はじめに
本調査は、退職理由としての「引っ越し」や「同棲」に関する情報を分かりやすくまとめたものです。退職時に相手企業へ伝える表現や、履歴書・退職願・面接での説明の仕方、注意点やトラブル回避策まで網羅的に扱います。
調査の目的
- 引っ越しで退職を考える人が、企業に誠実かつ前向きに伝えられる方法を知ること。
- 同棲による引っ越しが採用側にどう受け取られるかを把握し、印象を悪くしない伝え方を示すこと。
対象読者
- 引っ越しを理由に退職を検討している方。
- 同棲や家庭の事情で転職・退職を迷っている方。
- 人事や面接官に誤解されない表現を知りたい方。
本章の読み方
以降の章で、履歴書への書き方、退職願の文例、面接での受け答え例、よくあるトラブルと対処法を具体的に説明します。必要な場面ですぐ使える例文も用意していますので、順にご覧ください。
引っ越しは正当な退職理由として認められるのか
概要
引っ越し(転居)は退職理由として一般的に認められます。生活拠点や通勤手段が大きく変わる場合、仕事を継続することが現実的でないと説明できます。
法的な考え方
労働基準法上、従業員は自己の意思で退職できます。会社が退職の理由を制限することは基本的にできません。そのため、転居はやむを得ない事情として受け止められやすいです。
企業側の受け止め方
採用担当者や上司は、通勤時間の増加や家族の都合を合理的理由と見なします。結婚や出産に伴う転居は家庭事情として「一身上の都合」に含まれるため、ネガティブに捉えられにくい傾向があります。たとえば通勤が片道90分から180分になる、育児のため近くに移るなどは理解を得やすいです。
実務上のポイント
- 退職予定日は明確に伝え、引継ぎ計画を用意してください。具体例:いつまでに業務を引き継ぐかを文書化する。
- 転居先が未確定でも「〇月に転居予定」と時期を示すと印象が良くなります。
- 会社の異動制度や在宅制度が利用できるか相談してみると選択肢が増えます。
注意点
虚偽の理由や説明の曖昧さは避けてください。短期間で転職を繰り返すと採用側の評価が下がることがあります。また、会社に残る方法(異動・在宅等)がある場合は先に確認するとトラブルを防げます。
履歴書への記載方法
概要
履歴書の退職理由欄には、具体的に書く方法と簡潔に書く方法があります。転居が理由なら明確に書くと、ネガティブな退職ではないことが伝わりやすくなります。採用担当者は簡潔さと誠実さを重視します。
記載の選択肢(例)
- 具体的に記載する
- 「転居のため退職」
- 「転居のため退社」
→ 転居が明確に理由であることを示せます。企業側が事情を理解しやすく、印象が良くなりやすいです。 - 一般的・簡潔に記載する
- 「一身上の都合により退職」
- 「家庭の事情により退職」
→ プライバシーを守りつつ簡潔にまとめられます。詳細は面接で説明できます。
書き方のポイント
- 正直に書く:嘘や誇張は避けます。採用後に齟齬があると信頼を損ないます。
- 簡潔に:欄が小さいので短くまとめます。面接で補足しましょう。
- 日付は正確に:退職年月は履歴書の他の項目と一致させます。
- 補足が必要なら面接で:転居の理由(配偶者の転勤など)を聞かれたら丁寧に説明します。
記入例テンプレート
- 2024年3月 退職 転居のため退職
- 2024年3月 退職 一身上の都合により退職
必要に応じて、履歴書では簡潔に記載して面接で詳しく説明するのが無難です。
同棲による引っ越しの扱い
同棲の引っ越しはどう扱われるか
同棲に伴う引っ越しは、事情によって扱いが変わります。配偶者や同居家族の転勤に伴う移動なら「転居」として正当な退職理由に該当しやすいです。一方、恋人との同棲開始など本人の意思による引っ越しは私的な理由と判断されやすく、企業によっては「やむを得ない事情」と認めない場合があります。
履歴書や退職理由の書き方
配偶者やパートナーの転勤など相手側の都合に伴う場合は、履歴書に「配偶者の転勤に伴う転居のため」など具体的に書けます。自分の意思での同棲の場合は、「生活環境の変更のため」や「家庭の事情により」といった表現にとどめると角が立ちません。正直さは大切ですが、詳しすぎる私的情報は避けましょう。
