はじめに
本資料は、離職票に関する基本的な知識と実務上の注意点を、わかりやすくまとめたガイドです。離職票とは何か、その構成、発行手続き、ハローワークでの扱いまでを体系的に説明します。退職後に失業保険を受けるために必要な書類であり、正しく理解しておくことが大切です。
目的
– 退職者が離職票の役割を理解し、申請までの流れを把握できるようにすること。
– 企業の人事担当者が発行手続きをスムーズに行えるようにすること。
対象読者
– 退職予定または既に退職した方
– 人事・総務担当者
– 派遣、パートタイムで働く方
本資料の構成
第2章:離職票の基本定義
第3章:離職票の構成要素
第4章:離職票と離職証明書の違い
第5章:発行手続きの流れ
第6章:提出期限と法的義務
第7章:離職票に記入する情報
第8章:ハローワークでの手続き
第9章:離職票を提出しない場合の影響
第10章:転職先への提出は不要
この章立てに沿って順に読み進めることで、離職票に関する疑問や実務上の不安を解消できます。具体例や手続きのポイントも随所に示しますので、初めての方でも安心してお読みください。
離職票の基本定義
概要
離職票は正式には「雇用保険被保険者離職票」と呼ばれる公的書類です。雇用保険に加入していた従業員が退職や解雇などで離職した事実を証明します。主にハローワークで失業保険(基本手当)を受けるときに必要となるため、受給手続きの最初に提出する重要な書類です。
含まれる主な情報
- 離職の理由(自己都合・会社都合など)
- 退職前の賃金や勤続期間
- 離職日や事業所名
これらの情報をもとにハローワークが受給資格や支給額、給付開始時期を判断します。具体例として、自己都合退職と会社都合退職では給付開始までの待機期間や給付日数が変わります。
重要性と利用場面
離職票がなければ失業保険の申請ができません。転職先への提出は通常不要ですが、受給手続きや過去の雇用記録の確認の際には必ず保管しておいてください。
受け取り時の注意点
記載内容に誤りがあれば速やかに勤務先に確認・訂正を依頼してください。記載内容が不明確だとハローワークで手続きが遅れることがあります。必要書類は大切に保管し、ハローワークの窓口で提示できるようにしておきましょう。
離職票の構成要素
離職票は主に2つの書類で構成されています。ここではそれぞれの役割と記載内容をわかりやすく説明します。
離職票-1(雇用保険被保険者資格喪失届)
- 役割:退職者本人が記入する基本情報の書類です。
- 記載項目の例:氏名、生年月日、住所、雇用保険被保険者番号、退職日など。
- ポイント:本人の氏名や生年月日などは戸籍やマイナンバーと照らして正確に記入してください。記入ミスがあると手続きが遅れることがあります。
離職票-2(被保険者離職証明書の本人控)
- 役割:主に事業主が記入する、賃金や離職理由などを示す書類です。ハローワークでの受給手続きに重要な情報が含まれます。
- 記載項目の例:離職日、離職理由(コードや簡潔な説明)、直近の賃金支払い状況(賃金総額や支払期間)、事業主の氏名・押印など。
- ポイント:離職理由は給付制限に関わるため、事業主と退職者で内容を確認しておくと安心です。賃金欄は給与明細を基に正確に記入します。
受け取りと保管の注意点
- 退職後に会社から受け取ったら、まず記載内容を確認してください。
- 誤りがあれば速やかに事業主に訂正を依頼します。
- 離職票はハローワークでの給付手続きに必要ですから、大切に保管してください。
離職票と離職証明書の違い
概要
離職票と離職証明書は名前が似ていますが、用途と発行者が異なります。ここでは具体例をまじえて、わかりやすく説明します。
定義と役割
- 離職証明書(雇用保険被保険者離職証明書): 企業が作成しハローワークに提出する書類です。雇用保険の加入期間や離職理由を記録し、事業所とハローワーク間の手続きに使います。
- 離職票: ハローワークが発行して退職者に渡す書類です。失業給付の申請で直接提出するための証明書になります。
発行・提出の主体
