はじめに
本資料は、会社から源泉徴収票が交付されないときに、原因の把握から具体的な対処法までをわかりやすく説明することを目的としています。源泉徴収票は年末調整や確定申告、金融手続きで必要になる重要な書類です。受け取れないと手続きが遅れるだけでなく、税務上の不利益が生じる場合があります。
対象は、正社員・契約社員・派遣・アルバイト・退職者など、給与や報酬を受け取るすべての方です。専門用語はできるだけ避け、実例を交えて丁寧に解説します。
本書の構成は次の通りです。第2章で源泉徴収票の役割を説明し、第3章で交付されない主な理由を挙げます。第4章は会社への催促や税務署への手続き、第5章は法的ペナルティ、第6章は年末調整への影響、第7章は紛失時の対応、第8章で全体をまとめます。
まずは自分の状況を確認していただき、該当する章を順にお読みください。会社とのやり取りは記録を残すことをお勧めします。疑問があれば次章で具体的な対処法を確認してください。
源泉徴収票とは何か
定義
源泉徴収票は、会社が従業員に支払った給与や賞与から差し引いた所得税や社会保険料、支払金額などを記載した証明書です。受け取った人が前年の所得を確認できる重要な書類です。
主な記載事項
- 支払金額(年間の給与や賞与の合計)
- 源泉徴収された所得税額
- 社会保険料や控除に関する情報
- 会社名・従業員名・個人番号など
交付の期限と義務
給与を支払う側は、原則として翌年1月31日までに源泉徴収票を交付します。退職者には退職後1月以内の交付が法的に定められています。会社は必ず発行する義務があります。
使い道(具体例)
- 年末調整や確定申告の際の資料
- 住宅ローンや各種手続きでの所得証明
保管のポイント
税務手続きや各種申請で必要になるため、数年は大切に保管してください。紙の交付だけでなく、電子交付に対応する会社もあります。
源泉徴収票が交付されない主な理由
はじめに
源泉徴収票が手元に届かないと不安になります。ここでは、よくある理由を具体例とともにわかりやすく説明します。
1. 給与の支払いがまったくなかった
休職や長期欠勤で1月から12月まで給与が一度も支払われないと、会社に交付義務が発生しません。例:育休で無給期間が通年に及んだ場合。
2. 支払者が別の場合(転職・掛け持ち)
年の途中で転職し、前職で給与がなければ前職からは交付されません。別会社から支払われた給与分はその会社が発行します。
3. 労働者ではなく個人事業主扱いで支払われた
委託契約で報酬を支払われた場合、会社は源泉徴収票ではなく支払調書など別書類を使うことがあります。個人の立場で請求書を出しているか確認してください。
4. 会社側の手続きミスや意図的な拒否
事務処理の遅れ、郵送事故、ソフトの設定ミスなどで交付が遅れることがあります。まれに交付を拒むケースもありますが、その場合は早めに確認が必要です。
5. マイナンバーや必要書類の未提出
マイナンバー未提出で手続きが保留になることがあります。源泉徴収票作成に必要な情報が会社に届いているか確認しましょう。
6. 会社の解散・倒産、連絡先不明
会社が解散・倒産したり担当者が退職して連絡が取れない場合、交付が困難になります。
以上を確認しても交付されないと感じたら、次章で対処法を説明します。
源泉徴収票が交付されない場合の対処法
1. まずは会社に直接連絡する
まずは総務・人事・給与担当へ連絡してください。口頭だけでなくメールや社内メッセージで催促し、やり取りは保存します。例:交付時期の確認、発送予定の再通知を依頼します。
2. 年末になっても届かないときは税務署へ
届かないまま年末を迎えたら、所轄の税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」を提出します。税務署は会社へ照会や行政指導を行い、対応を促します。税務署に相談すると、確定申告での対応方法も教えてくれます。
3. 急場しのぎ:給与明細や振込記録を集める
確定申告の準備が必要なら、月ごとの給与明細、銀行の振込明細、雇用契約書などを集めて年間の支給額と源泉徴収額を計算します。例:各月の支給額を合算し、差し引かれた税額も合計します。税務署が代替資料での申告を許可する場合があります。
4. 給与か報酬かを確認する
雇用関係でない場合は支払調書が発行されることがあります。業務委託やフリーランスの扱いなら会社に源泉徴収票を求める前に、支払の性質(給与か報酬か)を確認してください。
5. 記録を残し、期限を守る
連絡履歴や集めた資料は必ず保管します。確定申告の期限や税務署の指示を確認し、必要があれば税務署と相談のうえ期限内に手続きを行ってください。
第5章: 源泉徴収票が交付されない場合の法的ペナルティ
概要
