はじめに
目的
本記事は、病気療養を理由に退職を考えている方へ向け、手続きや書類の書き方、退職理由の伝え方、社会保障の受給条件、円満退職のポイント、再就職のコツまでをやさしく解説します。精神疾患や内臓疾患など、長期療養が必要な場合の具体例も紹介します。
対象読者
- 体調の変化で退職を検討している方
- 会社への伝え方や書類作成が不安な方
- 退職後の手当や再就職を考えている方
本記事の使い方
各章は実務的な手順と例文、よくある質問を中心に構成しました。まずは第2章から順に読み、必要な章を参照してください。書類や診断書に関する具体例は第4章と第5章にまとめています。
注意点
医療や労働の詳細は個別事情で異なります。必要に応じて主治医・社会保険労務士・ハローワークなどに相談してください。個人情報は慎重に扱いましょう。
病気療養による退職とは
定義と概要
病気療養による退職とは、自分の健康状態が悪化し、治療や休養が長期間必要になったためにやむを得ず退職することを指します。休職や配置転換で回復が見込めない場合や、治療と仕事の両立が難しいと判断したときに選ばれることが多いです。
よくある具体例
- 精神疾患：うつ病、適応障害などで通院と服薬が続く場合
- 内臓疾患：心臓病、慢性の消化器疾患など治療が長期化する場合
- 整形外科疾患：腰痛や関節症で体を動かせない場合
- 婦人科疾患：重い症状や長期治療を要する場合
退職を選ぶ前に確認すること
- まず医師と相談し、休職や時短勤務で回復できるかを確認します。就業規則の休職制度や傷病手当金、障害年金の対象になるかも併せて調べます。
会社への伝え方と手続きの特徴
- 診断書や医師の意見書が必要になることが多いです。人事には症状の詳細でなく、業務継続が困難である旨を伝えれば十分です。退職が決まったら、退職日や有給消化、保険手続きについて人事と調整します。
退職理由の分類――会社都合と自己都合
概要
病気療養で退職する場合、理由によって「会社都合退職」と「自己都合退職」に分かれます。退職後の手当や手続きが変わるため、まず区別を理解しておくことが大切です。
会社都合となるケース
会社の働き方や人間関係が原因で病気になったと認められる場合は会社都合になります。具体例は次の通りです。
– ハラスメントや長時間の過重労働で精神・身体の不調が生じた
– 職場環境（安全配慮義務の欠如など）により健康を害した
この場合、失業保険は給付制限がなく比較的早く受け取れます。
自己都合となるケース
本人の持病の悪化や生活上の事情で退職する場合は自己都合と判断されやすいです。例：慢性疾患の再発や家庭の事情による体調悪化。
給付や手続きの違い
離職票やハローワークでの手続きでは、医師の診断書や就業記録が求められることがあります。会社都合か自己都合かで給付開始の時期や手当の扱いが変わるため、書類は丁寧にそろえておきましょう。
証拠の準備と相談先
診断書や治療記録、勤務時間の記録、上司とのやり取りの記録などを残します。判断に迷うときは労働相談センターや弁護士、労働組合に相談してください。適切な手続きを踏むことが大切です。
病気療養による退職の手続き・診断書
退職の基本的な手続き
民法627条により、退職は原則として退職希望日の2週間前に申し出れば可能です。会社の就業規則により長めの申告期間を求められる場合がありますので、確認してください。
診断書は必須ではないが役に立ちます
診断書の提出は強制ではありません。とはいえ、会社に療養の状況を説明する際や、離職票で「特定理由離職者」として扱ってもらう手続きで有用です。失業給付や傷病手当の申請時に状況を裏付ける資料になります。
診断書を医師に依頼する際のポイント
医師には退職理由が病気療養であることを伝え、記載してほしい点を具体的に頼んでください。記載例は次の通りです。
– 病名（可能な範囲で）
– 治療方針と通院・入院の有無
– 労務の可否または制限される業務内容
– 予想される療養期間や復職見込み
個人情報に配慮し、病名の記載を控えたい場合はその旨も相談できます。
