試用期間の退職方法を法律と円満対処で詳しく解説します

はじめに

本資料の目的

本資料は、試用期間中の退職について知りたい方のために、分かりやすく整理したガイドです。制度や手続きの基本、即日退職が認められる場合、円満に辞めるための手順などを順に解説します。

想定する読者

• これから退職を考えている方
• 入社後まもないが事情により退職を検討している方
• 人事や管理職で試用期間中の退職対応を確認したい方

本資料の構成と使い方

第2章から第8章まで、具体的な法的側面や実務的な対応を順序立てて説明します。必要な章だけ読んでも理解できるように、各章に例や伝え方の文例を用意しました。まずは本章で目的と範囲を把握し、その後で自分に関係する章をお読みください。

読む際の注意点

本資料は一般的な情報提供を目的としています。個別の事情については、労働基準監督署や弁護士に相談することをおすすめします。

試用期間中の退職は法律上可能である

試用期間でも退職は可能です

試用期間であっても、労働者は退職の意思を示して退職できます。試用期間は企業が能力や適性を見る期間であり、労働者が働き続けるか判断する権利もあります。

何を確認すべきか

まず雇用契約書と就業規則を確認してください。そこに退職に関する手続きや通知期間が書かれていることが多いです。疑問があれば人事に相談すると安心です。

伝え方と手続きの基本

口頭で上司に伝えたあと、退職届やメールで書面を残すとトラブルが少なくなります。退職日や業務の引き継ぎについて具体的に提案すると円滑に進みます。

具体例

入社後1か月で合わないと感じた場合は、まず上司に面談を申し入れ、退職希望日を伝えます。引き継ぎ方法を示しておけば、印象良く退職できます。

無期雇用と有期雇用での退職ルールの違い

無期雇用（正社員など）

無期雇用では、民法627条に基づき「退職の意思表示をしてから2週間経てば退職できる」とされています。試用期間中でもこのルールが適用されます。たとえば、3月1日に退職を申し出れば、3月15日には退職できます。

有期雇用（契約社員・期間契約など）

有期雇用は契約期間が終わるまで働くのが原則で、期間途中の退職は認められにくいです。ただし、会社側が契約内容を守らない、労働環境が著しく悪い、健康上やむを得ない理由があるなど「やむを得ない事情」があれば、話し合いで早期退職が認められる場合があります。例：給与未払い、パワハラ、業務と契約内容の大きな相違。

手続きと実務上の注意

まずは上司や人事と話し合い、書面で退職の意思を伝えます。合意が得られれば契約期間前でも円満に退職できます。合意が得られない場合は、労基署や弁護士に相談すると解決に向かいやすくなります。

即日退職が認められるケース

はじめに

試用期間中でも、緊急性や重大な事情があるときは即日退職が認められることがあります。ここでは、よくあるケースと取るべき対応を分かりやすく説明します。

主なケース

• 体調の急変や入院が必要になった場合

• 医師の診断書があれば即日退職の理由として強い証拠になります。休養が不可欠であることを示してください。

• 家庭の事情（家族の介護や急な育児など）

• 子どもの病気や家族の介護などで勤務継続が不可能な場合、事情を説明して即日での退職を申し出できます。

• 給与未払いや重大な労働法違反

• 給与が長期間支払われない、雇用契約と著しく異なる業務を強いられる場合は、直ちに退職して構いません。

• パワハラ・セクハラなど安全が脅かされる行為

• 身の安全が脅かされる場合は、待たずに退職できることがあります。録音やメールなどの証拠を集めましょう。

会社と合意できる場合

会社側が同意すれば、双方合意で即日退職できます。円滑に進めるため、退職日・未払分の精算・社内手続きの取り決めを文書で残してください。

取るべき手順（簡潔）

1. まず口頭で事情を伝え、可能なら上司と面談する。
2. 必要な証拠（診断書、給与明細、メール等）を保管する。
3. 退職の意思を文書で提出する（メール可）。
4. 不当な扱いの場合は労基署や労働相談窓口に相談する。

注意点

即日退職は認められることがある一方、手続きや立証が重要です。冷静に記録を残し、必要なら専門家に相談してください。

試用期間中の円満退職手順

1. まず直属の上司に口頭で伝える

最初に直属の上司に直接退職の意思を伝えます。面談の時間を事前に取り、「私事で恐縮ですが、退職を考えております」と切り出すと伝わりやすいです。例：退職希望日を1か月後の月末にしたい、など具体的に伝えます。

2. 退職日を明確にする

就業規則や雇用契約で定められた期間（通常は2週間〜1か月）を確認し、現実的な退職日を決めます。すぐに退職したい場合は、その理由を簡潔に説明し、上司と調整します。

3. 退職届の提出

会社の手続きに従って退職届を作成し提出します。書面のフォーマットがあればそれを使い、無ければ簡単な文面で構いません。提出後は受領印やメールでの確認を必ずもらいましょう。

4. 業務の引き継ぎを行う

引き継ぎ資料を作り、担当業務のポイント・進行中の案件・連絡先を整理します。引き継ぎスケジュールを作り、後任やチームと一緒に確認します。例：作業手順書、ログイン情報の管理方法、重要な締切一覧。

