はじめに
本記事の目的
本記事は、同じ会社から源泉徴収票が複数枚発行される理由や、源泉徴収票の「乙欄」がどのように適用されるかをわかりやすく解説します。副業や掛け持ち、年末調整や確定申告との関係など、実務でよくある疑問に丁寧に答えます。
こんな方におすすめ
- 同じ会社から複数の源泉徴収票を受け取った方
- 乙欄の意味や税額の差を知りたい方
- 年末調整でどう扱われるか不安な方
記事の構成と読み方
各章を順に読むと、基本概念から具体的な手続きまで段階的に理解できます。専門用語は最小限にし、具体例を交えて説明します。忙しい方は第2章と第6章、第8章だけ先に読むと実務に役立ちます。
源泉徴収票の乙欄とは?基本概念
概要
源泉徴収票の「乙欄」は、給与を支払う際に扶養控除等申告書を提出していない従業員に適用されます。扶養控除等申告書を提出している人は通常「甲欄」が適用されますが、書類がないと自動的に乙欄になります。
誰に適用されるか
・新しく入ったアルバイトやパートで扶養控除等申告書を出していない人
・副業先で申告書を出していない人
・前の職場からの手続きが間に合わなかった人
いずれも源泉徴収は乙欄で行われます。
乙欄の特徴(税金の扱い)
乙欄は扶養や各種控除を考慮しない簡易な計算で税額を差し引きます。そのため甲欄より毎月の天引き税額が高くなることが多いです。年末に正しい控除を受けたい場合は確定申告が必要になることがあります。
乙欄が複数の源泉徴収票につながる理由
同じ会社でも部署や雇用形態の違い、または年度中に扶養控除等申告書を提出した・していない等の状態変化で、甲欄と乙欄が混在し源泉徴収票が複数枚発行されることがあります。
具体例
例1:学生が学業の合間にアルバイトを始め、申告書を提出していない→乙欄適用。
例2:既に本業の会社で甲欄だが、副業先で申告書を出さない→副業分は乙欄で源泉徴収。
同じ会社で乙欄が適用される状況
概要
同じ会社で働いていても、給与の支払い方法や契約形態が分かれると、ある支払いに対して乙欄が適用されることがあります。基本はその支払い先に「扶養控除等申告書」を提出しているかどうかで決まります。以下で具体例と確認・対応方法を説明します。
代表的なケース
- 別契約のアルバイトや短期勤務:同じ会社でも、正社員とは別に短期アルバイト契約を結び、別口で給与を受ける場合。扶養申告を出していなければ乙欄になります。
- 部署や雇用形態が別:正社員としての給与と、別部署での夜勤手当などを別計算で支払うケース。支払側が別の給与支払者として扱うと乙欄が適用されます。
- 退職後の再雇用:一度退職し、契約を新たにして再雇用された場合。新しい支払いについて申告書を提出していないと乙欄となることがあります。
- 業務委託に近い別扱いの報酬:会社が出す一部の報酬を給与扱いにして別枠で支払う場合も、扶養申告がなければ乙欄です。
どう確認するか
給与明細や源泉徴収票の「支払者」欄や支払者番号を見て、同一会社でも別扱いになっていないか確認します。人事や給与担当に「この支払いはどの枠で処理しているか」を尋ねると分かりやすいです。
対応方法
- 主たる給与の支払者に扶養控除等申告書を提出する。副次的な支払いは乙欄になりやすい点を理解しましょう。
- 年末調整で処理されない分は、過払い税があれば確定申告で還付を受けられます。必要があれば税務署や専門家に相談してください。
乙欄適用の条件
はじめに
ここでは、同じ会社で「乙欄」が適用される主な条件を分かりやすく説明します。状況ごとに具体例を添えますので、自分に当てはまるか確認してください。
主な条件(一覧)
- 扶養控除等申告書を提出していない
- 他に主たる給与所得がある(副業ではない)
- 雇用期間が短い、または常時の給与でない見込み
- 勤務先に源泉徴収義務がある金額に該当する(例:月額88,000円以上)
各条件の詳しい説明と具体例
- 扶養控除等申告書を提出していない:会社に「扶養控除等申告書」を出していなければ、会社は乙欄で源泉徴収します。例えば、アルバイト開始時に書類を出し忘れた場合が該当します。
- 他に主たる給与所得がある:すでに別の会社から給与を受け取り、そちらを主たる給与としているときは、二つ目以降の勤務先で乙欄になります。たとえば、本業が会社Aで副業として会社Bで働く場合、会社Bは乙欄で計算します。
- 雇用期間が短い:短期の契約や単発の勤務で、年間を通して同じ給与が続かない見込みだと乙欄になります。例:数か月の派遣や短期アルバイト。
- 勤務先に源泉徴収義務がある金額に該当:会社が源泉徴収を行う基準に該当する場合、乙欄で差し引かれることがあります(例示:月額88,000円以上)。
注意点
- いずれかの条件が変われば扱いが変わることがあります。たとえば、扶養控除等申告書を提出すれば甲欄に変わる可能性があります。
- 迷ったら勤務先の総務・給与担当に確認してください。必要なら税務署や税理士に相談すると安心です。
甲欄と乙欄の税額の違い
概要
乙欄は扶養控除や各種控除を反映しない一律の税率で源泉徴収します。甲欄は扶養等の情報をもとに控除を考慮するため、徴収額が小さくなることが多いです。要するに、同じ給与でも乙欄のほうが税額は高くなります。
具体例(給与20万円の場合)
実際の計算は税法の表に基づきますが、目安として
– 甲欄:月約2,500円
– 乙欄:月約8,000円
といった差が出ることがあります。差は約5,500円で、年間にすると約66,000円の違いになります。