会社への提出と注意点
提出先は人事や総務が一般的です。提出時は診断書のコピーを保管し、郵送や持参の際は到着記録を残すと安心です。会社から詳細な病状の説明を求められた場合は、医師の意見書や限定的な情報で対応するとよいでしょう。
手続きの簡単チェックリスト
- 退職希望日を決め、就業規則を確認する
- 医師に診断書を依頼し、必要な項目を伝える
- 診断書のコピーを取り、会社へ提出する
- 離職票や給付の手続きについて人事に確認する
- 大切な書類は自分でも保管する
必要な場面で診断書が役に立ちますので、医師と会社とで情報の範囲を調整しながら進めてください。
退職願・退職届の書き方と例文
基本の違い
退職願は会社に退職の希望を伝える文書です。退職届は効力を持つ届出で、受理されると退職の意思が確定します。まず就業規則で提出方法や期限を確認してください。
書き方のポイント
- 日付：作成日と退職希望日を明記します。
- 宛先：会社名と代表者名（部署長など）を正確に。
- 本文：簡潔に理由を述べます。プライバシー保護のため「一身上の都合により退職」とするのが一般的です。病気が理由の場合は「療養のため業務継続が困難となりました」などと記載し、診断書を添付すると丁寧です。
- 印・署名：自署で署名し、印鑑を押します。
例文（退職願・簡潔）
一身上の都合により、令和○年○月○日をもって退職させていただきたく、お願い申し上げます。
例文（病気療養の場合）
私事で恐縮ですが、○○病の治療及び療養のため業務継続が困難となりました。令和○年○月○日をもって退職させていただきたく、診断書を添付いたします。
提出時の注意点
- 口頭で先に伝え、書面を提出すると円滑です。上司から詳細を求められた場合は誠実に応じましょう。診断書を見せたくない場合は要旨のみ伝え、会社と相談してください。
履歴書・面接での退職理由の伝え方
履歴書の書き方
履歴書の退職理由欄には、端的に書きます。例：「一身上の都合により退職」「病気療養のため退職」。健康状態欄は、現在問題なく働ける場合は「良好」と記載してください。詳しい病名や経緯は履歴書に書かなくて構いません。
面接での伝え方の基本
面接では次の点を落ち着いて伝えます。完治・回復していること、再発防止のために行っている対策、今後の体調管理方法です。具体例を用いると信頼感が増します（通院の頻度が減った、医師からの許可が出ている、生活習慣の改善をしている等）。
精神疾患の場合の注意点
職場環境や人間関係を悪く言わず、事実と自分の対応を中心に説明します。たとえば「環境に適応するための休養が必要でした。現在は体調管理の方法を身につけ、同様の状況を避ける対策を行っています」といった表現が望ましいです。
具体例（短い回答例）
・履歴書例：病気療養のため退職。健康状態：良好
・面接例：「療養を経て回復し、医師から就労許可を得ています。再発防止のため○○を実践しており、業務に支障はありません。」
質問があれば、受け答えの練習例もお作りします。
病気療養による退職後の社会保障・手当
概要
病気療養で退職した後も、一定の条件で公的な給付が受けられます。代表的なのは雇用保険の失業給付と健康保険の傷病手当金です。退職理由（会社都合か自己都合）や、加入状況で手続きや受給開始に差が出ます。
主な制度とポイント
- 失業保険（雇用保険）
- 会社都合退職：給付制限がなく、手続き後に比較的早く受給できます。
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自己都合退職：通常2〜3か月の給付制限期間があります。ハローワークで離職理由を確認します。
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傷病手当金（健康保険）
- 会社の健康保険加入者が長期で療養し就労できないと医師が認めた場合に支給されます。
- 退職後も、退職時点で一定の条件を満たしていれば受給できる場合があります。支給期間は原則で最長1年6か月などの制限があります。
