離職票と60歳退職者の失業給付制度をわかりやすく解説

目次

はじめに

目的

本資料は、60歳前後の退職者に関する「離職票」の交付義務や手続き、それと高年齢雇用継続給付との関係をわかりやすく解説することを目的としています。特に59歳以上の退職者への対応や、企業が用意すべき書類について明確に示します。

対象読者

  • 企業の人事・総務担当者
  • 退職を控えた高年齢の労働者とその家族
  • 社会保険や雇用保険の手続きに関心のある方

本書で扱う主な内容

  • 離職票とは何か(基本の説明と具体例)
  • 59歳以上の退職者に対する交付義務のポイント
  • 高年齢雇用継続給付と離職票の関係、申請に必要な書類
  • 60歳以上65歳未満、65歳以上の扱いの違い
  • 企業の法的義務と実務上の注意点

読み方の目安

各章は独立して読めるように構成しています。すぐに確認したい項目がある場合は該当章に進んでください。具体的な手続きや書類の例は後半の章で詳しく説明します。

離職票とは何か

離職票の概要

離職票は、離職した人がハローワークで失業給付や高年齢雇用継続給付などを受けるときに必要な公式書類です。ハローワークが発行する書類で、給付の手続きの基礎資料となります。

構成と記入の役割

離職票は次の2つの書類で構成されます。
– 雇用保険被保険者資格喪失届(離職票-1)
– 被保険者離職証明書
事業主が事実関係(雇用期間、賃金、離職日、離職理由など)を記入します。離職者本人は、必要に応じて氏名や押印、離職理由に関する意見などを確認・記入します。

なぜ重要か(具体例付き)

離職理由によって失業給付の受給開始日や給付日数が変わります。例えば会社都合で退職した場合は早く給付が始まり、自己都合の場合は給付開始が遅れることがあります。離職票はその判定に使われます。

受け取りと確認ポイント

受け取ったら、氏名、離職日、賃金欄、離職理由を必ず確認してください。誤りがあれば事業主に訂正を求め、速やかにハローワークへ提出します。書類がそろうと失業給付や継続給付の手続きが進みます。

59歳以上の退職者に対する離職票交付の義務化

背景

改正高年齢者雇用安定法により、59歳以上の労働者が退職する場合、事業主は必ず離職票を交付しなければなりません。これは本人の希望にかかわらず適用されます。高年齢者は退職後に高年齢雇用継続給付や失業給付を申請するケースが多く、離職票が必要になるためです。

義務の内容と対象

事業主は、退職した59歳以上の労働者に対して例外なく離職票を作成・交付します。年齢が59歳未満の場合とは扱いが異なり、例外を設けず交付義務が生じます。離職票には退職日や退職理由など基本的な事項を記載します。

具体例

例:60歳で退職したAさんは高年齢雇用継続給付を申請する可能性があります。Aさんが希望しなくても、会社は離職票を渡します。Aさんは離職票を受け取り、ハローワーク等で給付手続きを行えます。

事業主が取るべき対応

  • 退職者の年齢確認を確実に行う。意図的に交付を遅らせない。
  • 離職票の記載事項を正確にする。受け取り方法を明示する。
  • 社内の労務担当に周知し、手続きフローを整備する。

適切に交付しておくことで、退職者の給付申請がスムーズになり、トラブルを防げます。

高年齢雇用継続給付と離職票の関係

概要

高年齢雇用継続給付は、60歳到達時に賃金が以前の75%未満に下がったとき、差額を補填する制度です。給付を受けるには一定の被保険者期間(雇用保険の加入期間)が必要です。離職票は、過去の雇用と保険加入の事実を証明する重要な書類になります。

いつ離職票が必要か

59歳で退職し、その後再就職して60歳を迎える場合、給付の算定に前職の被保険者期間や離職理由が関係するため、離職票の提出が求められることが多いです。ですから、59歳以上で退職する方には事前に離職票を交付しておくことが重要です。

企業の対応

退職時に離職票を速やかに交付してください。前職の記録がなければ給付申請が遅れる、あるいは受給資格を確認できないことがあります。交付後は退職者に保管方法や申請先について案内すると親切です。

申請の流れ(簡単な例)

1) 59歳で退職→会社が離職票を交付
2) 再就職して60歳到達→賃金が75%未満なら給付対象となる可能性
3) 離職票を添えて給付の申請を行う(申請窓口は案内に従ってください)

注意点

離職票の発行が遅れると給付手続きに支障が出ます。雇用者は法定の手続きを前倒しで行い、退職者には提出の必要性を明確に伝えてください。

60歳以上65歳未満の失業給付と離職票

離職票は申請に必須

60歳以上65歳未満で退職した場合でも、失業給付(基本手当)を受けるには離職票が必要です。離職票は退職後に勤務先が発行し、ハローワークでの手続きに用います。

受給期間について

受給できる日数は、被保険者期間(雇用保険に加入していた期間)や退職の理由で変わります。最長で240日間の給付が可能です。例:被保険者期間が長い場合や会社都合退職では、受給日数が長くなることがあります。

手続きの流れ(簡潔)

  1. 会社から離職票を受け取る
  2. 必要書類(本人確認書類・通帳など)を揃える
  3. ハローワークで求職の申込みと給付手続きを行う

注意点

  • 離職票がないと給付申請できません。早めに会社へ依頼してください。
  • 受給期間や手続きの詳細は個々の状況で異なります。疑問があればハローワークに相談すると安心です。

