はじめに
本資料の目的
本資料は、パートタイム従業員(以下、パート従業員)に関する有給休暇のルールを分かりやすくまとめたガイドです。法律に基づく取得条件や付与日数の計算方法、時間単位での取得、契約変更時の扱いなど、実務で役立つポイントを中心に解説します。
対象読者
・人事労務担当者・経営者
・パート従業員本人やその家族
・労働条件を確認したい方
内容の概要
続く章では、まず取得条件を明確にし、フルタイムとパートの違いを示します。次に具体的な付与日数の算定方法を説明し、時間単位での取得や、労働契約を変更した際の取り扱いも扱います。
読み方のポイント
法律用語は可能な限り平易に説明します。実際の計算例を交えて解説しますので、実務でそのまま使える知識が得られます。
簡単な例
週3日勤務のパート従業員が、有給の発生要件を満たすとどのように日数が決まるかを、後半で具体的に示します。
パート従業員の有給休暇取得条件
対象となる人
パートやアルバイトの方も、有給休暇を取得する権利があります。労働時間や雇用形態にかかわらず、法律上の要件を満たせば付与されます。
付与されるための主な条件
有給休暇が付与されるには、次の2つを満たす必要があります。
- 継続勤務が6か月以上であること
- 基準期間(その6か月間)における出勤率が80%以上であること
これらの条件を満たさない場合は、有給休暇の付与は認められません。
出勤率の考え方(わかりやすい例)
出勤率は、実際に出勤した日数を所定の勤務日数で割って求めます。簡単な例を示します。
- 例1(週5日勤務の短期雇用): 6か月で所定勤務日が120日だった場合、80%は96日です。96日以上出勤していれば条件を満たします。
- 例2(週3日勤務のパート): 6か月で所定勤務日が78日だった場合、80%は約63日です。63日以上出勤していれば条件を満たします。
計算では、欠勤や遅刻の扱い、会社が認める休暇の種類によって日数の扱いが変わる場合があります。具体的な扱いは雇用契約や就業規則を確認してください。
企業の対応と注意点
企業が「パートには有給がない」と一方的に主張するのは、法律に反する可能性があります。パートだからといって有給が無条件で否定されるわけではありません。雇用主は有給の付与条件を明確にし、労働者に説明する義務があります。
わからない点があれば、就業規則や雇用契約を確認するか、労働基準監督署などに相談してください。
フルタイム従業員の有給休暇日数
定義
週の所定労働日数が5日以上、または年間217日以上、かつ週平均労働時間が30時間以上の従業員をフルタイムと定義します。該当する場合、有給休暇の付与対象になります。
付与日数のしくみ
フルタイムの従業員は、勤続年数に応じて有給休暇が増えます。一般的に、入社後6か月間の継続勤務を満たすとまず10日が付与されます。その後は勤続年数に応じて段階的に増え、最終的に最大20日まで付与されます。
具体例
例としては、入社6か月で10日、数年後に14日、さらに勤務を続けると20日になることがあります。企業によって増加のタイミングや日数の細かい設定が異なるため、就業規則で確認してください。
注意点
有給休暇の付与日は就業規則で定めます。入社時期や休職の有無により付与時期が変わることがあります。日数の計算や繰越、取得方法について不明な点があれば、人事担当に問い合わせるとよいでしょう。
パートタイム従業員の有給休暇日数
定義と基本方針
週の所定労働日数が4日以下、または年間216日以下、かつ週平均労働時間が30時間以下の従業員をパートタイムと扱います。パートタイムの有給は、勤続年数に応じて段階的に付与されます。勤務実績や契約時間に応じて日数が変わる点が特徴です。
付与の仕組み
有給は単純に固定されるのではなく、フルタイムの付与日数を基準に比率(按分)で決めることが多いです。たとえば、所定労働日数や所定労働時間の割合を用いて計算します。勤務日数や時間が一定の基準を超える場合は、フルタイムと同等の日数が与えられます。
計算例(仮定)
例として、仮にフルタイムの付与が年10日の場合を考えます。週の所定日数や時間が半分なら、有給日数も概ね半分の5日となります。時間で按分する場合も同様で、週40時間を基準に20時間なら50%の按分です。
手続きと注意点
雇用契約や就業規則で所定労働日数・時間を明確にし、付与日数の算定方法を示しておくとトラブルを避けられます。具体的な付与日数や条件は事業所ごとに異なるため、必ず契約書で確認してください。
有給休暇取得の義務化
法改正の概要
2019年4月の改正で、年10日以上の有給が付与される従業員について、事業主に年5日分の有給取得を確実にさせる義務が課されました。これは取得促進のための法律です。
対象者
パートやアルバイトも含め、雇用形態にかかわらず「付与日数が年10日以上」の従業員が対象です。付与要件を満たさない人は対象外です。
事業主の義務と対応例
事業主は、従業員ごとに有給取得状況を把握し、計画的に取得させる必要があります。具体例:
– 年間計画を作成して従業員と共有
– 1対1で取得意思を確認
– 繁忙期を避けた取得案の提示
罰則
取得をさせなかった場合、労働基準法違反として罰則(行政指導や罰金)が科せられる可能性があります。事実に応じた改善措置を速やかに行うことが重要です。
従業員への注意点
自身の付与日数や取得状況は会社に確認してください。希望日がある場合は早めに申請すると調整がつきやすくなります。
時間単位での有給休暇取得
概要
労働基準法の改正により、会社が時間単位の有給休暇制度を導入している場合、パートでも1時間単位で有給を取得できます。導入には労使協定の締結が必要で、年5日以内の範囲で時間単位の取得が認められます。
対象と条件
・会社が制度を設けていること
・労使協定で細目を定めていること
・その年に与えられた年次有給休暇の範囲内であること
申請と手続きの流れ
- 就業規則や労使協定を確認する
- 申請書や所定の手続きを行う(会社ごとに異なります)
- 使用した時間を勤怠で正確に記録する
計算例
例:1日の所定労働時間が4時間のパートが、年10日の付与(計40時間)の場合、1時間単位で最大40時間まで取得できます。ただし会社の制度で「時間単位は年5日以内」と定めている場合は、5日分(この例では5×4時間=20時間)までしか時間単位で取得できません。
注意点
・時間単位で取得できる日数の上限は会社の取り決めに従います。したがって、導入していても利用方法や申請期限など細かい規定があるので、事前に確認してください。
契約条件の変更と有給休暇
既に付与された有給の効力
契約途中で所定労働日数や労働時間が変わっても、既に付与された有給休暇はそのまま有効です。会社が一方的に取り消すことはできません。取得・時効の扱いは変更前の条件で付与された日数に基づきます。
次回付与の扱い
次の基準日(通常は付与の起算日)に応じて、契約状況に合わせて付与日数を見直します。具体的には、基準日における所定労働日数や労働時間に応じて日数を按分して計算します。
具体例
たとえば、週5日勤務で年間10日付与の人が、契約を変更して週3日勤務になった場合、次回付与はおおむね3/5相当へ調整されます。逆にパートからフルタイムに増えれば、付与日数が増えることがあります。
職場での対応と確認ポイント
変更があったら就業規則や労働契約書で付与基準を確認し、会社に記録の修正を依頼してください。疑問がある場合は総務担当や労働基準監督署に相談すると安心です。


コメント