はじめに
本書の目的
この文書は、源泉徴収票の「原本」と「コピー」の違いをわかりやすく説明することを目的としています。日常の手続きでどちらが必要か迷う場面が多いため、具体例を交えて解説します。
読者の想定
給与受給者、確定申告や年末調整を行う方、また人事や経理担当者を想定しています。専門知識がなくても理解できるように記載します。
本書の構成と読み方
全8章で、原本の定義、コピーとの違い、見分け方、必要な場面と対応方法、確定申告や年末調整での扱い、電子交付の関係まで順に説明します。章ごとに事例を示すので、該当する場面から読み進めてください。
注意点
法令や運用は変わる場合があります。具体的な手続きでは、提出先の案内に従ってください。必要に応じて専門家に相談してください。
源泉徴収票の「原本」とは何か
定義
源泉徴収票の「原本」とは、給与の支払者である勤務先が直接交付する正式な書面を指します。1年間の給与額や源泉徴収された税額、社会保険料や扶養控除の情報などが記載された重要な書類です。
紙と電子の違い
紙で発行されることが一般的です。近年は電子データで交付する例も増えていますが、電子データを印刷したものは、受け取り側の判断で「コピー」と扱われることが多い点に注意してください。交付方法によって扱いが変わる場合があるため、必要な場面では事前に確認しましょう。
交付のタイミングと入手先
通常は年末調整後に会社から交付されます。転職した場合は前職の勤務先からもらう必要があります。紛失したときは勤務先に再発行を依頼してください。
なぜ重要か
確定申告や年末調整、住宅ローンの審査など、公的手続きで原本の提示を求められることがあります。大切に保管してください。
原本とコピーの明確な違い
概要
原本は発行者(会社名・住所)や受給者(氏名・住所)が正確に記載され、発行者の押印や手書きの署名が存在する紙の書類です。会社から直接交付された紙であることが最も確かなポイントです。
原本の特徴
- 発行者情報が鮮明に印字されている。例:会社名、所在地、電話番号。
- 社印や代表者の署名が押されている(印影がはっきりしている)。
- 紙の質や用紙の厚みで判別できることが多い。手渡しで受け取ると信頼性が高まる。
コピーの特徴
- 原本を複写したもので、印影が薄く見える場合がある。
- 紙質や色味が異なることがある。コピー機の痕跡(背景の網点など)が残る。
- 改ざんリスクや情報が不鮮明になるため、公的手続きで受け入れられにくい。
具体例での違い
- 会社から直接もらった紙に鮮明な社印がある→原本
- 自宅のプリンタで印刷したものやコピー機で複写したもの→コピー
注意点
重要な手続きでは原本の提出を求められる場合があります。コピーしか手元にないときは、発行元に原本の再発行や証明を依頼してください。
原本とコピーを見分けるポイント
源泉徴収票の原本かコピーかを見分けるときは、次の点を順に確認してください。
見た目で分かるポイント
- 会社から直接交付された紙であること。封筒や手渡しの経緯を確認します。市販のコピー用紙で印刷されているときは要注意です。
印鑑と記載内容の確認
- 会社名、所在地、担当部署名が正確に記載されているかを見ます。社印(会社の印鑑)が押印されていると原本である可能性が高いです。
印影と紙質
- 印影がはっきりしているか、インクの凹凸や光の当たり具合で判別できます。原本は紙質が厚めで手触りがあることが多いです。
電子交付の場合の確認方法
- 電子版ではQRコードや発行者確認用のURLで照合できる場合があります。発行元の確認画面で正式な発行日時や発行者名が表示されれば信頼できます。
コピー特有の目印
- 文字がぼやける、背景に同じ濃淡の繰り返しがある(スキャンの縞模様)、『コピー』の透かしが入っている場合はコピーです。
迷ったときの対応
- 不安な場合は勤務先の総務・人事に確認し、原本の再発行や証明を依頼してください。原本提出が必要な場面では早めに連絡すると安心です。
原本が必要な場面とコピーで対応可能な場面
原本が必要な主な場面
- 住宅ローン控除の申告:住宅ローン控除の初年度や金融機関からの残高証明など、正確な証明を求められることが多く、原本提出を指示されます。具体例:確定申告で年末時点の「借入金残高証明書」や源泉徴収票の原本を求められる場合。
- 銀行のローン手続き:融資審査で収入を厳格に確認するため、源泉徴収票の原本提示を求められることがあります。本人確認と不正防止が目的です。
- 転職先での年末調整:前職の源泉徴収票を原本で提出するよう指示される場合があります。会社側で支払済み税額や扶養の確認を正確に行います。
- ふるさと納税など控除の上限計算:税額控除や控除上限の確認で原本の提示を求められることがあります。
