損害賠償は会社から個人へ請求できるのか法律で詳しく解説

目次

はじめに

会社が従業員に対して損害賠償請求(求償)をする場面は、思ったより身近にあります。例えば、配送中の事故で第三者に大きな損害を与えたり、故意に顧客情報を漏えいして会社が損害を被ったりするケースです。そんなとき、会社はどのような根拠で誰にどこまで請求できるのか、不安や疑問を感じる方も多いでしょう。

本記事では、会社が従業員などの個人に対して求償を行う際の法律的な根拠と、実務上の手続きについてわかりやすく解説します。専門用語はできるだけ噛み砕き、具体例を交えて説明しますので、法務担当者や人事担当者、経営者の方にも読みやすい内容にしています。

続く第2章では「請求できる具体的なケースとその根拠」、第3章では「求償の範囲と判例」、第4章で「法律上のポイントと実務対応」、第5章で「実際の手順(風評被害等も含む)」を取り上げます。最後の第6章で全体を振り返り、注意点をまとめます。

まずは基本の考え方として、会社の損害と従業員の行為の因果関係、過失の程度が重要になる点を押さえてください。本記事が実務の判断に役立つ手がかりになれば幸いです。

会社が従業員に損害賠償請求できるケースと根拠

はじめに

会社が従業員の行為により第三者に損害を与え、会社が賠償した場合、会社は従業員に対して賠償金の一部または全部を求めることができます。これを求償と呼び、民法第715条3項に根拠があります。

主な根拠と考え方

  • 使用者責任(民法715条)により、会社は業務上の行為で生じた損害を被害者に対して負担します。同時に会社は、従業員の過失の程度に応じて求償できます。

請求できる典型例

  • 業務中の交通事故:配送中に起きた事故で会社が賠償した場合、過失の大きさに応じて従業員に求償できます。
  • 顧客情報の漏えい:業務上の注意義務違反で損害が発生した場合、求償の対象になります。

判断のポイント

  • 行為が業務の範囲内か否か(業務遂行性)
  • 従業員の過失の程度(重過失・故意は高い負担)
  • 会社の監督・指示の有無(監督責任が認められると会社負担が大きくなる)

実務上の注意点

  • 保険加入の有無や就業規則での取扱いを確認してください。
  • 賠償金を賃金から差し引く場合、最低賃金等の労働基準法の制約があります。従業員に請求する際は、労働法上の手続きと合わせて慎重に判断してください。

求償の範囲と判例

この章では、会社が従業員に対して求償できる範囲と、代表的な判例をわかりやすく解説します。

全額請求が認められるケース

  • 従業員の故意行為(横領、詐欺など)では、会社が被った損害の全額を従業員に請求できることが多いです。従業員の不正が明確な場合、会社は損害の全てを回収する正当な理由があります。

過失の場合(部分請求が一般的)

  • 交通事故など過失による損害では、全額請求はほとんど認められません。事情に応じて一部のみ認められるのが一般的です。従業員の過失の程度や業務命令の有無で負担割合が変わります。

判例の考え方(最高裁 昭和51年7月8日)

  • 最高裁は、業務中の交通事故で会社が支払った賠償金のうち「4分の1」だけを従業員に求償することを認めました。裁判所は、会社と従業員の双方の責任や事情を総合判断します。

判断に影響する主な事情

  • 事業の性格・規模
  • 従業員の職務内容や勤務態度
  • 加害行為の態様(重大な過失か故意か)
  • 損失分散の配慮(会社の負担能力や保険の有無)

企業が実務で注意すること

  • 事実関係を速やかに調査し、証拠を残す
  • 就業規則で懲戒や損害賠償のルールを明確にする
  • 保険の適用範囲を確認し、求償の根拠と割合を慎重に判断する

これらを総合して、会社は個別の事情に応じた合理的な求償範囲を検討します。

法律上のポイントと実務対応

法律上のポイント

会社が従業員に求償できる根拠は民法第715条(使用者責任)です。使用者責任は第三者に対する損害賠償の責任を会社が負うことを前提としますが、会社は従業員に対して求償(会社が支払った損害額を従業員に請求)できます。法律は金額や割合を明記していません。裁判例は事案毎に分かれ、一般には次の傾向があります。

