はじめに
退職予告手当の支給時に発行される「退職所得の源泉徴収票」は、退職金や予告手当の税務処理で重要な書類です。本記事では、誰でも分かりやすく次の点を丁寧に説明します。
- 退職予告手当とは何か、どのような場合に支給されるか
- 税務上の扱いと課税の基本ルール
- 源泉徴収票の発行タイミングと記載方法
- 確定申告・住民税・再就職時にどう使うか
- 企業側・個人側の実務上の注意点とよくある誤解
人事・総務担当の方、退職を控えた方、再就職を検討している方に役立つ内容です。章ごとに具体例や手続きの流れを示しますので、必要な箇所を順にお読みください。書類は大切に保管し、不明点は税務署や税理士に相談することをおすすめします。
退職予告手当とは？その概要
定義と法的根拠
退職予告手当（解雇予告手当）は、会社が従業員を即日解雇するか、解雇の予告を30日未満で行う場合に、労働基準法に基づき支払う手当です。目的は、予告期間がない分の生活保障です。
支給が必要になる場面
- 会社が解雇を突然通知して当日から勤務を終える場合
- 予告が1日〜29日しかない場合
退職者本人が自己都合退職で予告期間を守らないケースでは、会社は必ずしも支払う義務がありませんが、労使契約や就業規則で別途規定されていることがあります。
計算の考え方（具体例）
支給額は原則「平均賃金の30日分から実際の予告日数分を差し引く」という考え方に基づきます。例：月給30万円で即日解雇なら、30万円（1か月分）を支給するのが一般的です。
通常の退職金との違い
退職予告手当は、解雇時の予告不足を補うための手当で、勤続年数に応じた退職金とは性質が異なります。税務上や就業規則上の扱いも別になることが多いです。
支給対象と注意点
支給対象は原則として解雇された従業員です。就業規則や個別契約で取り決めがある場合は、その内容に従います。計算方法や表示方法で誤解が起きやすいので、就業規則を確認し、必要なら労働基準監督署に相談してください。
退職予告手当の税務上の扱い
課税区分
退職予告手当は「退職所得」に区分され、所得税の課税対象です。給与や賞与とは区分して扱われます。支払を受けた際は、原則として退職所得に対する計算で税額を決めます。
課税方法（計算の流れ）
計算は次の手順で行います。
1. 支払われた退職予告手当を合計する。
2. 退職所得控除を差し引く。
3. 残額の1/2が課税対象額となる。
例：退職予告手当200万円、控除額が400万円なら控除内で課税対象は0円です。
退職所得控除の計算例
- 勤続年数20年以下：40万円×勤続年数（ただし最低80万円）
- 勤続年数20年超：800万円＋70万円×（勤続年数−20年）
例：勤続25年であれば800万円＋70万×5年＝1,150万円が控除となります。
源泉徴収への影響
会社は通常、支払時に退職所得の税額を計算して源泉徴収します。退職所得控除の範囲内であれば源泉徴収税額が0円となることも多いです。複数の支払いや他の所得がある場合は確定申告が必要になることがあります。
源泉徴収票の発行と記載内容
発行の義務と時期
退職予告手当を支払った場合、事業主は「退職所得の源泉徴収票」を発行します。発行の期限は支払った日から1か月以内です。例えば、3月10日に支払われたら、4月10日までに発行されます。
記載される主な項目
- 支払金額：退職予告手当の総額が記載されます。具体例として「支払金額：300,000円」のように表示されます。
- 源泉徴収税額：支払時に天引きされた所得税額を記載します。
- 退職所得控除額：退職所得を計算するための控除額が記載されます。計算方法は条件により異なりますが、控除後の金額で課税が行われます。
- 特別徴収税額（住民税）：該当する場合、住民税の特別徴収額が記載されます。
退職所得と他の所得の区分
退職予告手当は「退職所得」として扱われ、給与所得とは別枠で源泉徴収票に記載されます。源泉徴収票には退職所得専用の欄があり、他の給与と区別して表示されます。これにより、税務上の計算が分かりやすくなります。
受け取ったときの実務的なポイント
受け取った源泉徴収票は大切に保管してください。確定申告や再就職先での手続きに必要になることがあります。内容に誤りがあれば、発行した事業主に速やかに訂正を依頼してください。
確定申告・住民税・再就職時の必要性
