はじめに
目的
本章では、本調査の目的と読み方をわかりやすくご案内します。退職後に必要となる離職票の受け取り方法や手続きを整理し、退職者と企業双方が混乱なく対応できるようにすることが狙いです。
対象読者
退職を予定している方、最近退職した方、人事・総務担当者、社会保険や雇用保険の手続きに不慣れな方を想定しています。専門用語をなるべく避け、具体例を交えて説明します。
本調査の範囲
離職票の基本的な役割、受け取るための条件、従来の郵送・窓口での受け取り方法に加え、電子申請や2025年からのマイナポータルを利用した新しい受け取り方法、企業側の注意点までを網羅します。各章で手続きの流れや必要書類、よくあるトラブルと対処法を順を追って解説します。
読み方のポイント
まず目次で必要な章を確認してください。急いでいる場合は「受け取り方法」や「企業側のポイント」を先に読むと実務的に役立ちます。各章の最後には具体的な手順を示しますので、実際の手続き時に参照しやすくしてあります。
離職票とは何か、なぜ必要なのか
離職票の基本
離職票は、退職した人が失業保険(基本手当)を受けるときに必要な公的書類です。ハローワークが交付するもので、退職者の雇用保険加入状況や退職理由、被保険者期間などが記載されています。受給手続きの際に提出が必須です。
2種類の書類
- 離職票-1:雇用保険の加入期間や賃金の情報など、受給資格を判断するための情報がまとめられています。
- 離職票-2:退職理由や事実関係を事業主が記載する書類で、受給日数や給付制限の判定に使われます。
なぜ必要か
離職票は、失業保険を受け取るための証拠書類です。退職理由(自己都合か会社都合か)で給付開始の時期や給付日数が変わりますので、正確な記載が重要です。
受け取れない場合の対処
離職票が届かないときは、まず前の職場に連絡して発行状況を確認してください。それでも解決しない場合はハローワークに相談すると手続きの案内を受けられます。
離職票をもらえる条件
基本の3条件
離職票をもらえる条件は次の3つです。いずれか一つでも満たさない場合は交付対象外になります。
- 雇用の見込みが31日以上あったこと
-
採用時に「継続して31日以上働く」見込みがあることを指します。たとえば短期の単発勤務(20日だけのアルバイト等)は該当しません。
-
1週間の所定労働時間が20時間以上であること
-
勤務予定の時間が週20時間以上であればこの条件を満たします。例:週3日で1日8時間(合計24時間)の勤務は対象になります。
-
学生でないこと
- 在学中の学生は原則対象外です。卒業や退学で学生でなくなっている場合は条件を満たします。
注意点
- 短期契約や極端に短いシフトだと1・2の条件を満たさないことがあります。雇用契約書やシフト表で確認してください。
- 以上の条件に該当しない場合は離職票が交付されませんので、失業給付などの手続きができません。勤務先に確認し、不明点は早めに相談してください。
退職後の離職票発行プロセス
1. 発行依頼と会社の対応
退職時、本人が会社に離職票の発行を依頼します。会社はその依頼を受け、必要書類の作成に取りかかります。具体的には「離職証明書」と「雇用保険被保険者資格喪失届」を用意します。たとえば、終業日や離職理由などを記入して担当部署が確認します。
2. 書類の提出
会社は作成した書類をハローワークへ提出します。提出は原則として会社の役目で、社員本人が代わりに出すことは通常ありません。書類に不備があると差し戻しが発生するため、日付や雇用期間の記載を丁寧に確認します。
3. ハローワークの審査と交付
ハローワークは提出書類を審査し、問題がなければ離職票を交付します。審査では離職理由の確認や被保険者期間の照合などを行います。交付後、会社が社員に郵送するか、来所で手渡す手配をします。
4. 期限と違反時の対応
会社には提出期限を守る義務があります。期限を過ぎると罰則の対象となる可能性がありますので、会社は速やかに手続きを進める必要があります。受け取りが遅れる場合は会社に状況を確認し、ハローワークに相談することをおすすめします。
5. 受け取りの目安
書類提出から離職票交付までの期間は、通常は数日から数週間程度です。会社側の処理やハローワークの混雑状況で変わりますので、目安として覚えておくと安心です。
よくある注意点
- 退職理由が正確に記載されていないと受給手続きに影響します。
- 会社が発行を忘れている場合は、まず会社に連絡してください。連絡がつかないときはハローワークへ相談してください。
退職後の離職票受け取り方法(従来の方法)
郵送で受け取る一般的な流れ
- 会社がハローワークへ離職票を提出します。ハローワークで作成した離職票は会社に返送されます。会社は退職者の登録住所へ郵送して交付します。
- 時間のめやすは数日から2週間程度が多いです。繁忙期や手続きの状況でさらに日数を要することがあります。
窓口で当日再発行を受け取る方法
