労働基準法 第15条の明示義務と最新改正ポイントを徹底解説

目次

はじめに

本記事は、労働基準法第15条が定める「労働条件の明示義務」について、実務で使えるよう分かりやすく解説することを目的としています。採用担当者や人事労務のご担当者、働く方ご本人まで、幅広い方に役立つ内容です。

なぜ重要か。労働条件を明確にすることは、雇用トラブルを未然に防ぎ、労使の信頼関係を築く基礎になります。たとえば、勤務時間や賃金、休暇の取り扱いを採用時に書面で伝えておけば、後日の誤解や争いを避けやすくなります。

本稿では、全9章の構成で段階的に説明します。第2章で法律の全体像を示し、第3章で具体的に何を明示すべきかを挙げます。第4章は明示の方法とタイミング、第5章は違反時のリスク、第6章は労働者の権利について扱います。第7章は最新の改正点、第8章で書面(労働条件通知書)と雇用契約書の違いを説明し、第9章では実務で注意すべきポイントをまとめます。

読みやすく実務に直結する例を交えますので、疑問があればその都度参照してください。法律の解釈が分かれる場合は、労働基準監督署や専門家に相談することをおすすめします。

労働基準法第15条の概要

趣旨

労働基準法第15条は、事業者が雇用契約を結ぶ際に労働者へ労働条件を明確に示す義務を定めます。労働者が働く前に待遇や勤務時間などが分かるようにすることで、誤解やトラブルを未然に防ぐ狙いがあります。

適用範囲

正社員だけでなく、契約社員、パート、アルバイト、派遣労働者などすべての雇用形態に適用されます。口頭での合意だけで済ませず、必要な事項は所定の方法で示すことが求められます。

明示の目的と効果(簡単な例つき)

  • 求人時や採用時に賃金や労働時間を示すことで、入社後の認識ずれを防げます。
  • 例えば時給や始業・終業時刻、勤務地を事前に伝えれば、労働者は勤務の可否を判断しやすくなります。

明示の対象となる主な事項(詳細は第3章へ)

代表的な項目は賃金、労働時間、休憩・休日、契約期間、業務内容、就業場所、退職に関する事項などです。これらは厚生労働省令でより具体化されています。

ポイント

雇用形態に関わらず明示義務がある点と、示す内容は法律と省令で要件が定められている点を押さえておきましょう。次章で具体的な明示項目をわかりやすく解説します。

明示すべき労働条件の具体的内容

賃金(給与)

基本給・各種手当(通勤・住宅・役職など)、支払方法(口座振込など)、支払日・締日を明確にします。例えば「毎月25日支払/翌月末振込」のように記載すると分かりやすくなります。割増賃金(時間外・深夜・休日の率)や控除項目も示します。

労働時間・休憩・残業

始業・終業時刻、休憩時間、所定労働時間の週・日ごとの目安を示します。残業の有無と割増率、変形労働時間制の適用がある場合はその旨と計算方法を記載します。例:始業9時・終業18時、休憩1時間、時間外は25%増し。

労働契約期間

有期契約は開始日・終了日、更新の有無と条件を明示します。試用期間があるときは期間とその間の取り扱い(賃金・待遇)を示します。

就業場所・業務内容

主たる就業場所の住所と具体的な職務内容を記します。転勤の可能性がある場合は範囲や条件を明記します。

休日・休暇

法定休日、所定休日、年次有給休暇の付与日数や取得方法、年末年始・慶弔等の特別休暇の扱いを示します。

昇給・賞与

昇給や賞与の有無、支給時期・算定基準を明確にします。たとえば「業績・勤務評定により年1回査定」のように示します。

退職・解雇に関する事項

退職手続きや自己都合・会社都合の取り扱い、解雇事由や解雇手続き(予告期間や手続)を記載します。

以上の項目は労働基準法施行規則で定められ、書面または電子的手段での明示が求められます。具体例を添えると労使間の誤解を防げます。

明示の方法とタイミング

いつ明示するか

労働契約の締結時に、事前または同時に明示します。入社の内定時にメールで通知したり、入社初日に書面を渡したりする例が多いです。労働条件に変更がある場合は、変更前に速やかに労働者に伝えます。

どのように明示するか

従来は書面が基本でしたが、2019年以降は電子交付も認められます。具体例としては、紙の労働条件通知書、雇用契約書、メール添付のPDF、企業のポータルサイトやスマホアプリでの表示などがあります。ポイントは「労働者が容易に確認・保存できる方法」であることです。端末を持たない労働者には紙で渡す配慮が必要です。

変更時の対応

労働条件を変更する場合は、変更内容と施行時期を明確にし、事前に説明して同意を得るようにします。口頭での説明は補助として有効ですが、記録が残る書面や電子データでの明示を併用してください。

実務上の注意点

・交付記録(交付日、方法、受領確認)を残すとトラブル予防になります。
・電子交付では、ダウンロード・印刷が可能か、閲覧権限の管理を確認します。
・2024年4月の法改正で明示事項が追加されたため、厚生労働省のモデル通知書や就業規則の改訂版を参照して内容を整えてください。

違反した場合の罰則・リスク

労働基準法第15条に違反すると、法律上の罰則だけでなく実務上さまざまなリスクが発生します。ここでは分かりやすく整理して解説します。

1. 法的な罰則

  • 労働基準監督署からの指導・勧告が入ります。是正を求められることが多いです。
  • 刑事罰:労働基準法第120条第1号により、30万円以下の罰金が科される可能性があります(悪質な場合や再犯時に厳しく扱われます)。

