はじめに
本資料は「退職理由としての減給」について、検索で知りたいことに応えるために作成しました。
目的
減給を理由に退職を考える人が多く、どのような扱いになるのか、違法かどうか、退職後にどう対応すればよいかが分かりにくいです。本資料はその疑問に沿って整理します。
この記事で分かること
- 減給がいつ退職理由になるか
- 減給が違法となるケースの見分け方
- 減給を理由に退職したときの手続きや扱い
- 減給を避けたい場合や退職を回避する対処法
- 困ったときに相談すべき相手
読み方の注意
本資料は一般的な説明を目的とします。事案ごとに事情が異なるため、具体的な対応は弁護士や労働組合、労働相談窓口に相談してください。専門的な助言が必要な場合は、その旨を早めに伝えてください。
まずは全体像をつかむための導入として、第1章をご覧いただきました。次章以降で具体的な事例と対処法を順に解説します。
減給はどのような場合に起こるのか
概要
減給は給料の一部を下げる措置です。主な理由は懲戒、人事評価や能力不足による降格、会社の業績悪化などです。以下で具体例と注意点を分かりやすく説明します。
1. 懲戒による減給
遅刻・無断欠勤、業務命令の重大な違反などがあった場合、懲戒処分として減給が行われることがあります。例えば、故意に顧客情報を漏らしたり、重大な安全違反を繰り返した場合、一定期間給与を減らす処分となることがあります。懲戒としての減給は就業規則に根拠が必要です。
2. 人事評価・能力不足による降格
職務評価で期待に満たないと判断され、等級や役職が下がると基本給も下がります。例として、営業目標を継続的に達成できないために等級が一段階下がるケースが挙げられます。これは懲戒より柔軟に扱われることが多く、評価の透明性が重要です。
3. 会社の業績悪化など経営上の理由
業績悪化で全社的に賃金を見直す場合、一定割合で一時的に減給することがあります。雇用を守るためのやむを得ない措置として行われることが多いです。ただし、従業員への説明や合意が求められます。
4. 役職・職務変更による減給
仕事内容や役割が変わり、責任範囲が小さくなれば給与が下がる場合があります。たとえば、管理職から一般職に移ると手当や役職手当がなくなるため実質的に減給になります。
5. 減給を行う際の共通の注意点
- 就業規則や賃金規定に明確な根拠が必要です。\n- 減給の理由や期間を明示して書面で説明することが大切です。\n- 労働者の同意が望ましく、特に経営理由による一斉の減給では説明と合意の手続きを踏むことが信頼につながります。
減給が違法となるケース
就業規則に根拠がない場合
減給を行うには、会社の就業規則にその根拠が必要です。就業規則に定めがないのに一方的に賃金を減らすと違法になります。例えば「業績悪化で給料を半分にする」と口頭で告げられるケースは該当します。
労働者の同意がない場合
賃金は生活の基盤です。労働者の同意なく不利益変更をすることは原則できません。合意が必要な場合は書面化し、具体的な期間や割合を明示してください。
退職や嫌がらせを目的とする減給
労働者を退職に追い込む、あるいは懲罰目的で不当に賃金を下げる行為は違法です。たとえば業務と無関係な理由で減給する場合がこれに当たります。
査定基準が不明確・不公正な場合
査定基準があいまいで恣意的に減給されると違法性が高くなります。評価基準と手順を明確にし、説明責任を果たす必要があります。
懲戒減給の上限(労働基準法第91条)
懲戒としての減給は、1回につき平均賃金の半額を超えず、かつ2回を超えないなどの制限があります。上限を超える減給は違法です。
違法と思われる減給に遭ったら、まず就業規則や通知書を確認し、記録を残してください。
減給を理由に退職した場合の扱い
概要
減給が原因で退職した場合、自己都合退職になるのが原則です。ただし減給の割合が大きく生活や業務継続が困難になった場合や、法律に違反する減給(手続き無視や事前説明なしなど)は会社都合退職と認められる可能性があります。
会社都合と認められる具体例
- 給与の大幅カットで生活が成り立たなくなったケース(例:賃金の3分の1以上の減額が長期に及ぶ)
- 就業規則や労働契約に反する一方的な減給
- 減給が懲戒の名目でも手続きや理由が不明確な場合
認定を得るための進め方
- 減給の通知・メール・就業規則の写しなど証拠を集める。2. 上司とのやり取りは記録する(日時・内容)。3. 会社に事情を文書で伝え、改善を求める。4. 労働局やハローワークに相談し、会社都合に該当するか確認する。
影響と注意点