  • 故意の場合:従業員の責任が強く認められ、全額の求償が認められることが多い。
  • 重過失の場合:高い割合での求償が認められることがある。
  • 単純過失の場合:過失相当分のみ認められる傾向。

具体例:営業担当が故意に顧客情報を売却し損害が発生した場合は全額請求が現実的です。一方、設備操作ミスで事故を起こした単純なミスでは一部負担にとどまることがあります。

実務対応(手順と注意点)

1) 事実確認と証拠保全:ログ、メール、出勤記録、監視映像を速やかに確保します。
2) 損害額の算定:直接損害と間接損害を分け、合理的な根拠で金額を提示します。
3) 就業規則・内部ルールの確認:懲戒処分や求償の規定を確認し、社内手続きを踏みます。
4) 社内外の専門家活用:労務・民事の弁護士や会計専門家に相談します。
5) 和解交渉:訴訟より早期解決が望ましい場合、分割払いなど柔軟な提案を行います。
6) 保険・補填の検討:企業賠償保険や雇用者保険の適用を確認します。

予防策としては、教育・業務手順の整備、アクセス制御、定期監査が有効です。対応の透明性と記録が後の立証で重要になります。

企業による損害賠償請求の実際の手順(風評被害等も含む)

序文:風評被害やインターネット上の中傷に対して会社が損害賠償を求める際の一般的な手順を、実務的にわかりやすく整理します。

1) 初動(事実確認)
– 被害の内容(投稿、記事、元社員の発言など)を特定します。
– スクリーンショット、URL、投稿日付などを保存し、改変に備えます。

2) 加害者の特定と情報開示
– 投稿者が明らかでない場合、まず運営会社(SNS等)に削除依頼と発信者情報の開示請求を行います。
– 弁護士を通すと手続きが迅速で確実です。必要ならプロバイダや裁判所の手続きを利用します。

3) 違法性と損害の立証
– 名誉毀損、営業妨害、プライバシー侵害などの違法性を整理します。
– 実費(調査費、広報費など)と逸失利益(売上減等)を具体的に算出します。

4) 請求手段の選択
– 任意交渉:内容証明郵便や示談で解決を図ります。費用と時間が抑えられます。
– 民事訴訟:損害賠償請求や差止め(仮処分)を求めます。証拠が重要です。
– 刑事対応:名誉毀損や偽計業務妨害で告訴する場合は警察へ相談します。

5) 証拠保全と手続きの流れ(具体例)
– SNS中傷の例:スクリーンショット保存→運営会社へ削除依頼→弁護士が発信者情報開示請求→内容証明送付→示談または訴訟。
– 証拠保全命令や仮処分で対処する場合もあります。

6) 実務上の注意点
– 迅速に対応し、社内記録や広報対応を整えます。
– 感情的な反論は避け、法的根拠と数字で主張します。
– 弁護士と相談し、費用対効果を検討してください。

最後に:早めに専門家へ相談することで、被害拡大を防ぎ、適切な救済を得やすくなります。

まとめ

ここまでのポイントをやさしく整理します。

  • 会社は、従業員が業務中に起こした事故や不正で被害者に損害賠償を支払った場合、従業員に対して求償(損害賠償請求)できます。ただし、請求できる範囲は一律ではありません。

  • 故意や重大な過失があれば会社が支払った金額を大部分または全額求めることが想定されます。たとえば、明らかな横領や意図的な破壊行為などです。一方で、操作ミスや判断ミスのような比較的軽い過失では、一部のみの負担にとどまることが多いです。

  • 風評被害のようなケースでは、被害の発生と従業員の行為との因果関係、行為の責任の程度、証拠の有無が重要です。従業員の投稿や行為が直接的な原因であることを立証できなければ、求償は難しくなります。

  • 実務では、早めの事実確認と証拠保全、就業規則や懲戒規定の整備、保険の活用、当事者間の示談交渉、必要なら弁護士への相談をすすめます。これらを組み合わせることで、会社として適切かつ公平な対応が可能になります。

最後に、求償は法的・人事的な判断が絡むため、個別事案ごとに慎重に対応してください。事前のルール整備と迅速な対応が、リスクを小さくします。

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