はじめに
本書の目的
本資料は「退職」と「退社」という言葉の違いを分かりやすく整理するために作成しました。日常会話や履歴書、公式文書などで迷わないよう、定義や使い分けのポイントを丁寧に説明します。
対象読者
社会人、就職・転職を考えている方、人事・総務に携わる方、言葉の使い方を正確にしたい方を想定しています。
本書で扱う内容(全章の概略)
- 第2章:基本的な違いを平易に説明します
- 第3章:辞書的定義と現場での解釈を比較します
- 第4章:関連用語(退職届、離職など)との違いを明示します
- 第5章:履歴書や公式文書での適切な表現を示します
- 第6章:日常会話で自然に使うコツを紹介します
- 第7章:英語表現との対応を整理します
- 第8章:本書のまとめと実践ポイントを提示します
読み方のポイント
各章で具体例を示します。ひとつずつ確認すれば、実務と会話の両方で適切に使い分けられるようになります。
「退職」と「退社」の基本的な違い
概要
「退職」は会社との雇用関係を終わらせる正式な行為を指します。辞表を出したり、雇用契約が満了したりして会社を離れるときに使います。
一方で「退社」は二つの意味を持ちます。①会社を辞める(退職と同義に使われる場合)、②その日の業務を終えて会社から出る(帰る)という日常の行為です。文脈で意味が変わるため注意が必要です。
具体例
- 「来月退職します」→ 会社を辞めることを明確に示します。
- 「今日は18時に退社します」→ その日の業務を終えて帰ることを示します。
使い分けのコツ
- 公式文書や社内手続き、履歴書では「退職」を使うと誤解が少ないです。
- 日常会話では「退社」を使って時間や行動を表すことが多いです。
- 意味が曖昧なときは「この会社を退職します」「今日はもう退社します」と補足してください。したがって、前後の文脈で明確にすると安全です。
「退職」と「退社」の定義比較
退職の定義
退職は、雇用契約や職務そのものを終了する行為を指します。会社との労働関係を正式に終わらせることが本質で、辞める理由は自己都合や会社都合、定年など様々です。例:『来月末に退職します』『退職届を提出しました』。公式文書や履歴書など、正式な場面で使います。
退社の定義
退社には主に二つの意味があります。1つ目は退職と同様に“会社を辞める”こと、つまりその会社を離れる意味です。2つ目は“その日の業務を終えてオフィスを退出する”という日常的な意味です。例:『今日は18時に退社します』『彼は先月退社しました』。
比較と使い分けのポイント
- 範囲:退職は“雇用関係の終了”が中心で意味が一つです。退社は“会社を去る”か“一日の業務を終える”の二つの用法があります。
- 場面:履歴書や雇用契約、退職届など公式な場面では退職を選びます。日常会話や勤怠の報告では退社を使うことが多いです。
- 対義語:どちらの対義語も『入社』になりますが、文脈で『出社(出勤)』と対になる場合は退社(その日の退出)です。
具体例での見分け方
- 書類:『退職日』『退職理由』→退職
- 日報や会話:『今日は早めに退社します』→退社(当日の退出)
以上を踏まえ、状況に応じて言葉を使い分けると誤解を防げます。
関連用語との使い分け
退勤と退社の違い
「退勤」はその日の業務を終えて職場を離れることを指します。例:”今日の退勤は18時です。” 一方「退社」は会社を離れる行為全般で、業務終了の場面でも使えますが、退社には“会社を辞める”という意味にも用いられます。文脈で判断します。
辞職と退職の違い
「辞職」は本人の意思で職をやめることを強調します。例:”本人が辞職を申し出た。” 「退職」は辞職も含む広い言葉で、自己都合・会社都合のどちらにも使えます。
離職の意味
「離職」は職を離れた状態やその期間を指します。退職後に再就職していない期間も含めるため、統計や履歴で使われます。例:”離職期間が6か月ある。”
解雇と退任
「解雇」は企業側の判断による雇用契約の終了です。ネガティブな意味合いが強くなります。例:”業績不振で解雇された。” 「退任」は役職(社長・取締役など)を辞することを指します。役職を辞めても会社に残る場合もあります。
使い分けの実例
・出勤簿には「退勤時刻」を記入します。\
・人事発表では「退任」や「辞職」「解雇」と具体的に書き分けます。\
・自己紹介では退職理由を説明する際に「辞職しました」や「退職しました」を文脈に合わせて使います。
言葉の範囲を押さえると、誤解を避けて適切に伝えられます。
履歴書や公式文書での使い分け
概要
履歴書や職務経歴書、雇用に関する公式な書類では「退職」を使うのが安全で適切です。「退社」は日常的な意味(出社・退社)もあるため、文書上では曖昧さを避けるために「退職」を選びます。
基本ルール
- 職歴欄や離職理由、証明書には「退職」と記載します。例:退職年月日、退職理由。
- 会社側が発行する書類(離職票、在職証明書、雇用保険関係書類)でも「退職」を用います。
履歴書・職務経歴書の具体例
- 職歴欄の書き方例:
2015年4月〜2020年3月 株式会社A 勤務
2020年3月 退職 - 退職理由を記載する場合:
2020年3月 退職(一身上の都合) - 日付を明示する場合は「退職日:2020年3月31日」と正確に書きます。