65歳以上の退職者における離職票

はじめに

65歳以上の退職者も、求職活動を行う際や高年齢求職者給付金を申請する際に離職票が必要になります。年齢にかかわらず、離職の事実を証明する重要な書類です。

なぜ離職票が必要か

離職票は雇用保険の給付や求職手続きの基礎資料になります。高年齢向けの給付金は手続きに離職票の提示を求められるため、65歳以上でも離職票が無いと申請できません。

発行をすすめる理由

継続雇用の促進という観点から、本人の希望にかかわらず離職票を発行することが望ましいとされています。たとえば定年退職後に再雇用の手続きを行う場合でも、後で給付を受ける可能性があるため、企業は離職票を用意しておくと安心です。

手続きの流れ(具体例)

  • 会社は離職した事実を確認し、離職票を作成して本人に交付します。
  • 交付後、退職者はハローワークで離職票と本人確認書類、振込先の口座情報を提出して申請を行います。
    例:65歳で定年退職→離職票を受け取り、ハローワークで給付金を申請する。

注意点

  • 本人が不要と言っても、将来の給付請求に備え発行しておくと良いです。
  • 退職理由は正確に記載してください。後の手続きでトラブルを避けられます。

以上が65歳以上の退職者に関する離職票の基本的な扱いです。企業・退職者ともに早めの準備を心がけてください。

企業の法的義務と離職証明書の作成

背景と義務

雇用保険法第76条3項により、企業は離職票の発行・交付を義務付けられています。離職票は企業が作成する離職証明書をハローワークに提出して初めて交付されます。59歳以上の退職者については、本人の希望にかかわらず離職票交付が必須です。

作成と提出の流れ(実務的)

  1. 退職者が出たら、企業は離職証明書を作成します。氏名、雇用期間、退職の事由、最終給与などを記載します。署名または押印を忘れないでください。
  2. 離職証明書をハローワークへ提出します。ハローワークで内容を確認したのち、離職票が発行されます。

記載項目のチェックリスト(例を含む)

  • 氏名、住所、生年月日
  • 雇用開始・終了日
  • 退職の事由(例:自己都合=退職届によるもの、会社都合=解雇・倒産など)
  • 最終賃金や支払状況
  • 雇用保険の加入期間

59歳以上の注意点

59歳以上は本人の交付希望の有無に関係なく離職票の交付が必要です。本人が不要と言っても発行しないと法的責任を問われる可能性があります。

不履行時の対応と実務上の助言

離職票の未作成や提出遅延は企業側のリスクになります。作成後は写しを社内で保存し、疑義があれば速やかにハローワークや社会保険労務士に相談してください。誤記載があれば訂正手続きで対応できます。

実務では「できるだけ早く、正確に」作ることを心がけてください。担当者のチェックリストを用意するとミスを防げます。

高年齢雇用継続給付の申請に必要な追加書類

概要

高年齢雇用継続給付を申請する際は、離職票に加えて「雇用保険被保険者六十歳到達時賃金証明書」の提出が必須です。この書類は、60歳以降の賃金が60歳時点の賃金の75%未満に低下したことを事業主が証明するためのものです。

作成者と署名

  • 作成は原則として事業主が行います。会社の代表者印や担当者の署名が必要です。

書類に記載する主な項目

  • 60歳到達時の賃金額(基礎となる月額等)
  • 60歳以降の賃金額の推移(例:毎月の賃金、または基準となる平均額)
  • 計算方法の簡潔な説明

添付書類(例)

  • 賃金台帳や給与明細の写し(該当期間)
  • 就業規則や雇用条件通知書の写し(賃金の決定方法がわかるもの)

提出のタイミング

  • 給付申請と同時に提出します。遅れると審査に時間がかかることがあります。

よくある注意点

  • 金額が社内資料と一致しないケースが多いので、賃金台帳と照合してください。
  • 押印や署名が欠けると受理されないことがあります。
  • ボーナスや各種手当の扱いは会社の支払方針により異なります。給与明細で明示してください。

チェックリスト(簡単)

  • 事業主の署名・押印がある
  • 60歳時点とその後の賃金が明記されている
  • 賃金台帳や給与明細を添付している

上記を揃えると、審査がスムーズに進みやすくなります。不明点は年金事務所やハローワークに確認してください。

実務上の注意点

退職手続きでは順序立てて進めるとミスを防げます。ここでは現場でよく出る注意点を分かりやすく整理します。

確認と説明

  • まず退職者に離職票が必要か確認します。特に59歳以上の退職者には、本人の希望にかかわらず離職票の交付が義務です。丁寧に理由を説明し、誤解を避けます。
  • 退職理由や最終出勤日を本人とすり合わせ、記載ミスを防ぎます。例:最終出勤日が異なると給付手続きに時間がかかります。

離職証明書の作成

  • 氏名、雇用期間、退職理由などを正確に記入します。社内の勤怠記録や給与台帳と照合してください。
  • 記載に不明点があれば本人に確認してから提出します。例:有給消化の扱いで認識が違う場合があります。

提出と交付の手順

  • 離職証明書をハローワークに提出し、交付された離職票を退職者に渡します。交付は速やかに行ってください。
  • 交付後は受領印や送付記録を残して証拠を保存します。

特別なケース

  • 再雇用や嘱託で再入社する場合、事前に取扱いを確認します。死亡や長期不在のケースでは代理人や必要書類を整えます。

保存とトラブル対応

  • 提出書類のコピーは社内で保管し、問合せがあれば速やかに対応します。疑義があるときはハローワークに相談し、記録を残して対応方針を決めます。

これらを日常業務に組み込むことで、トラブルを減らし退職者への対応を円滑に進められます。

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