はじめに
本資料の目的
退職時に会社へ返却すべき物品について、分かりやすく整理することを目的としています。返却の根拠や具体例、タイミング、困難な場合の対処やリスクを順に解説します。退職者が無用なトラブルを避けられるようにする実用的な案内です。
誰に向けたものか
これから退職手続きを進める従業員、あるいは人事担当者が主な対象です。初めて退職する方や、返却物の扱いに不安がある方にも読みやすい内容にしています。
本資料で扱う内容の範囲
法的な基礎知識は簡潔に示しますが、個別の法的相談には触れません。企業から貸与されたノートパソコン、社員証、作業服など、一般的な返却物の例と実務的な手順を中心に説明します。
利用上の注意
ここでの情報は一般的な指針です。具体的なケースでは会社の就業規則や契約書を確認し、必要なら人事や法務に相談してください。
退職時に返却する必要がある理由
法的な立場
会社から貸与された物品は、基本的に会社の所有物です。労働契約や就業規則に基づき、会社は貸与品の返還を請求する権利を持ちます。つまり返却は単なる慣例ではなく、法的な根拠のある義務です。
所有権と契約上の義務
貸与の際に明示されていることが多く、明文化されていない場合でも物品の所有権は会社側にあります。退職時には会社が貸与品の回収を求め、労働者は協力して返還する義務を果たします。
どんな退職でも変わらない
円満退社だけでなく、解雇や退職勧奨など労働者の意思に反する退職の場合でも返却義務は変わりません。貸与品の返却は、退職の事情に左右されず求められます。
実務上の理由
・会社の財産を保護するため
・機密情報や業務データの漏えいを防ぐため
・退職手続きを円滑に進めるため
具体例としてはノートパソコンやIDカード、工具類などが挙げられます。
返却すべき貸与品の具体例
会社から支給された物品は原則としてすべて返却対象です。以下に代表的な貸与品と、返却時の注意点を分かりやすく示します。
身分証・入館関連
- 社員証・社章・入館証:出入口での認証や身分確認に使います。紛失がないか確認してから返却してください。
健康・交通関連
- 健康保険被保険者証:会社が保険手続きをしている場合は返却対象です。
- 通勤定期券:会社が支給した定期券は期限に関係なく返却します。
業務用機器
- ノートパソコン、デスクトップ、タブレット、業務用スマートフォン:付属品(充電器、マウス、ケース等)も含めて返却してください。
- 周辺機器:モニター、キーボード、携帯バッテリー、社用USBメモリなど。
オフィス備品・文具
- 名刺、オフィスの鍵やカードキー、ロッカーの鍵、制服、作業服、作業靴など。
情報・システム関連
- 社内システムのアカウント情報やパスワード:パスワードそのものの返却はできませんが、退職前にアカウントを会社に引き継ぐ手続きやパスワード変更の指示に従ってください。
その他
- 会社負担で購入した物品(社費購入物):領収や契約書で扱いが決まっている場合があります。書類や貸与契約があれば確認してください。
職種や業務内容で返却物は変わります。退職時には必ず所属部署や総務に一覧を確認し、漏れのないよう準備しましょう。
返却のタイミング
原則
退職日までに会社から貸与された物は返却します。退職手続きの際に持参するか、会社が指定する住所へ郵送するのが一般的です。
具体的な手順
- 退職が決まったら、返却物と返却方法を人事や担当者と確認します。
- 最終出勤日に直接渡すか、郵送する場合は追跡や配達記録を残します。
有給休暇消化中の場合
有給消化中でも最終出勤日までに返却することが望ましいです。物理的に難しいときは、早めに会社と相談して郵送や引取の手配をします。
在宅勤務や出張が続く場合
遠隔地での勤務が続くときは、事前に返却スケジュールを決め、郵送での送付先や回収日を明確にします。会社側が集荷を手配する場合もあります。
証拠の保管
返却時は受領書や受領メール、配達記録を必ず保管してください。返却物の写真を撮っておくとトラブルを避けられます。
