はじめに
目的
このドキュメントは、退職願や退職届に記載する「退職事由」を分かりやすく整理したガイドです。実際の書き方や伝え方を具体例とともに示し、円満な退職につなげることを目的としています。
このドキュメントで得られること
・自己都合や会社都合の違いが分かります
・ライフステージや健康、独立などの事情に合わせた表現例が見つかります
・上司や人事に伝える際のポイントがわかります
対象者
退職を検討している人、退職願を書く必要がある人、人事担当者で適切な事由表現を知りたい人に向けています。初めて退職を書く方でも使えるように平易な表現でまとめています。
使い方のガイド
章ごとに事由の分類、具体例、伝え方、書き方の見本を順に解説します。自分の状況に近い章を参照して、例文をそのまま使うか、言い回しを調整してください。
注意点
退職理由は正直で簡潔に書くことが大切です。会社の規程や就業規則を確認のうえ、必要なら人事に相談してください。
退職事由の基本概念と「一身上の都合」の意味
退職事由とは
退職事由は、退職願や退職届に記載する“会社を辞める理由”です。形式的に会社に意図を伝える重要な項目で、書き方次第で受け取られ方が変わります。
「一身上の都合」の意味と適用範囲
「一身上の都合」とは、本人の意思や個人的な事情による退職を指す一般的な表現です。幅広く使えるため、多くの人が選びます。具体例を挙げると：
– 転職や条件の良い職場への移動
– 結婚・出産・育児などのライフイベント
– 家庭の事情（介護・同居など）
– 健康上の理由（長期の通院や体調管理が必要な場合）
実務上のポイント
- 退職願には「一身上の都合により退職いたします。」と簡潔に記載するのが一般的です。
- 詳細な事情を提出する必要がある時は、別途説明や診断書などを準備します。
- 私的な理由であるため、詳細をあえて書かずに済ませることも許容されます。
注意点
「一身上の都合」は会社都合と区別されます。扱い（手続きや給付など）が異なる場合があるため、不明点は人事担当に確認すると安心です。
退職事由の大きな分類「自己都合」と「会社都合」
概要
退職事由は大きく「自己都合」と「会社都合」に分かれます。自己都合は従業員本人の意思による退職、会社都合は企業側の事情による退職です。目的や書き方が異なるため、状況を正しく分類することが大切です。
自己都合退職の特徴と書き方
- 特徴：転職、結婚、家庭の事情、学業など個人の選択や事情で辞める場合を指します。
- 書き方：退職願や退職届には、簡潔に「一身上の都合により退職いたします」と書くのが一般的です。詳細は省略して問題ありません。例：”一身上の都合により、○月○日付で退職いたします。”
- 補足：理由を詳しく説明したい場合は、上司に口頭で伝えると円満になります。
会社都合退職の特徴と書き方
- 特徴：業績不振、事業所の閉鎖、リストラや解雇など、会社の事情で退職する場合です。会社側の責任や経営判断が背景にあります。
- 書き方：退職届に会社都合である旨を明記する場合は、具体的な事情を記載します。例：”事業所閉鎖に伴い、○月○日付で退職いたします”、”業績不振による退職勧奨により退職いたします”。
- 補足：会社都合は失業保険の給付条件や離職票の扱いに影響するため、事実関係を確認しておくと安心です。
伝える際の注意点
- 書面では簡潔に記載し、詳細は面談で説明するのが一般的です。
- 会社都合と自己都合で扱いが変わる点については、人事や労務担当と事前に確認してください。
- 感情的にならず、礼儀正しく伝えることで後の関係を良好に保てます。
具体例（短文）
- 自己都合：”一身上の都合により、○月○日付で退職いたします。”
- 会社都合：”事業所閉鎖のため、○月○日付で退職いたします。”
以上が、自己都合と会社都合の基本的な違いと書き方のポイントです。
自己都合退職における具体的な退職事由の例
転職・キャリアの都合
転職が理由の場合は「より好条件の職場に転職するため」「キャリアアップのため」などと記載します。具体的に職種変更や待遇改善を挙げると相手に伝わりやすくなります。
家庭・生活の事情
結婚、育児、配偶者の転勤、扶養する親族の介護などが該当します。例文は「育児に専念するため」「配偶者の転勤に伴い転居するため」「親の介護が必要になったため」です。事実関係だけを簡潔に示すと角が立ちません。
通勤や勤務地に関する理由
事業所の移転や通勤時間の激増により継続が困難な場合は「通勤時間の大幅な増加により通勤が困難なため」「事業所移転に伴う通勤困難のため」と書けます。
学業・資格取得・独立
学業に専念する場合は「学業に専念するため」、資格取得や独立を目指す場合は「専門資格取得のため」「独立開業の準備のため」と記載します。
記載時のポイント
・事実を簡潔に伝える。感情や批判は避ける。
・退職日や引継ぎの意志を合わせて示すと印象が良くなります。
・詳細を示す必要がない場合は「一身上の都合により」でまとめても問題ありません。
ライフステージの変化に伴う退職事由の書き方
概要
結婚、出産、育児、親の介護などは、会社側が理解を示しやすい退職理由です。理由を述べる際は簡潔で誠実な表現を心がけます。
基本の考え方
- 私的な事情を尊重する姿勢を示す
- 必要以上に詳しく書かない（詳細は面談で伝える）
- 前向きな一言を添えると印象が良くなります
具体例と文例
- 結婚： “私事で恐縮ですが、結婚に伴い生活の拠点を移すため退職いたします。”
