懲戒解雇と予告手当除外の認定条件をわかりやすく解説

目次

はじめに

目的

本章では、本記事全体の狙いと読者の想定をわかりやすく示します。懲戒解雇と解雇予告手当の関係、そして「解雇予告除外認定」という制度の存在を最初に整理します。

本記事の中心点

懲戒解雇であっても、原則として解雇予告またはその手当の支払いが必要である点を明確にします。例外的に労働基準監督署の除外認定を受ければ予告手当が不要になる場合があることを示し、その基準や手続き、企業側・労働者側のリスクについて後章で詳しく解説します。

想定読者

  • 企業の人事・総務担当者や経営者
  • 懲戒解雇を通告された労働者
    具体例を交え、実務で役立つ視点を重視して説明します。

使い方

第2章で基本ルールを確認し、第3〜6章で除外事由や手続き、事例・リスク対応を順にご覧ください。例えば、従業員の横領や重大な就業規則違反があった場合、懲戒解雇に当たるか、解雇予告手当が必要かどうかを判断する際の参考になります。

懲戒解雇と解雇予告手当の原則ルール

法律の定め

労働基準法20条は、使用者が労働者を解雇する際、少なくとも30日前に予告するか、予告がない場合は30日分以上の平均賃金を支払うことを求めます。この規定は懲戒解雇にも適用されます。

適用範囲

懲戒解雇だからといって自動的に予告や手当が不要になるわけではありません。懲戒であっても原則は同じで、予告か手当のいずれかを使用者が負担します。

趣旨

制度の目的は労働者の生活保障です。解雇後に仕事を探す時間や生活費の確保を行うための猶予や資金を確保する点にあります。

支払いの基本

解雇予告手当は通常、直近の賃金を基に算定した1日分の平均賃金を30日分支払います。例として、月給が30万円の方ならおよそ30万円が目安になります。正確な計算方法は個別の賃金構成で変わります。

事業主の義務と注意点

使用者は予告の有無を明確にし、手当の支払いを行う責任があります。別の扱い(たとえば即時解雇の扱い)を主張する場合は、その理由が法的に認められるか確認が必要です。例外や除外事由は次章で説明します。

「予告手当除外」とは何か:除外事由の基本

概要

労働基準法20条1項ただし書は、一定の場合に解雇予告と解雇予告手当の適用を除外できると定めます。除外される代表的な事情を「除外事由」と呼びます。典型は二つです。

1.やむを得ない事由(事業継続不能)

自然災害や火災、突発的な設備故障などで事業の継続が当面不可能になった場合です。例えば大地震で工場が稼働不能になり即時休業を余儀なくされるとき、事業主は予告手当を支払わずに解雇できる場合があります。

2.労働者の責に帰すべき事由

労働者側の重大な過失や故意によって直ちに雇用を続けられない場合が該当します。具体例は業務上の横領、長期にわたる無断欠勤、重大な安全違反などです。ただし懲戒手続きや事情の調査を尽くす必要があります。

除外認定の実務的意味

裁判例・行政運用では除外事由は限定的に解釈されます。また労働基準監督署の「除外認定」を受けると解雇予告・予告手当の支払いが不要になります。認定がない場合や判断が不明確な場合は、事業主に支払い義務が残るリスクがあります。

留意点

除外事由に当たるかは個別具体的に判断します。事実関係の記録や証拠を整え、必要に応じて監督署に相談することをおすすめします。

懲戒解雇は「労働者の責に帰すべき事由」に当たり得る

意味と位置づけ

懲戒解雇は、最も重い懲戒処分です。業務上の背信行為や重大な非違行為があるとき、使用者は労働契約を即時に終了させます。これは「労働者の責に帰すべき事由」に該当する場合が多く、解雇予告や予告手当の支払いが不要となる可能性があります。

判例の考え方

判例は、単なる軽微なミスと区別し、背信性や悪質性の高さを重視します。例えば、顧客情報の横流しや業務上の重大な裏切り行為が認められれば、予告手当の除外が認められることがあります。

具体例

・会社の金銭を横領した場合
・重要書類を偽造した場合
・重大なセクハラや暴力行為があった場合
これらは典型的に責に帰すべき事由と判断されやすいです。

手続き上の注意点

事実関係の確認、証拠の保存、本人への弁明機会の付与が重要です。使用者は手続きを丁寧に行わないと、不当解雇と判断される危険があります。

労働者の対応

懲戒解雇を受けた場合は、事実関係の開示を求め、必要であれば労働審判や訴訟で争うことができます。証拠や経緯を整理して対応してください。

懲戒解雇でも「解雇予告手当を支払わなければならない」のが原則

原則の説明

労働基準法20条は解雇の種類を区別しません。懲戒解雇であっても、通常の解雇と同じく解雇予告または解雇予告手当の規定が適用されます。懲戒だから自動的に予告義務が消えるわけではありません。

即時解雇(即時懲戒)の扱い

即時に出勤停止や解雇を行う場合、事前に所轄の労働基準監督署から「解雇予告除外認定」を受けていることが前提です。認定があると30日分の予告手当は不要です。

認定がない場合の義務

認定を受けずに即時解雇したときは、雇用主は30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません。例えば日給3万円の労働者なら最低でも90,000円を支払います。

実務上の注意点

懲戒処分を検討する際は、証拠の保存と監督署との相談を先に行ってください。労働者側は不当解雇と感じたら監督署や弁護士に相談することをおすすめします。

「解雇予告除外認定」とは何か(制度の位置づけ)

制度の趣旨

解雇予告除外認定は、使用者が解雇予告や解雇予告手当の支払いを省略できるようにするため、所轄の労働基準監督署長の認定を受ける手続きです。重大な責任が労働者側にある場合に即時解雇を認め、業務の安全や適正な労働秩序の維持を図ります。

対象となる事由と位置づけ

懲戒解雇に相当するような窃盗・暴力・重大な背信行為など、労働者の責めに帰すべき重大な事由がある場合に限られます。認定は労働基準法上の例外処理であり、通常の解雇ルールを超える特別な手続きとして位置づけられます。

申請手続きの流れ

使用者が事実関係と理由を記載した申請書類を労働基準監督署に提出します。署は提出書類と事情を審査し、必要に応じて事情聴取や追加資料を求めます。認定が下りれば解雇予告や予告手当の支払い義務は免除されます。

審査のポイント

労働基準監督署は、行為の重大性、反省の有無、再発防止措置の有無、証拠の確実性などを厳格に確認します。単なる懲戒の名目だけでは認定されにくい点に注意してください。

効果と実務上の注意点

認定を得ると使用者は即時解雇できますが、認定がないまま即時解雇すると解雇予告手当の支払い義務が残ります。労働審判や裁判で争われることもあるため、事実関係の記録や適正な手続きが重要です。

労働者・使用者それぞれの対応

使用者は証拠収集や説明責任を丁寧に行い、必要なら労務や弁護士に相談してください。労働者は認定前でも不利益な扱いを受けた場合は監督署に相談し、状況に応じて異議申し立てや法的手段を検討してください。

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