はじめに
本資料の目的
本資料は、中途採用(転職)時に必要となる源泉徴収票の取り扱いと年末調整について、わかりやすく整理したガイドです。初めて手続きする方や、担当者として社内対応する方にも役立つように説明します。
対象と読者のメリット
- 転職者:転職先で何を提出すれば良いかが分かります。例:前職の源泉徴収票をいつまでに出すか。
- 採用・総務担当者:提出の目安や不備時の対応方法を把握できます。
本資料で扱う主な内容
- 源泉徴収票が必要な理由と法的背景の要点
- 提出タイミングと具体的な手続きの流れ
- 提出できない場合の代替手段と注意点
- トラブルを防ぐ実務的なポイント
- 源泉徴収票の記入例や年末調整の流れ
読み方のポイント
章ごとに手続きの順序で解説します。まず第2章で必要性を理解し、第3章以降で実務と対応を身につけてください。具体例を豊富に示すので、自分のケースに当てはめて読み進めてください。
以降の章では、実際の提出方法やよくある質問にも触れていきます。ご不明点があれば、後の章で確認してください。
中途採用時に源泉徴収票が必要な理由
なぜ必要なのか
転職で年の途中に入社した場合、年末調整は原則として現職の会社が行います。そのため、前職での給与や既に差し引かれた税金の記録が必要になります。源泉徴収票は、前職で受け取った給与や源泉徴収された所得税、社会保険料などが一枚にまとまった書類です。これを現職の給与と合算することで、正確な年間所得と税額を算出できます。
源泉徴収票に書かれている主な項目
- 支払金額:前職で受け取った総支給額です。具体的な金額で把握できます。
- 源泉徴収税額:前職で既に差し引かれた所得税です。過不足の判定に使います。
- 社会保険料等の金額:健康保険や厚生年金などで控除された額です。
- 扶養親族の情報など:控除に関わる情報が記載される場合があります。
源泉徴収票がないとどうなるか
前職の源泉徴収票がないと、現職は正しい年末調整を行えません。その結果、税金を多く支払ってしまった場合は還付を受けるために確定申告が必要になります。逆に税金が不足していると追加で納付する可能性があります。ですから、転職時は源泉徴収票を早めに用意することが大切です。
具体例(簡単に)
前職の年間給与が300万円で、源泉徴収税額が5万円、社会保険料が15万円だったとします。現職での年収とこれらを合算して計算することで、最終的な税額が決まります。源泉徴収票に基づいて計算するため、正確な税額が反映されます。
源泉徴収票の提出タイミングと手続き
受け取り時期
退職した場合、前職の会社は原則として退職後1カ月以内に源泉徴収票を交付する義務があります。受け取ったら速やかに保管し、新しい職場へ提出してください。年末に前職がまとめて発行することもあり、その場合は届き次第提出すれば問題ありません。
入社時に必要な書類
入社時は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と前職の源泉徴収票を提出します。これらをもとに人事や経理が年末調整の計算を行います。源泉徴収票がないと正しい控除が反映されないことがあります。
提出方法と具体例
会社によっては原本提出を求めますが、スキャンしてメールで提出してよい場合もあります。例:ファイル名は「氏名_源泉徴収票.pdf」とし、メール本文に旧勤務先名と在籍期間(例:1月〜5月)を添えるとスムーズです。
期限を過ぎたときの対応
受け取りが遅れる、または紛失した場合は前職に再発行を依頼してください。もし年末調整の期限に間に合わないときは、自分で確定申告を行う必要が出ることがあります。人事や経理に早めに相談しましょう。
源泉徴収票が提出できない場合の対応
原因別の初動対応
源泉徴収票が用意できない理由は主に「紛失」「前職が倒産・連絡取れない」「発行が遅れている」の三つです。まずは本人が前職に連絡し、再発行を頼みましょう。再発行の依頼は電話だけでなく、メールや書面で行うと証拠が残り安心です。
前職へ再発行を依頼する方法
社名・部署・担当者名がわかれば、給与支払期間や氏名を伝えて再発行を依頼します。返信が遅れる場合は「再発行依頼の証拠」を保存してください(メールの履歴、発送控えなど)。
税務署に相談する
前職に連絡できない、倒産で書類が出ない場合は最寄りの税務署に相談します。税務署は事情を聞いたうえで、給与明細や銀行振込の記録を使って対応方法を案内してくれます。
代替資料として使えるもの
給与明細、振込記録、雇用契約書、源泉徴収されたことが分かる通帳の入金履歴などが有力です。これらを集めておくと、確定申告がスムーズになります。
確定申告をする場合の流れと注意点
