はじめに
背景
退職は仕事人生の大きな節目で、手続きや書類で戸惑う方が多くいます。退職届は正式な意思表示の一つであり、正しく作成・提出することが大切です。本資料はその準備を助けるために作成しました。
本資料の目的
退職届に何をどのように書けばよいかを、分かりやすく実務寄りにまとめます。基本構成、必須項目、具体的な書き方、用紙や提出方法、退職届と退職願の違い、記載時の注意点まで網羅します。実例や注意点も提示しますので、すぐに活用できます。
対象読者
・これから退職届を作成する方
・人事担当や総務で書類確認をする方
・初めて手続きを行う方にも分かるように、丁寧に説明します。
本資料の構成と使い方
章ごとに順を追って説明します。まずは全体像を把握していただき、その後、必要な章を参照して具体的な書き方や提出方法を確認してください。テンプレートや例文も各章で示します。
退職届の基本構成と必須項目
はじめに
退職届は雇用契約を正式に終了するための書面です。ここでは必須の5項目を分かりやすく説明します。
必須項目(5点)
- 表題(退職届)
-
文書の最上部に「退職届」と明記します。誰にでもひと目で分かるようにします。
-
日付(提出年月日)
-
提出する日付を記載します。会社側の受領日と異なる場合があるため、提出日を正確に書きます。
-
宛名(会社代表者名)
-
例:会社名と代表取締役の氏名を「代表取締役 ○○ 様」と書きます。部署長ではなく代表者を宛名にするのが一般的です。
-
本文(退職の意思と退職日)
- 退職の意思を簡潔に書き、退職希望日(または退職日)を明記します。
-
例文:”私事で恐縮ですが、一身上の都合により、○年○月○日をもって退職いたします。”
-
氏名・署名・捺印
- 所属部署名、氏名を明記し、実印または認印で押印します。手書き署名を加えるとより正式です。
補足の注意点
- 退職日が就業規則や労働契約で定められている場合は、それに従って記載します。
- 宛名や文面は簡潔にし、感情的な表現は避けます。
書式例(短文)
退職届
令和○年○月○日
株式会社○○ 代表取締役 ○○ 様
私事で恐縮ですが、一身上の都合により、令和○年○月○日をもって退職いたします。
所属:○○部
氏名:○○○○ 印
以上
(途中の章ではまとめを設けない)
具体的な記載方法
表題の書き方
退職届の表題は用紙の上部中央に大きめに「退職届」と書きます。読みやすく、目立つようにするのが基本です。
宛先と日付
左上または右上に提出先(会社名・代表者名)を明記します。日付は本文の直前か署名の上に記載し、和暦・西暦いずれでも構いません。
本文の冒頭
本文は「私儀」または「私事」と書き、その後に退職の意思を述べます。敬語を正しく使い、簡潔にまとめます。
退職理由の書き方
理由は一般的に「一身上の都合」と記載します。具体的な事情や不満は記載しないのが礼儀です。
文例
・このたび一身上の都合により、20XX年〇月〇日をもって退職いたします。
・私儀、一身上の都合により、20XX年〇月〇日をもって退職いたします。
署名・捺印
署名は用紙の下部に氏名を記載し、氏名の横または下に捺印します。手書きが基本で、パソコン作成の場合は署名欄のみ手書きにしてください。
書式のポイント
文は短く明確にまとめます。改行や余白をとって読みやすく整えてください。
用紙形式と作成方法
用紙の選び方
退職届は白無地の便箋やA4判のコピー用紙が一般的です。会社に指定がなければ、A4縦を基本にすると受け取り側が読みやすくなります。色や柄のある紙は避け、清潔感のある用紙を選んでください。
手書きとパソコン作成の違い
手書きは誠意が伝わりやすく、重要な場面で好まれることが多いです。パソコン作成は読みやすく、誤字修正や保存が容易です。どちらも受理されますが、署名欄だけは手書きで記入してください。
署名(押印)について
氏名は自筆で書き、必要に応じて押印をします。捺印が求められる場合は、印影がはっきり出るように押してください。代理でサインをすることは原則避けます。
レイアウトと印刷のポイント
- 余白は上下左右ともにおおむね20〜30mmにすると見栄えがよくなります。
- フォントは明朝体またはゴシック体、文字サイズは10.5〜12ポイントが読みやすいです。
- 宛名(会社名・所属部署)は用紙の上部や左上に揃えて記載します。
作り直しと保管
誤字や汚れがあれば新しい用紙で作り直してください。提出前にコピーを1部取り、控えとして保存すると後で確認しやすくなります。
