はじめに
概要
この章では、本調査の目的と読み方をやさしく説明します。本調査は、転職時に前職の源泉徴収票が年末調整に間に合わない場合に、どのように対応すればよいかを分かりやすくまとめたものです。必要性や発行のタイミング、間に合わないときの対応策、提出が不要となるケース、特殊な注意点などを順に解説します。
誰に向けた内容か
- 転職を予定している方
- すでに転職し、年末調整で困っている方
- 人事・採用担当の方や内定者の方
具体的な事例を交えているので、初めての方でも理解しやすい構成です。
本記事の使い方
各章は短く区切り、実務で役立つポイントを優先して説明します。章ごとに該当する場面で読み進めてください。必要に応じて会社の総務や税務署にも相談してください。
注意点
法律用語はできる限り避け、実務でよくあるケースで例示します。正式な手続きが必要な場合は、社内の担当者や税理士に相談することをおすすめします。
前職の源泉徴収票が必要な理由
なぜ転職先に必要なのか
転職先は、前職分と現職分を合算して年末調整を行います。年の途中で会社を変えた場合でも1年間の合計収入に対して正しい税額を計算する必要があるため、前職の源泉徴収票の提出が求められます。これがないと、転職先が適切に税額を算出できません。
源泉徴収票で分かる主な項目
- 支払金額(その年に支払われた給与の合計)
- 源泉徴収税額(すでに差し引かれた所得税)
- 社会保険料等の金額や各種控除の情報
これらを合わせることで、過不足なく年税額を確定できます。
提出が必要な理由を具体例で説明
例:前職で半年働き、転職先で残り半年働いた場合。前職での給与と税金を転職先に伝えないと、転職先はその年の合計所得を把握できず、年末調整で過大に税金を差し引いたり、逆に不足税額が発生して後で追加徴収されることがあります。
プレメリット(前職の源泉徴収票を出すと得する点)
- 年末調整で過払い税の還付を受けやすくなります
- 確定申告が不要で済む場合があります
以上の理由から、前職の源泉徴収票は転職先にとって重要な書類です。
年末調整の時期と源泉徴収票の発行タイミング
年末調整の一般的なスケジュール
企業は通常、10~11月ごろに年末調整の準備を始めます。必要書類の回収、扶養控除等申告書の確認、源泉徴収票の刊行準備などを進め、12月給与で清算することが多いです。
退職後の源泉徴収票の交付期限(法律)
法律では、退職した事業主は退職日から1か月以内に源泉徴収票を交付する義務があります。つまり12月に退職した場合は翌年1月中旬ごろまでに届くはずです。
年末近くに退職した場合のリスクと注意点
年末調整を自社で行うタイミングと、前職からの源泉徴収票の交付時期がずれると、年末調整に前職分を反映できないことがあります。たとえば12月下旬に退職すると、前職からの交付が年末調整の締切を過ぎる可能性があります。
具体的な行動の目安(例)
- 10~11月:現職で年末調整の案内が来る時期です。
- 11月~12月上旬に退職予定なら、早めに源泉徴収票の発行を依頼してください。
- 12月中旬以降に退職した場合は、前職に交付日を確認し、間に合わなければ確定申告の準備も視野に入れてください。
ただし企業の処理状況や年末の繁忙で、交付が遅れることもあります。退職前に給与担当へ連絡し、発行予定日をはっきりさせることが最も確実です。
源泉徴収票が間に合わない場合の対処方法
前職に早期交付を依頼する
退職時に交付時期を必ず確認し、年末調整の締切を伝えて優先的に発行してもらいましょう。電話で確認した後、メールや書面で「年末調整のため○月○日までに源泉徴収票の発行をお願いします」と残すと安心です。PDFや郵送の希望を明確に伝えてください。
再発行や督促の方法
届かない場合は再発行を依頼し、理由と見込み日を確認します。返信がないときは督促のメールや内容証明を検討します。連絡履歴は必ず保存してください。
間に合わないときの確定申告
年内に入手できない場合は、本人が確定申告を行います。給与明細や振込記録を用意し、税務署で相談して必要書類を確認してください。申告で税額を調整できます。
発行を拒否された場合の対応
原則として源泉徴収票の交付は事業主の義務です。拒否されたら税務署に相談し、事実関係を伝えて指導を求めます。最終手段として内容証明で請求すると効果的です。
実務のポイント
早めの連絡、メールでの記録、給与明細の保管、税務署へ早めに相談することが大切です。代理人による受取や電子データでの受領も検討してください。
源泉徴収票の提出が不要となるケース
概要
次の場合は、転職先に前年の源泉徴収票を提出する必要がないことが多いです。理由を簡単な例で説明します。
1)転職先に1月1日に入社し、前職の給与支給が前年12月で終了した場合