2. 行政的・社会的リスク

  • 改善命令や行政処分が出る場合があります。行政の指導が公開されると企業イメージに影響します。
  • 企業の信用低下により採用や取引に悪影響が出ます。

3. 実務上のリスク

  • 労使トラブルや訴訟に発展しやすく、損害賠償や未払賃金の請求に発展することがあります。
  • 担当者の業務負荷が増し、社内の信頼関係が損なわれます。

4. 発覚後に取るべき対応(実務的)

  1. 事実関係を速やかに確認する。書面や契約書を洗い直します。
  2. 不備があれば速やかに是正し、従業員へ書面で周知します。
  3. 労働基準監督署に相談・報告し、指示に従います。
  4. 再発防止のため、手続きの整備や担当者研修を実施します。

早めに対応すれば、罰則や信頼失墜のリスクを小さくできます。違反が疑われる場合は速やかに専門家や監督署に相談すると安心です。

労働条件明示と労働者の権利

労働条件が実際と異なるときの権利

使用者が明示した労働条件が実際の労働条件と異なる場合、労働者はその契約を直ちに解除できます。これは労働基準法の趣旨に基づく労働者保護の措置です。たとえば、提示された勤務時間が実際より大幅に長い、賃金が約束と違う場合などが該当します。

契約解除の手続きと効果

契約解除は書面で行うと後のトラブルを防げますが、口頭でも有効です。解除後は未払賃金の請求や、実労働に応じた賃金の請求が可能です。使用者に故意や重大な過失がある場合は損害賠償を求めることもあります。

帰郷に伴う旅費負担

住居を変更して就業した労働者が、契約解除後14日以内に帰郷する場合、使用者は必要な旅費を負担しなければなりません。旅費の範囲は通常の移動費用を基準としますが、具体的な額は個別の事情で変わります。

具体例と注意点

採用時の書面やメールを保存し、異なる点があれば速やかに記録を取ってください。旅費請求は領収書を保管することで証明が容易になります。疑問がある場合は労働基準監督署や専門家に相談することをおすすめします。

最新の改正点(2024年4月~)

改正の趣旨

2024年4月から、労働条件の明示事項がすべての労働者に対して拡充されました。目的は、労働者が入社前に働き方や待遇をより正確に把握できるようにすることです。モデル通知書や就業規則も改訂され、事業者側により丁寧な説明が求められます。

主な追加事項(例)

  • 賃金の計算方法や支払日、控除の内訳
  • 休暇・休日の取り扱い、所定労働時間の起点
  • 試用期間や短時間・フレックス勤務の条件
  • 在宅勤務やテレワークに関する取り決め
    これらは例であり、具体的な追加項目や新様式は厚生労働省の公式サイトで公開されています。

企業が取るべき対応

  • 最新のモデル通知書を確認し、社内書式を見直してください。
  • 労働者に分かりやすく伝える文言に置き換えることを推奨します。
  • 必要に応じて労務担当や社労士と相談してください。

通知書・運用のポイント

  1. 書面交付を基本とし、電子で交付する場合は本人同意などに配慮してください。
  2. 変更時は速やかに再通知し、保存・記録を残してください。
  3. 実務で迷う点はモデル様式と就業規則の改訂箇所を照合すると確認しやすいです。

労働条件通知書と雇用契約書の違い

目的の違い

労働条件通知書は、雇用主が労働基準法に基づいて労働条件を明示するための書面です。一方、雇用契約書は雇用契約そのものを証する書面で、当事者の合意内容を示します。

法的な位置づけ

労働条件の明示は事業主の義務(明示義務)です。明示がなければ法的責任が生じます。雇用契約書は契約の証拠として重要ですが、必ずしも法で交付が義務付けられているわけではありません。

記載内容と実務上の差

両者は記載項目が重なることが多い(賃金、勤務時間、就業場所など)。違いは次の点です。
– 雇用契約書:労働条件に加え、業務内容、守秘義務、懲戒規定、解約条件など細部を明記し、署名で合意を確認する例が多い。
– 労働条件通知書:法定の必須項目を漏れなく書面で提示することが目的。署名は必須ではありません。

交付・変更の扱い

採用時には少なくとも労働条件通知書を交付してください。両者を一本化して「雇用契約書兼労働条件通知書」とする運用が実務では便利です。労働条件を変更する場合は、労働者の同意を得て書面で通知することが望ましいです。

実務上の注意点(例)

  • 電子メールで通知する場合は、保存と確認ができる形式にする。
  • 外国語対応が必要な場合は翻訳を添える。
  • 交付記録と保管を残し、面接時の説明内容と一致するようにする。

実務担当者向けの注意点

1) 労働条件通知書は必ず交付

入社時はもちろん、労働条件に変更があれば速やかに書面で明示してください。例えば雇用形態や賃金、労働時間の変更時に再交付します。

2) 電子化する場合の留意点

電子交付でも、労働者が容易にアクセス・保存できることが必須です。具体例:社内ポータルにログインしていつでも閲覧できる仕組み、閲覧履歴や送付履歴を残す運用、PDFでダウンロード可能にするなど。

3) 書式と内容の確認

2024年改正の新ルールに合わせ、必須項目が漏れないテンプレートを用意してください。実務ではチェックリストを作り、賃金や始業終業時刻、契約期間の記載を点検します。

4) 運用フローを明確に

誰がいつ交付し、誰が保管・更新するかを決めます。人事と現場で責任者を分担し、変更時の承認フローを設定するとミスを防げます。

5) 違反時のリスク管理

交付漏れや不備は労働基準監督署の指導や行政処分、裁判での不利につながります。リスクを見える化し、定期的に社内監査を行ってください。

6) 実務チェックリスト(例)

  • 交付日・交付方法の記録
  • 必須項目の記載確認
  • 電子交付のアクセス確認
  • 変更時の再交付手続き

上記を日常業務に組み込み、確実な運用を心がけてください。

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