. 返送や未着時の対応
郵便が返送されたら速やかに本人に連絡し、新住所を再確認してから再送します。旧住所へ安易に再送しないでください。
6. 個人情報の取り扱い
住所のやり取りは本人確認を行い、社内で必要最小限の人だけがアクセスするように管理します。
7. 簡単チェックリスト(発送前)
- 本人確認は済んでいるか
- 住所は書面で保管しているか
- 封筒に差出人情報はあるか
- 追跡可能な配送方法を選んだか
- 発送記録を保存したか
これらを習慣化すれば、送付漏れや宛先間違いの多くを防げます。


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