はじめに
調査の背景
近年「退職代行」を利用する人が増え、依頼先も弁護士や民間業者、労働組合など多様化しています。本書は、弁護士に退職代行を依頼する場合の費用に焦点を当て、実情と比較ポイントを分かりやすくまとめました。
本調査の目的
弁護士に支払う費用の相場や料金体系、費用構成と運営形態による違いを整理し、依頼を検討する際の判断材料を提供します。具体例を示しながら、費用に見合うメリットも確認します。
想定する読者
- 自分で退職手続きを進めるのが不安な方
- 退職時のトラブルを回避したい方
- 弁護士と民間業者の違いを知りたい方
本書の構成(全9章)
第1章は本章。第2章以降で相場、費用構成、運営元別の違い、料金プラン例、雇用形態の影響、弁護士依頼のメリット、選び方のポイント、まとめを順に解説します。まずは全体像を把握して、次章以降で詳細を確認してください。
弁護士による退職代行の費用相場
費用の全体像
弁護士による退職代行の費用はおおむね2万円~10万円の幅があります。市場での基本相場は5万円~10万円前後、低価格帯は2万円~6万円、一般的な相場は5万5000円~7万7000円と考えられます。料金の差は法律事務所ごとの料金体系や、実際に行う対応範囲の違いから生じます。
価格帯ごとの目安(簡単な例)
- 低価格帯(2万~6万円): 退職の意思を会社に伝える連絡代行のみで、短時間で手続きが完了するケース。
- 一般的な相場(5.5万~7.7万円): 退職連絡に加えて書面作成や簡単な交渉が含まれる場合。やり取りが数回で済むことが多いです。
- 高価格帯(8万~10万円): 未払い賃金や残業代請求など、交渉が長引く可能性がある事案や、労働問題として深刻なケース。
料金差が生まれる主な理由
- 対応範囲: 単なる連絡代行か、交渉や請求まで含むかで大きく変わります。
- 事務所の規模や経験: 経験豊富な弁護士は料金が高めになることが多いです。
- 緊急対応や休日対応: 即日対応や夜間対応は追加料金が発生しやすいです。
- 成果報酬の有無: 着手金のみか、勝訴時に別途報酬が発生するかで総額が変わります。
依頼前の確認ポイント
- 相談料が無料か有料かを確認してください。
- 料金に何が含まれているか(連絡、書面、交渉、実費等)を明確にしてください。
- 追加費用の発生条件を確認し、見積書や契約書で範囲を固めましょう。
複数の事務所で見積もりを取り、対応範囲と費用のバランスを見比べることをおすすめします。
費用の構成要素
1. 初回相談料
退職代行の相談は、無料で受け付ける事務所が多いです。無料でない場合は「30分あたり5,500円程度」が目安です。初回は状況確認と方針の説明が主な内容になります。
2. 基本費用(着手金)
業務を開始するための料金です。退職手続きや会社とのやり取りを代行するための実務費と考えてください。事務所によって金額は異なり、業務範囲を確認してから契約します。
3. 成功報酬
未払い給与や残業代の請求など、金銭回収が発生したときに設定される報酬です。回収額に対する割合で設定されることが多く、請求がない場合は発生しません。
4. 実費(通信費・交通費など)
郵送費・書留料・交通費・コピー代など、実際にかかった費用を指します。多くの事務所は基本費用に一定の実費を含めていますが、遠方対応や複数回の出張が必要な場合は別途請求されることがあります。
5. 料金表示の確認ポイント
・何が基本費用に含まれるかを明確にすること
・成功報酬の算出方法(率や上限)を確認すること
・実費の扱い(上限や事前承認)がどうなっているかを確認すること
これらを契約前に確認すれば、後からの追加費用に備えられます。
運営元による費用の違い
概要
退職代行は運営元によって料金が大きく変わります。民間企業は1万円〜5万円、労働組合は2万5000円〜3万円、弁護士事務所は5万円〜10万円が一般的です。費用差は対応範囲と信頼性の違いによります。
民間企業の場合(低〜中価格)
民間業者は連絡代行や退職手続きの案内を主に行います。料金は安めで即日対応が多い点が強みです。ただし、法的な交渉力や未払い賃金の請求は別料金となることが多く、オプション費用が発生する場合があります。
労働組合の場合(中価格)
労働組合は会社と団体交渉ができるため、未払い賃金や解雇トラブルにも対応しやすいです。料金は民間と弁護士の中間で、労働者側の立場で交渉力を発揮します。個別の法的手続きが必要な際は、別途弁護士に委託する場合もあります。
弁護士事務所の場合(高価格)
弁護士が関与すると法的紛争の解決まで対応できます。労働審判や訴訟、損害賠償請求など法的手続きが必要なケースで安心です。費用は高めですが、結果を重視する場合に適しています。
選び方のポイント
まず自分の目的を明確にしてください。単純に早く辞めたいだけなら民間業者で十分なことが多いです。未払い賃金や解雇の争いがあるなら労働組合や弁護士を検討してください。料金の内訳、追加費用、対応範囲、初回相談の有無を必ず確認しましょう。
具体的な料金プラン例
概要
具体的な料金例を挙げて、何が含まれるかを分かりやすく説明します。金額だけでなく対応範囲を確認すると選びやすくなります。
アディーレ法律事務所の例
- ライトプラン:33,000円(税込)。退職の意思表示のみを代理で行います。会社への連絡や退職届の提出など、意思表明までが中心です。