- 企業: 離職証明書を準備し、必要書類とともにハローワークへ提出します。
- ハローワーク: 企業からの情報をもとに離職票を作成し、退職者へ送付します。
実務上の違い(具体例)
- 企業が正しく離職証明書を提出しなければ、離職票の発行が遅れます。
- 退職者は離職票を受け取り、ハローワークで失業給付の手続きを行います。離職証明書を本人が直接使うことは通常ありません。
受け取りまでの注意点
- 退職後、会社に離職証明書の提出状況を確認してください。
- 離職票が届かない場合はハローワークにも相談しましょう。
よくある誤解
- 「離職票を会社が出す」と言われる場合、実際は会社が離職証明書を提出し、その後ハローワークが離職票を発行します。
発行手続きの流れ
ステップ1:企業の届出(離職日の翌日から10日以内)
企業は、従業員が離職した日の翌日から10日以内にハローワークへ届出を行います。その際、離職証明書と雇用保険資格喪失届を提出します。記入は事実に基づき正確に行い、担当者の押印や署名が必要です。例:4月1日退職なら4月2日から数えて10日以内に届け出ます。
ステップ2:ハローワークの確認と発行
ハローワークは届出書類を確認し、不備がなければ離職票-1と離職票-2を発行します。不明点がある場合は企業へ照会しますので、書類に誤りがあると発行が遅れます。通常は数日から数週間で処理されます。
ステップ3:企業から退職者へ交付
発行された離職票は企業宛に届きます。企業は退職者へ郵送または手渡しで交付します。住所変更がある場合は事前に企業に伝えてください。企業の対応が遅れると受け取りや失業給付の申請が遅れますが、まずは企業へ確認し、それでも進まない場合はハローワークに相談してください。
補足(よくある注意点)
- 書類の誤記で発行が遅れることが多いです。必ず内容を確認してください。
- すぐに離職票が必要なら、企業に発送方法や期日を確認してください。
- 企業と連絡がつかない場合は、ハローワークに相談すると次の手続き方法を案内してくれます。
提出期限と法的義務
法律で定められた期限
企業は、従業員が退職した場合、退職日の翌々日から数えて10日以内に離職証明書をハローワークへ提出する義務があります。これは事業主の法的な責務です。
期限の数え方(具体例)
例:1月1日に退職した場合、翌々日は1月3日です。1月3日を起点に10日以内ですから、1月12日が提出期限になります。日数は暦日で数えますので、休日や祝日をまたいでも期限は変わりません。
提出の実務ポイント
- 会社の担当者が作成・押印し提出します。郵送・窓口持参・電子申請のいずれかで提出できます。
- 提出後は控え(写しや受領印)が残るようにします。内部で提出期限を管理し、退職発生時に速やかに対応する体制を整えるとよいです。
期限を守る重要性と影響
期限を守らないと、従業員側の失業給付手続きが遅れる可能性があります。また、行政からの指導や罰則の対象となる場合もありますので、期限遵守を徹底してください。
離職票に記入する情報
退職者本人は離職票-1に必要な情報を正確に記入します。以下に、項目ごとの書き方と注意点をわかりやすく整理します。
記入する主な項目
- 氏名:住民票と同じ表記で記入します。ローマ字は不要です。
- 住所:現住所を番地まで正確に書きます。郵便番号も忘れずに。
- マイナンバー(個人番号):税手続きのために必要です。指定欄に記入します。
- 連絡先(電話番号):ハローワークや会社からの連絡で使います。
- 振込先金融機関:銀行名、支店名(または支店コード)、口座種別(普通・当座)、口座番号、口座名義を記載します。
口座情報の書き方
口座名義は銀行に登録してある通りに記入してください。氏名に旧姓やフリガナが登録されている場合は、銀行届出と一致させると振込ミスを防げます。支店名は略さず正式名称で書くと安心です。
マイナンバーと個人情報の取り扱い
マイナンバーは機微情報です。渡す際は封筒で封をしたり、会社の案内に従って安全に提出してください。コピーを取る場合、保存期間や破棄方法について会社に確認しましょう。