コピーで対応可能な主な場面
- 事前に「コピー可」と明記された銀行手続き:申込書類にコピーで可と書かれている場合はコピーで済みます。例:一部の口座開設や簡易な審査手続き。
- 年末調整の一部書類:会社がコピーで受け付けると明示している控除証明書などはコピーで提出できます。
- 相談や仮確認の場面:税務署や窓口で予備確認をする際はコピーで状況を伝えることができます。
提出時の注意点
- 原本を渡す前に必ずコピーを残してください。返却に時間がかかる場合や紛失リスクに備えます。
- 原本提出を求められた理由を確認しましょう。目的が明確でない場合は窓口で説明を求めてください。
- 原本を提出したら、受領印や受領書を必ず受け取って保管してください。
提出書類について迷ったら、窓口や担当者に確認すると安全です。
確定申告での扱いの変更
要点
2019年4月1日以降の確定申告では、源泉徴収票の「原本」を添付しなくても申告できます。必要な情報(支払金額・源泉徴収税額・支払者の氏名・所在地など)が申告書で明らかであれば、コピーや電子データで対応可能です。
具体的な扱い
- コピーやスキャンした画像、電子交付されたデータを添付して申告できます。e-Taxでの提出でも同様です。
- 税務署が申告内容を確認する際に提示を求めることがあります。提示を求められたときに原本を見せられないと手続きが遅れる可能性があります。
実務的なアドバイス
- 申告時は、見やすいコピーやPDFを用意してください。支払者名・金額・源泉徴収額・支払年月がはっきり写っていることが重要です。
- 電子交付のデータを使う場合は、印刷したものと元データ(保存ファイル)を両方用意すると安心です。
- 原本を保管しておけば、税務署から確認を求められたときにすぐ提示できます。会社に再発行を依頼できることもあります。
原本が手元にない場合
- まずはコピーや電子データで申告し、税務署から提示を求められたら説明とともに原本入手の予定を伝えてください。
- 可能であれば、勤務先に源泉徴収票の再発行を依頼してください。
申告自体は原本なしで行えますが、確認に備えて原本や印刷物を一定期間保管することをおすすめします。
年末調整での原本提出ルール
原則
年末調整で従業員から提出してもらう証明書類は、原則として「原本」を受け取ります。会社は受け取った原本を確認し、社内で保管して税務署からの確認に備えます。コピーは原則として受け付けられません。
具体的な注意点
- 給与所得者の保険料控除証明書や生命保険料の関連書類は原本での確認が求められます。
- 住宅ローン控除に関する書類は特に扱いが厳格で、税務署から送付された書類そのものが申告書の一部となるため、コピーは認められない場合があります。
原本がないときの対応
- 発行元(金融機関、保険会社など)に原本の再発行を依頼してください。
- 原本が間に合わない場合は、会社と相談の上で手続きの猶予や後日の提出で対応することが一般的です。会社は事情を確認して対応方法を案内します。
保管について
会社は受領した原本を定められた期間保管します。詳細な保管期間や扱いは会社の規程に従ってください。
以上が年末調整における原本提出の基本ルールです。必要に応じて発行元へ早めに依頼することをおすすめします。
電子交付と原本の関係
背景
2007年1月以降、従業員の同意があれば源泉徴収票を電子交付できます。会社は紙で渡す代わりにPDFなどで配布して、印刷や保存をしてもらう運用が増えました。
電子データと印刷物の扱い
電子交付されたデータを自分で印刷したものは、原則として「コピー」と見なされることが多いです。税務や公的手続きの現場では、発行者の真正性を確認しにくいためです。
確定申告での扱い
所得税の確定申告では、電子交付のPDFをそのまま添付したり、印刷したコピーで対応できる場合が多いです。税務署が電子データを受け付ける環境が整っているためです。
その他の公的手続き
ただし、金融機関の融資手続きや一部の公的機関では、発行者の押印や原本を求められる場合があります。必要かどうかは相手先に事前確認してください。
原本が必要な場合の対応
原本が必要な場合は、勤務先に原本交付や証明書の発行を依頼します。発行が難しい場合は、会社に「電子交付である旨の証明」を求めると対応してくれることがあります。
ポイント
- 電子交付は便利だが、印刷物は原本と異なる扱いになることを理解しておく。
- 手続き前に相手先へ原本の要否を必ず確認する。
- 不明点は勤務先の総務や税理士に相談する。


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