離職票がすでに発行済みでハローワークにある場合は、旧勤務先の住所を管轄するハローワークの窓口で当日中に受け取れます。事前に電話で発行状況を確認し、来所先を案内してもらうと安心です。
持参するものと注意点
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)
- 印鑑(窓口で求められる場合があります)
- できれば雇用保険被保険者番号や退職日が分かる資料
住所変更を会社に伝えていないと郵送が遅れるため、退職時に届出をしておきましょう。
受け取りが遅れる・届かない場合の対応
まずは会社の総務や人事に連絡して郵送状況を確認してください。連絡がつかない場合や対応が不十分なら、ハローワークに事情を相談すると手続きの進め方を教えてもらえます。
電子申請による新しい受け取り方法
概要
e-Govを使い、離職票を電子申請で受け取る方法です。365日24時間申請できます。紙の郵送を待たず、自宅のパソコンやスマホで手続きを完結できます。
必要なもの
- GビズIDまたは公的個人認証などの電子証明書
- インターネット接続(安定した環境)
- 離職に関する電子データ(退職日、雇用保険番号など)
申請手順(簡潔)
- e-Govポータルにログインします(GビズIDや電子証明で認証)。
- 指示に従い必要事項を入力します(事業所名、被保険者情報、退職理由など)。
- 電子署名や確認を行い、申請を送信します。
- 申請が受理されると、e-Gov上で処理状況が確認できます。
離職票の受け取り(ダウンロード)
処理完了後、e-Govポータルから離職票の電子ファイルをダウンロードできます。PDFなどで保存し、印刷してハローワークに持参することも可能です。
メリット
- いつでも申請できるため時間に余裕があります。オンラインで進捗確認でき、郵送の遅れを回避できます。紙の紛失リスクも減ります。
注意点
- 電子証明やGビズIDの取得に時間がかかる場合があります。ファイル形式や署名方法の指定に注意してください。入力誤りがあると処理が遅れますので、送信前に内容を必ず確認してください。
マイナポータルでの直接受け取り(2025年1月20日開始の新制度)
概要
2025年1月20日から、希望する離職者はマイナポータルで直接離職票を受け取れます。受け取りはマイナポータルアプリの通知を通じてPDFをダウンロードする形で行われ、企業の郵送や手渡しの手間を減らし、受給手続きを早める効果があります。
事前準備(必須)
- マイナンバーの事前登録を済ませること
- マイナポータルのアカウントを作成・ログインできる状態にすること
- マイナポータルと雇用保険WEBサービスの連携を行うこと
これらが完了していないと利用できません。
受け取りの流れ(利用者側)
- 事前準備を済ませる
- 企業が離職票を電子で発行すると通知が届く
- マイナポータルアプリの通知からPDFを開き、ダウンロードまたは保存する
- 必要に応じて印刷して受給手続きに提出する
企業側への影響
企業は物理的な離職票送付の手間を減らせます。処理が速くなれば、離職者の受給開始も早まる利点があります。
注意点
- マイナポータルの操作や連携設定は本人の責任で行う必要があります。サポート窓口を確認してください。
- PDFは受給手続きに必要なので、ダウンロード後に紛失しないよう保存・印刷してください。
利用開始後は、事前準備を整えることでスムーズに受け取れます。
企業側が注意すべきポイント
事前に希望を確認する
退職者がマイナポータルで受け取りを希望するか、書面を希望するかを事前に必ず確認してください。希望を確認すると対応が明確になり、手続き遅れを防げます。
発行と通知の体制を整える
発行担当者、期限、通知方法をあらかじめ決めます。例:退職手続き担当が離職票発行の有無をチェックし、郵送または電子手続きの開始を指示します。
マイナポータル対応と従来対応の両方を用意する
マイナポータル受け取りを選んだ場合は必要情報を正確に送信できるようにし、従来の郵送を選んだ場合は速やかに印刷・発送できる体制を残します。
個人情報の管理とセキュリティ
電子データの送信や紙の配送で個人情報が漏れないように暗号化やアクセス制限、送付先確認を徹底してください。
社内手順の周知と問い合わせ窓口
担当者に手順を教育し、退職者向けの問い合わせ窓口を明確にします。具体的な問い合わせ例(受け取り方法の変更、再発行など)に対応できるようにしておくと安心です。
簡単なチェックリスト(例)
- 退職者の受け取り希望を確認済みか
- 発行担当と期限を決めたか
- 電子送信と郵送の両方に対応可能か
- 情報管理のルールを整備したか
- 問い合わせ窓口を設置したか
以上を整えることで、退職者にとっても企業にとってもスムーズな手続きが可能になります。


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