はじめに
本資料は、有期雇用契約の「契約期間満了による退職」について、実務的で分かりやすい説明を目的としています。雇用契約の終了は日常的に起きる事柄ですが、手続きや失業保険の扱いなどで戸惑う方が多いため、図表や法律用語に頼らず具体例を交えて解説します。
誰に向けた内容か:短期契約や派遣、契約社員として働く方、採用や労務管理に関わる事業主の方。
本資料の構成:
– 契約期間満了の定義と手続きの流れ
– 中途退職との違い、自己都合・会社都合の判断基準
– 雇止めの予告、退職届の有無、失業保険の受給条件
– 特定理由離職者や履歴書への記載、休職終了との区別
読み方の目安:自分に当てはまる章から読み進めると実務で使いやすい情報が得られます。例えば、1年契約が満了して更新がない場合は第2章と第5章を確認してください。
契約期間満了とは何か
定義
契約期間満了とは、あらかじめ期間の定めがある有期雇用契約(契約社員や派遣社員など)で、定められた期間が終わることを指します。契約期間は6か月、1年、2年などさまざまで、会社と労働者が合意のうえで決めます。
自動終了の仕組み
期間満了時は、原則として労働契約が自動的に終了します。双方の合意がないかぎり、期間が過ぎれば雇用関係は続きません。再契約や更新は別途の手続きとなります。
よくある具体例
- 1年契約で満了日を迎え、更新を希望しなければ退職扱いになる。
- 派遣期間が終われば派遣先での業務は終了する。
契約満了時の注意点
- 更新の有無は事前に確認しましょう。口頭だけでなく書面での確認が望ましいです。
- 最終の給与や有給休暇、社会保険の扱いを確認してください。必要な手続きが生じます。
※この章では概念と日常的な注意点を中心に説明しました。
契約期間の途中での退職との違い
はじめに
雇用契約の途中で退職する場合と、契約期間満了で契約が終わる場合は扱いが異なります。ここでは「途中退職」がどのようなケースか、具体例を交えて分かりやすく説明します。
契約期間の途中での退職とは
労働契約の期間中に労働者が自ら退職を申し出る場合を指します。本人の意思で辞めると自己都合退職になります。例:結婚や家庭の事情で退職、別の会社へ転職するための退職など。
会社側が終了を求める場合
会社が労働者に退職を促したり解雇したりする場合は会社都合になります。例:職務怠慢による解雇、業績悪化による整理のための解雇、退職勧奨で合意した場合など。
雇止めとの違い
雇止めは契約期間が満了して契約が終了するケースです。最初から期間の定めがある点が特徴で、途中退職のように本人が申し出るか会社が途中で終了するかとは性質が異なります。
手続きや実務上のポイント
- 退職の意思は文書で残すとトラブルを避けやすいです。例:退職届や合意書の写しを保管する。
- 失業手当や退職後の手続きで「自己都合」「会社都合」の区別が重要になります。詳細や不安がある場合はハローワークや労働相談窓口に相談してください。
注意点
契約書の内容をまず確認してください。口約束だけで済ませず、疑問があれば相談窓口や専門家に確認することをおすすめします。
自己都合か会社都合かの判断基準
判断の基本
契約期間満了で雇用は終了します。法律上、期間満了は「当然の終了」ですから、自動的に自己都合退職とは言えません。実務上は、契約内容と、会社の対応、労働者の意思の組み合わせで扱いが分かれます。
会社都合とされやすい例
- 会社側の都合で更新を行わない(事業縮小や解雇意志が明確)
- 契約更新の申し出が一切なかった、あるいは退職を避けるための措置が取られなかった
- 事実上の解雇(契約満了より前に解雇通告や出勤停止があった)
自己都合とされやすい例
- 労働者本人が更新を拒否した、もしくは更新を希望しないと明確に伝えた
- 労働者の行動(無断欠勤や辞意表明)で更新が困難になった
判断のポイント(証拠と手続き)
