はじめに
本資料の目的
この資料は、適応障害を理由に退職を考える方が、冷静に判断し行動できるように作成しました。判断基準や手続き、退職後の生活設計、公的支援、心理的負担の対処法、転職時の注意点まで、必要な情報を網羅的にまとめます。
想定読者
職場のストレスで体調をくずし、今後の働き方を見直したい方。家族や友人が相談を受けている方。産業医や医療機関と連携して判断を進めたい方にも役立ちます。
使い方の目安
まずは自分の症状や働き方を整理してから、各章を順にお読みください。例えば「診断書の取り方」は第2章と第3章、「失業保険や傷病手当」は第4章で詳しく説明します。
注意事項
本資料は一般的な案内です。診断や法的判断は医療機関や専門家にご相談ください。個別事情によって最適な選択は変わりますので、遠慮なく専門家へ相談してください。
適応障害で退職を考える理由と判断基準
退職を考える主な理由
適応障害で退職を検討する理由は、精神的な負担が続き日常生活に支障が出る場合が多いです。具体例としては、眠れない、食欲が落ちる、出社できない日が増える、集中力が著しく低下するなどです。職場の原因は長時間労働、人間関係のトラブル、パワハラや業務変更などが挙げられます。症状が一時的でなく、繰り返す場合は退職を視野に入れてよいサインです。
判断基準(具体的なチェック項目)
- 医師やカウンセラーの診断で就労継続が難しいと示されたか
- 休職をしても症状が改善しない、復職を試みても再発するか
- 生活費や家族の状況を踏まえて退職後の見通しが立てられるか
- 職場での環境改善が現実的に見込めるか(部署移動や業務変更の可能性)
これらを一つずつ確認すると判断がしやすくなります。
相談のすすめ
医師や臨床心理士、信頼できる上司や労働組合に相談してください。診断書や休職記録を整えると、退職や療養の判断が明確になります。家族にも状況を共有すると精神的な支えになります。
退職を「逃げ」と感じるときの考え方
退職を『逃げ』と考える人は多いですが、自分の健康を守る行為は責任ある選択です。体調を回復させることで将来の働き方の幅が広がります。周囲の目を気にせず、自分の回復を最優先に考えてください。
退職手続きの流れとポイント
診断書の取得
まず心療内科などで診断書を受け取ることをおすすめします。必須ではありませんが、会社への説明や傷病手当金の申請で役立ちます。受け取ったら原本と写しを保存してください。
退職の意思の伝え方
上司には「相談」ではなく「報告」として伝えます。口頭で簡潔に伝えた後、メールや書面で正式に伝えましょう。理由は「一身上の都合」や「健康上の理由」で十分で、診断名を詳しく話す必要はありません。
書面手続きと保管
会社の就業規則や雇用契約を確認し、所定の様式(退職願・退職届)を用意します。提出の日時や受領者の記録を残し、コピーを保管してください。
引継ぎと最終出勤
引継ぎ内容を箇条書きにまとめ、担当者に渡します。有給休暇の消化や最終給与・賞与の取り扱いを人事に確認しましょう。
会社側の反応と対応
上司が納得しない場合や会社都合との線引きが曖昧な場合は、診断書を提示して説明する方法があります。改善を求められて出勤が困難なら、産業医や労働相談窓口に相談してください。
実務的な確認事項
離職票・健康保険・雇用保険・社会保険の手続き、最終給与の支払日、有給の買い取り規定などを事前に確認しておきます。やり取りは可能な限り書面で残すと安心です。
退職後の生活設計と公的支援
退職後は生活設計と公的支援の確認が大切です。ここでは実務的に押さえるべきポイントを分かりやすく説明します。
失業保険(雇用保険)
- 条件が合えば受給できます。自己都合退職でも、医師の診断書や職場の状況により「特定理由離職者」と扱われることがあります。これにより給付開始の待期が短縮される場合があります。
- 手続きはハローワークで行います。離職票や雇用保険被保険者証を持参してください。具体例:病状で通院が続き、医師が診断書で就業困難を示すと認められやすくなります。