退職届の提出フロー
1. 決意を固め、退職日を想定する
まず退職の理由と希望する退職日を整理します。職場慣行に合わせて余裕を持って設定します(例:1〜3か月前)。引き継ぎに必要な期間も見積もっておきます。
2. 直属の上司に口頭で伝える
書面を出す前にまず直属の上司に面談を申し込み、直接伝えます。短くはっきりと「○月○日付で退職したいと考えています」と伝え、書面を後ほど提出する旨を伝えます。感情的にならず誠実に話しましょう。
3. 退職届を作成・提出する
社内ルールに沿って退職届を作成します。提出は通常手渡しが基本ですが、遠隔勤務やルールでメール添付が認められる場合はそれに従います。提出時に受領印や控えのコピーをもらい、退職日を正式に確認してください。
4. 業務引き継ぎを行う
引き継ぎ資料(手順書、関係者一覧、ログイン情報の扱い等)を作成し、引き継ぎ相手と実際に作業しながら確認します。期限と担当を明確にしておきます。
5. 最終出勤日までの挨拶と事務対応
最終出勤日には口頭やメールで感謝を伝えます。社内備品の返却、経費精算、健康保険や年休の確認などの事務手続きを人事と確認して終えると安心です。
6. トラブル時の対応
上司との認識に差がある場合や手続きで不明点がある場合は、人事に相談して記録を残してください。誤解を避けるため、重要なやり取りはメールで確認しておきます。
封筒での提出方法
概要
退職届は封筒に入れて提出します。封筒の表面に「退職届」と明記し、裏面に所属部署と氏名を記載します。封をのりで止めた後に「〆」を書くのが正式な方法です。
封筒の準備
- 封筒は白無地の角形(角2)や長形3号が一般的です。書類が折られるのを避けたい場合は角形を選んでください。
- 窓付き封筒は中身が見えることがあるので避けます。
表面の書き方
- 封筒中央または左上に大きく「退職届」と書きます。黒インクで読みやすく書いてください。
- 縦書きの書類なら封筒も縦書きで揃えます。
裏面の書き方
- 中央付近に所属部署名と氏名を記載します(例:総務部 山田太郎)。
- 社内規程があればそれに従ってください。
封の仕方と印
- のりでしっかり封をし、乾いたことを確認してから封の上に「〆」を書きます。これで封の改ざんを防げます。
提出の際のマナー
- 手渡しする場合は封筒を机の上にそっと置き、一言添えて渡します。郵送する場合は書留など記録が残る方法をおすすめします。
第7章: 退職届と退職願の違い
定義の違い
- 退職届:従業員が雇用契約の終了を届け出る書面です。意思を明確に示し、受理後に手続きを進めるために使います。
- 退職願:退職の意思を会社に願い出る書面です。会社と相談して受理の可否や退職日を決める場面で使います。
法的な扱いの違い
- 退職届は意思表示として強い意味を持ちます。ただし実務上は会社の就業規則や引継ぎ期間に従います。
- 退職願はあくまで申請書です。会社が受理しなければ効力が確定しません。
実際の使い分け例
- 退職の意思をまず相談したい場合:退職願を提出して話し合う。
- 退職日が決まり、正式に手続きを進めたい場合:退職届を提出する。
辞表との違い
- 辞表は取締役・監査役などの役員が立場を辞する際に使う書類です。雇用契約の一般従業員向けではありません。
書き方と提出のポイント
- どちらでも日付・氏名・退職希望日を明記します。退職願は「お願い」口調、退職届は「届出」口調で書くと分かりやすいです。
- 口頭で了承を得た後に書面を出すと混乱が少なくなります。退職日や有給消化などは事前に確認してください。
記載時の注意点
要点
退職理由はあえて具体的に書く必要はありません。一般的には「一身上の都合により」と簡潔に記載します。余計な個人的事情や会社への不満は避け、トラブルの原因を減らします。
書き方の例
- OK: 「一身上の都合により、○年○月○日をもって退職いたします。」
- NG: 「給料が低いため」「上司と折り合いが悪いため」など感情や批判を含む表現
日付・署名の注意
日付は西暦か和暦で明確に記載し、退職日を誤解のないように書きます。署名はフルネームで自署すると正式になります。
言葉遣いと表現
丁寧で簡潔な言葉を使い、読み手が迷わない表現を心がけます。私的な情報や今後の予定は書かない方が安全です。
迷ったときは
不安があれば総務や上司に提出前に相談するか、テンプレートを使って簡潔にまとめてください。必要以上の説明は控えましょう。


コメント