はじめに
調査の目的
この調査は「退職日 選べる」に関する情報を分かりやすくまとめることを目的としています。退職日を自分で決められるかどうかの法的根拠や、実務上の注意点を整理し、読者が自分に合った判断をできるよう支援します。
本書の構成と特徴
全10章で構成し、転職先の有無別の最適な退職日、賞与や有給の活用方法、退職手続きのスケジュールなどを実用的に解説します。専門用語は最小限にし、具体例を用いて説明します。
読み方の案内
概要を把握したい方は第2〜4章を、手続きや時期の詳細を知りたい方は第5〜9章をご覧ください。各章は独立して読めるように配慮していますので、気になる章からお読みください。安心して読み進めてください。
退職日は自分で決められる
法的な立場
退職日は原則として退職者本人が決められます。民法第627条に基づき、無期雇用の場合は退職したい日の2週間前に申し出れば、法律上はその日を退職日とできます。会社の就業規則で「1か月前に申し出」と定められていても、法的には2週間ルールが優先します。
具体例でわかりやすく
例えば、3月31日に退職したいなら3月17日までに申し出れば法的要件は満たせます。もっと円満に進めたいときは1か月前に相談するとトラブルを避けやすいです。書面(退職届や退職願)で提出すると記録が残り安心です。
会社側の対応と注意点
会社が一方的に退職日を決めるのは原則として認められません。業務引継ぎや人員配置の都合で退職時期の調整を求められることはありますが、最終的な決定権は労働者にあります。職場のルールやチーム状況を踏まえて、できるだけ早めに上司と話し合うことをおすすめします。
実務的なアドバイス
離職票や社会保険、給与計算の関係で実務上の調整が必要になることがあります。退職の意向を伝える際は、希望日と理由、引継ぎの計画を簡潔に示すと話がスムーズに進みます。
転職先が決まっている場合の最適な退職日
ポイント
転職先が決まっているなら、最も得をする退職日は「入社日の前日」です。これにより給与や保険、福利厚生に空白期間が生じにくくなります。企業側の手続きもスムーズです。
社会保険や健康保険の扱い
会社の健康保険や厚生年金は、退職日によって資格の喪失時期が変わります。入社日の前日に退職すれば、原則として新しい勤務先の保険に切り替わるため、国民健康保険に一時加入する必要が出にくくなります。もし月の途中で日付が合わない場合、国民健康保険に加入することがありますが、多くの場合は保険料の調整や還付で対応できます。
具体例
例1: 新しい会社の入社が4月1日なら、現職は3月31日を最終出社日にするのが理想です。例2: 入社が4月10日の場合、4月9日を退職日にすると保険の切替えで空白が少なくなります。
退職前にすること(チェックリスト)
- 入社日を新しい会社と書面で確認する
- 現職の就業規則で退職届や提出期限を確認する
- 最終給与や賞与、未消化の有給の扱いを確認する
- 健康保険証や年金手帳の返却・受け取り方法を確認する
注意点
退職日を入社日の前日に合わせると、手続きは簡単になりますが、退職届の提出時期や業務引継ぎを計画的に行ってください。退職と入社の間にわずかな空白が生じる場合は、保険や税の扱いを事前に確認すると安心です。
転職先が決まっていない場合の最適な退職日
月末退職を勧める理由
転職先がまだ決まっていない場合は、月末での退職が経済的に有利です。一般に社会保険料は月単位で扱われ、月末まで在籍するとその月分を会社が負担する場合が多いです。結果として、国民健康保険や国民年金への切り替え時期を遅らせ、直近の自己負担を抑えられます。
失業給付や手続きの面での利点
離職後に失業手当を申請する際、離職日が月末だと必要書類の準備やハローワークでの手続きが区切りよく進みます。例えば、会社から離職票が出る時期や雇用保険の加入期間の計算が分かりやすくなります。
実務上の注意点と具体例
- 退職日を決める前に人事窓口へ確認してください。保険の扱いや最終給与の計算方法は会社によって異なります。
