就業規則で詳しく解説するパート有給休暇の基礎知識

目次

はじめに

本書の目的

本資料は、パートタイマーの有給休暇に関する基本ルールと実務上の扱いをわかりやすく整理したものです。法律の考え方だけでなく、就業規則への具体的な記載例や日数の計算方法、時間単位取得の扱いまで幅広く解説します。人事担当者や経営者、また現場で対応する方に役立つ内容です。

対象読者

  • パートタイマーを雇用する事業所の人事担当者
  • 就業規則を作成・改定する経営者
  • 有給休暇について相談を受ける現場の管理職

本書で扱う主な内容(章立て)

第2章: 付与の基本ルール
第3章: 日数計算の方法
第4章: 就業規則への記載方法
第5章: 比例付与テーブル
第6章: 時間単位での取得
第7章: 年5日の取得義務化
第8章: 賃金の取り扱い
第9章: 実務上の注意点

読み方のポイント

具体例を重ねて解説しますので、実務に近い場面から読み進めることをおすすめします。専門用語は極力避け、計算例や記載例を参照することで実際の運用にすぐ活用できます。必要な箇所だけ読み返せる構成にしています。

パートタイマーの有給休暇付与の基本ルール

概要

パートタイマーでも、入社から継続して6か月勤務し、その期間の出勤率が80%以上であれば有給休暇が発生します。これは正社員と同じ法的ルールです。事業主が有給を認めない扱いをすると労働基準法違反になります。

付与の要件

  • 継続勤務6か月:入社日から数えて6か月間、継続して雇用されていることを指します。
  • 出勤率80%以上:所定労働日数に対して実際に出勤した日数が80%以上であることが必要です。

具体例

週3日勤務の人が60日間(約6か月)の間に48日以上出勤すれば80%に達します。つまり出勤48日で有給が付与されます。

企業の対応と注意点

  • 付与基準は就業規則や雇用契約書に明記してください。従業員へ説明責任があります。
  • 扶養や契約形態で有給がないと誤解されがちです。実務では出勤実績の集計を正確に行い、基準を満たす人には速やかに有給を付与してください。

よくある誤解

有給は正社員だけの権利ではありません。日数や条件の違いはありますが、パートでも法律上の権利が保護されています。

有給休暇の付与日数の計算方法

付与日数の決め方

有給休暇の日数は、正社員が受ける基準日数(例:勤続6か月で10日)を基に、パートタイマーの週の所定労働日数や所定労働時間に応じて比例して決めます。比例付与の対象になるのは「週の所定労働時間が30時間未満かつ週4日以下勤務」の場合です。週4日で1日8時間(週32時間)のように週の労働時間が30時間以上なら、正社員と同じ日数を付与します。

計算の手順(実務上の目安)

  1. 正社員の基準付与日数を確認します(例:10日)。
  2. パートの週所定労働日数を正社員の週所定労働日数で割り、比率を算出します(例:3日/5日=0.6)。
  3. 基準日数に比率を掛けて按分します(例:10日×0.6=6日)。

具体例

  • 正社員10日、週3日(合計20時間):10×3/5=6日
  • 正社員10日、週4日・1日7時間(週28時間):10×4/5=8日(※比例付与対象)
  • 正社員10日、週4日・1日8時間(週32時間):正社員と同じ10日

端数処理と就業規則

按分した結果に小数が出る場合は、日数の端数処理(切捨て・四捨五入など)を就業規則で明確に定めてください。業務実務では法定の比例付与表に合わせることが多いです。

注意点

労働時間と所定勤務日数の両方を確認して判断してください。誤ると付与日数に差が出るため、採用時や契約更新時に明確に伝えましょう。

就業規則への記載方法

目的と基本方針

就業規則には、有給休暇の付与条件と日数、取得手続き、時期の取り扱いを明確にします。従業員が権利を理解できるよう、具体的に書きます。

必須記載項目(例)