面接や退職時の説明ポイント
説明は短く明確にします。引っ越しの理由が相手側の事情なら、その点を簡潔に伝え、引継ぎや退職時期の調整に前向きであることを示すと印象が良くなります。本人の意思による場合は、責任感や業務の整理について具体策を用意して伝えてください。
注意点
企業は個人の引っ越しを「自己都合」と受け取ることがあります。再就職や社内評価に影響することもあるため、説明の仕方や時期は慎重に判断してください。
退職願の書き方
概要
転居を理由に退職する場合、書面で明確に意思と日付を伝えることが重要です。退職願は通常2~3段落でまとめ、宛先は直属の上司とします。本文には退職予定日、退職理由(転居によること)、引継ぎ計画、連絡先を含めます。
宛先・構成
- 宛先:直属の上司の氏名と役職
- 見出し:「退職願」など明確なタイトル
- 段落構成:1段落目に退職の意志と予定日、2段落目に転居による理由と簡潔な説明、3段落目に引継ぎ計画と感謝の言葉
必須記載項目
- 退職予定日(就業規則に沿って記載)
- 退職理由:『転居のため』と簡潔に記載
- 引継ぎ事項:現在の担当業務、進捗状況、引継ぎ先候補、引継ぎの予定スケジュール
- 連絡先(退職後に連絡が必要な場合)
引継ぎ計画の書き方(例)
- 担当プロジェクト名と現状(進捗率や残タスク)
- 引継ぎ資料の所在(フォルダ名、ファイル名)
- 引継ぎ先候補の氏名と理由
- 引継ぎスケジュール(引継ぎ会の予定日、マニュアル作成の期日)
- 退職日までの協力姿勢(研修や説明の実施を明記)
文例(正式)
○○部 部長 山田太郎 様
退職願
私こと、山田花子は、転居に伴い、20XX年YY月ZZ日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。現在担当しております「プロジェクトA」の資料は社内フォルダ「/Projects/A」に保存しており、引継ぎは佐藤一郎が担当予定です。引継ぎ会は20XX年YY月上旬に実施し、マニュアルを作成して引継ぎを完了させます。退職まで誠心誠意業務を遂行いたします。長年のご指導に深く感謝申し上げます。
20XX年MM月DD日
山田花子
連絡先:090-XXXX-XXXX
文例(簡潔)
○○課 課長 鈴木次郎 様
退職願
転居に伴い、20XX年YY月ZZ日をもって退職いたします。引継ぎは○○が対応し、必要資料は共有フォルダにあります。退職まで引継ぎと業務に尽力いたします。よろしくお願いいたします。
20XX年MM月DD日
氏名
連絡先:メールアドレス
面接での説明方法
説明の方針
面接で引っ越しを理由に退職を説明する際は、詳細度を自分で決めて構いません。会社側は事実と理由の両方を理解したいだけですから、通勤困難など客観的な事実を中心に伝えると納得されやすくなります。
具体的な言い方(例)
- 短めに伝えたいとき:「個人的な都合で引っ越すため、通勤が難しくなり退職しました。」
- 詳細を出しても良いとき:「パートナーの仕事の都合で転居するため、家庭を支えるため退職しました。」
- 客観性を出すとき:「転居後は通勤に片道2時間かかるため、継続が難しくなりました。」
追加で聞かれたときの対応
詳しい事情を知らせたくない場合は「プライベートな事情のため詳細は差し控えます」と丁寧に言って構いません。しかし相手が業務への影響を気にする場合は、通勤や勤務形態の変化が理由であることを再度説明してください。
話し方・態度のポイント
簡潔に、落ち着いた声で話します。元の職場の悪口は避け、前向きな転職理由(経験を活かしたい、長く働きたいなど)を添えると好印象です。したがって面接前に一文で説明できる練習をしておくと安心です。
避けるべき表現
- 感情的な批判や詳細すぎる家庭事情
- 「興味がない」「やめたかった」など否定的な言葉
これらは印象を悪くしますので控えてください。
注意点とトラブル回避
就業規則と退職期限を確認する
退職の意思があるときは、まず就業規則を確認してください。一般に民法上の申し出期限は2週間ですが、会社によっては1か月前やそれ以上を求めることがあります。規則が優先されるため、事前に確認して期限以内に申し出るようにしましょう。
