はじめに
目的
本レポートは、短期間に複数の会社を退職した際に発行される「2社分の離職票」について、わかりやすく整理したものです。離職票の中身や役割、雇用保険の加入期間を合算できる条件などを丁寧に解説します。実務で手続きする際に迷わないよう、具体例を交えて説明します。
想定する読者
- 転職や退職を短期間で繰り返した人
- 雇用保険の受給手続きをこれから行う人
- ハローワークでの手続きに不安がある人
本レポートの構成と読み方
全8章で構成し、離職票の基本からハローワークでの手続きまで順を追って説明します。第2章では「2社分の離職票がどんな状態か」を具体的に示し、第4章以降で合算条件や受給資格の違いを詳述します。各章は独立して読めますが、順に読むと理解が深まります。
注意点
法令の細かい解釈や個別の判断は、ハローワークや社会保険窓口で確認してください。本レポートは一般的な説明を目的としています。
離職票が2社分ある状態とは
概要
離職票が2社分ある状態とは、短期間に2度退職してそれぞれの勤務先から離職票を受け取った状態を指します。たとえば勤務先Aを辞めて離職票を受け取り、すぐ別の勤務先Bに就職したものの、短期間で再び退職してBからも離職票を受け取ったケースです。
具体例
- 例1: A社に3か月、B社に4か月勤務し、それぞれ退職後に離職票を受け取る。
- 例2: A社を退職後、派遣で短期契約をして契約終了でB社から離職票が出る。
なぜ2枚になるのか
離職票は退職した事業所ごとに発行されます。短期で職場を変えると、それぞれの退職で別々の離職票が発行され、手元に2枚残ります。
手元に2枚あるときの確認事項
両方の離職票の日付、離職理由、被保険者番号を確認してください。後の手続きで両方の書類が必要になる場合があります。
2社分の離職票の構成と役割
概要
離職票は「雇用保険被保険者離職票-1(以下:離職票-1)」と「雇用保険被保険者離職票-2(以下:離職票-2)」の2枚で構成されます。2社分ある場合は、各勤務先からそれぞれ2枚ずつ、合計4枚を受け取ります。
離職票-1の役割
離職票-1は主に本人情報の確認やハローワークへの申請に使います。氏名・住所・離職日などが記載され、求職の手続きや基本的な書類として提出します。
離職票-2の役割
離職票-2には離職理由の区分や在職中の給与額、被保険者期間などが事業主により記載されます。失業給付の給付日額や給付日数の算定はこの書類の内容を基に行います。とくに離職理由の区分は給付開始の条件や給付制限に影響します。
2社分それぞれが必要な理由
雇用保険の加入期間や給与は勤務先ごとに異なります。合算して受給資格や給付額を判断するために、各社の離職票-2の情報が必要です。片方でも欠けると正確な算定ができません。
受け取り時の注意点
受領したら記載漏れや誤字を確認してください。離職理由の区分や給与欄に疑問があれば、まず退職した会社に確認して訂正を依頼してください。ハローワーク提出前に手元で保管することをおすすめします。
雇用保険加入期間の合算が可能な条件
概要
複数の勤務先での雇用保険被保険者期間は、一定の条件を満たせば合算できます。主な条件をわかりやすく説明します。
合算の必須条件
- 再就職先を1年未満で離職していること
-
再就職した会社を1年に満たずに辞めた場合、前の勤務先の被保険者期間をつなげて扱えます。
-
前職と前々職の離職日の間隔が1年以内であること
-
前職(直近の退職)と前々職の退職日の差が1年を超えないことが必要です。差が1年以内なら、期間をつなげられます。
-
前々職で失業手当を受給していないこと
- 前々職の退職時にすでに失業給付を受けていると、その期間は合算の対象になりません。
被保険者期間の数え方
- 被保険者期間は「1か月単位」で、原則として1週間の所定労働時間が20時間以上の月を1か月として数えます。短時間の掛け持ちでも、複数の勤務先の1か月を合わせてカウントできます。
- 受給資格を得るには、原則として被保険者期間が合計で所定の月数(例:一般に12か月)必要です。複数事業所の期間を合算してその基準を満たせば、給付の対象になります。
具体例
- 会社Aで8か月、会社Bで6か月働いた場合、合算で14か月となり受給要件を満たすことが多いです。
注意点
- 離職理由や以前の給付状況で取り扱いが変わることがあります。詳細はハローワークで確認してください。
合算できないケース
雇用保険の被保険者期間は、離職票が2社分あっても合算できないことがあります。ここでは主な3つのケースを、具体例と対処法を交えて説明します。
