はじめに
目的
本資料は、退職代行サービスを利用する際に必要となる「委任状」について、役割・必要性・作成方法・注意点・押印の扱い・具体例までをわかりやすく解説することを目的としています。実際に退職手続きを他者に任せる前に知っておくべきポイントを網羅しています。
読者対象
- 退職代行を検討している方
- 代理人に手続きを任せる予定の方
- 委任状の書き方に不安がある方
専門家でなくても理解できる表現で説明しますので、初めての方も安心して読めます。
本資料で扱う主な項目
- 委任状の法的位置づけと基本的な意味
- 退職代行における委任事項の範囲
- 記載すべき情報と書き方のポイント
- 押印や署名に関する注意点
- 基本的な例文と詳細な例文
各章で具体例を示し、実務で使いやすい形を目指します。
注意事項
本資料は一般的な解説を目的としています。個別の法的判断や複雑なケースでは、弁護士等の専門家に相談してください。個人情報の扱いには注意し、必要最小限の情報で手続きを進めましょう。
委任状とは何か – 基本的な定義と法的位置づけ
委任状の定義
委任状とは、本人が第三者に特定の権限を与えることを明確に示す書面です。退職代行の場合は、従業員が退職手続きを代行業者に任せるために使います。書面で明示することで、誰がどの範囲で動くかがはっきりします。
法的位置づけ(民法の代理制度)
民法では代理制度を認めており、代理人の行為は本人に帰属します。代理人が本人の意思を会社に伝えれば、その意思表示は本人がしたのと同じ効力を持ちます。つまり、適切に委任されていれば退職の意思表示も代理で可能です。
退職代行での具体例
たとえばAさんが業者に「退職届の提出」「有給休暇の申請」「会社とのやり取りの窓口」を任せる場合、委任状にその旨を記載します。会社は委任状を確認して、代理人からの連絡を受け取ります。
書面の重要性と実務上の扱い
口頭でも委任は成立し得ますが、実務では書面を求められることが多いです。書面は誤解を防ぎ、後のトラブル予防になります。署名・日付や身分を確認できる情報を添えると信頼性が高まります。
注意点
委任範囲をあいまいにしないことが重要です。どこまで代理するかを明確にすることで、会社・代理人・本人ともに安心して手続きを進められます。次章では、委任状に記載すべき具体的な情報を詳しく説明します。
退職代行における委任状の必要性と役割
退職代行を利用するときの委任状は、本人が代理人に退職手続きを正式に任せたことを示す重要な書面です。会社に対して本人の意思と代理権が明確になりますので、不要な誤解や余計な連絡を減らす役割を果たします。
なぜ必要なのか
- 証拠としての役割:本人が退職を望んでいる事実を記録できます。録音や口頭だけよりも書面があると会社側も対応しやすくなります。
- トラブル防止:手続きの範囲や代理人の権限が明示されることで、後日の争いを減らせます。
- 連絡回避:会社が直接本人と連絡する代わりに、代理人へ連絡を集中させられます。しつこい電話や訪問を抑える効果があります。
具体的な役割
- 退職の意思表示を代理で行う
- 退職日や引継ぎの調整を進める
- 退職に関する書類の受け取り・提出を代行する
- 給与や有給の精算について会社とやり取りする(委任の範囲による)
委任状があれば、退職代行業者は会社に対し代理権の存在を示し、スムーズな手続きを目指せます。なお、委任状だけで全てが解決するわけではありませんので、必要な範囲や本人確認書類の添付など、次章以降で詳しく説明します。
委任状に記載すべき必要情報
必須情報
- 委任者(本人)の氏名・住所・連絡先
- 氏名はフルネームで、住所は現住所を正確に記載します。電話番号やメールは連絡が取れるものを。
- 受任者(退職代行業者)の名称・住所・連絡先
- 会社名や個人名、事務所の住所・電話を明記します。
- 委任事項
- 何を代行するのかを具体的に書きます(例:退職の意思表示、退職手続きの対応、書類受領など)。
- 委任期間
- いつからいつまで委任するか、または「完了まで」と明記します。
- 作成日
- 委任状を作成した日付を記載します。
- 署名または捺印
- 自署が望ましいです。印鑑を使う場合は後述の注意点に従ってください。
記載すると安心な追加項目
- 委任日(委任を開始した日)と有効期限
- 退職理由(簡潔で可)
- 受任者の担当者名や連絡窓口
- 本人確認書類の写しを添付する旨
- 代理権に含まれない事項(例:金銭授受の許可がない等)
記載のポイント
- 言葉は具体的に:曖昧な表現は避けます。例えば「退職手続き一切」ではなく「退職届の提出および会社とのやり取り」などとします。
- 連絡方法を明示:電話・メールどちらでの連絡を優先するかを記載すると手続きがスムーズです。
注意点
- 情報は正確に記載してください。記載ミスで手続きが遅れることがあります。しかし、内容に不安がある場合は事前に代行業者へ相談してください。
委任事項の記載方法と具体性の重要性
曖昧さを避ける
委任事項は抽象的な表現を避け、具体的な行為を明記します。たとえば「退職手続き全般」ではなく「退職届の作成・提出」「退職金の受領手続き」などと列挙します。
記載のポイント
- 行為を明確にする:提出・交渉・受領・確認など具体的な動詞を使います。
- 範囲を限定する:対象(会社名・部署)、期間(いつからいつまで)を明記します。
- 権限の程度:代行者が署名・受領・和解の合意をして良いかを明示します。
- 添付・提示書類:委任状に必要な書類(身分証明書、委任状の写し)を指定します。
具体例(列挙形式)
- 退職届の作成および会社への提出
- 退職条件(退職日・引継ぎ方法)の交渉
- 退職金の金額確認および受領手続き
- 未払い賃金の請求および受領
- 社会保険・雇用保険の脱退・資格喪失手続き
書き方のひな型例(短)
「委任者は受任者に対し、(会社名)に対する『退職届の提出』および『退職金の確認・受領』の一切の手続を委任する。」
注意点
具体的であればあるほど誤解が減り、第三者も手続きしやすくなります。権限を広げすぎると予期せぬ合意を招くため、必要最小限にとどめてください。
委任状の記入上の注意点
正確な情報を丁寧に記入する