  • 付与要件:継続勤務期間(例:6か月)と出勤率(例:所定労働日の8割以上)
  • 付与日数:基準ごとの日数(例:初回10日)
  • 付与日(基準日):付与される日を明示
  • 時季の扱い:取得の申請方法と会社の時季変更権
  • 繰越・消滅時効:何年で消滅するか
  • 申請手続き:申請書・申請先・期限

記載例(条文)

第X条(年次有給休暇) 
1 会社は、継続勤務6か月かつ所定労働日の8割以上出勤した従業員に、10日間の年次有給休暇を付与する。
2 従業員は使用者に対し、事前に所定の方法で取得希望日を申し出るものとする。会社は業務に著しい支障がある場合、取得日を変更することがある。

実務ポイント

  • 申請様式や届出期限を就業規則か別規程で明示してください。周知は入社時説明と規則の常時閲覧で行いましょう。

パートタイマーの比例付与テーブル

概要

パートタイマーの有給休暇は、週の所定労働日数ごとに勤続年数別に付与日数を定める「比例付与テーブル」で管理します。使う人は勤続年数の行と週所定労働日数の列を照らし合わせるだけで付与日数が分かります。

例(6か月勤続での付与)

週所定労働日数 付与日数(6か月)
4日 7日
3日 5日
1日 1日

上の例のように、6か月経過時の初回付与は勤務日数に応じて定めます。勤続年数が増えるとテーブルの値も段階的に増えます。

使い方の手順

  1. 社員ごとに「週所定労働日数」を確認します。頻度が変わる場合は最新の就業時間を基準にします。
  2. 勤続年数に該当する行を見つけます。
  3. 行と列の交差する値が付与日数です。社内ルールで出勤率要件(例:出勤率80%)を設ける場合は適用の可否を確認します。

就業規則への反映ポイント

テーブルは就業規則に明記してください。表を掲載すると誤解が少なく、付与の根拠も明確になります。変更する場合は従業員への周知方法も併せて定めます。

注意点

  • 週所定労働日数が変わると付与日数も変わります。
  • 細かな判定や例外は就業規則で具体的に示してください。

実務では、短く分かりやすいテーブルを作り、運用ルールを添えると現場で混乱しません。

有給休暇の取得形態と時間単位での取得

概要

時間単位での有給休暇は、労働基準法改正により導入され、パートタイマーも1時間単位で取得できます。導入には労使協定が必要で、時間単位の取得は年5日分までと定められています。また、時間単位で取得した分は「年5日の有給休暇取得義務」の日数には含まれません。

導入手続き

  1. 労使協定を締結する
  2. 労働者代表と使用者が、時間単位取得の有無、取得単位(原則1時間以上)、適用範囲などを協定します。\
  3. 就業規則や案内で周知する
  4. 対象者・申請方法・管理方法を明確にして従業員に知らせます。\

取り扱いのポイント(具体例つき)

  • 上限の考え方
  • “年5日分”とは通常の1日所定労働時間で換算した時間です。たとえば1日8時間の職場なら5日分=40時間まで時間単位で取得できます。\
  • 残日数との関係
  • 時間単位で取得する場合も、年間の有給休暇残日数の範囲内で使用します。残がない日は使えません。\
  • 賃金の扱い
  • 時間単位で取得した時間は有給扱いで、通常の時間賃金どおり支払います。給与計算システムの設定が必要です。\

実務上の注意点

  • 適用範囲を明確にする(全員適用か一部のみか)。
  • 申請・承認フローを簡潔にし、記録を残す。\
  • 年5日義務との区別を徹底する
  • 企業は従業員に年5日以上取得させる義務がありますが、時間単位で取得した分はこの数え方に含めないため、別途確実に5日を取得させる管理が必要です。

まとめ(注意点のサマリ)

時間単位の有給はパートに柔軟性を与えます。導入は労使協定と就業規則の整備が必須で、年5日分までという上限や年5日義務との区別を忘れず、賃金・記録の運用も整えてください。