1) 空白期間が1年を超える
前の職場を退職してから次の職場に入社するまでの“雇用保険未加入期間”が1年を超えると、原則として前期間は合算できません。
例:A社を2020年1月に退職、B社に2021年2月に入社した場合は空白が1年を超えます。
2) 前回の退職時に失業給付を受けている
前の退職で既に失業保険(基本手当など)を受け取っていると、その受給対象となった被保険者期間は再度合算できない場合があります。
例:A社退職後に失業給付を受け、その後B社に入社した場合などです。
3) 被保険者期間の算定基準を満たさない
短期間のアルバイトや、雇用保険に加入していなかった期間は被保険者期間としてカウントされません。
例:1ヶ月だけの短期就労で雇用保険に加入していなかった場合。
対処のポイント
離職票、入社日が分かる書類、給与明細などを持ってハローワークで確認してください。不明点は窓口で具体的な期間を照合してもらうと安心です。
退職理由による受給条件の違い
概要
2社分の離職票がある場合でも、受給条件は直近の勤務先の離職理由で判断します。ここでは会社都合(事業主側の理由)と自己都合で何が違うか、実例を含めて説明します。
会社都合退職の場合
・受給要件:原則として「1年間に被保険者期間が6か月以上」あれば基本手当を受けられます。
・待機期間:通常の待期(7日)はありますが、給付制限(受給開始の数か月間)は原則ありません。
・例:直近の会社が倒産や解雇などで退職した場合、短期間の勤務でも要件を満たせば手当が出やすいです。
自己都合退職の場合
・受給要件:原則として「2年間に被保険者期間が12か月以上」が必要です。
・給付制限:原則として離職後3か月の給付制限があります。つまり支給開始が遅くなります。
・例:転職のために自己都合で辞めた場合、以前の勤務期間と合わせて要件を満たすか確認します。
実務上の注意点
・複数の離職票の被保険者期間は合算して判定することができますが、直近の離職理由が優先されます。
・離職票の「離職理由欄」やコードでハローワークが最終判断します。内容に疑問があれば早めに窓口で相談してください。
2社分の離職票が必要な理由
なぜ両方の離職票が必要か
雇用保険の加入期間を合算して失業手当を受けるには、各勤務先での加入実績と退職理由をハローワークが確認する必要があります。離職票はそのための一次的な証拠書類です。片方でも欠けると、どの期間を合算できるか判定できません。
主な理由(具体的に)
- 加入期間の確認:離職票に記載された雇用保険被保険者期間で合算日数を算出します。たとえば前の職で3年、前々職で2年働けば計5年分として扱えます。
- 退職理由の確認:給付制限や給付日数の計算に影響します。自己都合か会社都合かを判断するため、両方の離職票が必要です。
- 書類上の整合性:同じ期間に重複した加入がないか、受給資格の誤りがないかを照合します。
提出できないときの影響
離職票がそろわないと合算申請自体ができません。ハローワークは合算を認めないため、受給開始や日数に不利になります。
対処のヒント
離職票を受け取っていない場合は、まず前勤務先へ再発行を依頼してください。再発行が難しければ、ハローワークで代替の確認方法(勤務証明や給与明細の提示)を相談します。
ハローワークでの手続き方法
手続きの流れ
- 相談窓口で受付し、求職申込を行います。
- 離職票2社分を提出し、雇用保険の加入期間の合算を希望することを伝えます。
- 必要書類を確認後、雇用保険説明会や職業相談の案内を受けます。
- 指定された講習(説明会・職業講習会)に参加します。
- 求職活動を行い、所定の認定日にハローワークで認定を受けます。
- 認定後、支給が開始されます。
持ち物(必須)
- 離職票(2社分)
- マイナンバーカードまたは個人番号確認書類
- 印鑑(認印で可)
- 写真2枚(マイナンバーカード提示があれば省略可)
- 預金通帳またはキャッシュカード
合算申請の伝え方と注意点
窓口で「2社分の雇用保険加入期間を合算したい」と伝えてください。担当者が書類の確認や手続き方法を案内します。離職票に不備がある場合は確認を求められることがあるため、文字が読みやすい状態で持参してください。
受給開始までの期間
書類提出から実際の受給開始までは、説明会参加や初回の認定日を経るため数週間かかることがあります。手続き中に不明点が出たら、その場で担当者に相談してください。


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