雇用保険の扱いや失業手当では、ハローワークや労働基準監督署が事情を確認します。契約書、メールや書面でのやり取り、更新の通知時期などが重要です。起こった事実を時系列で整理し、証拠を残すことをおすすめします。
雇止めの予告義務
予告義務とは
使用者は、一定の条件に当てはまる有期契約労働者に対し、契約を更新しない(雇止め)場合に30日前までに予告する義務があります。目的は労働者に次の仕事や生活設計の準備時間を与えることです。
適用される主な条件
- 同じ使用者のもとで1年を超えて継続して働いている
- 契約更新が3回以上行われている
- 元の契約期間が1年を超えている
これらのいずれかに該当すれば予告義務が働きます。
予告の方法と証拠
口頭でも伝えられますが、書面やメールでの通知を残すと確実です。日時が分かる記録(メールの送信履歴、出勤簿のメモなど)を保管してください。
予告がない場合の扱い
30日前の予告がないと、雇止めを会社都合の退職扱いに変更できる可能性があります。実務ではハローワークや労働基準監督署、労働相談窓口に相談して扱いを確認するとよいです。
実例(イメージ)
契約社員Aさんは同じ会社で1年6カ月、更新を3回繰り返していました。会社が更新しないと告げたのは契約満了の10日前でした。Aさんはメールで不利益が出ることを伝え、ハローワークに相談して手続きを進めました。
取るべき行動
予告がないと感じたら、まず通知の有無を確認し、記録を集めて相談窓口に連絡してください。必要なら労働相談で証拠の取り扱いや次の手続きを教えてもらえます。
退職届と雇止め通知書
退職届が必要な場合
契約期間の途中で本人が辞める意思を伝えるときは、原則として退職届を出します。たとえば、契約満了前に転職先が決まり退職する場合は、書面で意思表示することで手続きが明確になります。
契約期間満了の場合の扱い
契約期間が満了して雇用が終わる場合、労働者からの退職届は通常不要です。会社側が「契約期間満了により雇用契約を終了する」として雇止め通知書(契約終了の通知)を交付します。
退職届の書き方(例)
会社から退職届を求められたときは、事実を簡潔に書きます。例:
「契約期間満了に伴い、退職いたします。令和○年○月○日 氏名 印」
日付・氏名・署名(印鑑)を忘れないでください。
雇止め通知書のポイント
雇止め通知書には終了日と更新しない旨が明記されていることを確認します。不明な点は控えを取り、受領印や受領の記録を残してください。
会社から退職届を求められたときの対応
会社が不当に別の理由を書くよう求めた場合は、事実どおり「契約期間満了による退職」と記載しましょう。無理に署名させられそうなら控えを取って相談窓口(労働局など)に相談してください。
第7章: 失業保険の受給条件
契約期間満了による退職でも、受給条件を満たせば失業保険を受け取れます。ここでは誰でも分かるように、基本条件と例外、手続きの流れ、注意点を説明します。
基本条件
原則として「離職日(契約満了日)の前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上あること」が必要です。たとえば、同じ会社で1年以上働いて契約が終わった場合は該当しやすいです。短期間のアルバイトや複数回の契約更新も合算します。
例外(やむを得ない事情がある場合)
やむを得ない事情で離職したと認められる場合は、判定期間が短くなり「直近1年間に被保険者期間が通算6ヶ月以上」で受給対象となることがあります。具体例は会社の倒産や長期の病気などです。扱いは個別判断になります。
手続きの流れ
離職後は速やかにハローワークで申請します。事業主から交付される離職票や雇用保険被保険者証などを持参してください。ハローワークが受給資格を確認し、給付開始の時期を案内します。
注意点
離職理由の扱いで給付開始の時期や給付制限が変わります。離職票が届かない場合は会社に請求し、疑問があればハローワークで相談してください。
特定理由離職者の概念
定義