年5日の有給休暇取得義務化

概要

年10日以上の有給休暇が付与される従業員は、1年間に5日間の有給取得が義務化されています。パートタイマーは原則として、週4日勤務で勤続3年6か月以上、週3日勤務で勤続5年6か月以上の場合に対象になります。週2日以下の勤務は対象外です。

対象者の確認方法(具体例)

  • 週4日勤務で入社から3年8か月経過したAさんは対象です。5日取得を促してください。
  • 週3日勤務で勤続5年6か月のBさんも対象になります。

事業主の対応

事業主は従業員が5日を確実に取得できるように努めます。具体的には、取得の機会を設けて取得状況を記録します。従業員が自ら取得しない場合は、希望日を聞き提案するなどの働きかけを行い、その履歴を残してください。

実務上の注意点

  • 賃金での買い取りは基本的に認められません。代替措置は慎重に。
  • 取得時期を調整するために就業規則や運用ルールを整備しましょう。

有給休暇の賃金取り扱い

概要

有給休暇を取得しても、給与は減らず通常どおり支払われます。短時間勤務のために有給日数が少ない場合でも、付与された日数分は賃金が保障されます。

支払の原則と具体例

  • 日給制:休んだ日と同じ日給を支払います。例)日給8,000円なら有給日も8,000円。
  • 時給制:所定労働時間分の賃金を支払います。例)時給1,000円で所定6時間なら6,000円。
  • 月給制:就業規則や賃金規程で定めた方法で按分するか、平均賃金に基づいて算出します。

時間単位での取得

時間単位で有給を取得した場合は、取得した時間分を通常どおり支払います。例えば1時間取得なら時給×1時間です。

手当や割増との関係

有給休暇中は通常の労働時間に対応する賃金が支払われます。残業代や深夜割増は、実際に労働した時間に対して発生します。つまり有給日に追加の割増は原則発生しません。

実務上の注意点

就業規則や給与規程に計算方法を明記し、給与計算ソフトの設定を確認してください。従業員に具体例で説明すると誤解を防げます。比例付与で日数に差がある場合は、労務管理の説明を丁寧に行ってください。

実務上の注意点

企業がパートタイマーの有給休暇を管理するときに押さえておきたい実務上のポイントを、具体例をまじえてわかりやすく整理します。

1) 対象者判定を正確にする

入社日・継続勤務期間・所定労働日数を記録してください。例えば、週3日勤務で入社1年経過した場合は付与対象になります。付与日(初回は入社後6か月の場合もあります)をカレンダーで管理します。

2) 年5日取得義務の適用時期

年5日の取得義務の対象になる時期を従業員ごとに把握します。付与日から起算した1年ごとに該当するか確認し、対象になった年は使用促進の措置を講じます。

3) 就業規則・個別通知の整備

就業規則や雇用契約に付与・取得のルールを明記し、付与日や残日数を書面やメールで定期的に通知します。

4) 管理方法と記録保存

使用実績は日付・時間単位・理由を残します。例:Excelや勤怠システムに「有給種別」「取得時間」「承認者」を入れると監査対応が楽になります。

5) 時間単位取得や賃金の扱い

時間単位での取得を認める場合はルールを明示し、賃金計算の方法を統一します。具体例として、1時間あたりの平均賃金を基に調整するケースがあります。

6) 取得促進とトラブル防止

消滅時効や未取得が生じないよう、年末前の通知や上司による取得計画の相談を行います。急な欠勤と混同しないために事前申請を基本としてください。

7) 労基署対応と備え

確認が来た場合に備え、付与・取得の記録を3年程度保管します。問い合わせには迅速に対応できるよう担当者を決めておくと安心です。

実務では、正確な判定と記録、従業員への丁寧な説明が最も大切です。具体的な運用ルールを定め、日常的に確認する習慣をつけてください。

退職の悩み、Yameriiにお任せください

もう無理しなくて大丈夫。
Yameriiがあなたの退職を全力サポート!


✅ 最短即日退職
✅ 会社とのやり取りゼロ
✅ 追加料金なしの明朗会計

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次