就業規則の副業禁止は違法?法律と裁判例で詳しく解説

目次

はじめに

目的

本章では、本記事の目的と読み方をわかりやすく説明します。企業の就業規則にある「副業禁止」がどのような法的意味を持つのか、実務でどんな点に注意するかを整理します。個人の権利と企業の管理権のバランスに関心がある方に向けた入門です。

対象読者

  • 副業を検討している会社員
  • 会社の人事・総務担当者
  • 就業規則の運用に関心がある方
    具体例を交えながら、法律の基礎と実務上のポイントを丁寧に解説します。

本記事で扱う内容(全体概略)

  1. 法律上の位置づけ
  2. 就業規則での副業禁止の可否
  3. 違反時のリスクと対応
  4. 裁判例やモデル就業規則の考え方
  5. 企業が禁止・制限する理由と運用上の注意点

読み方と注意点

本記事は一般的な解説です。個別の事案で判断が必要な場合は、弁護士や専門家に相談してください。専門用語はできるだけ避け、具体例を交えて説明します。

法律における副業の位置づけ

憲法の保障

日本国憲法第22条は職業選択の自由を認めています。そのため、一般的な法律の枠組みでは副業を一律に禁止していません。個人は仕事を選び、複数の仕事を持つ自由を基本的に有します。

公務員と民間の違い

公務員には職務専念義務や兼業禁止規定が明確に設けられています。これに対し、民間企業の従業員は法律上、全国一律で副業を禁止されていません。ただし会社の規則や契約で制限される場合があります。

法律上の直接的禁止はないが注意点あり

法律で直接禁じられていなくても、次のような点で制約を受けることがあります。たとえば、会社の機密情報を副業で使うと不正競争や秘密漏洩の問題になります。取引先と競合する業務を行えば利益相反になり得ます。長時間労働で本業に支障をきたす場合は労務管理上の問題になります。

実務上のポイント

就業規則や雇用契約を確認し、不明な点は社内に相談しましょう。必要に応じて就業規則での定めや、会社への事前申請・許可を得ることが現実的な対応です。

企業の就業規則で副業禁止は違法か

結論

就業規則で副業を禁止すること自体は直ちに違法ではありません。労働契約や就業規則でルールが明記されていれば有効と判断される場合が多いです。

合理性の要件

ただし、どんな禁止も理由が合理的である必要があります。企業は次のような具体的な理由を示せば合理性が認められやすいです。
– 本業の労務提供に支障が出る(勤務時間や健康に影響)
– 企業秘密が漏洩するリスクがある
– 企業の社会的信用が損なわれるおそれがある
– 競合他社で業務を行うことで利益相反が生じる

判断基準(裁判例の考え方に基づく簡単な指標)

  • 禁止の範囲が具体的か(「全ての副業」ではなく目的を限定しているか)
  • 必要性・相当性があるか(目的達成のためにどれだけ厳しいか)
  • 個別の事情を考慮しているか(職務内容や勤務形態)

企業側の実務上の注意点

  • 規定はできるだけ具体的に書く(例:競合業での兼職禁止、勤務時間外の過度な副業禁止等)
  • 申告・承認の手続を設けると運用しやすい
  • 一律禁止にする場合は合理的説明が必要

労働者の対応ポイント

  • 規則の根拠と範囲を確認する
  • 必要なら事前に申告し、許可を得る
  • 不当だと感じたら相談窓口や労働基準監督署、弁護士に相談する

規則そのものの有効性は状況によって変わります。具体的なケースでは個別に判断することが重要です。

副業禁止規定がない場合・違反した場合

規定がない場合の原則

就業規則に副業禁止の規定がない場合、原則として副業は自由です。企業は単に副業をしているだけを理由に懲戒処分を行えません。日常的な副業やアルバイトは本人の自由として扱われます。

規定がない場合でも注意すべき点

副業が会社の業務に支障を与えたり、業務上の秘密を漏らしたり、会社と競合する業務を行えば問題になります。例えば就業時間中に副業を行う、会社の設備や顧客情報を使うといった行為は懲戒対象になり得ます。

規定がある場合に違反したとき

就業規則で副業禁止が明記されていると、違反すれば減給・停職・解雇などの懲戒処分のリスクがあります。処分の妥当性は違反の程度や業務への影響で判断されます。軽微な副業を一律に厳罰にする運用は裁判で無効となる可能性があります。

実務上の対応例(社員向け)

・就業規則や雇用契約をまず確認する。
・疑わしい場合は事前に会社へ届け出る。
・勤務時間外・私用の設備で行い、機密や競合を避ける。

実務上の対応例(企業向け)

・規定がなければ明確なルールと届出制度を整備する。
・違反があれば影響の程度を調査し、比例的な処分を行う。文書で記録を残すことが重要です。

モデル就業規則および裁判例の考え方

概要

本章では、厚生労働省のモデル就業規則における副業禁止の考え方と、裁判例が示す判断基準をわかりやすく整理します。具体例を交えて、企業側と労働者側の実務対応も示します。

モデル就業規則のポイント

厚生労働省のモデル就業規則では、副業を一律に禁止するのではなく、次のような場合に禁止や制限が認められるとしています。
– 労務提供上の支障:副業で疲労が蓄積し本業に支障が出る場合(例:夜勤の看護師が深夜の配達を行う)。
– 秘密漏洩リスク:取引先情報や技術が漏れる恐れがある場合(例:開発担当者が競合企業で働く)。
– 企業の名誉・信用毀損:従業員の行為が企業イメージを傷つける場合(例:SNSで会社非難を続ける)。
– 競業による利益侵害:競合事業で利益が奪われる場合(例:同業で同じ顧客層を対象にする)。