- 出産・育児： “出産・育児に専念するため、家庭の事情により退職いたします。”
- 親の介護： “家族の介護が必要になったため、実家での支援を優先することにしました。”
- 転居・扶養： “家族の転居に伴い、通勤が困難になるため退職いたします。”
- 学びやキャリア： “資格取得（スキル習得）に専念し、将来のキャリア形成を図るため退職します。”
書き方のポイント
- 短く端的に伝える（1～2文で十分）
- 感謝の気持ちを必ず書く
- 引き継ぎの意思や退職日を明示すると親切です
伝えるときの留意点
面談では柔らかく説明し、必要なら調整や在宅勤務などの相談も行ってから結論を出すと円満に進みます。
健康上の理由による退職事由の表現
基本の考え方
体調不良や精神的な不調で退職する場合、具体的な病名を伝える必要はありません。個人情報を守りつつ、業務が続けられないことを簡潔に伝える表現で十分です。
使いやすい表現例
- 「心身のバランスを崩してしまったため、業務を続けることが難しくなりました」
- 「体調不良が続いており、治療に専念する必要があるため退職を希望します」
- 「この度の異動に伴い、心身の負担が増し、業務の継続が困難となりました」
説得力を高めるポイント
医師の助言や通院の事実を添えると理解を得やすくなります。例：「医師より療養の必要性を指摘されております」など。ただし、診断書の提出は会社の規程に従って行ってください。
伝え方の注意点
- 詳細な症状説明は不要。必要以上に話すと個人情報が流出する恐れがあります。
- 退職願や面談では、業務引き継ぎの意志や時期を示すと印象が良くなります。
- 休職制度や労災・傷病手当の利用可能性は人事に相談しましょう。
丁寧に伝え、必要な手続きは会社と確認しながら進めてください。
円満退職のための退職事由伝達のポイント
円満退職を目指すなら、伝える前の準備と伝え方が大切です。以下のポイントに沿って進めると、関係を良好に保ちながら退職できます。
伝える前の準備
- 退職理由を簡潔に整理します。個人的な事情や前向きなキャリア理由に焦点を当てます。
- 退職時期や引継ぎの案を考え、質問に答えられるようにします。
- まずは直属の上司に直接伝える計画を立てます。
伝え方の基本
- 面談は対面が望ましいです。どうしても難しければ電話にします。
- 最初に在職中の支援に対する感謝を述べます。
- 会社や同僚の批判は避け、個人的事情や将来に向けた前向きな理由を伝えます。
- 引継ぎや退職日までの協力を申し出ると印象が良くなります。
具体的な表現例
- 「これまでご指導いただきありがとうございました。家族の事情により退職させていただきたく存じます」
- 「新しい分野で経験を深めたく、退職を決意しました。引継ぎは責任を持って進めます」
退職後のフォロー
- 引継ぎ資料を作成し、引継ぎ会を開きます。
- 最後の挨拶は感謝を中心に簡潔に伝えます。
- 退職後も連絡を取りやすい旨を伝えると良い関係を保てます。
これらを心がけると、穏やかで前向きなかたちで退職を伝えられます。
実践的な退職願の記載例
以下では、実際に使える退職願の書き方を例文で示します。まずは基本の形式を押さえ、必要に応じて理由や配慮の一文を加えてください。
基本的な文例
このたび、私事ではございますが、一身上の都合により、〇〇年〇〇月〇〇日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
詳細に理由を書く場合の例
育児を理由にする場合：
私事ではございますが、育児に専念する必要が生じたため、〇〇年〇〇月〇〇日をもって退職いたしたく、お願い申し上げます。
家族の介護を理由にする場合：
家族の介護が必要となったため、勤務継続が困難になりました。つきましては、〇〇年〇〇月〇〇日をもって退職いたしたく、お願い申し上げます。
会社への配慮を示す一文例
引継ぎにつきましては近日中に資料を作成し、○○までに完了させます。退職日については調整可能ですので、ご相談いただければ幸いです。
注意点
- 日付は必ず明記してください。
- 簡潔に、感謝の気持ちを添えると円満です。
- 詳細すぎる個人情報は書かないでください。
署名欄の例
令和〇年〇月〇日
退職願
氏名（ふりがな）
所属部署
連絡先（任意）
独立やキャリアチェンジの場合の退職事由
起業や業界を変えるための退職は、前向きで明確な意思表示が大切です。理由は短く具体的に伝え、感謝と協力姿勢を示すと受け止められやすくなります。
伝えるときのポイント
- 具体的な目標を述べる：「独立して〇〇事業を立ち上げるため」など。短く明瞭にします。
- 退職時期を明示する：いつまでに退職したいかを示します。
- 感謝と引き継ぎを約束する：お世話になったことへの感謝と、引き継ぎの協力を伝えます。
- 機密事項に配慮する：業務上の秘密に触れないよう注意します。
例文（退職願の一文）
- 「この度、独立してビジネスを立ち上げるため、〇年〇月末日をもって退職いたしたく存じます。これまでのご指導に心より感謝申し上げます。円滑に業務を引き継げるよう最善を尽くします。」
- 「新たな分野での挑戦のため、退職を希望します。残り期間は引き継ぎに努めます。」
面談では誠実に、前向きな理由を中心に話すと印象が良くなります。ご不明な点があれば、具体的な状況を教えてください。
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