はじめに
背景
企業が従業員の退職手続きを行う際、直接本人と顔を合わせずに退職代行を通じて退職届を受け取るケースが増えています。本人確認や意思確認が不十分だと、後でトラブルになることがあります。
本資料の目的
本資料は、退職代行からの連絡や書類を受け取ったときに、企業が取るべき基本的な対応を段階的に示すことを目的としています。特に本人確認や雇用契約の確認、貸与品の扱い、最終手続きまでの流れを分かりやすく説明します。
対象読者
人事担当者、総務担当者、管理職など、退職手続きを実務で扱う方を想定しています。専門用語はできるだけ避け、例を挙げて具体的に説明します。
本資料の使い方
各章は実務の流れに沿っています。最初に身元確認のポイントを説明し、次に本人の意思確認や雇用契約の確認へ進みます。実際の対応時は、状況に応じて該当する章を参照してください。
注意点
個人情報や労務に関わるため、慎重に対応してください。法的な判断が必要な場合は、社内の法務部門や弁護士に相談してください。
退職代行の身元確認の重要性
はじめに
退職代行から連絡を受けたら、まず身元確認を行ってください。相手の身元がはっきりしなければ、誤解や不正請求などのトラブルに発展する恐れがあります。
退職代行の形態と法的権限
退職代行は主に3種類です。一般企業、弁護士事務所、労働組合（退職代行ユニオン）。弁護士事務所は法律上の代理権を持ち、労働組合は団体交渉の権限を行使できます。一般企業は交渉力に限りがあるため、対応範囲が異なります。
確認すべき具体的項目
- 名称と担当者氏名：会社名や事務所名、担当者名を確認します。名刺や公式サイトの情報と照合してください。
- 登録情報：弁護士なら登録番号、事務所の所在地。労働組合なら組織名と所在地、結成根拠を尋ねます。一般企業は法人番号や登記情報で確認します。
- 連絡先の正当性：公式ドメインのメールや固定電話番号を確認し、安易な個人メールや携帯番号のみの連絡は注意します。
- 委任状や書面：代理を示す委任状や依頼者の同意を示す書面を求めます。口頭のみで済ませないようにしてください。
本人確認の補助方法
可能なら本人に直接連絡を取って同意を確認します。電話やメールでの承諾記録を残すと安心です。
注意点
身元不明の業者や過度に早い支払い要求、法的根拠を示さない交渉は警戒してください。記録を保存し、不安があれば弁護士や労働組合に相談しましょう。
従業員本人の意思確認方法
書面での確認（最も確実）
退職代行からの依頼が本人の意思によるかを確かめるには、委任状や印鑑登録証明書、運転免許証やマイナンバーカード等の本人確認書類のコピー提示を求めます。本人自筆の委任状や退職届があれば証拠力が高まります。
電話・ビデオ通話での確認
顔が見えるビデオ通話や、会社に登録された連絡先へ折り返し確認する方法も有効です。日付や退職理由など、当人しか答えられない事実を確認すると安心できます。
本人性の追加証明
本人の署名と身分証の照合、職場での勤務状況（最終出勤日など）の確認も行ってください。代行業者に請求して音声録音やメールのやり取りを残してもらうと後で役立ちます。
本人自筆の退職届を求める場合の注意
本人自筆の退職届を提出してもらう際は、日付と署名を明記してもらい、身分証明書のコピーを添付してもらいましょう。偽造の疑いがある場合は、署名や文字の特徴を照合して確認します。
本人確認が難しいときの対応
緊急時や連絡が取れない場合は、代行業者に事情を記した書面での説明を求め、代行とのやり取りを記録してください。やり取りは可能な限り書面や記録で残すことが大切です。
個人情報の取り扱い
提示された書類は慎重に扱い、目的外利用や不必要な保管を避けましょう。必要がなくなったら速やかに適切に廃棄してください。
雇用契約内容の確認
確認する書類と項目
雇用契約書、労働条件通知書、就業規則をまず確認します。重要な項目は雇用形態（正社員・契約社員など）、業務内容、労働時間、給与、退職に関する記載、契約期間の有無です。具体例：契約書に「契約期間：2025年3月31日まで」とあるか確認します。
