はじめに
本稿は、退職後に離職票が手元に届かないときの原因と対処を分かりやすく整理したものです。離職票は失業保険の手続きに欠かせない書類で、受け取れないと給付申請に支障が出ます。日々の生活や転職活動に不安をもたらすため、早めの対応が重要です。
目的
本調査は、実際に起きやすい原因(申請忘れ、会社の手続き遅延、ハローワークの処理遅延、雇用保険未加入など)を明示し、問題が起きた際に取るべき具体的な行動を示すことを目的とします。会社が離職票の交付を拒否することは原則として認められていませんが、状況によって対応が異なります。
読者対象
これから退職する方、すでに退職して離職票が届かない方、またはそのご家族や相談先の担当者に役立つ内容です。
本書での流れ
次章以降で原因を詳しく説明し、法的なポイントと実際の対処方法を順に解説します。問題が生じた場合でも落ち着いて対応できるよう、手順を具体的に示します。したがって、まずは原因の把握から始めましょう。
離職票がもらえない主な4つの原因
1. 離職票の発行を申請していない
退職者本人が離職票の発行を希望しないと、会社は手続きを進めません。例:退職時に「要らない」と口頭で伝えてしまった場合。対処法:まず会社の総務や担当者に「離職票が必要です」と書面やメールで伝え、控えを残してください。
2. 会社の手続きが遅れている
会社は離職証明書を作成してハローワークに提出しますが、作成や押印に時間がかかることがあります。例:繁忙期で担当者が不在の場合。対処法:提出状況を確認し、具体的な期限を相談しましょう。必要なら証拠となるやり取りを記録しておきます。
3. ハローワークの手続きが遅れている
ハローワーク側の処理や郵送で時間がかかることがあります。例:窓口混雑や郵送トラブル。対処法:会社に提出済みか確認し、ハローワークに電話で進捗を尋ねてもらうよう依頼してください。
4. 雇用保険の被保険者に該当していない
雇用保険に加入していないと離職票は発行されません。例:短期のアルバイトや勤務実態が基準に満たない場合、住所不明で郵送できない場合もあります。対処法:給与明細や雇用契約書で加入状況を確認し、不明なら会社に証明を求めてください。
会社が離職票の交付を拒否する場合の違法性
法律の規定
雇用保険法第76条3項では、事業主は離職票の交付を拒んではいけません。離職票は失業給付の申請に必須の書類ですから、会社に理由なく交付を拒まれることは法律違反になります。
違反した場合の刑罰
交付を不当に拒んだ場合、刑事罰が科されます。具体的には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です。これは単なる行政上の注意ではなく、罰則を伴う違法行為です。
よくある違法な理由と具体例
- 未払いの給与があるから交付しないと主張するケース。給与と離職票は別の手続きなので正当な理由になりません。
- 退職理由をめぐる争いを理由に交付を遅らせる場合。争いがあっても離職票交付の義務は残ります。
- 手続きが面倒だからと保留する例。行政手続きの負担は理由になりません。
労働者が取れる初期対応(簡潔に)
まず交付請求を文書またはメールで行い、やり取りを保存してください。ハローワークに相談すれば、会社側に対する案内や調整を行ってくれます。必要なら労働基準監督署や弁護士に相談して、法的手段を検討してください。
離職票がもらえないときの対処方法
離職票が届かないときは、手順を踏んで対応するとスムーズです。以下のステップに沿って行動してください。
ステップ1:会社に問い合わせて手続き状況を確認する
まずは会社の総務や人事担当者に電話やメールで確認します。いつ退職届を受け付けたか、離職票の作成・発送状況、提出書類に不備がないかを具体的に尋ねます。例:「○月○日に退職しましたが、離職票の発送状況を教えてください」
ステップ2:2週間以上経っても届かない場合はハローワークに相談
会社に確認しても回答が曖昧で、2週間以上経っても届かないときは最寄りのハローワークに相談します。会社名・代表者名・退職日・やり取りの記録(メールや日時)を持参すると対応が早まります。ハローワークから会社へ手続きを促してもらえます。
ステップ3:それでも手続きされない場合は確認請求を行う
ハローワークで「確認請求」を申し立てられます。ハローワークが会社に事実確認を行い、それでも手続きしない場合はハローワークが離職票の発行を進めるケースがあります。申請方法や必要書類は窓口で案内してもらってください。
ステップ4:交渉が困難な場合や他の労働問題もある場合は弁護士に相談
会社が協力しない、未払い賃金など他の問題があるときは弁護士に相談すると良いです。労働問題に詳しい弁護士や法テラス(法的支援)の利用を検討してください。相談時は退職時の書類、やり取りの記録、給与明細などを持参すると解決が早まります。
重要なポイント
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離職票がもらえない原因は多様です。申請漏れや事務処理の遅れ、連絡ミス、会社側の誤解や不当な拒否などが考えられます。まずは「離職票が必要である」ことを退職時に明確に伝えておくとトラブルを防げます。
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取るべき基本的な行動(優先順位で整理)
- まず口頭で再度請求し、応答を記録してください。日付や担当者名を控えることが大切です。
- 書面(メールや内容証明)で正式に請求し、控えを保管します。証拠があると交渉が有利になります。
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一定期間を過ぎても交付がない場合は、速やかにハローワークに相談してください。ハローワークは事実関係の確認や手続きの案内をしてくれます。
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法的な点と対処の選択肢
- 会社が正当な理由なく離職票の交付を拒むことは問題です。違法な行為に当たる場合、行政上の指導や罰則の対象となる可能性があります。これを知っておくと交渉がしやすくなります。
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それでも解決しないときは、労働局や弁護士、労働組合に相談して行政手続きや民事手段を検討してください。
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証拠を整えることがカギです。退職届、交付請求の記録、やり取りのメールやメモを保存しておくと手続きがスムーズになります。
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冷静に行動しつつ、早めに相談窓口を利用することが最短での解決につながります。


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