はじめに
背景
本調査は、退職後に源泉徴収票が届かないケースを想定し、原因と具体的な対処法を分かりやすく整理したものです。退職者やこれから退職を予定している方、勤務先の手続きに不安がある方を主な対象としています。
なぜ重要か
源泉徴収票は年末調整や確定申告に必要な書類です。所得や税額の記録だけでなく、失業給付や年金の手続きで証明書類として求められることもあります。届かないままだと税手続きや給付申請が遅れてしまいます。
本記事の構成
第2章で源泉徴収票の基本と交付時期を説明し、第3章で届かない主な理由を挙げます。第4章は退職後1カ月以上経っても届かない場合の対処、第5章は会社が倒産した場合の対応、第6章は紛失時の再発行方法、第7章は労働基準監督署や税務署への相談方法を解説します。
読み方のコツ
まず第2章で基本を押さし、該当する状況に合わせて該当章をお読みください。必要に応じて企業や行政機関に速やかに連絡するための手順も示します。
源泉徴収票とは何か、そしていつもらえるのか
源泉徴収票の意味
源泉徴収票は1年間の給与・賞与と、その年に会社が天引きして納めた所得税の額を記載した重要書類です。年末調整や確定申告で必要になります(例:副業のある人や医療費控除を受ける場合)。
通常の交付時期
一般的には12月(年末調整後)か翌年1月に会社から交付されます。多くは給与明細と同時に手渡し、または郵送で届きます。
退職者の特別ルール
退職した場合、会社は退職日から1カ月以内に源泉徴収票を交付する義務があります。最終出勤月の給与が確定したタイミングで発行されることが多いです(例:3月末退職なら4月末までに受け取る)。
受け取り方と注意点
退職時に交付されない場合は、まず会社の総務や人事に連絡してください。住所変更がある場合は退職前に伝えておくと郵送トラブルを防げます。紛失しないようコピーを取るか、スキャンして保管すると安心です。
源泉徴収票が届かない主な理由
1) 会社の事務手続きの遅れ
企業側の年末調整や発行作業が遅れると、退職者への発送が後回しになります。例:年度末の繁忙で人手が足りない、作業担当者の交代など。まずは人事・総務に発送予定日を確認してください。
2) 事務ミスや住所不備
住所変更を届け出ていない、記載ミスで差出人に戻っているなどのケースがあります。届かない場合は、会社に登録住所の確認と再送を依頼しましょう。
3) 意図的な遅延や嫌がらせ
退職者と会社のトラブルで意図的に発送を遅らせることがあります。明らかに対応が悪い場合は記録を残し、次章以降の対処法(問い合わせや公的機関への相談)を検討してください。
4) 会社の倒産・経営問題
会社が倒産すると事務が停止し、源泉徴収票が発行されないことがあります。倒産情報を確認し、手続きや再発行の窓口を探す必要があります。
5) 郵便事故や紛失
郵送中の紛失や誤配も起こります。追跡番号があれば確認し、郵便局にも問い合わせましょう。
6) 本人側の確認不足
退職時に受け取り方法を指定していない、または連絡先を残していない場合も届きません。退職後でも早めに会社に連絡して受取方法を調整してください。
退職後1カ月以上経っても届かない場合の対処法
1. まずは電話やメールで依頼
退職後すぐに前職の人事・総務・経理担当に電話やメールで送付を依頼します。相手の名前、やり取りの日付、依頼内容を必ず記録してください。例:○月○日、担当者Aに電話で送付を依頼、発送予定日は未定。
2. 文書での催促(内容証明がおすすめ)
口頭やメールで応じない場合は、郵送で正式に催促します。簡易書留や内容証明を使うと証拠になります。文面には「いつまでに」「どのように受け取りたいか(郵送・手渡し等)」を明記してください。
3. 税務署への届出
それでも発行されない場合は、所轄の税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出します。届出書には会社名・所在地・担当者名と、これまでのやり取り(日時・方法・内容)を詳しく書くことが重要です。届出後、税務署から会社へ行政指導が入り、発行を促されます。
記録の残し方のポイント
- メールや封書のコピーを保存
- 電話は日時・相手・要点をメモ