氏名・住所・連絡先は誤字脱字のないよう正確に記入してください。例えば電話番号の桁違いで連絡が取れないと手続きが止まります。日付は和暦・西暦どちらかを統一して記入すると分かりやすいです。
委任事項は具体的に書く
「退職手続き一切を委任する」など漠然とした文言は避け、具体的に何を委任するのか列挙してください(例:退職の意思表示、退職日調整、未払い賃金の請求)。具体的な記載で代理人が行える範囲が明確になります。
委任期間は必要十分に設定する
期間を短くし過ぎると再度手続きが必要になります。逆に長すぎると不要な権限を与えます。例:委任開始日〜退職手続完了まで、など目的に合わせて限定してください。
退職理由の書き方
通常は「一身上の都合」で問題ありません。ハラスメントや未払いが理由で証拠として記載する場合は、簡潔に事実だけを書き、感情的な表現は避けてください。詳細すぎる記述はトラブルを招く恐れがあります。
個人情報や証拠の扱い
パスワードや銀行口座番号などの機微情報は委任状に書かないでください。必要な証拠は別紙にまとめ、渡す際の説明を添えると安全です。
記入後の確認と保管
記入後は第三者に読み直してもらい、代理人とコピーを共有してください。原本は大切に保管し、必要時に速やかに提示できるようにしておきます。
押印に関する重要な注意事項
章の趣旨
委任状の押印は書類の信頼性に直結します。本章では実印と認印の違い、印鑑証明の役割、実務上の注意点を分かりやすく説明します。
実印と認印の違い
実印:市区町村に登録した印鑑で、印鑑証明とセットにすると本人性が強く証明できます。
認印:日常的に使う印鑑で、法的効力は限定的です。簡単な手続きや社内連絡では認印で足りることもありますが、対外的な書類では弱い印象を与えます。
印鑑証明を添付する利点
印鑑証明があると会社側が書類の真正性を認めやすくなります。特に退職代行のように代理権を第三者に委ねる場合、証明書があると誤解や争いを避けやすくなります。
注意点と実務的対応
実印と印鑑証明があっても、委任内容が明確でなければ十分ではありません。委任の範囲(日付、具体的な行為)を明記してください。急ぎなら認印+本人署名+身分証コピーで対応し、後で印鑑証明を追加する方法も有効です。
偽造・紛失への対策
印影の写真をメールで送ると偽造リスクが高まります。印鑑登録の廃止手続きを知っておくと、安全対策になります。
基本的な委任状の例文
以下に、退職代行で使える基本的な委任状の例文と記入のポイントを示します。
例文(書式)
日付:2025年○月○日
委任者:氏名(フリガナ)
住所:〒—
電話番号:
受任者:退職代行業者名称(担当者名)
住所/電話番号:
委任事項:私は、下記のとおり退職に関する一切の手続を委任します。
1. 退職届の提出およびその手続き
2. 退職金・未払い給与の受領に関する手続き
3. 雇用保険・年金等に関する必要な手続き
4. その他、退職に付随する一切の手続
委任期間:2025年○月○日から退職手続完了まで
署名・押印:委任者(自署)/印
記入例のポイント
- 氏名は戸籍上の表記に合わせると確実です。
- 受任者は契約した業者の正式名称を記載してください。
- 委任事項は具体的に列挙すると誤解が生じにくくなります。
- 期間は開始日と終了(または「完了まで」)を明確にしてください。
- 本人確認のために身分証のコピーを添付すると手続きがスムーズです。
注意点
- 曖昧な表現を避け、誰が何をできるかを明確に記してください。
- 署名・押印がないと受理されない場合がありますので必ず記入してください。
詳細な委任事項を含む例文
委任状(詳細例)
下記の事項について、私(以下「委任者」)は代理人(以下「受任者」)に委任します。
- 退職届の作成および会社への提出
-
退職日や理由を明記した退職届の作成、郵送またはメールでの提出を含みます。
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退職条件の交渉
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退職日、引継ぎ期間、在職中の扱い、勤務証明や推薦状の発行について会社と交渉します。
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退職金の確認および受領
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支給額の計算内容の確認、会社への請求、指定口座への受取手続を行います。
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未払い賃金・残業代の確認と請求
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未払いの賃金や精算すべき手当を確認し、必要に応じて請求します。
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有給休暇の消化と買い取り交渉
-
残日数の確認、消化方法や買い取りの交渉を行います。
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社会保険・雇用保険の手続き
-
脱退・資格喪失手続、離職票の交付請求、必要書類の受取を行います。
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会社備品の返却・清算
-
備品リストに基づく返却、未返却による精算の交渉をします。
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証明書類の受領・保管
-
離職票、源泉徴収票、雇用証明書などの受領および委任者への送付を委任します。
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その他、退職に関して必要な一切の手続き
- 必要に応じ、書類への署名や受付対応を行います。
日付:
委任者署名:
受任者署名:
注:具体的な金額や日付、口座情報等は委任状に明記してください。


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