公式文書での表現例
- 在職証明書:在籍期間および「退職日」を明記します。
- 離職票や退職証明:退職理由は行政や次の雇用先が判断できるよう具体的に記載します。
実務上の注意点
- 社内の口語的な連絡(上司への一言、日常のやり取り)では「退社」を使っても差し支えありませんが、公的文書や応募書類では「退職」を使いましょう。疑問があるときは「退職」を選べば誤解が生じにくいです。
日常会話での使い分け
基本の使い分け
日常会話では「退社」を使う場面が多いです。たとえば「定時になったので退社します」は、その日の業務を終えて職場を出ることを意味します。一方で「退職」は会社を辞めることを指すので、長期的な決断を伝えるときに使います。
よく使う表現例
- 同僚に一言伝えるとき:”お先に失礼します” / “今日はここで退社します”。
- 帰る理由を伝えるとき:”体調が悪いので早退します”(早く帰る)
- 会社を辞めるとき:”来月末で退職します”(退職の意思表示)
場面別の使い分け
- 朝礼や雑談で:気軽に「昨日、早めに退社しました」と言えます。
- 上司への報告:業務上の正式な報告なら「本日は退社させていただきます」と丁寧に言います。
- 退職の報告:対面では「退職することになりました」と明確に伝えます。メールや挨拶ではより丁寧な表現を使います。
注意点
同じ「退社」という言葉でも文脈で意味が変わります。日常では「今離席して職場を出る」程度の軽い意味で使うことが多いと覚えておくと便利です。退職の話題では相手に誤解を与えないよう、必要に応じて「退職」を明確に使い分けてください。
英語表現との対応
仕事を辞めるときに使う英語表現は、意味や場面で使い分けが必要です。代表的な表現と使い方を分かりやすく説明します。
leave
汎用的で理由を問わず使えます。フォーマルでも日常でも使えます。
例: “I will leave the company on May 31.” → 「5月31日付で退社します。」
resign
辞職を意味し、フォーマルな場面でよく使います。書面やメールでの表現に向いています。
例: “I am writing to resign from my position as Marketing Manager, effective June 30.” → 「マーケティングマネージャーの職を6月30日付で辞する旨、ご連絡いたします。」
quit
口語的でカジュアルです。突然や感情的に辞める印象を与えることがあります。
例: “He quit his job last week.” → 「彼は先週仕事を辞めました。」
他の関連表現
- retire: 定年や引退のときに使います。例: “She retired last year.” → 「彼女は昨年退職しました。」
- be laid off / be made redundant: 会社都合での解雇を表します。
- give notice / hand in one’s resignation: 退職の意思を正式に伝える表現です。例: “I gave my notice yesterday.” → 「昨日、退職の意思を伝えました。」
英語で使う際のコツ
フォーマルな場面では “resign” や “give notice” を使い、メールでは丁寧な文章にします。日常会話では “leave” や “quit” を使うと自然です。具体的な文例を場面に合わせて使い分けてください。
まとめ
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「退職」は「会社を辞める」という単一で明確な意味を持つ丁寧な表現です。履歴書や退職届、公式なやり取りでは「退職」を使います。例:「退職日」「退職届を提出する」。
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「退社」は多義的で、(1)会社を辞める意味、(2)その日の業務を終えて会社を出る意味の両方で使われます。日常会話では「今日は18時に退社します」のように後者で使うことが多いです。例:「今日退社します」「来月退社予定です(文脈で意味が変わる)」。
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使い分けの実務的な指針
- 履歴書・正式文書:必ず「退職」を使って明確に伝えます。退職日や理由は具体的に書きます。
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日常会話:その日の退勤を伝えるなら「退社」を使います。会社を辞める旨を伝えるときは「退職します/退職する予定です」と言うと誤解が少ないです。
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曖昧さを避けるコツ
- 意味が分かりにくいときは「いつから」「いつが最終出勤か」を添えて説明してください。短い一言でも誤解を防げます。
場面に応じて言葉を選べば、伝わりやすくなります。丁寧に表現を使い分けましょう。


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