特定理由離職者とは、有期雇用で働いていた被保険者が、契約の満了や更新が行われなかったり、自分から辞めたものの「やむを得ない理由」があるために離職した人を指します。一般の自己都合退職と区別して扱われ、失業給付の受給条件で有利になる場合があります。
対象となる主な条件
- 有期雇用(契約期間のある雇用)であること。
- 雇用保険の被保険者期間が一定期間あること(詳細は窓口で確認)。
- 契約が更新されなかった、または正当な理由のある自己都合で退職したこと。
具体例
- 契約期間満了で会社が更新しなかった場合(会社の都合による非更新)。
- 自分の疾病で仕事が続けられず契約を更新できなかった場合(医師の診断書が有力な証拠になります)。
- 育児や介護のために勤務継続が難しく、やむを得ず契約満了で退職した場合。
手続きと必要書類
- 退職理由を示す書類(雇止め通知、雇用契約書、診断書、育児・介護に関する証明など)を用意します。
- ハローワークで事情を説明し、該当するかを確認してもらいます。窓口での判断が重要です。
注意点
- 単に契約が満了しただけでは自動的に特定理由にならないことがあります。理由の「やむを得なさ」と証拠の提示が求められます。
- 書類が不十分だと一般の自己都合扱いになることがあります。まずは書類を整え、相談してください。
履歴書への記載方法
書き方の基本
履歴書には退職理由を簡潔に書きます。契約満了で退職した場合は、「契約期間満了につき退職」と記載するのが適切です。「一身上の都合により退職」と書くと自己都合退職と受け取られるため、契約満了である事実が伝わりにくくなります。
雇用形態の記載
雇用形態を併記すると事情が分かりやすくなります。例えば(派遣社員)(契約社員)(嘱託)などを入れてください。雇用形態が分かれば、採用側も退職理由を正しく理解できます。
記入例
- 2024年4月 株式会社○○ 入社(派遣社員)
- 2025年3月 契約期間満了につき退職
更新があった場合は最終契約で区切って書くと親切です。
– 2022年5月 株式会社△△ 入社(契約社員、1年更新)
– 2024年4月 契約期間満了(更新なし)につき退職
職務経歴書との使い分け
履歴書は理由を簡潔に書き、職務経歴書で契約期間や担当業務、成果、更新の経緯などを詳しく説明してください。面接での説明がスムーズになります。
注意点
事実に基づいて正直に書くことが大切です。会社側と退職理由が食い違うと問い合わせの際に不利になることがあります。雇止め通知がある場合は、その旨を説明できるようにしておくと安心です。
休職期間満了との区別
定義
休職期間満了は、就業規則や労働契約で定めた一定の休職期間が終わることを指します。契約期間満了は雇用契約そのものの期限が来ることです。言葉は似ていますが意味は異なります。
契約期間満了との違い
契約期間満了は「雇用契約の終了」で、更新されなければ雇用が終わります。一方、休職期間満了は「休職状態が終わる」ことで、雇用関係はそのまま残る場合があります。
休職満了時の扱い
休職満了時には主に三つの対応があります。復職させる、退職扱いにする、解雇(雇用契約の解除)にする。どれを選ぶかは就業規則や医師の意見、業務の状況で決まります。
就業規則と手続き
就業規則に復職手続きや休職満了後の扱いが定められているか確認してください。復職に際しては診断書やリハビリ計画の提出を求められることがあります。
注意点と具体例
・病気で休職中に休職期間が満了した場合、会社が復職を認めないと退職扱いになることがあります。
・有期雇用で契約期間満了が近い場合は、休職満了と契約満了が同時になることがあり、双方の規定確認が必要です。例:育児休職が終わる時に有期契約も終わる場合は、復職か契約更新の交渉が必要です。
必要な手続きや扱いは会社の規程で決まります。まずは就業規則と人事担当者に相談してください。


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