- 有給の消化や月末の勤務日数で給与が変わる場合があります。例:3月31日に退職すると3月分は会社負担のまま、4月から国民保険に切り替わるといった流れを想定して計画してください。
- ボーナスや賞与の支給時期も事前に確認しましょう。支給日直前の退職は金額に影響することがあります。
このように、転職先が決まっていない場合は月末退職を基本に考え、会社の規定や届出スケジュールを確認しながら調整すると安心です。
最も得をする退職日は12月31日
なぜ12月31日が有利なのか
年の最後の日に退職すると、その年の給与や賞与は同じ年で完結します。特に12月に賞与が支給される会社では、12月31日に辞めれば賞与を受け取れる可能性が高く、年末調整も会社が対応するため税務面で手続きが整理されやすいです。社会保険料の算定や年単位の扱いが関係するため、全体として手取りが有利になる場合が多いです(会社の運用によりますので要確認)。
3月31日が次に良い理由
3月31日は年度末で会社の決算期に合わせやすく、引き継ぎがすっきりします。円満退職を目指すときや、部署間の調整が終わるタイミングとして便利です。年度区切りで人事処理が行われるため、手続きがスムーズになることがあります。
実務での注意点
具体的な得失は会社の就業規則や賞与・支給日のルールで変わります。退職前に人事へ確認し、賞与支給日、年末調整、社会保険の扱い、失業手当の受給要件などを確認してください。有給の消化や引き継ぎも計画的に行うと安心です。
賞与・ボーナスの支給タイミングの考慮
なぜ重要か
賞与は「在籍要件」がある会社が多く、支給日以前に退職すると支給対象外になることがあります。金額は数十万円〜数百万円に達することがあり、支給後に退職するだけで大きな金銭的メリットになります。
確認すべき項目
- 就業規則の賞与条項:支給要件(支給基準日や在籍条件)をまず確認します。
- 支給日と振込日:会社が公式に示す支給日を把握します。振込は支給日当日でないこともあります。
- 支給の按分や例外:一部企業は在籍日数に応じて按分支給する場合があります。
- 欠格事由:懲戒や自己都合かどうかで扱いが変わる会社もあります。
具体的な例
例:賞与が50万円の場合、支給日に在籍していれば50万円受け取れます。支給日前に退職すると0円、または按分で数万円〜数十万円になる可能性があります。
実務的な手順
- 就業規則を確認する。2. 人事・総務に支給要件と支給日を口頭とメール等の書面で確認する。3. 退職日を支給日以降に設定する。4. 給与計算の締めや振込タイミングも確認して、実際に振り込まれる日を基準に調整します。
注意点
退職の申し出時期と退職日は別です。申し出を早めにしても退職日を支給日以降に設定すれば支給対象になることが多いです。企業の裁量で対応が分かれるため、必ず文書で確認してください。
有給休暇の活用
有給で退職日を逆算
有給休暇が残っている場合、退職したい日から逆算して最終出社日を決められます。実質の出社日を短くでき、転職準備や引継ぎに余裕が生まれます。
実際の手順
- 残日数と取得条件を確認する(就業規則や勤怠システムで確認)。
- 退職希望日を決める(転職先の入社日や賞与の時期を考慮)。
- カレンダーで営業日ベースに逆算する。週休や祝日を忘れずに数えます。
- 上司へ早めに相談し、有給申請を正式に出す。書面やメールで記録を残すと安心です。
- 引継ぎを文書化する。重要業務は手順書や連絡先を残しましょう。
給与や手続きの扱い
有給取得中も給与は通常通り支払われます。賞与や社会保険、雇用保険の扱いは会社や時期で異なるので、人事に確認してください。
よくある疑問
- 有給は必ず取れる?
原則として権利ですが、業務に重大な支障がある場合は時期調整を求められることがあります。早めに相談してください。 - 未消化分の買い取りは?
会社の規定によります。就業規則で確認を。 - 半日や時間単位の取得は使える?