裁判例の考え方

裁判所は「合理的理由があるか」を重視します。企業は副業禁止の必要性や具体的な危険性を示す必要があります。単に“会社の判断で一律禁止”とするだけでは無効と判断される傾向があります。裁判で有効と認められた事例は、職務内容や立場、情報への接触度合いを示し、社内秩序維持や利益保護の必要性が具体的に説明されたケースです。

判断の具体的要素

裁判所は次の点を総合判断します。
– 従業員の職務内容と副業の類似性
– 情報への接触の程度
– 労働時間・健康への影響
– 就業規則の明確さと周知状況
企業はこれらを資料で裏付ける必要があります。

実務上の対応(企業・労働者向け)

  • 企業は禁止規定を作る際、対象や理由を具体化し、申請・許可手続きを整備してください。個別判断を行う運用が望ましいです。
  • 労働者は就業規則を確認し、副業の申請や許可の記録を残してください。疑問があれば人事に相談すると流れがスムーズになります。

以上がモデル就業規則と裁判例の基本的な考え方です。実際の運用では個別事情が重要になりますので、曖昧な点は事前に確認してください。

企業が副業を禁止・制限する主な理由

企業が副業を禁止・制限する理由は大きく分けて五つあります。以下で分かりやすく説明します。

1. 労務提供への支障

副業で長時間働くと、主業務に支障が出ます。具体例:夜間に別の仕事をすると翌日の業務で眠気や集中力低下が起き、ミスや遅刻につながることがあります。

2. 情報漏洩・秘密保持違反のリスク

別の職場で得た情報と自社の機密情報が混ざると問題になります。具体例:顧客名簿や技術資料を副業先で誤って共有してしまうと、会社の信頼や取引先との関係に悪影響を与えます。

3. 競業避止・利益相反

社員が同業他社で働くと、自社のノウハウや顧客を奪われる恐れがあります。具体例:同じ業界の企画や営業を兼ねる副業で、自社の戦略に関する情報が漏れたり、顧客を引き抜かれたりします。

4. 社会的評価や企業イメージ

副業先での言動が会社の評判に影響する場合があります。具体例:副業で公序良俗に反する行為があれば、会社名が関わると信用低下につながります。

5. 管理負担・安全配慮義務

企業は労働時間管理や安全配慮を求められます。副業が増えると残業管理や過労防止の確認が難しくなり、企業側の負担が増えます。例えば、過労で体調を崩した場合の対応や責任の所在が問われます。

これらの理由から、企業は就業規則で副業の禁止や届出、個別の許可制などを設けて対応します。具体的な運用は次章で詳しく扱います。

副業禁止規定の運用と注意点

運用の基本方針

副業を一律で禁止することはリスクが高いです。企業は禁止する理由を明確にし、個別判断や許可制を導入する方が安全です。具体的な基準を示すとトラブルを減らせます。

企業側の具体例

  • 許可制:申請書で業務時間・内容・報酬を確認して承認する。
  • 個別判断:職務の性質や守秘義務、利益相反の有無で許可・不許可を決める。
  • 記録管理:許可状況を書面で残し、定期的に見直す。

従業員が注意すべき点

  • 就業規則をまず確認する。許可制なら申請と承認を得ること。
  • 内容が守秘義務や競合に当たらないかを自己確認する。アルバイト先と業務内容を具体的に書くと誤解を防げます。

曖昧な規定のリスクと対応

曖昧な「副業禁止」は無効や争いの原因になります。条文が広すぎる場合は運用で限定的に扱い、従業員には具体例を示して周知してください。疑問がある場合は労務担当や専門家に相談すると安心です。

運用上の注意点

  • 理由の説明責任を果たす。
  • 公正な手続きを設ける。
  • 個人情報やプライバシーに配慮する。

これらを心がけると、企業も従業員も納得しやすい運用になります。

まとめ

副業は法律で一律禁止されているわけではありません。企業は業務への支障や競業避止、機密保護など合理的な理由があれば就業規則で制限できますが、一律の全面禁止は過度と判断されることが多いです。

実際に副業を始める際のポイントを分かりやすくまとめます。

  • 就業規則をまず確認する。許可制か報告制か、禁止事項を明確に確認してください。
  • 会社の業務に支障を出さない。労働時間管理、休息の確保を優先します。
  • 競合や機密情報の扱いに注意する。社外活動で得た情報の利用は避けます。
  • 税金・社会保険の手続きは自分で確認する。収入が増えれば確定申告が必要です。
  • トラブルを避けるため、可能なら書面での了承を得る。話し合いで合意を残すと安心です。
  • 問題が起きたら労働相談窓口や弁護士に相談してください。

副業は個人の選択肢を広げますが、事前の確認と適切な対応が大切です。リスクを理解し、会社と良好な関係を保ちながら進めてください。

退職の悩み、Yameriiにお任せください

もう無理しなくて大丈夫。
Yameriiがあなたの退職を全力サポート!


✅ 最短即日退職
✅ 会社とのやり取りゼロ
✅ 追加料金なしの明朗会計

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次