- フルサポートプラン:77,000円(税込)。意思表示に加え、退職に付随する業務もサポートします(交渉、内容証明作成、引き継ぎ調整のアドバイス等)。
その他の弁護士サービス例
- ライト:19,800円 (意思表示中心)
- スタンダード:39,800円(書類作成、簡単な交渉対応を含む)
- プレミアム:59,800円(電話・面談でのきめ細かい対応、長い交渉も想定)
これらは一例で、事務所によって呼び方や範囲が異なります。
フォーゲル総合法律事務所の基本料金
- 基本料金:33,000円。料金に含まれる範囲は事務所により異なるため、事前確認が必要です。
プラン選びで確認すべき点
- 料金に何が含まれるか(意思表示、書類作成、交渉など)
- 追加費用の有無(内容証明郵送費、出張費等)
- 対応回数や期間の目安
- 返金規定や契約書の明確さ
簡単なケースならライトで十分ですが、会社と交渉が必要な場合はスタンダード以上を検討してください。
雇用形態による費用の違い
概要
退職代行の手数料は雇用形態で目安が変わります。一般的には正社員が約5万円、パート・アルバイトが約4万円程度です。あくまで目安ですので、事前の見積りを確認してください。
なぜ差が出るのか
正社員は雇用契約が複雑で、残業代や退職日、退職金の確認など交渉事項が増えやすいです。交渉や書類作成が増えると手間が増え、費用に反映されます。一方、パート・アルバイトは手続きが比較的簡単で費用が抑えられることが多いです。
雇用形態別の具体例
- 正社員:目安5万円前後。未払い残業や管理職手当の確認が必要な場合、追加料金や別途相談になることがあります。
- 契約社員・派遣社員:目安4〜5万円。契約期間中の解約や雇用元との複雑な契約確認で変動します。
- パート・アルバイト:目安約4万円。比較的シンプルな対応で済むケースが多いです。
注意すべき追加費用
残業代請求や内容証明郵便、裁判手続きなどは別料金になることがあります。依頼前にどこまで含まれるかを確認してください。
依頼前のポイント
事前相談で雇用形態を詳しく伝え、見積りと範囲(交渉の有無、書類送付、金銭請求の対応など)を明確にしましょう。費用は目安なので、ケースに応じて上下する点を把握しておくと安心です。
弁護士に依頼するメリット
1) 法的な問題に直接対応できます
弁護士は法律の専門家です。退職金や未払い残業代、雇用契約の解釈など、裁判や労働審判が必要になるケースでも対応できます。例えば未払い残業代の請求では、証拠の集め方や請求手続きまで任せられます。
2) 交渉力と書面作成の強さ
弁護士は会社との交渉で有利な立場を作りやすく、通知書や内容証明の作成も行います。口頭だけでなく書面で要求を示すことで、トラブルの早期解決につながることが多いです。
3) 不当な対応からの保護と証拠保全
不当な解雇や嫌がらせが疑われる場合、弁護士は証拠の保全や申立てを迅速に行います。安全に争点を整理でき、後の法的手続きでも有利になります。
4) 精神的負担の軽減
代理で会社とやり取りしてもらえるため、自分で直接交渉するストレスが減ります。事情を説明すれば弁護士が方針を示し、安心して退職手続きを進められます。
5) 紛争化した場合の備え
民間業者よりも対応範囲が広く、裁判に移行してもそのまま対応できます。危険度が高いケースや金額が大きい場合は、最初から弁護士に依頼する利点が大きいです。
費用選択のポイント
弁護士による退職代行の費用は一般に高めですが、必ずしも高額が最適とは限りません。ベンゴシNOWのように1万9800円から利用できるサービスもあります。料金の上限が高い場合は、成功報酬や交渉の範囲が別途発生することが多いためです。
選ぶときの主なポイント
- 料金の明確さ:初期費用・成功報酬・追加の交渉費用が分かるか確認してください。
- サービス範囲:退職手続きのみか、未払い賃金やハラスメント対応まで含むかで費用は変わります。
- 実績と経験:類似ケースの対応実績があるかで、対応の質が変わります。
- 対応の速さと連絡方法:すぐに動いてくれるか、電話・メールの対応時間を確認しましょう。
- 支払い条件:分割払いや後払いの可否も確認しておくと安心です。
ケース別の考え方
- 退職連絡だけ:低価格プランで十分なことが多いです。
- 交渉や証拠収集が必要:弁護士の能力が費用に見合う可能性が高いです。
- 未払い賃金請求:成功報酬型でも回収見込みが高ければ費用対効果が良くなります。
最後に、料金だけで決めずに、見積もりと契約内容を比較して判断してください。
まとめ
弁護士による退職代行は、民間業者や労働組合に比べて費用が高めになりますが、法律的な対応が必要な場面では安心して任せられます。特に未払い賃金の請求や退職後のトラブル、会社側との交渉で法的主張が必要な場合に有効です。
- 選び方のポイント
- 問題の複雑さを見極める:証拠や請求の有無、紛争化の可能性を確認してください。
- サービス範囲を確認する:交渉のみか、訴訟対応まで含むかを明確にしましょう。
- 費用の内訳を確認する:着手金・成功報酬・追加費用の有無を確認してください。
- 複数の見積もりを取る:相場と比較して納得できる事業者を選びます。
短期間でトラブルなく退職したい場合や法的リスクが低い場合は民間業者でも十分なことがあります。したがって、法的対応が必要かどうかを基準に、最も安心できるプランを選んでください。初回相談で不安点や費用の疑問を遠慮なく確認することをおすすめします。


コメント