短いチェックリスト
IDバッジ、パソコン・携帯端末、鍵、書類など。返却前に一覧を作り、返却日と方法を記録してください。
返却が困難な場合の対応方法
郵送で返却する場合
出社が難しいときは、まず会社に郵送での返却が可能か確認します。可能なら会社住所と担当者名を教えてもらい、返却物品の一覧、製品名やシリアル番号、状態を記した手紙を同封してください。梱包の前に写真を撮り、発送は追跡番号付き(書留や宅配便の記録)で行います。発送伝票と受領確認は必ず保管してください。
会社への連絡と合意
返却方法や送料負担は会社と合意して記録に残してください。メールか書面で指示を受け取り、相手の承認があれば安心です。会社が送料を負担すると約束した場合は、支払い方法や領収書の扱いを確認します。
代理返却や第三者の利用
体調不良やハラスメントで対面が難しいときは、家族や友人、弁護士を代理人にして返却できます。代理人には委任状と本人確認書類のコピーを持たせるとよいです。会社に代理人の受け取りを事前に伝えておきます。
返却忘れや特殊ケースへの対応
退職後に返却忘れに気づいたら、速やかに会社へ連絡して返却方法を確認します。会社が受け取りを拒む場合は、受領拒否の書面やメールを求め、やり取りを記録してください。解雇や退職強要のケースでは、労働相談窓口や弁護士に相談することを検討してください。
記録を残す習慣
どのケースでも、やり取りの記録、発送の伝票、写真、受領証を残してください。万が一トラブルになっても、記録があれば対応がスムーズになります。
返却を怠った場合のリスク
法的なリスク
会社は貸与品の返却がない場合、物品の価値や損害額を請求できます。民事上の損害賠償請求につながることがあり、裁判や支払い命令を受ける可能性があります。故意や重大な過失が認められると責任が重くなります。
就労上の不利益
返却を退職日までに行わない場合、懲戒処分や解雇の原因になり得ます。退職後でも返却を怠れば、会社からの信用を失い、再就職の際に不利になることがあります。
金銭的負担と手続きの負担
物品の弁償、修理費用、回収にかかる送料や手数料などを請求されることがあります。未払いが続くと給与差押えや債権回収業者による対応を受ける恐れがあります。
信用・記録への影響
社内での評価や、人事記録にマイナスが残ると、職務証明や推薦に影響します。業務上の備品を私的に使用していた事実があると、信頼回復が難しくなります。
リスクを避けるためのポイント
- 速やかに会社に連絡し、事情を説明する。2. 返却できない理由があれば書面で合意を得る。3. 弁償額や返却方法は記録に残す。4. 不安があれば労働相談窓口や弁護士に相談する。
まとめ
要点の整理
退職時の貸与物は会社に返却する義務があります。パソコンや社員証、書類、備品など、会社から渡された物は原則として返します。返却は退職手続きの重要な一部です。
具体的にやること(チェックリスト)
- まず貸与品をリスト化して確認します。例:ノートパソコン、スマホ、鍵、名刺など
- 傷や故障があれば写真で記録します。後で証拠になります。
- 会社の指示に従って返却方法を決めます。対面で渡すか、郵送で送るかを確認します。
- 返却したら受領書やメールのやり取りを必ず残します。追跡番号や受領の証拠があると安心です。
返却が難しい場合の対応
手元にない、移転中で返せないなど事情があるときは、早めに人事や担当者に連絡してください。郵送や立ち合いの代替を提案してもらえることが多いです。配送の際は追跡や補償を付けると安全です。
リスクの再確認と最後のアドバイス
返却を怠ると損害賠償請求や給料の相殺、企業との信頼関係悪化につながる恐れがあります。退職時は早めに準備し、記録を残し、疑問は人事に確認する習慣をつけると安心です。


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