有期契約の場合の扱い
有期契約は原則として期間満了まで続きます。中途退職を希望する場合は会社と合意が必要です。ただし、健康被害や長期間のパワハラなど『やむを得ない事由』があると判断されれば別です。例として、医師の診断書や録音・メールなどの証拠を残すことが大切です。
就業規則と退職日
就業規則に「退職届は○日前までに提出」とあれば、それに従います。退職届を出した日と実際の最終出勤日は異なる場合がありますので、双方で合意した日付を文書で確認してください。
実務の手順（簡潔）
- 契約書の写しを用意する
- 契約期間の有無を確認し、必要なら交渉する
- やむを得ない事由がある場合は証拠を保存する（メールや診断書など）
- 退職日や引継ぎ方法を文書で決める
- 退職届は書面で保存する
注意点
有給の扱いや未払い賃金、退職金の規定も確認してください。会社と口頭で合意しても証拠が残らないと後で争いになります。可能なら記録を残す習慣をおすすめします。
退職届の受け取りと貸与品の返却
退職届の確認ポイント
退職届は必ず書面で確認します。氏名・退職日・提出日・押印（または自署）が揃っているかを見ます。理由は任意の場合が多いので無理に書かせる必要はありません。不備があれば、どの項目が不足しているか具体的に伝え、再作成を依頼します。
受け取り・提出方法
会社指定の書式があれば、それを使ってもらいます。提出方法は手渡し・配達記録のある郵送・スキャンしてPDF送付のいずれかを指示してください。会社が原本を必要とする場合は郵送を頼み、到着後に受領書を発行します。
貸与品の返却手順
貸与品は明確なリストを作ります（例：ノートパソコン、セキュリティカード、社員証、携帯端末、鍵等）。各品目について型番・シリアル番号や現状（傷や動作）を記載します。パソコンは個人データを初期化するか、IT担当にデータ消去を依頼してから返却します。返却方法は出社して手渡し、指定の返却窓口へ配送、もしくは回収手配のいずれかを指定します。
返却証明と記録の保管
返却の際は受領印や受領メール、返却チェックリストに署名をもらいます。写真で状態を残すと後のトラブルを防げます。退職代行を利用する場合は、代行が返却手続きを代行する権限があるか会社側と確認してください。
注意点
返却期限と返却場所を明確に伝えてください。返却が遅れると賠償請求の対象になる場合があるため、期日厳守で対応します。返却後は必ず会社からの受領確認を受け取り、手元に保管してください。
トラブル回避と最終手続き
手続き開始の基準
退職代行を通じて本人の意思が確認できたら、最初に退職の意思が示された日時を基準に手続きを進めます。会社側はその時点を出発点として、給与精算や有給消化の扱いを検討してください。
本人自筆の退職届を求める理由
トラブルを避けるため、可能であれば従業員に本人自筆の退職届をお願いしてください。例：手書きの意思表示を写真で送ってもらう、印刷して署名・押印した紙を郵送してもらう、など実務上の方法を提示すると協力を得やすいです。
最終手続きと連絡方法
退職手続きが完了したら、必ず書面で従業員本人に通知します。メール併用は便利ですが、郵送も行うと確実です。最終給与や社会保険の手続き、貸与品の返却期限などを明記してください。
退職代行からの連絡の扱い
退職代行が本人の代理として連絡した場合でも、その意思表示は法的に有効です。対応は誠実に行い、疑問点があれば直接本人に確認してください。
争いが発生した場合の基本対応
相手が撤回や異議を唱えた場合は、時系列での記録（メール、通話記録、代行業者とのやり取り）を保存し、社内で速やかに関係部署と共有してください。必要なら専門家に相談する選択肢も検討してください。
書類保全の重要性
すべてのやり取りは保存しておくと安心です。退職届、返却確認、最終明細などを保存し、将来の誤解や紛争に備えてください。
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