就業規則で理解するハラスメント対策の基本と重要ポイント

目次

はじめに

本調査の目的

本調査は、就業規則におけるハラスメント規定をわかりやすく整理することを目的にしています。職場での問題を未然に防ぎ、起きたときに適切に対応できるよう、基礎知識と具体例を中心にまとめました。企業の人事担当者、管理職、労働者のいずれにも役立つ内容です。

本書で扱う内容の特徴

本書は定義だけでなく、実務で使える具体例や書き方を重視しています。たとえば「上司が大声で叱責する」「飲み会で不適切な発言があった」といった身近な事例を示し、どのように規定に落とし込むかを解説します。専門用語は最小限に抑え、実務に直結する視点で記載します。

読み方のポイント

まず第2章で基本定義を理解し、第3章以降で各類型の詳細と事例を確認してください。最後に第6章で就業規則への具体的な記載例を提示します。日常の運用に即した目線で読み進めると実務に生かしやすくなります。

ハラスメント規定の基本定義

ハラスメントとは

ハラスメント規定は、職場でのいじめや嫌がらせを禁止し、発生時の対応を定めるルールです。相手に不快感を与え、勤務環境を悪化させる言動を広く指します。身体的暴力だけでなく、暴言や無視、過度な干渉など精神的な被害も含みます。

具体例

  • 叱責が度を超えて人格を否定する発言をする
  • 意図的に業務から排除して連絡を断つ
  • 性別や年齢を理由に差別的な発言をする
  • 業務上不要な身体的接触をする

判断のポイント

ハラスメントかどうかは「行為の内容」「被害者の感じ方」「頻度や継続性」「職場の地位差」を総合して判断します。加害者の意図の有無より、被害者が受けた影響を重視します。

企業側の位置づけ

就業規則で禁止行為を明示し、相談窓口や調査の手順を定めます。従業員が安心して働ける職場作りを目指すことが目的です。

パワーハラスメント(パワハラ)の詳細

定義

パワーハラスメントは、職場の優越的な立場を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動で就業環境を害する行為です。業務上の指導や正当な指示は該当しません。被害者の受け止め方だけでなく、行為の内容や頻度、職場全体への影響で判断します。

具体例(わかりやすく)

  • 暴行や突然の大声で脅す行為
  • 侮辱的な発言や長期間の無視
  • 明らかに過大な仕事を一人に押し付ける
  • 能力や役割に合わない仕事を与えず業務から外す

判断のポイント

  • 指導か否か:目的が業務改善で合理的か
  • 程度と頻度:一度の叱責と常習的な暴言は別
  • 被害の影響:心身の不調や退職につながるか

対処法(職場と本人)

職場は相談窓口の整備、事実関係の速やかな確認、被害者保護を行います。本人は日時や内容を記録し、上司や人事、外部相談窓口に相談してください。

予防策

日常的な教育、評価制度の透明化、相談しやすい雰囲気づくりで未然に防ぎます。管理職の役割を明確にし、早期対応を習慣化してください。

セクシュアルハラスメント(セクハラ)の詳細

定義と特徴

セクシュアルハラスメントとは、相手の意に反する性的な言動により、仕事の条件が悪化したり職場の雰囲気が害されたりする行為です。性的な冗談、身体への不必要な接触、交際や性的関係の強要、私生活に関する性的な質問、拒否した際の不利益扱いなどが該当します。

具体例(わかりやすく)

  • 上司が繰り返し性的な冗談を言って周囲が気まずくなる
  • 出張で肩を触る、理由なく身体に触れる
  • 飲み会で執拗にデートを誘い断ると評価を下げると示唆する
  • チャットで性的な画像やメッセージを送る

被害の受け方と影響

被害者は性別にかかわらず発生します。精神的な負担、仕事への集中低下、欠勤や退職に至る場合もあります。職場全体の信頼が損なわれる点にも注意が必要です。

早めの対応と手順

  • まずははっきりと「やめてください」と伝えることが有効です。記録(日時・場所・発言内容)を残してください。
  • 周囲の人に相談する、労働組合や総務に報告することを勧めます。

事業者の義務と措置

事業者は相談窓口設置、速やかな調査、被害者保護(配置転換や休職の配慮)、再発防止策の実施を行う必要があります。調査は客観的に行い、報復を防ぐ措置をとってください。

予防と啓発

定期的な研修、明確な規則、相談しやすい環境づくりが有効です。職場全員で尊重の文化を育てることが大切です。

その他のハラスメント類型

概要

パワハラ・セクハラ以外にも、さまざまなハラスメントがあります。被害は精神的負担や業務停滞につながるため、企業は予防と対応を講じる必要があります。

カスタマーハラスメント(顧客等からのハラスメント)

内容:顧客や取引先からの暴言、過度な要求、執拗なクレーム、SNSでの中傷など。
具体例:電話での罵倒、理不尽な返品要求、長時間の不当なクレーム対応。
対応:従業員の安全を優先し、記録・報告を徹底します。顧客対応マニュアルを整備し、必要ならサービス停止や警察対応を検討します。

就活ハラスメント(採用選考過程でのハラスメント)

内容:選考中の学生に対する不適切な質問、差別的扱い、内定取り消しなど。
具体例:妊娠や結婚予定を執拗に尋ねる、身体的特徴を理由に不利扱いする。
対応:選考基準を明確化し、面接官教育と相談窓口を設けます。選考過程の録音・記録も有効です。

マタニティ・介護・障がい等に関するハラスメント

内容:妊娠や育児、介護、障がいを理由に不利益を与える行為。
対応:差別禁止と合理的配慮の提供を明記し、職場での理解促進を行います。

職場のいじめ・モラルハラスメント

内容:継続的な孤立や侮辱、業務の不当な割り当てなど。早期発見のための相談体制と第三者による調査を整えます。

就業規則への反映ポイント

定義と具体例、相談窓口、対応フロー、顧客対応ルール、教育義務、違反時の処分例を明記します。これにより被害の予防と迅速な対応が可能になります。

就業規則への記載方法と具体例

規定の目的

職場の安全と尊厳を守るため、ハラスメントの定義・禁止・対応を明確にします。従業員に行為の線引きと手続きの透明性を示すことが狙いです。

基本構成(必須項目)

  • 定義:対象となるハラスメントの種類と具体例
  • 禁止事項:明確な禁止文言
  • 通報・相談窓口:連絡方法と担当者
  • 調査手続き:調査の流れと期間目安
  • 処分規定:懲戒や是正措置
  • 保護措置:申告者・被害者の秘密保持と二次被害防止
  • 教育・周知:研修と定期的な見直し

具体的な条文例(抜粋)

「会社は、職場におけるパワーハラスメントを禁止します。暴行・脅迫、執拗な叱責や無視、侮辱・差別的発言、性的な冗談や不適切な接触などの行為を含みます。」

通報・調査の流れ(例)

  1. 相談受付(窓口、メール、匿名フォーム)
  2. 事実確認のための聞き取り(両者の意見を公正に聴取)
  3. 必要な暫定措置(配置転換、休職など)
  4. 調査結果に基づく処分と再発防止策

申告者保護と予防

通報者の秘密を守り、報復を禁止します。管理職向け研修や全社員への周知を規定して日常的に予防します。

定期見直し

年1回を目安に規定の運用状況を点検し、労働者代表や相談窓口の意見を反映します。

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