なぜ差が出るのか
甲欄は扶養控除や基礎控除などを源泉徴収の段階で考慮します。乙欄は控除を考慮しないため、税率が高めに適用されます。短時間の副業や新しく始めた仕事で申告が出ていない場合などに乙欄が適用されます。
対処法
扶養控除等申告書を勤務先に提出すれば甲欄に変更できることがあります。既に乙欄で多く徴収されている場合は、年末調整や確定申告で還付を受けられます。まずは勤務先に確認してください。
年末調整と乙欄の関係
基本的な考え方
乙欄が適用された給与は年末調整の対象になりません。年末調整は主たる給与の支払者(通常は勤め先のメインの会社)が行います。そのため、アルバイト先や副業で乙欄になっている給与は、年末調整で清算されない点に注意してください。
確定申告が必要なケース
乙欄の給与がある場合は、原則として翌年に確定申告が必要です。例:本業の給与が甲欄で年末調整済み、別の会社で受けた給与300,000円が乙欄なら、その金額は年末調整で反映されません。合算して税額を確定するために、確定申告で調整します。
年末調整に含める際の注意
他社の乙欄源泉徴収票の金額を主たる給与の年末調整に含めると、還付額が過大になる可能性があります。間違って含めた場合は税務署や雇用主に相談し、確定申告で正しく申告してください。
実務的な手順
1) すべての源泉徴収票を保管する
2) 年度末に主たる給与の年末調整だけを済ませる
3) 乙欄のある分は翌年に確定申告で合算して申告する
書類を整えておけば、過不足なく税金が精算できます。
同じ会社から複数の源泉徴収票が発行される理由
はじめに
同じ会社なのに源泉徴収票が複数届くと驚きます。主な理由を分かりやすく整理します。
主な理由
- 雇用形態の変更
例:契約社員から正社員に切り替わった場合、切替前後で別々に処理されることがあります。 - 支払区分が異なる
例:月給と賞与を別の部署や担当で処理するため、別の源泉徴収票が出る場合があります。 - 給与支払元の変更
例:年度途中で支店や事業部の所属が変わり、支払元が変わると別票が発行されます。 - 退職・再雇用や雇用契約の一時終了
例:いったん退職して再雇用された場合、在籍期間ごとに発行されることがあります。 - 給与システムの切替や締め日の違い
例:勤怠管理や給与計算システムを切り替えた年度は、処理の都合で複数発行されることがあります。
乙欄に関する補足
同じ会社内で複数の源泉徴収票がある場合でも、乙欄が適用されるのは通常、別の会社などから給与を受けているケースが中心です。同一の支払元であれば甲欄扱いが多いです。
確認と対応
1) 各源泉徴収票の金額を合算して確認します。
2) 給与明細や勤怠と照らし合わせ、不明な点は給与担当に問い合わせます。
3) 年末調整で処理できない場合は確定申告で合算して申告します。
同じ会社での乙欄適用時の確定申告
概要
乙欄が適用された給与分は年末調整の対象にならないため、自分で確定申告をして給与を合算し税額を精算します。源泉徴収済みの税額と計算した税額の差額を受け取るか追加で納めます。
確定申告が必要な理由
年末調整は甲欄扱いの給与を前提にします。乙欄分は扶養や控除の適用がされないため、合算しないと過大に徴収されたままになります。確定申告で全給与を合算し、控除を反映させます。
手続きの流れ
1) 源泉徴収票をすべて用意します。2) 給与合計と各種控除を計算します。3) 申告書を作成し、税務署へ提出します(e-Tax可)。期限は通常翌年3月15日です。
必要書類
源泉徴収票、保険料や医療費の控除証明書、マイナンバーや本人確認書類、返金先の口座情報を用意します。
注意点と具体例
例えば同じ会社で本業が甲欄、副業扱いの時間外報酬が乙欄なら、確定申告で合算して過払い分の還付を受けられる可能性があります。申告前に源泉徴収票の記載内容を確認し、不明点は税務署に相談してください。
実務上の注意点
1. 提出状況の確認を習慣化する
企業は採用時と給与支払開始時に、従業員が他社へ「扶養控除等(異動)申告書」を提出しているか確認してください。例えば、同じ人物が副業先で申告書を出していると主たる勤務先で乙欄を適用すべき場合があります。申告書の有無を給与台帳と照合する運用が有効です。
2. 副業者への配慮
副業を認める企業は特に注意してください。従業員が複数の給与を受けると税区分が変わることが多く、誤って甲欄のまま源泉徴収すると年末に多額の差額が生じる恐れがあります。副業を申告するルールを明文化し、提出しない場合は乙欄を適用する旨を伝えてください。
3. 税区分変更時の説明義務
乙欄に変更する場合は従業員へ書面やメールで説明をしてください。税額が上がる理由と確定申告の必要性、年末調整での扱い(対象外となる場合がある)を具体例で示すと理解が得やすくなります。
4. 記録と内部統制
申告書の受領日、適用区分の変更履歴、給与計算の根拠を保存してください。システム設定ミスや担当者交代で誤徴収が起きやすいため、二重チェックの運用を推奨します。
5. 従業員への情報提供
乙欄適用で税額が増える可能性を事前に説明し、確定申告が必要かどうかを案内してください。必要に応じて税務署や税理士への相談を勧めてください。
以上を実務で徹底すると、誤った源泉徴収によるトラブルを防げます。


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