- 届出書の控えは必ず保管
税務署に届出する前に、催促の証拠を整えておくと手続きがスムーズです。丁寧に記録を残して進めてください。
会社が倒産している場合の対処法
概要
会社が倒産して源泉徴収票を受け取れないときも、まず所轄の税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出します。税務署は破産管財人に対して源泉徴収票の発行を促し、発行が難しい場合でも税務署側で対応策を示してくれます。
具体的な手順
- 会社の倒産状況を確認する
破産決定や清算開始の通知など、会社が倒産している事実を示す資料を用意します。ない場合は倒産を示す公的な書類や会社からの通知を探します。 - 税務署へ届出と相談を行う
所轄税務署に電話か窓口で連絡し、「源泉徴収票不交付の届出書」を提出します。退職日、給与額、身分証の写しや給与明細があると手続きがスムーズです。 - 破産管財人へ発行依頼を促す
税務署が破産管財人に発行指導を行います。連絡先が分かればご自身でも問い合わせて、発行を依頼します。 - 発行が困難な場合の対応
管財人が発行できないと判断したときは、税務署が代替証明や指導書を出す場合があります。確定申告や年末調整で使えるよう相談してください。
補足と注意点
・届出は早めに行ってください。・書類のコピーは必ず保管してください。・対応が難しい場合は税理士や最寄りの税務署窓口に相談すると安心です。
源泉徴収票を紛失した場合
概要
退職時にもらった源泉徴収票を紛失したら、まず前職の会社に再発行を依頼します。法的手続きは不要で、経理担当に電話やメールで連絡すれば対応してもらえます。
再発行を依頼する前に準備するもの
- 氏名(旧姓がある場合は旧姓も)
- 在籍期間・退職日
- 社員番号や社員証に記載の情報(あれば)
- 送付先住所・電話番号・メールアドレス
依頼の方法(電話とメールの例)
- 電話:経理担当に事情を簡潔に伝え、メールで正式依頼を送る旨を確認します。
- メール:書面が残るため確実です。件名・氏名・在籍期間・送付先を明記します。
メール例:
件名:源泉徴収票再発行のお願い(山田太郎)
本文:お世話になります。元社員の山田太郎です。20XX年X月まで在籍しておりました。源泉徴収票を紛失したため、再発行を郵送でお願いできますでしょうか。送付先:〒XXX-XXXX 住所、電話:090-XXXX-XXXX。お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
受け取りと注意点
- 多くの場合、再発行は無料です。会社によっては数日〜数週間かかることがあります。
- PDFでの送付が可能か事前に確認すると便利です。
再発行できない場合
会社が対応できない、あるいは連絡が取れない場合は、税務署や退職後の手続きを扱う専門窓口に相談してください。第5章で会社が倒産している場合の対処法を説明します。
労働基準監督署への相談
退職後1カ月以上たっても源泉徴収票が届かず、会社に何度催促しても応じてもらえない場合は、最寄りの労働基準監督署に相談できます。労働基準監督署は労働者の権利保護を目的に対応します。
相談で期待できること
- 事実関係の確認と会社への助言・指導。必要があれば是正勧告や立ち入り調査を行うことがあります。
- 発行を速やかに促すよう会社に働きかける手助けをします。
相談の手順と持ち物
- まず電話で最寄り署に相談予約を取ります。窓口で直接相談できます。
- 持参するもの:本人確認書類、雇用契約書や給与明細、退職届の写し、会社への催促の記録(メールや内容証明の控えなど)。
注意点
- 労働基準監督署は税務処理そのもの(税額の計算など)を行いません。源泉徴収票が必要な税務上の手続きについては、場合により税務署へ案内されます。
- 相談は早めが有利です。証拠や記録をそろえて相談すると対応がスムーズになります。
窓口では事情を丁寧に伝えれば適切な対応方法を教えてくれます。まずは最寄りの労働基準監督署に連絡してみてください。


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