緊急の引っ越しで期限内に出せない場合
突然の事情で期限内に退職願を出せないときは、すぐに上司や人事に事情を伝えてください。口頭で説明したうえで、可能な勤務可能期間(例:退職希望日まで〇日間勤務可)を明記した書面を提出すると、誤解を防げます。早めに連絡すれば対応の余地が生まれます。
転勤・引越し費用の確認
会社の指示による転勤なら、引越し費用や補助の有無を事前に確認してください。費用負担の範囲や精算の手続き、領収書の保管方法について具体的に尋ねると後でのトラブルを避けられます。
伝え方のポイント
感情的にならず、事実と希望日を明確に伝えてください。可能であれば代替案(引継ぎ期間、引継ぎ資料の作成など)を提示すると、会社側も対応しやすくなります。
よくあるトラブルと対処法
・退職日をめぐる争い:証拠となる書面やメールを残す。口頭だけで済ませない。
・費用負担の行き違い:書面で確認し、合意内容を保存する。
・引継ぎ不足でのトラブル:引継ぎ計画を作り、関係者に共有する。
早めの確認と記録を心がければ、引っ越しに伴う退職でもトラブルを最小限にできます。
「一身上の都合」との使い分け
概要
「一身上の都合により」は自己都合退職の標準的な表現です。結婚、育児、引っ越し、配偶者の転勤など個人の事情を広く含みます。プライバシーを守りたいときに便利な言い回しです。
使い分けの基本
- 具体的に書いても差し支えない場面
- 理由が業務に影響する場合や、採用側が事情を理解したほうが良いと判断できるときは具体的に書きます。例:「結婚を機に転居し通勤困難のため退職」や「配偶者の転勤に伴い転居するため」。
- 曖昧にしたいとき
- 家庭の事情や健康問題など詳しく伝えたくない場合は「一身上の都合により」と記載します。
履歴書・退職願での例文
- 履歴書: 「一身上の都合により退職」または「結婚に伴う転居のため退職」
- 退職願: 「一身上の都合により、退職いたします。退職希望日は○月○日です。」
面接や引継ぎでの説明のコツ
事情を話すときは簡潔に。相手が納得しやすい理由と影響を伝え、必要なら代替案(引継ぎ計画など)を示します。誠実さを保ちながら、過度に詳細を述べる必要はありません。
注意点
虚偽は避けてください。具体的な理由を書くことで誤解が減り、次の採用にも有利になることがありますが、個人情報に配慮する判断も重要です。
まとめ
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結論:引っ越しを理由に退職することは、家庭の事情や通勤困難など客観的な事情があれば正当性が認められ、履歴書にも明記して問題ありません。
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同棲など個人的意思の引っ越し:企業に「自己都合」と受け取られやすいため、通勤時間や定期代の増加など具体的な不便さを添えて説明してください。
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履歴書・退職願のポイント:理由は簡潔に。例:「引越しに伴う通勤困難のため退職」などと記載し、退職願では引継ぎ意向や退職時期を明示すると印象が良くなります。
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面接での説明:誠実に、事実を中心に話すと理解を得やすいです。引越し先の距離や勤務への影響、引継ぎ案を準備してください。
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注意点:無断退職や急な離職は避け、可能なら事前に相談して調整を図ること。必要に応じて住民票や転居通知の写しなどの客観資料を用意すると安心です。
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最後に:正直さと配慮が最も大切です。相手の立場を考えた説明と具体的な対応案で、円満な退職につなげましょう。


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