源泉徴収票が間に合わないと年末調整ができず、本人が確定申告で所得・源泉税額を申告します。給与の合計と源泉徴収された税額を、代替資料で確認して記入してください。申告期限や必要書類は税務署で確認し、必要なら税理士に相談すると安心です。
トラブル防止のポイントと会社側の対応
早めの回収と明確な案内
入社後はできるだけ早く(目安:1〜2週間以内)前職の源泉徴収票を提出してもらいます。書類の提出期限や提出先、問い合わせ窓口を明記した案内文をメールや紙で配布してください。例:入社手続き時に「源泉徴収票の提出が必要です。○月○日までに人事宛に提出してください」と伝えます。
提出が遅れる・提出不可の場合の対応
前職で発行が遅れる場合は、従業員に再発行を依頼する手順を提示します。再発行が間に合わない場合は、本人の申告内容を確認のうえで仮計算を行い、後日確定処理する旨を伝えます。証拠となるメールや申請書の写しを保存してください。
社内の対応フローとチェックリスト
給与担当者は以下を標準化します:
– 提出物の受領日を記録
– 欠損書類の督促テンプレートを準備
– 年末調整で必要な項目をチェック(前職分の給与額・源泉徴収税額など)
この流れがあるとミスや問い合わせ対応が早くなります。
外部委託のメリットと注意点
記帳や給与計算、年末調整を専門業者に委託するとミスが減り負担が軽くなります。外部委託先は守秘義務や料金、対応スピードを事前に確認してください。
従業員への簡単な案内例
「年末調整のため、前職の源泉徴収票を○月○日までにご提出ください。再発行が必要な場合は前職にご連絡ください。ご不明点は人事(内線123)まで。」
迅速な回収と社内ルールの明確化でトラブルを防げます。従業員に寄り添った案内を心がけてください。
源泉徴収票の記入方法・年末調整の流れ
基本の考え方
源泉徴収票は様式自体は既存社員と同じです。ただし、年途中で入社した人については前職分の金額も反映します。支払金額や各種控除、源泉徴収税額は年度合計で記載します。
記入する主な欄と具体例
- 支払金額:当社分+前職分を合算して記入します(例:前職300万円+当社200万円→500万円)。
- 所得控除の額の合計額:社会保険料や生命保険料控除など、年内に支払った合計金額を記入します。前職での控除証明も合算します。
- 源泉徴収税額:前職で差し引かれた税額と当社で差し引いた税額を合計します。
年末調整の流れ(実務フロー)
- 入社時に前職の源泉徴収票を提出してもらう。必要な控除証明も回収します。
- 給与システムへ前職分を入力(専用の前職欄へ入力するか、合算欄に反映)。
- 年末調整ソフトで合算した金額で計算を実行。控除の適用漏れがないか確認します。
- 計算結果に基づき還付または追徴があれば精算します。
- 年明けに最終的な源泉徴収票を発行・交付します。
システムごとの細かい再読込方法やFAQは専用マニュアルを参照してください。書類を揃えることで年末調整がスムーズに進みます。
まとめとおすすめ情報
中途採用者の年末調整では、前職の源泉徴収票が重要です。前職分が合算されないと年末調整ができず、結果として従業員が自分で確定申告する必要が出ます。ここでは、実務で役立つおすすめと具体的な対応を分かりやすくまとめます。
従業員向けのおすすめ
- 前職から源泉徴収票を必ず受け取ってください。退職時に渡されない場合は郵送で請求しましょう。例:電話で再発行を依頼し、担当部署名を確認しておくとスムーズです。
- どうしても受け取れないときは、年末に確定申告が必要です。税務署で相談すれば、手続き方法や必要書類を教えてもらえます。
会社(採用側)向けのおすすめ
- 採用後すぐに提出依頼を出し、提出期限や提出方法(紙・PDF)を明確に伝えてください。例:入社初日に提出フォームを案内する、リマインドを1週間・3日前に送る。
- 回収状況を管理表で可視化し、未提出者には早めに個別フォローを行ってください。
相談先と外部サービスの活用
- 前職から受け取れない場合は税務署に相談してください。記録があれば対応が早く進みます。
- バックオフィス業務が忙しい場合は、年末調整代行や税理士・社労士の利用を検討しましょう。効率化とミス防止につながります。
すぐ使えるチェックリスト(例)
- 入社時に源泉徴収票の提出を依頼したか
- 提出方法と期限を明示したか
- 回収状況を追跡しているか
- 未提出者へ個別に連絡したか
- 必要時に税務署・専門家へ相談したか
これらを習慣化すると、トラブルが減り年末調整がスムーズになります。必要ならテンプレートや案内文の例もご用意できますので、ご希望があればお知らせください。
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