はじめに
「懲戒解雇になったら失業保険はどうなるの?」という不安を抱えていませんか?本記事は、懲戒解雇を受けた場合の雇用保険(基本手当)の受給について、わかりやすく解説します。
懲戒解雇でも失業保険を受けられる場合がありますが、給付開始の時期や手続きの進め方、自己都合退職や会社都合退職との違い、被保険者期間の要件などで注意点が出てきます。本章では記事の目的と全体の流れを示し、以降の章で順を追って詳しく説明します。
この記事で学べること(簡単な一覧)
– 懲戒解雇でも受給できるかどうかの基本
– 給付が始まるタイミングと手続きの流れ
– 自己都合・会社都合との違いと影響
– 被保険者期間や必要な条件の確認方法
まずは落ち着いて、順を追って確認していきましょう。次章から具体的に説明します。
懲戒解雇でも失業保険は受給できる
概要
懲戒解雇された場合でも、失業保険(雇用保険の基本手当)は原則として受給できます。懲戒解雇とは、企業が就業規則に照らして重大な規律違反などを理由に解雇することを指します。ただし、懲戒解雇の中でも特に悪質な事案で「重責解雇」に該当する場合は、給付開始時期や必要な被保険者期間などの条件がより厳しくなります。
受給の可否について
原則として、離職の理由が懲戒解雇であっても基本手当の対象になります。支給の有無や給付開始のタイミングは、ハローワーク(公共職業安定所)が離職理由を確認して判断します。ここで「重責解雇」と判定されると、通常より給付が遅れる、または要件が増えることがあります。
具体例(イメージ)
- 懲戒解雇の例:横領や重大なセクハラ、故意の業務妨害など(企業ごとの判断もある)
- 軽度の規律違反による解雇でも、基本手当は受給できる場合が多いです。
ハローワークでの手続き(簡単)
離職票を受け取ったら、できるだけ早くハローワークで求職の申し込みをしてください。離職票や身分証明書を持参するとスムーズです。窓口で離職理由を説明し、給付の可否や手続きの流れを確認しましょう。
注意点
懲戒解雇だからといって自動的に受給できないわけではありません。まずはハローワークで確認を行い、必要書類を揃えて手続きを進めてください。
失業保険の給付開始時期 ― 懲戒解雇の場合
基本ルール
失業保険(雇用保険)の給付開始には、まず共通の「待機期間」7日間があります。この7日間は原則として給付が出ません。ここからが懲戒解雇の場合の分岐点です。
重責解雇の場合
重責解雇に当たると、待機期間7日間の後にさらに「給付制限期間」3か月がつきます。つまり、解雇日の翌日から数えて7日間の待機を経て、さらに3か月は給付が受けられません。給付はその制限期間が終わった翌日から開始します。
それ以外の懲戒解雇の場合
重大な責任に該当しない懲戒解雇では、待機期間7日間を経ればすぐに受給可能です。追加の給付制限はありません。
具体例(イメージ)
- 解雇日が4月1日の場合
- 待機期間:4月2日〜4月8日(7日間)
- 重責解雇:給付制限4月9日〜7月8日(3か月)→給付は7月9日から開始
- それ以外:給付は4月9日から開始
注意点
給付開始の正確な日付はハローワークでの手続き状況や書類受領日で変わることがあります。手続きは早めに行い、疑問点はハローワークで確認してください。
懲戒解雇時の失業保険手続き
手続きの概要
失業保険を受けるには、まずハローワークで求職の申し込みをします。会社から受け取る離職票が必要です。離職票が届いたら速やかに申請に行きましょう。
必要書類(主なもの)
- 離職票(1・2)
- 雇用保険被保険者証
- 印鑑(認印で可)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)
- 預金通帳(振込先確認用)
- 求められれば給与明細や雇用契約書
申し込み後の流れ
- ハローワークで求職申し込みを行う。
- 申込みから2〜3週間で雇用保険の説明会(オリエンテーション)案内が届く。説明会で受給手続きや求職活動の方法を説明される。
- 失業認定は原則4週間に1回。認定日に失業認定申告書を提出し、求職活動の実績を示す。
- 認定後、通常5〜7日程度で給付金が登録口座に振り込まれる。
よくある注意点
- 離職票が届かない場合はまず会社に請求してください。届かないままならハローワークに相談すると手続きを進められる場合があります。
- 懲戒解雇であっても給付対象となることが多いです。説明会で自分のケースに応じた扱いを必ず確認してください。
- 振込日は銀行の休業日や処理の関係で前後します。認定や書類不備があると支給が遅れるので、案内に従って書類を正確に提出しましょう。
自己都合・会社都合退職との違い
概要