訂正や代理記入の対応
記入ミスは二重線で訂正し、訂正印や自署で認める場合があります。原則は本人の記入を求められます。どうしても代理で記入する場合は、事前に会社に相談し、委任に必要な書類を確認してください。
最後に、記入後は内容を必ず見直し、特に口座名義やマイナンバーに誤りがないか確認してください。誤記は給付の遅延につながります。
ハローワークでの手続き
準備するもの
- 離職票(事業主が交付したもの)
- 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
- 年金手帳や雇用保険被保険者番号が分かる書類
- 印鑑は原則不要だが、念のため持参すると安心です
窓口での流れ
- 受付で離職票を提出し、求職申込みの手続きを行います。
- 担当者が離職票の内容(離職理由、勤続期間、賃金など)を確認します。
- 確認が終わると「雇用保険受給資格者証」を交付します。これで給付手続きが正式に始まります。
交付後の手続き
- 受給資格者証を受け取ったら、失業認定の説明会に参加します。
- 受給には待期期間や給付制限がある場合があり、担当者が説明します。
- 以後は所定の期間ごとに失業の状況を申告(失業認定)します。
不備や代理申請について
- 書類に不備があると差戻しや追加書類の案内があります。早めに対応してください。
- 代理人が手続きを行う場合は委任状が必要になることがあります。
注意点
- 離職理由に疑義がある場合は、事業主に確認して訂正してもらってください。
- 受給開始や給付日程は個人の状況で異なります。担当者の案内をよく聞いて進めましょう。
離職票を提出しない場合の影響
- はじめに
企業から交付された離職票をハローワークに提出しないと、失業給付の申請手続きが始まりません。したがって、給付金を受け取れないか、受給が大幅に遅れる可能性があります。
-
主な影響(具体例付き)
-
受給開始ができない
離職票がなければハローワークは給付の審査を開始できません。例えば家賃の支払いが必要な方は、給付が間に合わず経済的に困ることがあります。 -
受給期間や金額に影響することがある
手続きが遅れると、受給できる期間が短くなる場合や、開始時期が後ろにずれる場合があります。ケースによっては受給資格の確認に時間がかかり、不利益が生じることがあります。 -
再手続きや追加書類の手間
未提出が判明すると、ハローワークから追加の確認や書類提出を求められるため、手続きが複雑になります。 -
対処法(速やかに行うこと)
-
交付元の企業に連絡して離職票の交付・再発行を依頼する
- 紛失や未交付の場合はハローワークへ相談する。状況に応じて代替の対応を案内してくれます
-
書類が整い次第、速やかに提出することで遅延による影響を最小化できます
-
最後に
離職票の提出は受給手続きの第一歩です。時間をあけずに手続きを進めると安心です。
転職先への提出は不要
説明
離職票は、主にハローワークで失業給付を受けるための書類です。転職先の会社に離職票を提出する必要はありません。転職先は雇用契約や給与明細など別の書類で手続きを行います。
なぜ提出不要か
離職票は過去の雇用保険の記録や離職理由を示すための公的書類で、受給資格の確認を目的とします。新しい雇用者が知る必要のある情報ではないため、提出義務がありません。
実務上の注意点
- 離職票の原本は紛失しないよう保管してください。
- 転職先が前職の在籍期間や退職理由を確認したい場合は、雇用証明書や源泉徴収票を求められることがあります。
代わりに行う手続き
転職先には、入社時に住民票、マイナンバー、雇用契約書、源泉徴収票などを提出します。失業給付を受ける方は、ハローワークで離職票を提出して手続きを進めてください。
よくある誤解
「離職票を見せないと入社できない」と思う方がいますが、実際には不要です。ただし、入社手続きで別の証明書が必要になる点に注意してください。


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