制度は会社ごとに異なります。柔軟に使えれば転職準備に便利です。
退職手続きのスケジュール
概要
円満退職のための一般的な流れを、時期ごとにわかりやすくまとめます。目安は1~3か月前の意思表明、1~2か月前の退職届提出、1か月前から最終出社日までの引き継ぎと挨拶です。
1~3か月前(意思表明)
- 上司に口頭で退職の意向を伝えます。理由は簡潔に伝え、感謝の言葉を添えると印象が良くなります。
- 契約書や就業規則で退職のルール(通知期間や手続き)を確認します。
1~2か月前(退職届の提出)
- 社内の手続きに合わせて退職届を準備し、必要なら人事へ相談します。
- 引き継ぎのスケジュールを上司と調整します。
1か月前~最終出社日(引き継ぎ・挨拶)
- 引き継ぎ書を作成し、口頭での引き継ぎを行います。重要な連絡先や手順を具体例で残します。
- 顧客や関係部署へ挨拶と引き継ぎの連絡を行います。
- 私物整理、貸与物の返却、最終給与や有給の処理を確認します。
退職直前(1週間~数日前)
- 送別メールの準備や最終確認を行います。
- 人事との最終手続き(健康保険、年金、源泉徴収票など)の日程を確認します。
最終出社日
- 机やロッカーの最終整理、貸与物の返却、最終報告を行います。
- 退職届の控え、必要書類の受け取りを確認し、挨拶して退社します。
実用チェックリスト(一例)
- 退職届
- 引き継ぎ書、連絡先リスト
- 貸与物の返却リスト
- 人事へ確認する書類(源泉徴収票など)
このスケジュールを基に、会社のルールや状況に合わせて早めに調整すると円満退職につながります。
転職に有利な退職時期
概要
求人が多く転職しやすい時期を紹介します。自分が損をせず現職に迷惑をかけにくい時期を選ぶと、転職活動がスムーズになります。
1〜3月(冬のボーナス後の人員補充期)
多くの企業が年度替わりに向けて採用を増やします。冬のボーナス支給後で退職者が出やすく、求人が豊富です。例:1月に退職を伝え、3月末で区切ると新年度の採用に合いやすいです。
GW〜6月(夏のボーナス前後の退職者増加期)
ゴールデンウィーク後は職場の人員調整が進みます。5〜6月は応募先の採用も活発になり、入社時期の選択肢が広がります。例:5月退職で6月面接・入社が決まりやすいです。
お盆〜10月(企業の人員補充需要期)
夏休み明けから秋にかけて、欠員補充や新規採用が増えます。年後半のプロジェクトに合わせた採用が入るため、採用枠が見つけやすいです。
選ぶ際の実務ポイント
- 退職の申し出は余裕を持って行う。
- 有給消化や引き継ぎ期間を考慮する。
- 内定時の入社日と現職の退職日を調整する(例:月末退職、月初入社)。
- 希望時期に合わせて面接スケジュールを組むと転職が速く決まります。
2週間前の申し出の数え方
基本ルール
民法の2週間前申し出は、暦日(カレンダーの日数)で数えます。週末や祝日、連休も含めて計算します。勤務日数や出勤の有無は関係ありません。
数え方の具体例
- 5月1日に申し出た場合 → 5月15日に退職できます(申し出日を1日目として15日目が退職日)。
- 4月29日(祝日)に申し出た場合 → 5月13日が退職日。
このように、申し出日を含めて14日後ではなく、14日間の経過で15日目に退職可能となると覚えてください。
実務上の注意点
- 書面で提出すると証拠になります。口頭で伝えた場合も有効ですが、あとでトラブルを避けるためにメールや退職届の写しを残しましょう。
- 就業規則や雇用契約で所定の予告期間が定められている場合は、それに従う必要があります。会社と合意すれば、退職日を延ばしたり短縮したりできます。
最後に一言
連休や祝日が重なっても、日数は暦で確実に数えてください。分かりにくい場合は、会社の人事担当に確認して書面で合意を取ることをおすすめします。


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