就業規則で罰金を定める際のポイントと注意点

目次

はじめに

本記事の目的

本記事は、就業規則における「罰金」などの規定が法律上どのように扱われるか、懲戒処分と減給の違い、違反時の対応方法などを分かりやすく解説することを目的としています。企業の規則が適法かどうか見直す際の手がかりを提供します。

誰に向けた記事か

人事・労務担当者や経営者、また自社の就業規則に疑問を持つ従業員向けです。法律の専門家向けではなく、現場で使える実務的な視点を重視して説明します。

本記事で扱う内容と流れ

全8章で構成し、罰金規定の可否、違反時の罰則、減給との違い、懲戒処分の選び方、就業規則そのものの作成義務と罰則まで順を追って解説します。それぞれの章で具体例を交え、実務での注意点を示します。

注意事項

本記事は一般的な解説です。個別の事例や法的判断が必要な場合は、労働基準監督署や弁護士にご相談ください。

就業規則で罰金を定めることはできるのか?

原則:罰金は認められません

就業規則で「遅刻1回につき5,000円」などの罰金を定めることは、原則として認められません。労働契約の不履行に対する違約金や損害賠償額を予定する契約は無効とされています。

なぜ違法なのか(労働基準法第16条)

労働基準法第16条は、使用者があらかじめ違約金を定めたり損害賠償額を予定する契約をしてはならないと規定します。罰金制度はこの趣旨に反するため、就業規則に書いて運用すると法令違反になります。

具体例で分かりやすく

・遅刻1回5,000円のペナルティ
・ノルマ未達成での減額
・小さなミスで自動的に給与から差し引く規定
これらは就業規則に書いて運用すると違法と判断されやすいです。

代替手段と注意点

懲戒(注意・戒告・減給・出勤停止・解雇)や、実際の損害があれば法的手続きで賠償を請求する方法があります。給与からの一方的な差引は原則できません。運用前に労務管理の専門家に確認してください。

違反した場合の罰則・罰金

罰則の概要

労働基準法第16条違反の場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。就業規則に関する作成・届出・記載事項の違反でも、30万円以下の罰金が科されます。

どの行為が対象になるか

  • 必要事項の記載漏れ(例:始業・終業時刻、賃金の決定方法など)
  • 就業規則の作成や届出を怠ること
  • 作成済みでも従業員への周知をしないこと

これらは軽視されがちですが、いずれも罰則の対象です。

具体例でのイメージ

  • 就業規則に休暇のルールを記載していない場合→罰金の対象
  • 作成はしたが事業所ごとに掲示・配布していない場合→罰則の対象

企業が取るべき対策(実務的)

  • 必要事項リストを作成して点検する
  • 作成・改定時は届出を忘れない
  • 従業員への周知(掲示・配布・説明)を実施し記録を残す

こうした対策で違反リスクを大きく減らせます。

減給処分との違いとその上限

減給とは何か

減給は、懲戒の一つとして給与を一定額差し引く処分です。罰金と似ていますが、法律上は厳しい制限があります。懲戒目的でのみ認められ、賃金の性質を損なわない範囲で行われます。

罰金との違い

罰金は就業規則で定めても問題になることが多く、原則として使用者が一方的に財産的制裁を科すことは認められません。一方、減給は労働基準法第91条に基づき、一定の条件を満たせば合法です。

法的な上限(具体例つき)

  • 1回の減給額の上限:平均賃金の1日分の半額まで。
    例)平均日額が1万円なら、1回の減給は5,000円が上限。
  • 1賃金支払期(通常は1か月)での上限:賃金総額の10分の1まで(複数回合算してもこれを超えない)。
    例)月給30万円なら、1か月あたりの減給合計は3万円が上限。

就業規則での明記と手続き上の注意

減給の金額・理由は就業規則に明確に記載してください。曖昧な基準や恣意的な運用は違法となり、無効になる恐れがあります。また、減給を行う際は従業員に理由を説明し、必要に応じて弁明の機会を与えるなど公正な手続きを心がけてください。

実務上のポイント

  • 減給によって生活が著しく困窮することがないよう配慮すること。
  • 懲戒の目的や程度が均衡しているかを常に確認すること。
  • 不明点は労務・法務専門家に相談することをおすすめします。

違反した場合の処罰や対応

はじめに

労基署からの是正勧告に従わない場合や悪質な違反がある場合、行政処分や刑事手続きに発展することがあります。ここでは企業側・従業員側が取るべき対応を分かりやすく説明します。

労基署の是正勧告とその後

是正勧告はまず文書で行われ、改善命令に変わることもあります。企業は速やかに是正計画を示し、実行することが望ましいです。対応を怠ると重い処分につながる可能性があります。

