欠勤のペナルティと労働基準法で知るべき重要ポイント

目次

はじめに

目的

この文書は、従業員の欠勤に対して会社が科すことができるペナルティの種類と、それらが労働基準法などでどのように規制されているかを分かりやすく解説することを目的としています。経営者、人事担当者、働く方すべてに向けた実務的なガイドです。

対象読者

  • 会社の人事担当者や経営者
  • 労働条件について知りたい従業員

本書で扱う主な項目

  • 罰金の禁止とその理由
  • 減給の上限や欠勤控除の考え方
  • 出勤停止や懲戒解雇など段階的な対応
  • 早退や遅刻、タイムカードの押し忘れへの対処
  • 就業規則の整備と運用の重要性
    各項目は具体例を交えて、実務で使える形で説明します。

読み方の注意点

ここでは法律の考え方を分かりやすく示しますが、個別の事案では事情が異なる場合があります。具体的な対応が必要な場合は、社内の総務・法務担当や専門家に相談することをおすすめします。

欠勤に対する罰金は違法である

概要

欠勤を理由に金銭的な罰則(たとえば「無断欠勤1回につき1万円」)を課すことは、労働基準法に違反します。会社が一方的に罰金を設定して給与から差し引くことは認められません。

法的根拠

労働基準法第16条は、使用者が雇用契約で違約金や予定損害賠償を定めることを禁じています。第24条は賃金全額払いの原則を示し、労働者の同意なく賃金を減額することはできません。

具体例と注意点

たとえば無断欠勤の日に一律の罰金を差し引く、欠勤分を勝手に算定して給与を減らすといった行為は違法です。労働者が書面で明確に同意していない控除や、就業規則に根拠がない罰則も認められません。

取るべき対応

  1. 就業規則や給与明細をまず確認する
  2. 会社に説明を求め、やり取りを記録する
  3. 労働基準監督署や労働相談、弁護士に相談する
    したがって、罰金を科された場合は早めに相談して権利を守ってください。

欠勤に対して会社が科すことができるペナルティ

概要

罰金は認められませんが、欠勤に対して会社が一定の処分を科すことは可能です。本章では代表的な対応とその条件を具体例で説明します。

減給

労働基準法に上限が定められます。一回の減給は平均賃金の1日分の半額を超えられず、賃金支払期における総額の10分の1を超えてはいけません。例:平均日給1万円なら、1回の減額は5千円以下、支払期全体で10%以内となります。

欠勤控除(ノーワーク・ノーペイ)

実際に働かなかった分だけ賃金を差し引きます。日数や時間で計算し、規定や給与計算の方法を明示しておくことが大切です。

出勤停止・降格・懲戒解雇

無断欠勤が続く場合、出勤停止や降格を行えます。連続した無断欠勤が2週間以上続けば、懲戒解雇に相当するケースもありますが、事情や手続きの適正さを慎重に判断する必要があります。

アルバイトへの契約解除

雇用契約上の権利として、重大な欠勤が続けば契約解除をすることも可能です。契約条項や事前の警告を明確にして運用してください。

運用上の注意

処分は就業規則や契約に基づいて行い、手続きの公平性と記録の保存を徹底してください。個別事情を考慮し、過度な処分にならないよう配慮することが重要です。

早退や遅刻の扱い

概要

早退や遅刻を無条件に欠勤扱いにすることは問題となる場合が多いです。労働基準法やノーワークノーペイの原則から、実際に働いていない時間分だけ給与を控除するのが基本です。

法的な考え方

労働時間は分単位で評価できます。部分的な不労働を丸ごと欠勤とする扱いは不当とみなされることがあります。企業は始業・終業時刻に基づいて不就労分のみを控除する必要があります。

給与控除の具体例

例:10分の早退を3回繰り返した場合は合計30分の不労働です。時給で計算して30分分だけ給与を差し引きます。例えば月給30万円で所定労働時間160時間なら時給は約1,875円、30分分は約937円です。

会社ができる対応

  • タイムカードや勤怠システムで正確に記録する
  • 就業規則に遅刻・早退の取り扱いを明記する
  • 頻繁な遅刻には注意・指導を行い、改善が見られない場合は段階的な措置を取る
  • 給与控除は実際の不就労時間に基づく

従業員への伝え方

誠実に説明し、記録を提示して計算方法を示します。不明点があれば相談窓口を案内し、再発防止のための協力を求めます。

タイムカード押し忘れの場合

押し忘れても給料を払わないのは違法です

タイムカードをうっかり押し忘れても、実際に出勤して仕事をしたならば給料を支払わなければなりません。企業が打刻忘れを理由に欠勤扱いにして賃金を支払わないのは不当です。

罰金やペナルティの扱い

打刻忘れを理由に金銭的な罰金を課すことは認められません。賃金の一部を没収したり、罰金名目で控除するのは違法です。ただし、勤務実態と記録を照合して不正が明らかになった場合は、懲戒処分の対象となることがあります。

会社が取るべき実務的対応

押し忘れがあれば、従業員に速やかに申告させ、上司やタイムシートで勤務実態を確認します。メールや作業ログ、防犯カメラの記録などで出勤が確認できれば打刻を修正して賃金を支払います。規則に基づく注意や始末書の提出を求めることは可能です。

繰り返しや故意の場合の対応

故意に打刻を改ざんしたり、押さなかったことを隠す行為は懲戒事由になります。ただし、処分をするには社内規定に基づく手続きと客観的な証拠が必要です。

就業規則の重要性

就業規則が決める範囲

会社は出勤・遅刻・早退・欠勤の扱いを就業規則で定めます。例えば「遅刻3回で警告」「無断欠勤は欠勤扱い」といった具体的運用を明記すると社員に分かりやすくなります。

法律との関係

就業規則は労働基準法などの上位法に反してはなりません。企業は独自ルールを設けられますが、賃金減額や不利益取扱いで法の限度を超えることは認められません。

懲戒のための要件

懲戒処分を科す場合は就業規則に懲戒規定を置き、従業員に周知する必要があります。懲戒事由・種類・手続き(弁明の機会など)を明確にしてください。

作成・変更時の手続き

就業規則の作成や変更は書面化し、労働者に周知または所轄労働基準監督署への届出が必要です。労使協議や労働組合との調整も有益です。

従業員が取るべき行動

就業規則をまず確認し、不明点は人事に問い合わせてください。不当と感じた場合は労働基準監督署や労働相談窓口に相談してください。

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