就業規則を守らない場合のリスクと正しい対処法とは

目次

はじめに

本ドキュメントは「就業規則 守らない」というキーワードで検索する方々の疑問を整理し、分かりやすく解説することを目的としています。主に次の点を扱います。

  • 従業員が守らないと何が問題になるのか(具体例を交えて)
  • 会社が取る懲戒処分の種類と、違反の目安
  • 処分を行う際の正しい手続き
  • 減給や出勤停止など金銭・身分に関わる処分の法的な制約

読者は従業員側の不安を抱える方、管理職や人事担当者など幅広い立場を想定しています。例えば、度重なる遅刻、私用での長時間ネット利用、社外への機密情報の投稿などを具体例として取り上げます。実務に役立つように、判例や法律用語は必要最小限に抑え、実際の対応イメージを重視して説明します。

本稿は一般的な解説であり、個別事案の法的判断には専門家の助言が必要です。疑問が残る場合は労働相談窓口や弁護士にご相談ください。

就業規則を守らないと「何違反」になるのか?

概要

就業規則違反とは、会社が定めたルール(服務規律や秘密保持、ハラスメント禁止、兼業規定など)を破る行為の総称です。労働契約は就業規則の内容も含むと考えられるため、違反は労働契約違反にもつながります。

主な違反の種類と具体例

  • 出勤・勤怠の違反:無断欠勤、常習的な遅刻・早退、不正打刻。
  • 情報管理の違反:顧客情報や設計図の無断持ち出し、SNSでの機密漏えい。
  • 経費・金銭の違反:領収書の改ざん、私的流用。
  • 業務命令違反:正当な理由なく指示を拒む、無断で業務を放棄。
  • 兼業・利益相反:許可なく副業を行い会社業務に影響を与える。
  • ハラスメント:セクハラやパワハラに該当する言動。
  • 過失・注意義務違反:重大なミスで会社に損害を与える行為。

法的な位置づけと注意点

就業規則違反は懲戒事由になり得ますが、処分には合理的な理由と手続きが必要です。犯罪行為(横領など)は刑事責任にもなります。会社は違反の事実を調査し、説明の機会を与えることが求められます。

予防のためにできること

就業規則をよく読み、不明点は人事や上司に確認してください。記録を残し、許可が必要な行為は事前に書面で申請すると安心です。

会社が定める「懲戒処分」の種類と違反内容の目安

懲戒処分の主な種類

  • 厳重注意:口頭または書面で強く注意する処分。軽度の遅刻や一度の業務ミスに適用されます(例:会議に15分遅刻)。
  • けん責・戒告:書面での注意。態度改善を求める段階です(例:注意を受けても改善しない遅刻)。
  • 始末書提出:事実の確認と反省を文書で残す処分。再発防止の証拠にもなります(例:報告義務違反)。
  • 減給:給与の一部を一定期間減額する処分。無断欠勤の常習などで用いられます(例:度重なる無断欠勤)。
  • 出勤停止:一定期間の出勤を禁止し給与を支給しない処分。重大な規律違反に対して使われます(例:重大な遅刻や業務放棄)。
  • 降格:職位や職務を下げる処分。管理責任を果たさない場合などに適用されます(例:管理者の重大な監督不全)。
  • 諭旨解雇:懲戒を理由に自己都合退職を促す解雇に近い処分。改善の見込みが乏しい場合に検討されます。
  • 懲戒解雇:最も重い処分で即時解雇となります。犯罪行為や重大な情報漏えいなどが該当します(例:横領、重大な機密漏えい)。

違反行為と処分の目安

  • 軽い違反:一回限りの遅刻や小さなミス→厳重注意や戒告。
  • 継続的・反復する違反:繰り返す無断欠勤や業務放棄→減給や出勤停止、場合によっては降格。
  • 悪質な対人行為:セクハラ・パワハラなどで被害が深刻→減給から諭旨解雇まで、被害の度合いで重くなる。
  • 重大な法令違反・犯罪:横領、詐欺、機密情報の漏えい→懲戒解雇が見込まれます。

適正な運用のポイント

  • 就業規則へ明記:処分の種類と基準を就業規則に書いておく必要があります。
  • バランスを重視:行為の悪質性や頻度、被害の程度に応じて処分を決めます。重すぎる処分は無効となる可能性があります。
  • 証拠と手続き:事実確認や本人の弁明の機会を設け、記録を残すことが重要です。

会社が従業員を処分するときの「正しい手順」

1. 事実調査と証拠収集

まず事実を正確に把握します。具体的にはメールやチャットの履歴、PCや入退室ログ、監視映像、当事者や目撃者の聞き取りなどを集めます。証拠は日時や出所を明らかにして保全してください。推測や噂で判断してはいけません。

2. 本人への弁明機会(弁明聴取)

本人に違反の疑いと調査結果の概要を伝え、弁明の機会を与えます。通知は書面か記録が残る方法で行い、十分な準備時間を確保します。本人が説明すること、代理人や同席者の有無も事前に伝えます。

3. 妥当性の検討

弁明内容と証拠を照らし合わせ、就業規則に照準して処分の必要性と程度を検討します。過去の類似事案との均衡や本人の事情(反省の有無、勤務歴など)も考慮します。客観性を保つため複数人で判断するのが望ましいです。

4. 処分の決定と通知

処分を決めたら、理由・根拠・処分内容・発効日を文書で通知します。就業規則の該当条項を明示してください。重い処分の場合は特に丁寧に理由を書き、証拠の要点を示すとよいです。

5. 実施後の対応

処分の記録を適切に保管し、本人に再発防止策や相談窓口を案内します。解雇や減給など金銭・身分に影響する処分は慎重に行い、必要なら外部の労務・法律の専門家に相談してください。

減給・出勤停止など「お金・身分」に関わる処分の法律的な制限

減給処分(労働基準法91条の上限)

減給には法的な上限があります。労働基準法91条は、1回の減給額は平均賃金1日分の半額まで、1賃金支払期における総額は賃金総額の10分の1までと定めています。これを超える減給は無効となり、会社は差額を支払う責任を負います。

具体的には、就業規則で減給の基準を定める必要があります。平均賃金は法の定める方法で算定するため、会社は計算の根拠を明確にしておくことが大切です。

計算の簡単な例

月給30万円の社員で、1日分の平均賃金が1万円と算定された場合:
– 1回の減給の上限は1万円×1/2=5,000円
– 1支払期(通常1か月)での減給合計は30万円×1/10=30,000円
この上限を超える減額は無効になります。

出勤停止の扱い

出勤停止(懲戒による出勤停止)は認められますが、賃金の扱いが問題になります。賃金は労働の対価なので、無断で長期間にわたり賃金を差し引くと違法とされるおそれがあります。出勤停止を実施する場合は、就業規則に明確な規定を置き、処分の目的と期間が合理的であることを説明できるようにしてください。

手続き上の注意点

減給や出勤停止は労働者の生活に直接影響します。処分を行う際は、事実関係の調査、労働者への弁明の機会の付与、処分理由の書面記録、過去の処分との整合性を確認するなど、手続きを丁寧に行ってください。手続きが不十分だと、処分自体が無効になる可能性があります。

実務上の心得

  • 就業規則に具体的な基準を定め、従業員に周知する
  • 減給額や出勤停止期間の根拠を記録しておく
  • 上限を超えた減給は速やかに是正する
  • 不服が出た場合は労使で対話を図り、必要なら労働相談機関を利用する

以上を踏まえ、減給や出勤停止は慎重に運用してください。

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