失業保険の受給開始には「7日間の待機期間」が共通しますが、その後の扱いが退職理由で変わります。自己都合退職は給付開始に制限がつくことが多く、会社都合退職や特定理由離職者は早く受給できます。
自己都合退職の場合(一般)
- 退職後まず7日間の待機があります。
- その後、通常は給付制限(2~3か月)が付きます。2020年10月以降は原則2か月に短縮されました。
- 例:退職日から7日待ち、さらに2か月の制限期間を経て、手続きを終えれば初回給付は概ね3か月後になります。
会社都合退職・特定理由離職者の場合
- 7日間の待機後、給付制限は基本的にありません。
- そのため待機期間を過ぎて手続きすれば、すぐに受給開始となり、自己都合より受給開始は早くなります。
重責解雇(厳格な懲戒解雇に近い扱い)の場合
- 重責解雇は扱いが厳しく、自己都合と同様に3か月の給付制限が付くことがあります。
- 例:7日待機+3か月制限で、初回給付はおおむね4か月後になります。
注意点
- 実際の開始時期は手続きや個別事情で変わります。最寄りのハローワークで必ず確認してください。
懲戒解雇における被保険者期間の要件
被保険者期間とは
被保険者期間とは、雇用保険に加入していた期間の合計を指します。基本的に雇用されていて保険料を納めていた月が対象です。
要件の違い(重責解雇とそれ以外)
- 重責解雇の場合:離職前2年間のうち、被保険者期間が通算で12ヶ月以上必要です。
- その他の懲戒解雇:離職前1年間のうち、被保険者期間が通算で6ヶ月以上必要です。
通算の数え方(具体例)
- 例1(重責解雇):2025年9月に離職した場合、2023年10月〜2025年9月の間で保険加入していた月を合計します。12ヶ月以上あれば要件を満たします。
- 例2(一般の懲戒解雇):2025年9月に離職した場合、2024年10月〜2025年9月の間で合計6ヶ月以上あればよいです。
どの期間が含まれるか
有給のままで休職していた期間や通常の勤務期間は含まれます。無給の長期休職や保険未加入の期間は原則含まれません。複数回に分かれた雇用でも、対象期間内の月数を合計して判定します。
確認方法と対応
離職票や給与明細で在籍期間を確認してください。不明な点はハローワークで雇用保険記録を照会してもらえます。要件に満たない場合は給付が受けられないことがあるため、早めに相談してください。
まとめと注意点
これまでの内容をふまえて、懲戒解雇と失業保険についての要点と注意点をわかりやすくまとめます。
要点
- 懲戒解雇でも原則として失業保険は受給できますが、給付開始時期や制限の扱いが一般退職と異なる点があります。例:離職理由によっては給付開始が遅れることがあります。
- 受給を受けるには離職後できるだけ早くハローワークで手続きを行ってください。手続きが遅れると不利になります。
- 離職票の「離職理由」欄が重要です。そこがどう記載されるかで扱いが変わる場合があります。
手続きでの注意点
- ハローワークに持参する主な書類:離職票、雇用保険被保険者番号のわかるもの、本人確認書類、印鑑。事前に電話で確認すると安心です。
- 会社側の記載に疑問がある場合は、まずハローワークで事情を説明してください。必要なら労働相談窓口や弁護士に相談することも検討してください。
まずは離職票をよく確認し、速やかにハローワークへ行くことをおすすめします。
補足:重責解雇とは?
意味と位置付け
「重責解雇」という言葉は法律上で厳密に定義されていません。一般的には、会社の秩序や業務運営に重大な影響を与える行為を理由に行われる、特に重い処分としての懲戒解雇を指します。簡単に言えば、通常の懲戒解雇よりも重大と見なされるケースが該当します。
具体例
- 横領や詐欺などの金銭犯罪
- 暴力行為やハラスメントで職場の安全を損なった場合
- 業務上の重大な情報漏えい
- 業務命令の重大な違反を繰り返した場合
これらはあくまで例です。事案の程度や背景によって判断は変わります。
失業保険への影響
重責解雇であっても、基本的には失業保険の受給対象になります。受給開始時期や給付額は一般の懲戒解雇と同様の取り扱いとなることが多いです。ただし、ハローワークの判断で給付制限がつく場合があります。
ハローワークの判断ポイント
ハローワークは事実関係や就業規則、懲戒手続きの適正などを確認して最終判断を行います。解雇理由が争われる場合は、解雇の経緯や証拠を整理して窓口で説明できるようにしておくと安心です。
ご不明な点があれば、ハローワークや労働相談窓口に相談することをおすすめします。
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