刑事告発の可能性

悪質な違反や繰り返しの違反は刑事告発につながることがあります。刑事手続きになると企業や担当者が罰則を受ける恐れがありますので、早めに法的助言を受けることを勧めます。

従業員からの申告と会社の責任

罰金制度や違法な減給を行っている場合、従業員が労基署や労働審判で申告することができます。申告があると調査・是正指導の対象になり、違法と判断されれば返還や罰則の対象になります。

具体的な対応(企業向け)

  • 違反の有無を速やかに調査する
  • 是正計画を作り実行する
  • 就業規則や賃金規程を弁護士と見直す
  • 記録を保存し、労基署の調査に協力する

具体的な対応(従業員向け)

  • 証拠(給与明細・就業規則の写し)を集める
  • 労基署や労働相談窓口に相談する
  • 必要なら弁護士に相談して法的手段を検討する

誠実な対応が最も重要です。早めに問題を認識して対処すれば、事態の悪化を防げます。

懲戒処分の正しい選択肢

会社が従業員の問題行動に対応する場合、懲戒処分は次の範囲で選ぶべきです。罰金のような金銭的制裁は認められず、処分は違反の程度との均衡が大切です。

主な懲戒の種類と例

  • 戒告・譴責:口頭または書面で注意する軽い処分。遅刻や軽微な規律違反の初回対応に用います。
  • 減給:賃金を一定期間減らす処分。重大な規律違反で実務上の影響がある場合に限定します(上限に注意)。
  • 出勤停止:一定期間の出勤を禁じる処分。安全義務違反や業務妨害などで用いられます。
  • 降格:職位や職務を下げる処分。信頼関係の回復が困難なときに検討します。
  • 諭旨解雇:懲戒的な解雇で再教育や改善の見込みがない場合に使うことがあります。
  • 懲戒解雇:最も重い処分。故意の重大な不正や犯罪行為があった場合に限定されます。

選択の考え方

処分は違反の悪質性、故意・過失の有無、被害の大きさ、再発防止の必要性を総合して決めます。前歴や弁明の機会も重要です。公正さを保ち、同種の事案で一貫した対応を心がけてください。

手続き上の注意

就業規則に処分の基準を明記し、適用した理由や経緯を記録します。処分前に本人に説明し弁明の機会を与えることが望ましいです。解雇に至る場合は特に慎重に手続きしてください。

就業規則自体に関する罰則

概要

就業規則に「絶対的必要記載事項」が欠けている場合や、作成・届出、周知を怠った場合は、30万円以下の罰金が科されることがあります。特に従業員が10人以上の事業場では法的義務が強く、注意が必要です。

罰則の対象となるケース

  • 絶対的必要記載事項の欠落(例:始業・終業時刻、休憩、休暇、賃金の決定・計算・支払方法、退職に関する事項)
  • 就業規則を作成せず、届出しない場合
  • 従業員への周知を行わない、又は不十分な場合

具体例

  • 残業手当の計算方法を明記しておらず、労基署に指摘され罰金が課された。
  • 作成後に労働基準監督署へ届出をしなかったため、是正を求められた。
  • 就業規則を事業所に掲示せず、従業員が規則を知らなかったことでトラブルになった。

罰則の影響とリスク

罰金は金銭的負担にとどまりません。就業規則の不備は懲戒や解雇の正当性を争われる原因となり、紛争対応や信頼低下という二次被害を招きます。

予防策・実務上の対応

  • 絶対的記載事項のチェックリストを作成する。
  • 作成後は速やかに労働基準監督署へ届出を行う。
  • 就業規則を見やすく掲示し、全従業員に配布または説明記録を残す。
  • 改定時は変更内容を従業員に周知し、同意や説明の記録を保管する。
  • 不安がある場合は社労士等の専門家に相談する。

まとめ:企業担当者・従業員が注意すべきポイント

就業規則における“罰金”は原則無効です。就業規則に書いても法的な罰金制度にはならないため、企業は罰金規定に頼らず、適法な懲戒手続きで対応してください。

  • 企業担当者向けチェックリスト
  • 罰金条項は削除、または明確に無効である旨を確認する。
  • 減給などの懲戒処分を採る場合は、法定の上限や判断基準を守り、就業規則に明確に定める。
  • 就業規則の作成・変更時は、絶対的記載事項(労働条件の重要事項)を漏らさず記載し、労働者への周知を確実に行う。
  • 違反が発覚した場合の刑事・行政リスク(例:罰金・処罰)を想定し、慎重に対応する。

  • 従業員向け注意点

  • 就業規則は必ず確認し、不明点は人事や労働相談窓口に相談する。
  • 不当な罰金や過度な減給を受けた場合は、社内手続きや外部の相談窓口に相談する。

最後に、規定の運用は丁寧な説明と記録が命です。企業は透明性を保ち、従業員は権利を確認しましょう。法令に関する具体的な判断は専門家に相談してください。

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