源泉徴収票を期限内に交付しないと、法的な罰則の対象になります。一般に、交付義務を怠ると「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処せられる可能性があります。ただし、すぐに罰則が適用されるわけではありません。
適用される罰則
罰則は刑罰の一種で、重大な違反に対して科されます。具体的には懲役や罰金です。たとえば、給与支払者が故意に源泉徴収票を渡さなかった場合、刑事責任が問われ得ます。
罰則が適用される流れ
税務署はまず指導や是正を行います。事業者が改善しないと判断された場合に初めて、刑事手続きや罰則の対象になります。つまり、まず行政的な働きかけがあり、その後に厳しい処分が検討されます。
具体例と注意点
例:会社が退職者に源泉徴収票を渡さず、税務署の指導にも応じない場合、罰金や懲役の対象になり得ます。多くは書類の不備や手続き漏れが原因なので、故意か過失かが判断の分かれ目です。
事業者が取るべき対策
交付期限を社内で明確にし、担当者を決めて証拠を残すことが重要です。問い合わせに迅速に応じ、税務署からの指導には協力してください。予防措置を講じれば、罰則のリスクを大きく下げられます。
源泉徴収票がない場合の年末調整への影響
年末調整で源泉徴収票が必要な理由
年末調整は1年分の給与から差し引かれた所得税の過不足を調整する手続きです。前職の給与や既に納めた税額を正確に把握するには前職の源泉徴収票が欠かせません。これがないと正しい税額が出せません。
源泉徴収票がないとどうなるか
前職の源泉徴収票が提出できないと、現職の会社は前職分を反映できません。結果として年末調整での還付が受けられない、あるいは過大な税額が徴収されたままになる可能性があります。
具体例
たとえば、前職で年間10万円の源泉徴収があり、現職でも同様に天引きされている場合、両方を合算して調整する必要があります。前職の証明がなければ合算できず還付が止まります。
早めにすべき対応
- 気づいたらすぐ前職の総務や人事に連絡して再発行を依頼します。2. 会社が応じない場合は、税務署で相談すると代替手続き(給与明細や支払調書での確認)を案内してくれます。3. 年末調整を過ぎた場合でも、確定申告で還付を受けられることが多いです。
注意点
再発行には時間がかかることがあるため、早めに動くことが重要です。確定申告の際は給与の証拠書類を保存しておいてください。
源泉徴収票を紛失した場合
再発行の基本
一度受け取った源泉徴収票を紛失した場合は、まず勤務先に再発行を依頼してください。会社の人事・給与担当に氏名、社員番号、対象年を伝すれば、多くの場合コピーを発行してもらえます。不交付の届出書とは手続きが異なり、会社の再発行が原則です。
会社に依頼する際のポイント
- 依頼方法:メールや社内チャットで文書に残して依頼すると後で確認しやすいです。
- 確認事項:氏名、マイナンバー(必要な場合)、支払金額や発行日などが正しいか必ず確認してください。
- 費用と所要時間:通常は無償で、数日から2週間程度で対応されることが多いです。
会社が再発行できない・応じない場合
勤務先が倒産している、連絡が取れない等で再発行が困難なときは、税務署に相談してください。給与明細や振込記録を代替書類として確定申告に用いるなどの助言を受けられます。最終手段としては、税理士に相談すると手続きがスムーズです。
紛失予防と保管のコツ
再発行後はスキャンしてクラウドや外付けに保管し、原本はまとめてファイルに入れておきましょう。紛失時に誰に連絡するかをメモしておくと慌てずに済みます。
よくある質問
Q: 再発行に手数料はかかりますか?
A: ほとんどの会社は無償ですが、念のため確認してください。
Q: 再発行に時間がかかると確定申告はどうする?
A: 給与明細等で申告できる場合があります。期限が迫る場合は税務署に相談してください。
ブログ記事としてのまとめ
源泉徴収票の不交付は珍しくありません。まずは落ち着いて会社に丁寧に連絡しましょう。口頭で済ませず、メールや書面で交付を依頼すると証拠が残ります。
再発行に応じない場合は、最寄りの税務署に相談してください。税務署は手続きや届出の方法を案内してくれます。給与明細や振込記録があれば、確定申告や年末調整で代替資料として使えることが多いです。
会社には源泉徴収票を交付する義務があります。応じないと罰則対象になるため、記録を残して段階的に対応することが重要です。最後は税理士など専門家に相談すると手続きがスムーズになります。
日常的に給与明細を保管し、問題が起きたら早めに行動する習慣をつけると安心です。


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