5. 渡すもの・返すものをチェックする

パソコン、IDカード、社用携帯など会社の物をリスト化して返却します。個人データは削除して整理しておきます。

6. 最終出社日までの対応

引き継ぎ状況をこまめに報告し、残務を整理します。最終日には上司や関係者に感謝を伝え、簡単な挨拶メールを送ると印象が良くなります。

7. トラブルを避けるための注意点

口頭だけで済ませず、書面やメールで記録を残してください。給与や保険の扱いは人事に確認し、未払いの有無や手続きの流れを確認しておきます。

退職理由の伝え方と例文

はじめに

退職理由は相手に責任がないことを伝えると円満に進みやすいです。誠実で前向きな表現を使い、引き止められるリスクを減らします。

伝え方の基本ポイント

• 事実ベースで簡潔に伝える。感情や非難は避ける。
• 「会社が悪い」ではなく「自分に合わない」と表現する。
• 退職日や引継ぎ案を用意しておく。
• 最後に感謝の言葉を述べる。

具体的な理由と例文

• 体力的な理由：
  「業務量が想定より体力的に負担となり、職務を継続することが難しいと判断しました。」
• 適性の問題：
  「業務内容と自分の強みにズレがあり、期待通りに貢献できないと感じています。」
• 家庭や通勤：
  「家庭の事情（通勤時間）のため継続が困難になりました。」
• キャリアの方向性：
  「自身のキャリア目標と業務内容が一致せず、別の経験を積みたいと考えています。」

口頭での伝え方（例）

「お時間よろしいでしょうか。入社後に検討した結果、業務内容と自分の適性にズレがあり退職を考えております。退職日は○月○日を希望します。引継ぎは○○の方法で対応します。短い間でしたがお世話になり感謝しています。」

メール・退職届の簡潔な例文

件名：退職のご連絡
本文：このたび一身上の都合により、○月○日をもって退職させていただきたく存じます。業務の引継ぎは○○で対応いたします。短い間でしたがお世話になり、ありがとうございました。

伝える際の注意点

• 感情的にならない。具体的な根拠を示すと説得力が増します。
• 引継ぎ案を示すと印象が良くなります。

最後に、誠意を持って伝えれば相手も対応してくれやすくなります。

試用期間中の早期退職のデメリットと注意点

概要

試用期間中に早期退職する場合、労働上は可能でも不利益が生じます。ここでは主なデメリットと注意点を分かりやすく説明します。

主なデメリット

• 失業手当の受給に影響
• 自分から短期間で退職した場合、ハローワークでの受給制限や給付制限が付くことがあります。例：自己都合退職の扱いで給付開始が遅れる場合があります。
• 転職活動での不利
• 書類選考や面接で「短期離職」が問われやすく、理由説明を求められます。採用側は定着性を重視する傾向があります。
• 企業側の印象
• 前職の退職理由や在籍期間が短いと、面接で詳しく聞かれることが増えます。リファレンスの確認がある職種では不利益になる場合があります。

注意点と対応策

• 履歴書・職務経歴書は正直に記載する
• 嘘は後で不利になります。短期の理由は簡潔に、前向きに説明しましょう（例：業務内容と合わなかったため、自己成長を優先した）。
• 退職手続きは記録を残す
• 退職願・退職届や退職日を文書で確認しておくと安心です。健康不安やハラスメントが理由なら証拠を保存してください。
• 次の職探し前に準備する
• 早めに自己分析と志望動機を整え、面接での説明を練習しましょう。短期間でも学んだ点を具体例で伝えると印象が良くなります。
• 経済的準備をする
• 収入が途切れる場合を想定して、貯金や生活費の見直しを行っておくと安心です。

以上を踏まえ、退職は権利である一方で影響もあります。感情的に決めず、記録と説明を整えて行動してください。

会社に強く引き止められた場合

退職の自由は労働者の権利です

労働者はいつでも退職できます。会社が「辞めさせない」と強く主張しても、原則として損害賠償や解雇拒否を求められることはありません。ただし、業務の引き継ぎや退職日の調整は実務上必要になることがあります。

よくある引き止めの手口と落ち着いた対応

• 感情的な説得（残ってほしいと涙ながらに訴える）→ 落ち着いて意志を繰り返す。
• 長時間の説得面談→ 面談時間を決め、記録を残す。
• 課題や改善要求で条件提示→ 書面での新条件提示を求める。

具体的な行動手順（実例）

1. 口頭で退職を伝えたら、続けて書面（メール可）で意思と退職日を明確に伝えます。例：「○月○日を最終出勤日に退職します。引き継ぎは〜までに完了予定です。」
2. 引き止めが続く場合は、上司だけでなく人事に連絡し、やり取りを記録します。
3. 退職の強要や脅し（未払いの給料を留める等）があれば、労働基準監督署や労働相談窓口に相談します。

証拠の残し方と相談先

• メールやLINEは保存、面談は日時と内容をメモします。録音をする場合は法律に注意してください。
• 相談先：会社の人事、労働基準監督署、労働相談ホットライン、労働組合、弁護士など。早めに相談すると安心です。