源泉徴収票のパート年収103万以下でも知るべき基礎知識

目次

はじめに

この章では、本書の目的と対象、読み方のポイントをやさしく説明します。

本書の目的

年収103万円以下のパート・アルバイトに関する源泉徴収票の発行や年末調整の取り扱いを、わかりやすく整理します。企業側の対応や働く人が確認すべき点を中心に、誤解しやすい部分を具体例を交えて解説します。

対象となる方

・パートやアルバイトで年収が少ない方
・雇用主や人事担当者で源泉徴収票や年末調整の実務に関わる方

本書の読み方

各章で一つずつ仕組みや義務、手続きの注意点を取り上げます。まずは基本を押さし、該当する章に進んで実務で確認してください。第8章では最近の税制改正も触れますので、変更点があるか確認したい方はそちらをご覧ください。

源泉徴収制度の基本的な仕組み

給与から税金を差し引く仕組み

源泉徴収制度は、会社が従業員の給与から所得税をあらかじめ差し引き、国に納める仕組みです。会社は毎月の給与支払時に税額表などを使って概算の税額を計算し、その分を天引きします。天引きした税金は会社がまとめて納付しますので、従業員が毎回税務署に払う必要はありません。

源泉徴収票とは

1年間に差し引かれた税額や支払った給与の合計をまとめた書類が源泉徴収票です。年末に会社が発行します。具体的には「支払金額」「源泉徴収税額」「社会保険料の控除額」などが記載されます。

年末調整と確定申告の関係

会社員は源泉徴収票をもとに年末調整で1年分の税額を精算します。税金を多く払っていたら還付を受け、少なければ追加で納付します。個人事業主や副収入がある人は、源泉徴収票があっても確定申告で最終的に計算します。

源泉徴収票の主な利用場面

転職時の所得証明、住宅ローンの審査、各種控除の確認など、さまざまな手続きで必要になります。大切に保管してください。

企業の源泉徴収票発行義務

概要

企業は給与を支払った従業員全員に対して、源泉徴収票を発行する法的義務があります。雇用形態や年収額にかかわらず適用され、アルバイトやパートタイマーも例外ではありません。

発行期限

  • 通常の在職者:給与支払の翌年1月31日までに交付します。
  • 退職者:退職日から1か月以内に交付します。

源泉徴収票の役割

従業員は確定申告や年末調整、転職先での手続きに源泉徴収票を使います。金額や税額が記載されているため、税務上の重要な証明書です。

企業側の義務と罰則

企業が正しく交付しない場合、所得税法に基づく行政指導や罰則が科される可能性があります。適切な管理と期限厳守が求められます。

実務上の注意点

  • 複数の勤務先がある場合は、それぞれの勤務先から源泉徴収票を受け取ります。
  • 紛失した場合は、勤務先に再発行を依頼してください。
  • 発行されないときは、まず勤務先に確認し、それでも解決しない場合は税務署に相談が可能です。

(途中の章ではまとめを設けません)

年収103万円以下の場合の源泉徴収票の発行

概要

年収が103万円以下のパート・アルバイトでも、企業は源泉徴収票を発行します。源泉徴収票は年間の給与と税額を証明する書類です。

なぜ発行されるのか

企業には、退職者を含めすべての給与支払者に対して源泉徴収票を交付する義務があります。税金が発生していなくても、収入の記録として必要だからです。

源泉徴収額がゼロとなる理由

年収が103万円以下だと所得税がかかりません。従って給与から税金を差し引かれることはなく、源泉徴収票上の「源泉徴収税額」は0円になります。

具体例

たとえば年間の給与が100万円のAさんは、源泉徴収票に支払金額100万円、源泉徴収税額0円と記載されます。別の職場で働く場合は、それぞれの会社が別々の源泉徴収票を発行します。

受け取り方・もらえないときの対応

通常は翌年1月末までに交付されます。もし受け取れない場合は、まず勤務先の総務や人事に問い合わせてください。それでも解決しないときは税務署に相談すると案内を受けられます。

年末調整の必要性について

年収103万円以下のアルバイトでは、基本的に年末調整を行う必要がありません。給与所得控除と基礎控除を合わせると103万円になり、その範囲内なら所得税がかからないためです。年末調整は、勤務先が年間を通じて源泉徴収した所得税と本来支払うべき所得税の差を清算する手続きです。つまり、源泉徴収がなければ年末調整の対象になりません。