退職所得の源泉徴収票が必要な場面
退職金や退職予告手当を受け取った年は、次の手続きで「退職所得の源泉徴収票」が必要になります。
- 確定申告：同じ年に他の給与や副収入がある、また医療費控除や住宅ローン控除を受ける場合は提出します。例：退職予告手当を受け取り、同年にアルバイト収入があるときは申告が必要です。
- 住民税：自治体が課税額を決める際の資料になります。
- 再就職先での年末調整：新しい勤務先に提出すると、その年の税務処理を正しく行えます。
再就職先に提出するメリットと注意点
新しい勤務先に源泉徴収票を出すと、年末調整で重複課税を防げます。提出しないと、退職金の扱いが上手く反映されず、追加で税額が徴収されることがあります。退職した会社は通常、翌年1月31日までに源泉徴収票を交付しますので、大切に保管し早めに提出してください。
住民税の支払い方法と手続き
退職後すぐに再就職しない場合は、住民税を自分で納付する通知が市区町村から届きます。再就職先に提出すれば給与からの特別徴収（天引き）で払えるため手間が減ります。手続き時は源泉徴収票のコピーを用意するとスムーズです。
退職予告手当支給時の実務的な注意点
1. 申告書の有無で源泉徴収が変わります
「退職所得の受給に関する申告書」が提出されていると、勤続年数に応じた退職所得控除を適用して源泉徴収額を計算します。申告書がない場合は、一律20.42%で源泉徴収します。
2. 社会保険の取り扱い
退職予告手当には社会保険料はかかりません。事業主は保険料の算定対象に含めないでください。
3. 支給時の手続き（事業主向け）
- 支給前に申告書の有無を確認し、提出がなければ書面で催促します。
- 給与台帳に支給額と源泉徴収額を明確に記録します。
- 年末調整や源泉徴収票の作成で正しく反映させます。
4. 受給者への案内（従業員向け）
- 申告書を出すと税額が軽くなる可能性があります。支給前に会社へ提出してください。
- 退職予告手当のみで控除額より少ない場合、源泉徴収が発生しないことがあります。
5. 誤差や過剰徴収があった場合
源泉徴収が過大だったと判明したら、年末調整や確定申告で精算します。事業主は過誤があれば速やかに訂正し、社員に説明してください。
6. 簡単な例
退職予告手当100万円で申告書がない場合：100万円×20.42%＝204,200円を源泉徴収します。申告書ありで退職所得控除が120万円なら、控除内のため源泉徴収が発生しないことがあります。
実務では事前確認と記録を丁寧に行うことが最も重要です。
退職予告手当と源泉徴収票に関するよくある質問
以下は、退職予告手当と源泉徴収票に関するよくある質問とその回答です。わかりやすく丁寧に説明します。
Q1: 退職予告手当だけでも源泉徴収票は発行されますか？
はい。退職予告手当だけでも源泉徴収票は発行されます。給与所得の源泉徴収票とは別に処理されることが多く、支払内容や源泉徴収税額が明記されます。発行がない場合は勤務先に確認してください。
Q2: 源泉徴収票には何が書かれますか？
主に支払金額、源泉徴収された税額、支払者と受給者の氏名・住所、支払年月日、支払区分（給与・退職金など）が記載されます。退職予告手当は別枠で表示されることがあります。
Q3: 住民税の扱いはどうなりますか？
住民税は退職所得控除後の課税対象額に対して課されます。税率は市税6%・県税4%の合計で、課税標準に対してかかります。
Q4: 確定申告は必要ですか？
退職予告手当だけで他に申告すべき所得がなければ、源泉徴収で完結する場合が多いです。ただし他の所得があるときや還付を受けたいときは確定申告が必要になります。書類は大切に保管してください。
Q5: 再就職するときはどうすればよいですか？
再就職先には前職の源泉徴収票を提出します。年の途中で職場が変わるときは、源泉徴収票が年収の合算に必要です。まだ受け取っていなければ前職に請求してください。
Q6: 発行が遅れたり誤りがあった場合は？
まず勤務先に訂正や再発行を依頼してください。対応がない場合は最寄りの税務署に相談すると助言がもらえます。
ご不明点があれば、具体的な状況を教えてください。さらに詳しくお手伝いします。
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