傷病手当金・健康保険
- 健康保険に加入している間は傷病手当金を申請できます。申請には医師の診断書や休業証明が必要です。退職前に書類を準備しておくと手続きがスムーズです。
- 退職後は国民健康保険へ切替えるか、条件を満たせば任意継続で会社の健康保険を最大2年まで継続できます。保険料や給付内容を比較して選んでください。
生活費と家計の見直し
- 受給開始までの資金繰りを計算し、家賃・光熱費・食費など優先度の高い支出を見直します。必要なら市区町村の生活支援窓口に相談してください。
転職活動での退職理由の伝え方
- 面接では「健康上の理由で休養が必要だった」など簡潔に伝えます。適応障害の詳細を話す必要はありません。企業への説明は必要最小限にし、今後の働き方や回復状況を前向きに示すと良いです。
手続きの優先順位(例)
- 医師に診断書を依頼する
- 退職に伴う書類(離職票)を確認する
- ハローワークで失業保険手続き
- 健康保険や傷病手当の申請
疑問があればハローワークや社会保険事務所、かかりつけ医に早めに相談してください。
退職に伴う心理的負担と周囲の理解
心理的負担の種類
適応障害で退職すると、罪悪感・喪失感・不安が出やすいです。例として「自分は弱い」と感じる自己否定や、働けないことへの将来不安、仲間との別れによる孤独感があります。体調の波が気持ちを左右しやすい点も特徴です。
周囲に説明するときのポイント
重要なのは事実を伝えることです。医師の診断書やカウンセラーの意見を基に「治療と休養が必要」と伝えると理解が得られやすくなります。感情的にならず、短く具体的に説明する例:”医師からしばらく休養が必要と言われました。回復に専念します。” と伝えます。
専門家や支援の活用法
主治医や産業医、カウンセラーに相談してください。書面で診断や治療方針をもらうと、職場や家族への説明に役立ちます。地域の支援団体や当事者会も安心感を得られます。
日常でできる回復の工夫
無理をせず生活リズムを整えます。散歩や短時間の趣味、簡単な家事など小さな成功体験を積み重ねてください。焦らず段階的に活動範囲を広げることが回復につながります。
家族・友人との関わり方
理解してもらえないと感じたら、専門家を交えた面談を提案するとよいです。助けを求める具体例は「週に一度の買い物を手伝ってほしい」など、負担が小さいお願いから始めます。
緊急時の対応
自傷衝動や自殺念慮が強い場合は、すぐに医療機関や相談窓口に連絡してください。早めの対応が大切です。
転職活動時の注意点
面接での退職理由の伝え方
退職理由は「健康上の理由」「自己都合」と簡潔に伝え、詳しい症状は話す必要はありません。回復していることと、医師の意見を踏まえて働ける状態である点を添えると安心感を与えます。たとえば「体調は改善し、現在は通常勤務が可能です。前職では業務負荷と環境が重なり退職しました」といった表現が無難です。
希望する働き方と環境の伝え方
再発防止のための具体的な希望を伝えます。勤務時間、残業の目安、在宅の可否、上司との相談頻度などです。希望を明確にすることで、企業も配慮しやすくなります。例:「業務量の調整や定期的な面談がある職場を希望します」
応募先の見極めポイント
職場の雰囲気、業務の忙しさ、上司のスタイル、試用期間中のサポート体制を確認しましょう。面接で聞く質問例は「平均残業時間」「メンタル不調時の対応」「相談窓口の有無」です。
面接での自己開示の程度
正直さと配慮のバランスが大切です。詳細に踏み込みすぎず、再発防止の対策や現在の健康管理に重点を置いて説明してください。必要に応じ医師の意見書を準備すると信頼性が高まります。
入社前後の確認と準備
内定後に働き方の合意を文書化すると安心です。入社後は初期の業務負荷を調整し、定期的な面談や休養の取り方をあらかじめ決めておくとスムーズに馴染めます。


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