必要書類と手続きの流れ
- 失業保険：離職票、雇用保険被保険者証、本人確認書類などを持ってハローワークで手続きします。
- 傷病手当金：医師の意見書や診断書、健康保険の給付申請書を加入している健康保険（協会けんぽ、組合健保など）に提出します。
受給時の注意点と実務的な助言
- 診断書は早めに医師に依頼しておくと手続きがスムーズです。
- 退職後に保険の資格喪失が生じる場合、国民健康保険への切替や任意継続の検討が必要です。傷病手当金の継続条件も確認してください。
- 手続きや判断に不安があるときは、ハローワークや加入している健康保険の窓口に早めに相談しましょう。
実際の受給可否は個別の状況で変わります。早めの書類準備と窓口での確認をおすすめします。
円満退職・上司や同僚への伝え方
伝える順番とタイミング
まず直属の上司に直接伝えます。人事や同僚には上司と相談してから伝えるのが一般的です。体調が優れないときは面談の時間を短めにし、必要なら電話やオンラインで行っても構いません。
上司への伝え方（ポイントと例）
ポイント：事実を簡潔に伝え、感謝の気持ちを示します。病状の詳細は必要最小限に留め、診断書などの書類で補足します。
例：「お時間よろしいでしょうか。病気療養が必要になり、退職を検討しています。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。引き継ぎについて相談させてください。」
同僚への伝え方（対面・メール例）
対面では短く感謝を伝えます。メールでは要点をまとめ、引き継ぎ方法や連絡先を明記します。例メール：「私事で恐縮ですが、療養のため退職することになりました。業務は○○さんに引き継ぎます。ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。」
引き継ぎの進め方
業務の洗い出し、優先度付け、引き継ぎ資料の作成を順に行います。テンプレートは箇条書きで「目的」「作業手順」「重要連絡先」を記載すると分かりやすいです。体調に合わせて他者に進めてもらう日程に調整しましょう。
最終出社日の調整と挨拶
最終出社日は体調を最優先に決めます。挨拶は短く感謝を伝えるだけで十分です。例：「在職中は大変お世話になりました。ありがとうございました。」
注意点
病状の公開範囲を自分で決めましょう。プライバシーは守る権利があります。感情的な表現や批判は避け、会社や同僚への配慮を忘れずに伝えると円満に退職しやすくなります。
退職後の再就職活動へのアドバイス
転職活動の心構え
病気療養での退職は恥ずかしいことではありません。まずは自分の体調と仕事の両立について現実的に考え、無理のないペースで活動を進めましょう。前向きな姿勢と誠実さが面接で伝わります。
履歴書・職務経歴書の書き方
退職理由は「病気療養のため」と正直に書くか、詳しく触れずに「一身上の都合」とするかは状況で判断します。どちらを選ぶにしても、現在は業務に支障がないこと、体調管理に努めていることを補足で書くと安心感を与えます。
面接での伝え方
病状の詳細は話さなくて構いません。ポイントは「現在の体調」「どのように管理しているか」「職務で問題が出ない理由」を簡潔に伝えることです。短期間で回復した経験や、復職に向けた取り組みを具体例で示しましょう。
スキル・経験のアピール
休職中に取得した資格やオンライン学習、ボランティアなどは大きな強みです。具体的な成果や学んだことを述べ、仕事でどう生かすかを結びつけて説明してください。
求人の選び方と体調管理
勤務地や勤務時間、業務負荷を事前に確認しましょう。面接で無理な働き方を避けるため、質問を準備しておくと安心です。就業後も定期的な休養や医師の指示を優先する計画を持ってください。
支援制度・相談先
公共の職業相談窓口やハローワーク、医療機関やカウンセリングの利用を検討しましょう。必要があれば就労支援を受けることで安心して再就職に臨めます。
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