はじめに
目的
本資料は、企業が退職者に発行する離職票の保管期間について、法律上の義務と実務上の扱いをわかりやすく整理するために作成しました。特に保管期間が「4年間」である点と、起算日の取り扱いを中心に解説します。
対象読者
人事担当者、総務担当者、小規模事業の経営者、労務管理に関心のある方を想定しています。専門知識がなくても読み進められるように書いています。
本資料で扱う主な項目
- 離職票の保管期間と起算日
- 発行期限と保管期間の関係
- 他の労働関連書類との違い
- 保管方法と廃棄時の注意点
- 保管義務に違反した場合の罰則
読み方のポイント
各章は実務で使えるように具体例を交えて説明します。まずは次章で「保管期間が4年間である理由」と「いつから数えるか」を確認してください。
離職票の保管期間は4年間
法律の根拠
雇用保険法施行規則第143条により、離職票は被保険者に関する書類として4年間の保管が義務付けられています。事業主はこの期間、原本を保持する責任があります。
他の雇用保険関連書類との違い
雇用保険の多くの書類は2年間の保管で足りますが、離職票だけは4年と長めに定められています。重要性が高く、給付の確認や過去の記録照会で必要になるためです。
なぜ長く保管するのか(具体例)
- 元従業員が給付の受給資格を争う場合、離職票が証拠になります。
- 行政の調査や監査で過去の手続きを確認されることがあります。
保管の実務上の注意点
- 電子保存も可能ですが、検索や改ざん防止の体制を整えてください。
- 退職者ごとに整理し、廃棄は4年経過後に行ってください。不要不急に早く廃棄しないよう気を付けましょう。
保管期間の起算日
起算日の基本
離職票の保管期間は、退職者が実際に退職した日を起算日とします。つまり退職日から数えて4年間の間は、離職票を保存する必要があります。
数え方(具体例)
例:2025年6月30日に退職した場合
– 起算日:2025年6月30日
– 保管期間:2025年6月30日から4年間
– 保存期限の最終日:2029年6月29日
– 廃棄可能日:2029年6月30日以降
このように起算日は退職日その日で、保存期間はその日を含めて4年分となります。
注意点
- 退職日が書類により異なる場合は、実際に労働契約が終了した日を基準にしてください。
- 再就職や手続きの関係で離職票を保管しておく必要があることもあるので、廃棄前に利用予定がないか確認してください。
以上が保管期間の起算日の基本です。必要に応じて会社の総務や労務担当に確認してください。
離職票発行の期限と保管期間の関係
発行期限の説明
企業は、離職した従業員に対して、退職日の翌々日から10日以内に離職票を発行する義務があります。これは従業員が失業給付を受けるために必要な書類で、迅速な対応が求められます。
発行期限と保管期間は別の概念
発行期限は「いつまでに作るか」のルールです。一方、保管期間は「作った後どれだけ保管するか」のルールです。発行後は4年間、会社側で保管する必要があります。発行が遅れても保管義務は残りますが、発行期限を守らないと問題になります。
実務上の注意点(具体例付き)
- 発行日を明確に記録する:紙・電子のどちらでも、発行日を記録してください。例:退職日が1月1日の場合、1月3日から数えて10日以内に発行。
- 元の書類の写しを保管する:従業員に渡した控えや発送記録を残すと証拠になります。
- 手続きフローを定める:総務や人事で担当者と締切日を共有してください。
期限を守らなかった場合の対応
期限を超えたら、速やかに離職票を発行し、遅延理由を社内で記録してください。発行期限を守らないと罰則の対象になる可能性があるため、再発防止策を講じましょう。
他の労働関連書類との保管期間の違い
他の労働関連書類との保管期間の違い
労働関連書類は種類ごとに保存期間が異なります。ここでは代表的な書類と保管期間を分かりやすく説明します。
- 雇用契約書・労働条件通知書
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原則5年間(当面は3年間)。雇用内容や給与・勤務時間の証拠になるため、退職後も一定期間は保管してください。たとえば、解雇や未払い賃金のトラブルで役立ちます。
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雇用保険関係書類
