はじめに
目的と概要
本章では、退職日が月末かどうかで社会保険料の扱いが変わる点について、全体の見取り図を示します。ここでの「社会保険料」は健康保険・厚生年金などを指します。以降の章で具体的な決め方や違い、給与からの控除時期について詳しく説明します。
なぜ重要か
退職日により、会社と本人が保険料を負担する期間が変わります。たとえば月の途中で退職すると、その月の保険料が発生するかどうかや、資格喪失日の扱いで手続きや精算が変わります。誤解すると後で追加請求や還付の手続きが必要になる場合があります。
本書の読み方
次章では基本のルール、続いて月末退職とそれ以外の違い、最後に給与から控除されるタイミングの注意点を順に解説します。数字や例を交えて分かりやすく説明しますので、ご自身の退職時の確認に役立ててください。
基本ルール
1) 資格喪失日の決まり
社会保険の資格喪失日は、基本的に「退職日の翌日」で決まります。退職日が6月30日であれば資格喪失日は7月1日です。これは制度上の起算日で、以後の保険の有無や手続きの基準になります。
2) 保険料が発生する期間
保険料は「資格喪失日が属する月の前月分まで」発生します。言い換えると、資格喪失日の月が保険料の計算期間から除かれます。具体的な扱いは以下の例で分かりやすく説明します。
3) 具体例で確認
- 退職日が6月30日の場合:資格喪失日=7月1日→保険料は6月分まで発生します。
- 退職日が7月1日の場合:資格喪失日=7月2日→保険料は6月分まで発生します。
- 退職日が7月31日の場合:資格喪失日=8月1日→保険料は7月分まで発生します。
これらは「資格喪失日がどの月に含まれるか」を基準に、前月までが保険料の負担期間となるためです。
4) 注意点
- 給与天引きや会社が負担する保険料の調整は、会社ごとに処理方法が異なります。必ず退職前に会社の総務や人事に確認してください。
- 手続きのタイミングによっては、実際の控除や還付が翌月以降に反映されることがあります。給与明細で控除状況を確認してください。
末日退職とそれ以外の違い
資格喪失日の考え方
月の末日(例:7月31日)に退職すると、資格喪失日は翌日(8月1日)になります。社会保険はその月単位での扱いが多いため、退職月(この例では7月)分の保険料が発生します。会社は通常、退職月分の厚生年金・健康保険料を給与から控除します。
月末以外に退職した場合の扱い
例えば7月30日や7月15日で退職すると、資格喪失日は退職日の翌日でその月に属します。このため、原則として前月(6月)分までの保険料しか発生しません。退職月の保険料は基本的に発生せず、会社の負担も無くなります。
その後の手続きと注意点
退職後は健康保険や年金の加入先を自分で決めて手続きを行います。一般的には国民健康保険と国民年金への切替が必要です。給与明細で最終的な社会保険料の控除がどう扱われているかを必ず確認し、疑問があれば総務・人事に問い合わせてください。なお、会社の扶養や保険の適用にも影響しますので、期間のつながりを意識して手続きを進めてください。
具体例で確認
- 7月31日退職:資格喪失日8月1日 → 7月分の保険料が発生、給与から控除される。
- 7月30日退職:資格喪失日7月31日 → 6月分までの保険料のみ発生、7月分は発生しない。
疑問がある場合は、退職前に会社の担当者と確認すると安心です。
給与からの控除タイミングの注意
なぜ「最後の給与で2か月分」が起きるのか
多くの会社は、当月支払う給与から前月分の社会保険料(健康保険・厚生年金)を天引きします。支払のタイミングと保険負担の計算期間がずれるため、月末で退職すると最後の給与で「前月分+当月分」がまとめて差し引かれることがあります。具体的には、給与の締め日・支払日と保険の決定タイミングが重なることが原因です。
具体例(イメージ)
給与:月給30万円、社会保険料:月3万円、支払日:翌月25日、締め:月末
– 8月31日退職の場合、8月分の給与は9月25日支給になります。
– 会社の運用によっては、9月25日の支給時に7月分と8月分の保険料(合計6万円)をまとめて控除することがあります。
結果、手取りがいつもより1か月分少なくなることがある点に注意してください。
確認すべき3点(セットで見る)
1) 退職日(末日かどうか)
2) 次の職場での社会保険加入日(加入が早ければ二重払いを避けられる場合あり)
3) 給与の締め日・支払日(締め日によって最後の給与に含まれる期間が変わる)
これらをセットで確認すると、どの給与でどの期間の保険料が差し引かれるか見当がつきます。
対処法・実務的な注意
- まず人事・経理に「最後の給与の内訳」と保険料の控除タイミングを確認してください。控除明細を出してもらうと安心です。
- 退職日を調整できるなら、月中退職にすることで一度の給与控除で済ませられる場合があります。ただし就業規則に従う必要があります。
- 急な資金不足を避けるため、最後の給与が少なくなる可能性を見越して貯えを準備してください。
- 次の職場での加入日が分かれば、重複負担や未納の有無を確認しやすくなります。
早めに確認しておくと、手取り額の急変に慌てずに済みます。必要なら人事に控除の根拠を説明してもらいましょう。


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