はじめに
目的
この文書は、懲戒解雇を受けた場合でも会社が源泉徴収票を交付する義務があることを、やさしく丁寧に説明します。源泉徴収票の役割や交付時期、受け取れないときの対応、確定申告や転職への影響までを順に紹介します。
誰に向けた記事か
給与や退職金の税金について不安がある方、懲戒解雇を経験した方、あるいは人事や労務担当の方にも役立つ内容です。専門用語は必要最小限にとどめ、具体例を交えてわかりやすくします。
読み方のポイント
各章は独立して読めますが、順に読むと理解が深まります。まずは源泉徴収票の基本を押さし、その後に会社の義務や手続き、実際に受け取れない場合の対応を確認してください。書類の受け取り方や申告のタイミングがすぐに分かるようにまとめます。
懲戒解雇と源泉徴収票の基本
源泉徴収票とは
源泉徴収票は、その年に支払われた給与や賞与、退職金と、源泉所得税として差し引かれた金額を示す書類です。税金の計算や確定申告、次の職場での年末調整に使います。退職の理由(懲戒解雇かどうか)は、この書類の交付可否に影響しません。
懲戒解雇後の扱い
懲戒解雇でも、会社はその年に支払った給与や差し引いた税金について記録を残す必要があります。従って、源泉徴収票は原則として交付されます。懲戒という事実と、税務上の事務処理は別物と考えてください。
会社側の事務の一部として
懲戒解雇後の会社の事務は、離職票の手続きや健康保険・厚生年金の資格喪失処理と並んで源泉徴収票の交付が含まれます。年末調整の結果やその年の支払額をまとめて、従業員に渡すことが一般的です。
具体例
例えば、6月に懲戒解雇されたAさんは、1月から6月までの給与とその期間に差し引かれた源泉税が源泉徴収票に記載されます。退職理由の記載は通常ありませんから、書類自体はそのまま確定申告や次の会社での年末調整に使えます。
注意点(簡潔に)
交付されない場合は、まず会社に請求して記録(メールや書面)を残してください。対応については第4章で詳しく説明します。
会社の義務と交付時期
交付期限について
会社は、退職者から求められなくても、原則として翌年1月31日までに源泉徴収票を交付する義務があります。退職の時期にかかわらず、その年度に支払った給与等について証明するために発行します。
早期交付の重要性
転職先への提出や確定申告のため、できるだけ早く受け取りたいことが多いです。会社は社員から請求があれば速やかに交付すべきです。例えば、6月に退職して7月に再就職する場合は、早めに源泉徴収票があると手続きがスムーズになります。
懲戒解雇の場合の扱い
懲戒解雇だからといって源泉徴収票を渡さない扱いは認められません。他の退職と同様に交付義務があります。給与計算が未確定であれば計算後、速やかに交付してください。
交付方法と実務上の注意
手渡しや郵送で交付できます。電子交付は本人の同意が必要です。請求は書面やメールで記録を残すと後の確認が楽になります。交付が遅れる場合は理由を説明し、いつ交付できるかを明示して対応しましょう。
受け取れない場合の対応の方向性
初動の対応
まずは会社に書面で交付を請求してください。口頭だと記録が残りにくいので、メールや内容証明などで「源泉徴収票の交付を求める」と明確に伝えます。日付や担当者名を控えておくと後の証拠になります。
行政窓口への相談
会社が拒む場合、労働基準監督署や税務署に相談します。労基署は労働関係の対応、税務署は源泉徴収票が税法上必要かの確認や指導を行います。具体例:税務署が会社に交付を促す助言を出すことがあります。
専門家への相談
社労士や弁護士に相談する選択肢もあります。社労士は労働手続きや会社対応の助言、弁護士は書面作成や訴訟対応を行います。費用や解決までの流れを事前に確認してください。
退職所得(退職金等)の扱い
退職金や解雇予告手当がある場合は、別に「退職所得の源泉徴収票」が交付されます。これも会社が交付義務を負うため、同様に請求してください。
証拠の残し方と実務的な進め方
請求メール、会社からの回答、給与明細などを保存します。内容証明を使って催促し、それでも応じない場合は行政相談や専門家による文書送付を依頼すると実効性が高まります。適切な手続きを踏めば取得できる可能性が高いです。
第5章: 確定申告・転職への影響
源泉徴収票がないとどうなるか
源泉徴収票は年間の給与と源泉徴収税額を示します。これがないと、年末調整を受けられなかった年の所得や税額が分かりにくくなり、確定申告や次の勤務先での年末調整に支障が出るおそれがあります。たとえば、複数の会社を短期間で移った場合や懲戒解雇で書類が交付されない場合に問題が起きやすいです。
まず準備する書類
- 給与明細(12月分だけでなく年内分すべて)
- 離職票や雇用保険関係書類
- 銀行振込の給与受取記録
- 雇用契約書や出勤記録
これらで収入を再計算できます。
税務署での相談と手続き
源泉徴収票がどうしても入手できない場合は税務署に相談してください。税務署は支払明細や振込記録を基に所得を把握する方法を案内します。税務署の指示に従い、確定申告書に給与額を記入して提出します。
転職先での年末調整への影響
転職先は前職の源泉徴収票を基に年末調整を行います。前職からの書類がないと、転職先では年末調整が正確にできません。自分で確定申告を行えば調整できますので、早めに税務署に相談して手続きを進めましょう。
注意点と実務的なコツ
早めに前職へ交付を求めること、給与明細は捨てずに保管することが重要です。申告内容に誤りがあると追徴税や延滞税が発生する可能性があるため、税務署の指示に従って正確に申告してください。


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