はじめに
目的と背景
本調査は「有給消化が欠勤扱いとされた場合」の法的解釈と実務上の問題点を整理するために作成しました。退職前後に有給を申請した際の扱いや、企業が欠勤扱いにする理由、労働者が取るべき対応を分かりやすく示します。
本書で扱う主な内容
- 有給休暇の基本的な権利と取得の仕組み
- 退職直前の有給申請と企業側の対応
- 欠勤扱いが違法とされる場合のポイント
- 給与・評価・ボーナスへの影響と回避策
- 証拠の残し方やトラブル時の相談先
想定読者と読み方
労働者、管理職、人事担当者、転職を考える方を主な対象としています。事例を交えて解説するため、ご自身の状況に近い章を先に読むと便利です。
注意点
本調査は一般的な法解釈と実務の整理を目的とします。個別の判断には専門家の相談をおすすめします。
退職直前の有給消化をめぐるトラブル——欠勤扱いは労働基準法違反
■ 有給は労働者の権利です
有給休暇は労働基準法第39条で認められた労働者の請求権です。会社が「有給は認めない」「欠勤扱いにする」と一方的に決めることは、原則として違法となる可能性が高いです。
■ よくあるトラブル事例
退職日に向けて有給を申請したAさんは、会社が出勤扱いをせず欠勤として給与を差し引きました。この場合、会社は有給を付与すべきで、差し引かれた分は未払賃金に当たることが多いです。
■ 会社側の誤解と理由
システム上の制約、引継ぎの都合、慣習的な運用が原因で欠勤扱いにされることがあります。運用の都合は理由になりません。
■ 取るべき手続きと対応
有給申請はメールや書面で行い、やり取りを保存してください。拒否や欠勤扱いを受けたらまず文書で異議を申し立て、支払いを求めます。改善がない場合は労働基準監督署や労働相談窓口、労働組合や弁護士に相談してください。
■ トラブルを防ぐために
最終出勤日と退職日の間に有給消化期間を設けるよう調整すると安全です。申請は余裕を持って行い、書面での合意を取り付けると後の争いを避けやすくなります。
有給を使い切った後の欠勤対応——企業が取るべき制度とリスク
欠勤の基本的な扱い
有給は給与が支払われますが、欠勤は原則として無給になります。出勤簿で欠勤が記録され、給与計算で控除されます。例えば有給を使い切った社員が病気で休んだ場合、その日数分は給与から差し引かれます。
企業が整備すべき制度
- 就業規則への明記：欠勤・無給休暇・休職の取り扱いを具体的に書きます。申請方法や必要書類も示します。
- 休職制度と特別休暇：治療や育児など長期の事情に対応する休職制度を用意します。特別休暇を設ける例もあります。
- 診断書等の扱い：診断書の提出要件と保管方法を決め、個人情報に配慮します。
- 在宅勤務や時短勤務の活用：業務上可能なら代替勤務で欠勤を減らせます。
対応の手順と注意点
まず事実確認を行い、理由に応じて制度適用を判断します。診断書があれば休職や病気休暇を検討します。欠勤が繰り返す場合は面談で状況把握と改善計画を作成します。懲戒や解雇を検討する際は就業規則に基づく手続きと十分な記録が必須です。違法な対応の例は、診断書を無視して即時解雇すること、一方的な給与減額、就業規則にない処分を行うことです。
ケース別の具体例
- 短期の病気（数日）: 診断書を求め、無給休暇として処理するか、有給振替の有無を確認します。
- 長期の療養（数週間〜）: 休職制度を適用し、復職判定の基準と手続きを明確にします。
管理上の留意点
運用は一貫性を持たせ、各対応を記録します。プライバシーに配慮しつつ、社員に説明責任を果たす窓口を設けるとトラブルを防げます。労働基準法や就業規則の遵守を常に意識してください。
有給を使い切ったら欠勤扱い？クビのリスクは？評価やボーナスへの影響
欠勤すると給与はどうなるか
有給が残っていない日を欠勤すると、ノーワーク・ノーペイの原則でその日分の給与を控除できます。例えば日給1万円の社員が3日欠勤すれば3万円が差し引かれます。会社は就業規則に基づき計算と手続きを行います。
企業が取るべき対応
企業は欠勤理由を確認して記録します。病気が理由なら診断書や意見書を求め、長期化すれば休職制度や健康保険の傷病手当金を案内します。休職に伴う手続きや復職時の措置もあらかじめ定めておくと混乱を防げます。
クビ（解雇）になるリスク
欠勤が即時の解雇事由になることはまれです。無断欠勤や業務に重大な支障を与える長期欠勤が続けば、懲戒や解雇の対象になり得ますが、会社は注意喚起や改善機会を与えるべきです。手続きを踏まずに解雇すると不当解雇と判断される恐れがあります。
評価やボーナスへの影響
欠勤は勤務評価に反映されやすく、特に無断欠勤や頻繁な欠勤は評価を下げます。賞与（ボーナス）は多くの企業で業績と個人評価を基に決めるため、欠勤日数が減点要素になり、支給額が減ることがあります。就業規則や賞与規定を確認してください。
従業員への実務的な助言
欠勤する際は速やかに上司や人事に連絡し、理由を説明して診断書を提出すると信頼を保てます。治療や復職見通しが必要なら早めに相談し、休職や制度利用を検討してください。
企業への実務的な助言
就業規則に欠勤の扱いや欠勤控除の計算方法を明記し、社員に周知してください。欠勤の記録を整え、個別ケースでは柔軟な対応（療養や勤務調整）を検討するとリスクを減らせます。
※本稿は一般的な説明です。具体的な事例は就業規則や労働基準法、社会保険制度の確認をおすすめします。
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