前職の支払いがすべて前年分に収まるため、前職分の年末調整は前職側で完了します。新しい雇用先は当年分のみ扱うため、源泉徴収票の提出は原則不要です。
2)前年の途中に退職し年をまたいで転職した場合
前年に退職してから年をまたいで就職した場合、前年分の給与がすでに確定していれば新しい雇用先に提出する必要はありません。前年分の税処理は旧職場または本人の確定申告で行います。
3)前職から転職まで1年以上空いて前年に給与が支給されていない場合
前年に給与の支払いがなければ源泉徴収票に該当する所得がありません。このため転職先へ提出する必要はありません。
4)新たな雇用先が主な収入源でない場合
副業的に働くなどで新たな職場の給与が少額でかつ主たる給与が別にある場合、年末調整の取り扱いにより提出不要になることがあります。具体的には主たる給与を支払う事業所で年末調整を受けている場合です。
注意点(提出不要でも確認すべきこと)
- 前職の源泉徴収票は必ず受け取り、保管してください。将来の確定申告や各種手続きで必要になります。
- 人事・総務に状況を伝え、提出が不要かを確認すると安心です。
- 複数の収入がある場合や保険控除などで調整が必要なときは、自分で確定申告が必要になることがあります。
注意すべき特殊なケース
年をまたぐ給与支給
12月に退職し、翌年1月に前職分の給与が支払われることがあります。その場合でも、支払われた年の分の所得になるため、転職先には前職の源泉徴収票を提出してください。実務では、支払日や対象期間が分かる給与明細や振込証明もあわせて用意すると手続きがスムーズです。
複数回の転職
一年の間に複数社で働いた場合は、すべての会社から源泉徴収票を受け取る必要があります。年末調整は原則として現職でまとめて行いますが、前職分がないと正しく計算できません。受け取れないときは確定申告で合算して申告します。
退職後の賞与や未払給与
退職後に支払われる賞与や未払給与も、支払日が属する年の所得です。支払う会社が源泉徴収票を発行する義務がありますので、発行時期を確認し、必要があれば前職に請求してください。
副業や掛け持ちの場合
副業で複数から給与を得ているときは、それぞれの給与について源泉徴収票が必要です。主たる勤務先で年末調整を受けていない分は、自分で確定申告して税額を調整します。
入手不能・発行遅延時の対応
前職が退職後に源泉徴収票を出さない、あるいは遅れるときは、給与明細や振込履歴を保管し、まずは前職に再請求してください。それでも入手できない場合は、税務署に相談すると代替措置や申告方法を教えてくれます。
源泉徴収票の提出が実質不可能ではない理由
会社は発行の義務がある
前職の源泉徴収票は、企業に発行義務があります。退職後でも発行しなければならない書類なので、まず前職の人事・給与担当に請求してください。多くの場合、対応してもらえます。
再発行や郵送の対応が一般的
紛失や未受領でも、再発行や郵送で受け取れます。具体的には(1)前職の担当者に連絡、(2)送付先を伝える、(3)必要なら本人確認書類を提示する、という流れです。通常は数日〜数週間で届きます。
新しい勤務先と連携する
入社先の人事は年末調整の時期に提出を求めますが、提出が遅れる場合の手続きも案内してくれます。年末調整に間に合わないときは確定申告で清算する方法もありますので、遠慮なく相談してください。
発行が難しい場合の対処
前職が連絡に応じない、または会社が存在しない場合は、税務署に相談すると代替手段を教えてもらえます。給与明細などで所得を証明し、必要な手続きを進めることができます。
源泉徴収票の保管と内定時の提出
なぜ保管が重要か
源泉徴収票は前職の給与や税額を証明する書類です。年末調整や確定申告だけでなく、転職時の年収確認にも使います。手元にないと年収交渉や内定手続きで手間が増えます。
内定時に提出を求められる場面
企業は内定者の年収ベースを把握するため、直近の源泉徴収票を求めることがあります。とくに提示された給与と前職の水準に差がある場合に確認されやすいです。
紛失したときの対処法
紛失したら前職の総務・人事に再発行を依頼してください。発行まで時間がかかる場合は、再発行の依頼メールや対応履歴を内定先に提示し、手続き延期や条件確認を相談しましょう。
提出時の注意点
個人情報を含むため、必要な年度分だけを提出します。送付はPDF化してパスワード付きで送るか、内定先の指定方法に従ってください。
保管の実用方法
原本は安全な場所に保管し、スキャンしてクラウドや外付けHDDでバックアップを取ると安心です。期限は定められていませんが、転職を考える間は最低3年保管することをおすすめします。


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