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一般に2年間。失業給付の手続きや過誤訂正に必要なため、規定の期間は保存します。
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離職票
- 4年間。雇用契約書と雇用保険書類の間に位置する保管期間です。失業給付や職歴の証明に使うことがあるため大切に保管してください。
実務上の注意点
– 書類ごとに保管期限が異なるため、廃棄前に期間を確認してください。
– 原本に加えスキャン保存を行うと管理が楽になります。ただし原本が必要な場面もあるため、原本は確実に保管してください。
– 不安があれば、労働基準監督署やハローワークに相談してください。
保管方法と廃棄時の注意点
保管方法(紙・データ共通)
- 紙で保管する場合は、個別ファイルに封筒やバインダーで保管し、目録(誰の、いつ退職したか)を作成します。例:離職票_山田太郎_2024.pdf(データ)や「離職票_山田太郎_2024」フォルダ(紙)。
- データで保管する場合は、パスワード管理やアクセス権限を設定し、定期的にバックアップを取ります。クラウド利用時はアクセスログを残してください。
保管場所と管理責任
- 物理書類は施錠できるキャビネット、電子データは権限管理されたサーバーで管理します。
- 管理責任者を決め、誰がいつ閲覧・廃棄するかを明確にしてください。
廃棄前の確認と手順
- 保管期限(原則4年)を確認した上で廃棄します。請求や争いが予想される場合は期限を延長して保管してください。
- 廃棄は複数人で期限到来を確認してから実行します。少なくとも2名の承認を得ると安全です。
廃棄方法と記録
- 紙はクロスカットシュレッダーまたは溶解処理で安全に廃棄します。外部に委託する場合は委託先の遵守状況を確認します。
- 電子データは上書き消去や専用ツールで復元できないように処理します。
- 廃棄した際は、廃棄日・担当者・対象(氏名・保存期間)を記録し、保存しておきます。
注意点(具体例)
- 未払賃金の請求や過労死に関する争いが起きた場合、証拠として再提出を求められることがあります。重要な事案では期限を過ぎても慎重に保管してください。
罰則について
概要
離職票の保管期間(通常4年)を守らないと、労働基準法違反として30万円以下の罰金が科される可能性があります。正確な記録管理が大切です。
罰則の具体例
- 保管期間を過ぎて重要書類を廃棄した場合
- 紛失や管理不備で離職票を提示できない場合
上記のような事案が発覚すると、労働基準監督署から是正指導や罰金の対象になります。
どのような影響が出るか
離職票の管理不備は当事者の失業給付手続きに支障を来します。会社に対する行政処分や信頼低下につながる恐れがあります。
罰則を避けるための具体的対策
- 保管場所と担当者を明確にする
- 管理台帳やチェックリストを作る(廃棄時も記録)
- 電子化してバックアップをとる
- 定期的に棚卸しや監査を行う
問題が生じた場合は、速やかに労働局や社労士に相談して対応を検討してください。
まとめ表:労働関連書類の保管期間比較
以下に主要な労働関連書類の保管期間を分かりやすくまとめます。法律の根拠と起算日、管理時の注意点も記載しています。
- 離職票(被保険者関係)
- 保管期間:4年間
- 根拠:雇用保険法施行規則第143条
- 起算日:退職日
-
注意点:再発行が難しいため原本を保存します。
-
雇用契約書・労働条件通知書
- 保管期間:原則5年(当面3年とされる場合あり)
- 根拠:労働基準法第109条
- 起算日:退職日または死亡日
-
注意点:契約内容の証拠となるため退職後も保管します。
-
一般的な雇用保険書類
- 保管期間:2年間
- 根拠:雇用保険法施行規則第143条
- 起算日:手続きの完結日
-
注意点:手続き記録を整理して期間管理します。
-
労災保険に関する書類
- 保管期間:3年間
- 根拠:労働者災害補償保険法
- 起算日:手続きの完結日
- 注意点:発生後の請求に備えて保管します。
上記は代表的な書類です。企業はこれらを正確に管理し、保管期限が過ぎたら個人情報に配慮して適切に廃棄してください。電子保存する場合もバックアップとアクセス管理を行ってください。


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