具体例を挙げます。月給が8万5,000円で12か月働くと年収は102万円程度です。この場合、通常は源泉徴収されず、年末調整も不要です。逆に、ひと月の給与が8万8,000円を超えると源泉徴収される可能性があります。その場合は、勤務先が年末調整で過不足を調整します。

注意点として、複数の勤務先がある場合や、アルバイト先で源泉徴収が行われているときは、年末調整の扱いが変わります。年末調整が不要かどうかは、まず源泉徴収の有無と年間の給与額を確認してください。必要があれば勤務先に相談すると安心です。

年末調整が必要になるケース

複数の勤務先で働いている場合

複数のアルバイト先があるときは、各勤務先の給与を合算して判定します。たとえば、Aの職場で60万円、Bの職場で50万円を得ている場合、合計110万円となり103万円を超えます。合算して103万円を超えると税の扱いが変わるため、年末調整や確定申告が必要になることがあります。一般に、どの勤務先で年末調整を受けるかは「扶養控除等(異動)申告書」を提出した勤務先が優先されます。

年の途中で退職・転職した場合

年の途中でアルバイトを辞めた場合、退職した勤務先が年末調整を行わないことがあります。たとえば、7月に辞めてその後に別の勤務先がない場合、年末調整を受けられないため自分で確定申告をする必要があります。また、年内に複数回転職したときは、最後の勤務先が年末調整を行うかを確認してください。

他に収入がある場合(給与以外)

給与以外にも報酬や雑所得があると、合計収入が103万円を超えることがあります。たとえば、アルバイト収入90万円に副業で20万円の報酬があると合計110万円です。その場合は年末調整では対応できないことがあり、自分で申告する必要が生じます。

扶養控除や申告書の提出状況が変わった場合

扶養控除の申告をしていない、または申告先を間違えた場合は年末調整が受けられないことがあります。年の途中で扶養状況が変わったときも見直しが必要です。

確認すべきポイント(実務での注意)

  • 各勤務先の給与を合算して103万円を超えるか確認する。
  • 扶養控除等申告書をどこに出したか確認する。
  • 年内に退職している場合、源泉徴収票を必ず受け取る。
  • 年末調整を受けられないときは翌年に自分で確定申告する準備をする。

実際にどうすればよいか不安なときは、勤務先の担当者や税務署に相談すると安心です。

年収103万円以上でも年末調整ができないケース

主なケース

年収が103万円を超えても、会社で年末調整を受けられない場合があります。代表的なのは次の二つです。

  1. 年の途中で退職した場合
  2. 12月31日に在籍していないと、在籍先の会社が年末調整を行わないことがあります。自分で確定申告が必要になる可能性があります。

  3. 複数の勤務先があり、いずれも「主たる給与」にしていない場合

  4. 複数の会社で働き、どの会社にも扶養控除等の申告書を出していないと、どの会社も年末調整できません。したがって自分で確定申告を行います。

手続きの流れと注意点

  • まず各勤務先から源泉徴収票を受け取ります。これが確定申告の基本資料です。
  • 確定申告で所得や控除をまとめて申告します。税金の還付や追加納付が発生します。
  • 給与以外の収入(副業や年金など)がある場合は申告の必要性が高まります。

具体例

  • 例1:7月に退職し、その後再就職せず年末を迎えた。年末調整がないため自分で申告する。
  • 例2:A社とB社で働くが、どちらにも主たる給与の届出を出していない。両方の源泉徴収票を合わせて申告する。

分からない点があれば、源泉徴収票を用意して税務署や税理士に相談すると安心です。

2025年12月からの税制改正

変更のポイント

2025年12月から、所得税の課税対象となる年収の基準が「103万円超」から「160万円超」に引き上げられます。つまり年収160万円以下であれば、原則として確定申告が不要になります。

誰が影響を受けるか

パート・アルバイトや扶養内で働く方に主な影響があります。年収が103万円を超えて160万円以下の方は、これまでより手続き負担が軽くなります。

具体例

  • 年収150万円のパート勤務:確定申告は不要。ただし副収入がある場合は合算して確認してください。
  • 会社員で給与以外に20万円を超える雑所得がある場合:合算して160万円を超えれば申告が必要です。

企業と従業員の対応

企業は従来通り源泉徴収票を発行します。年末調整の扱いは給与体系や副収入の有無で変わります。したがって自身の収入全体を把握しておくことが大切です。

注意点

社会保険や住民税の取り扱いは別です。年収が一定を超えると社会保険加入条件に影響する場合があります。変更後も、複数の収入源がある方や控除を受けたい方は確定申告が必要になるケースがある点に注意してください。

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