はじめに
この文書は、源泉徴収票(以下、源泉票)の提出に関して「原本が必要か」「コピーや電子データで足りるか」を明確にするために作成しました。
- 目的:提出先によって異なる取り扱いを整理し、実務で迷わないようにすることです。
- 対象読者:給与担当者、確定申告を行う納税者、ローン申請者、総務や経理担当者などです。
背景として、確定申告では税務署がコピーや電子データを受け付ける場合がある一方で、金融機関の住宅ローン審査や役所の一部手続きでは原本の提示や提出を求められることがあります。本書では具体例を挙げて、どの場面で原本が必要か、コピーや電子交付を活用する場合の手続きや注意点を分かりやすく整理します。
本書の構成は次の通りです。
- 第2章:源泉票の提出ルールとコピーの取り扱い
- 第3章:電子交付された源泉票の取り扱いと手続き
- 第4章:確定申告時の実務的対応とペーパーレス化のメリット
- 第5章:電子交付実施時の注意点とまとめ
まずは第2章以降で、具体的なケースごとの対応方法を順にご説明します。
源泉徴収票の提出ルールとコピーの取り扱い
提出の基本ルール
源泉徴収票は所得を証明する大切な書類です。原則としては原本を求められる場面が多く、特に正式な手続きや契約時には原本提出を指示されることがあります。提出先の指示に従うことを最優先にしてください。
コピーが認められる場合と注意点
銀行の融資申請や入居申込など、提出先の判断でコピーが許されることがあります。その場合は、コピーとともに提出先名や提出日を控えておくと安心です。コピーには「写し」や「コピー」と記載し、必要なら自署で裏付けしておきます。個人情報が含まれるため、不要な人に渡さないよう管理してください。
確定申告での取り扱い(2019年4月1日以降)
2019年4月1日以降、税務署への確定申告では源泉徴収票の原本添付が不要になり、コピーや電子データでの提出が可能です。申告書に収入金額等を記載すれば、原本は手元に残せます。念のため必要に応じて原本を提示できるよう保管してください。
収入証明としての実務的勧め
提出先が収入証明を求めるときは、原本を失わないためにまずコピーを用意するのがおすすめです。原本提出が必須かを事前に確認し、求められなければコピーで対応すると安心です。
保管と原本管理のポイント
原本は防湿・耐火性のある場所で保管し、紛失や汚損を避けます。万が一紛失した場合は、発行元である勤務先等に再発行を依頼してください。
電子交付された源泉徴収票の取り扱いと手続き
電子交付とは
源泉徴収票を紙ではなく電子データで交付する方法です。メールや社内ネットワーク、PDFのダウンロード、CDなどで受け取れます。電子交付で受け取ったものでも、確定申告に利用できますし、必要に応じて印刷して提出できます。
交付方法と利用上のポイント
交付時は見やすい形式(PDFなど)で提供し、閲覧や印刷ができることを確認します。社内の掲示やダウンロード日時を通知する、パスワードを付けるなど、受け取りやすさと安全性を両立させましょう。
従業員の同意(必須)の取り方
電子交付は事前の同意が必要です。具体的な方法は次の通りです。
– 同意書の配布と回収(紙または電子フォーム)
– 雇用契約書や就業規則への明記
– メールや社内ポータルでの承諾確認
同意には「電子で受け取ること」「閲覧・印刷方法」「同意の撤回方法」を明記しておくと親切です。
確定申告時の対応
電子交付された源泉徴収票は印刷して確定申告書に添付できます。税務署で求められた場合に備え、電子ファイルや印刷物を保管しておくと安心です。
実務上の注意点
個人情報保護に配慮し、アクセス権限や送信方法を管理してください。交付後に内容修正がある場合は速やかに再交付し、従業員へ通知します。
確定申告時の実務的対応とペーパーレス化のメリット
確定申告での源泉徴収票の扱い
確定申告書を提出する際、源泉徴収票の原本提出は基本的に不要です。ただし、申告内容の確認や税務署からの照会で提示を求められることがあります。そのため、紙の原本や電子交付されたPDFを印刷したものを手元に用意しておくと安心です。
提示が求められたときの実務対応例
例1: 税務署で申告内容を確認された場合は、印刷した源泉徴収票を持参します。例2: 税理士に依頼している場合は、電子データを共有し、必要に応じて印刷してもらいます。スマートフォンやタブレットでPDFを見せるだけでも対応できることが多いです。
ペーパーレス化のメリットと具体的効果
ペーパーレスにすると、従業員は紛失時の再発行依頼が不要になります。自分で電子データにアクセスしてダウンロードや印刷ができるため、再発行までの時間が短縮します。保管スペースが減り、検索もしやすくなります。例えば、過去の源泉徴収票を年度別でフォルダ管理すれば、確定申告時の書類探しが格段に楽になります。
実務で気を付ける点
電子データはログイン情報の管理やバックアップを忘れずに行ってください。印刷する場合は文字が潰れていないか、年月日や金額が判読できるかを確認します。提出が不要でも、提示を求められることを想定して見やすい状態で保存しておくと安心です。
電子交付実施時の注意点とまとめ
社内体制の整備
電子交付を始める前に、紙での発行依頼に応じる窓口を明確にします。担当部署・受付方法・対応期限を定め、費用負担(会社負担か本人負担か)を事前に決めます。印刷や郵送の手順を標準化すると現場が混乱しません。
提出場面ごとの原本要否
- 確定申告:原本は通常不要です。e-Taxやコピーで対応できます。
- 住宅ローン審査:銀行によっては原本提示や原本確認を求められます。事前に確認してください。
- 銀行手続き・転職:提出先の指示に従ってください。必要なら紙の原本を用意できる体制が大切です。
システム面の注意
アクセスは安全な認証を必須にし、閲覧ログと保存期間を設定します。バックアップと復旧手順を整え、長期保存が必要な書類はフォーマットが変わっても読めるようにしておきます。
運用上の配慮
従業員には事前に仕組みと操作方法を丁寧に説明します。問い合わせ窓口を明確にし、トラブル時の代替手段(郵送対応など)を用意してください。プライバシー配慮として公開範囲やメール送付の扱いを決めます。
簡単なチェックリスト
- 紙発行の申請方法を決める
- 提出先ごとの原本要否を周知する
- 認証・ログ・バックアップを整備する
- 従業員への説明・案内を行う
まとめ
従業員の希望を尊重しつつ、安全で分かりやすい運用を作ることが重要です。事前確認と準備でトラブルを減らせます。


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