はじめに
目的
この記事は、会社が源泉徴収票や関連書類をどのように保管すべきかをわかりやすく解説します。法的な保存義務だけでなく、税務調査や従業員からの再発行依頼に備えた実務的な目安も示します。
対象読者
人事・総務担当者、経理担当者、または中小企業の経営者など、源泉徴収票の取り扱いに関わる方を想定しています。専門用語は最小限にし、具体例を交えて説明します。
本記事で扱う内容
- 源泉徴収票そのものに保管義務があるか
- 保管期間の目安と関係法令ごとの違い
- 税務調査や再発行対応のための実務的な保存期間
- 関連する書類で実際に保存が必要なもの
- 効率的な保管・管理の方法
読み方のポイント
条文をそのまま紹介するのではなく、実務で役立つ判断基準を示します。具体的なケースに合わせて、後続章で詳しく説明します。
会社に「源泉徴収票」の保管義務はあるのか?
法的な位置づけ
源泉徴収票の原本について、会社に明確な法的保管義務や保存期間は定められていません。源泉徴収票は原則として従業員に交付され、税務署や市区町村へ提出・照会されることを前提とした書類です。そのため会社に原本が残らないケースもあります。
実務上の扱い(推奨事項)
多くの専門家や会計事務所は、源泉徴収票の控え(写し)を7年間保存することを強く勧めています。理由は次のとおりです。税務調査や年末調整の訂正、退職後の再発行依頼、住民税や社会保険の照会対応などで、過去の記録が必要になることがあるからです。
保管方法のポイント
- 原本は従業員に交付し、会社は写しを保管するのが一般的です。紙でも電子でも保管できます。電子保存を選ぶ場合は、別途要件があるため確認してください。
- 年末調整書類と一緒に年度ごとにまとめて保管すると探しやすくなります。
よくある疑問
Q: 7年より短くても大丈夫ですか?
A: 法律での明示はないものの、実務上は7年間が目安です。万一に備えて長めに保管することをおすすめします。
なぜ源泉徴収票の控えを保管しておく必要があるのか
税務調査での証拠になる
源泉徴収票は、給与支給額や源泉徴収税額、各種控除を示す一次的な証拠です。税務署が確認に来たとき、口頭や合意だけではなく書類で支払実態を示せると誤解を避けられます。具体例として、残業代や手当の扱いが問題になった際に、支給額の根拠として役立ちます。
関連書類の保存義務との整合性
源泉徴収簿・年末調整関係書類は原則7年間の保存義務があります。そのため、源泉徴収票の控えも同じ期間残すのが合理的です。制度上の保存期間と実務の整合性を保つことで、調査時に不足が起きにくくなります。
従業員からの再発行依頼への対応
退職後に再発行を求められることは珍しくありません。退職直後でなくても、住宅ローンや確定申告のために過去の源泉徴収票が必要になる例が多くあります。控えがあれば速やかに対応できます。
還付申告や過去分の確認に備える
所得税の還付申告は原則として翌年から5年間可能です。過去の過払いが判明した場合や修正申告の必要が出た場合に、控えがあると手続きがスムーズになります。
保管方法と注意点
紙はファイル整理、電子化する場合は高解像度PDFとバックアップを推奨します。個人情報を含むためアクセス権限を設定し、保存期間経過後は適切に裁断・消去してください。
実務上は「最低7年間」保管する運用を推奨します。これで税務対応、従業員対応、還付請求に備えられます。
源泉徴収票に関連する「本当に保管義務がある書類」
1. 源泉徴収簿(保存期間:7年)
法人税法施行規則や所得税法施行規則により、源泉徴収簿は7年間の保存義務があります。支払金額や税額を記録したものは証拠書類として扱われます。
2. 賃金台帳との関係(労働基準法)
源泉徴収簿が賃金台帳を兼ねる場合、労働基準法上の保存期間も考慮します。原則5年ですが、経過措置で3年となる場合もあります。実務では最長期間(通常は7年)で保管するのが安全です。
3. 年末調整の申告書類(保存期間:7年)
給与所得者の扶養控除等(給与所得者の扶養控除等申告書や保険料証明など)は所得税法上7年間の保存義務があります。通常は提出期限の翌年1月11日からカウントして7年間保存します。
4. 会計帳簿・決算書類(原則7年)
会計帳簿や決算関係書類も原則として7年間の保存が必要です。源泉徴収に関する記録はこれらと整合させて管理してください。
5. その他(支払調書・給与支払報告書など)
支払調書や各自治体への給与支払報告書も関係書類に含まれます。保存期間は書類の性質で異なりますが、税務調査を想定すると7年を目安にするのが実務的です。
実務上のポイント
- 保存開始日を明確にする(例:申告書は翌年1月11日からカウント)。
- 電子保存を活用すれば検索や共有が楽になります。ただし、電子帳簿の要件を満たしてください。
- 退職者分や法定調書は区分して保管し、税務調査に備えて取り出しやすく整理しましょう。


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