会社都合と認定されると失業保険の給付条件が有利になります。退職金の扱いも契約次第で変わります。退職前に証拠を残し、専門窓口に相談することをお勧めします。
減給が退職理由になる場合の注意点
減給の経緯と根拠を明確にする
減給がいつ、誰の指示で、どのような理由で行われたかを記録してください。社内の通知文書やメール、口頭の場合は日時とやり取りの内容をメモに残すと良いです。例えば「〇月〇日に給与が◯円減った」「上司から業績悪化の説明があった」など具体的にします。
生活への影響を具体的に記録する
家計の変化や支払いの遅延、家族への影響などを示す資料を用意します。光熱費や家賃の引き落とし失敗、生活費の削減など、実際の事例を記録しておくと説得力が増します。
退職届や会社とのやり取りを記録する
退職を考える場合、退職届に減給を理由として明記すると後で会社都合を主張しやすくなります。やり取りは可能な限り書面やメールで行い、郵送する際は配達記録や内容証明を活用してください。
会社都合にするためのポイント
会社側に不当な減給やルール違反があれば、それを示す証拠が重要です。就業規則や雇用契約と異なる扱いがあれば、そこを中心に主張します。交渉の際は冷静に事実を示し、説明や是正を求める書面を残しましょう。
違法・不当だと感じた場合の相談先とタイミング
社内の相談窓口にまず相談し、解決しない場合は労働基準監督署や労働相談センター、専門の弁護士に相談してください。早めに動くことで証拠を確保しやすくなります。
最後に気をつける点
退職を自分の意思で行うと自己都合退職になる可能性があります。会社側の不当な扱いを理由に会社都合を主張するには、減給の経緯や生活への影響を丁寧に記録し、証拠を揃えることが最も重要です。
減給を受けたくない・退職を避けたい場合の対処法
まず確認すること
減給の通知があったら、まず「いつから」「どれだけ」「理由は何か」を明確にしてください。賃金の計算方法や就業規則、雇用契約書の該当部分を確認します。直近の給与明細や契約書を用意すると話が進めやすいです。
会社に求めるべき情報
- 減給の根拠(就業規則の条文や経営上の理由)
- 減給の対象期間と金額の計算根拠
- 代替案(配置転換や一時的な休業など)
書面で提示を求めると後のトラブルを防げます。
交渉の方法(提案例)
- 一時的な減給で期間を区切る
- 他部署への異動や労働時間短縮で調整する
- 経営改善の進捗で給与復元を条件にする
納得できない場合は同意書に署名しない選択肢もあります。署名を求められたら、内容をよく読むか弁護士や労働組合に相談してください。
記録を残す
口頭のやり取りは必ずメールやメモで確認してください。面談後に「本日の説明は〜で、合意はまだない」といった確認メールを送ると安心です。日時・場所・出席者・主な説明内容を記録し、可能なら証人を立てます。
退職を避ける実務的な選択肢
現職のまま改善を求める交渉を続ける、配置転換を受ける、休職や育児・介護休業の利用を検討する、並行して転職活動を進めるなどがあります。体調不良が理由であれば医師の意見書も有効です。
(注)対応に不安がある場合は早めに専門家に相談してください。
減給後の退職で困ったときの相談先
減給が違法、納得できない、退職を考えるなど困ったときは、早めに相談することが大切です。以下の窓口を目的別にご案内します。
労働基準監督署
法律違反(賃金の不払いや就業規則違反など)を扱います。持参するもの:給与明細、雇用契約書、就業規則、減給の通知やメール、時系列にまとめた経緯。監督署は調査や是正勧告を行いますが、民事的な代理は行いません。
弁護士(労働問題に詳しい)
未払い賃金の請求や損害賠償、交渉が必要な場合に頼れます。相談前に費用や対応範囲(交渉、訴訟など)を確認してください。費用負担が心配な場合は法テラスなど公的支援の案内を受けましょう。
労働組合
職場で団体交渉が可能なら有力な支援となります。小規模事業所向けの地域ユニオンもあります。個別に話しにくいことも組合を通じて相談できます。
専門相談窓口(労働相談コーナー、ハローワーク、市区町村)
無料で相談できるところが多く、初期対応や相談先の紹介をしてくれます。まず問い合わせて状況を整理しましょう。
退職代行サービスを使う場合の注意
利用するなら、減給の経緯と証拠を整理し、サービスがどこまで対応するか(未払いの交渉や法的手続きの可否)を確認してください。弁護士が関与するかで対応力が変わります。
相談時の準備と選び方
目的(是正・賠償・退職のみ)・費用・秘密性を基準に選びます。必ず証拠を時系列でまとめて持参すると相談がスムーズになります。早めに動くことで選択肢が広がります。


コメント