はじめに
本調査の目的
この調査は、転職時における源泉徴収票の取り扱いについて、迷いやすい点を分かりやすく整理することを目的としています。受け取り時期、転職先への提出が必要かどうか、提出しない場合の対応、年末調整や確定申告との関係を丁寧に解説します。
対象となる方
- これから転職する方、最近転職した方
- 源泉徴収票の扱いで不安がある方
- 人事や総務で手続きに関わる方
読み方の案内
本稿は全8章構成です。第2章で源泉徴収票の基本を説明し、第3〜4章で提出が必要な場合・不要な場合の具体例を示します。第5章では年末調整との関係を解説し、第6章は源泉徴収票が届かない場合の対応策を紹介します。第7章は確定申告との関係、第8章でまとめます。
この「はじめに」を読めば、全体の流れと各章で得られる情報がわかります。次章から順に読み進めれば、転職時の手続きで慌てることが少なくなります。
源泉徴収票とは何か
概要
源泉徴収票は、給与や賞与を受け取った人に対して会社が発行する書類です。1年間に支払われた給与の総額や、源泉徴収された所得税の金額が記載されます。税金の手続きで必要になる大切な証明書です。
記載されている主な項目
- 支払金額(年間の給与・賞与の合計)
- 源泉徴収税額(会社が天引きした所得税の合計)
- 社会保険料や控除に関する情報
これらをもとに年末調整や確定申告の計算を行います。
交付の時期と受け取り方
通常、12月か翌年1月に発行されます。退職した場合は、会社は退職後1カ月以内に交付する義務があります。最終出社日に間に合わないことが多いので、郵送で届くのが一般的です。
受け取った後の扱い方
受け取ったら内容を確認し、大切に保管してください。転職先や税務署での手続きに必要になります。記載に誤りがあれば、発行した会社に速やかに問い合わせて訂正を依頼しましょう。
転職先への提出が必要な場合
概要
転職した際は、原則として前職の源泉徴収票を転職先に提出します。転職先が前職分の給与を含めて1年間の所得を確定し、正しい所得税を算出するためです。
なぜ必要か
年末調整は1年の所得を基に税額を確定します。前職の分が抜けると税額が過少または過大になります。源泉徴収票は前職で支払った給与や徴収済みの税額を示す証明書です。
提出する書類
基本は前職の源泉徴収票1枚です。医療費控除や扶養控除の関係書類がある場合は、あわせて提出してください。
複数回転職した場合
年内に複数回転職したら、最後の勤務先(年末に在籍する会社)へすべての源泉徴収票を提出します。全てを合算して年末調整を行います。
提出の手順と注意点
- 転職先の人事担当に提出先と締切を確認します。2. 源泉徴収票の原本を用意します。コピーが求められる場合もあります。3. 提出できない場合は前職に再発行を依頼します。期限内に提出することで、確定申告の手間を減らせます。
具体例
1月にA社を退職し6月にB社へ入社、12月にB社で給与がある場合、B社にA社の源泉徴収票を提出すれば年末調整で合算されます。
提出が不要な場合
概要
すべての場合で前職の源泉徴収票を転職先に提出する必要はありません。退職時期やその後の手続きによって、転職先への提出が不要になることがあります。以下で主なケースをわかりやすく説明します。
主な不要ケース
- 退職日が12月31日
前職でその年の年末調整が済んでいれば、原則として転職先に同じ年の源泉徴収票を提出する必要はありません。前職が年末調整を行い税額が確定しているためです。 - 退職後に確定申告をしてから転職した場合
退職後に自分で確定申告して当年の所得税が確定していれば、転職先に提出する必要はありません。 - 複数社で働く(兼業)などで転職先に一本化しない場合
所得の取り扱いを自分で管理し確定申告を行う予定なら、転職先へ提出しないことがあります。 - 前職から給与が支給されていない場合
該当年に前職から給与や手当が全く支払われていなければ、源泉徴収票自体が発行されないか、提出の必要はありません。
具体例
- 例1:10月に退職し翌年1月に転職した場合
退職した年の所得分は翌年の確定申告で清算する必要があります。したがって転職先に前年分の源泉徴収票を出す必要はありません。
注意点
転職先への提出が不要でも、前職の源泉徴収票は手元に保管してください。税務署や確定申告で必要になることがあります。不安な場合は勤務先や税務署に確認してください。
提出時期と年末調整の関係
概要
転職先で源泉徴収票が求められる主な時期は年末調整です。年末調整の対象期間が1年間の所得を確定するタイミングのため、前職の給与情報を確認する必要があります。
いつ提出すればよいか
年末調整は多くの会社で11〜12月に行われます。入社が年末調整の前であっても、前職の源泉徴収票を受け取ったら速やかに提出してください。即日提出が必須ではありませんが、会社の指定する締め切りには間に合わせる必要があります。
提出方法と注意点
- 会社から案内がある場合は案内に従って提出します。郵送や手渡し、電子提出の方法があります。
- 期限を過ぎると年末調整に間に合わず、翌年の確定申告が必要になることがあります。
具体例
例1:4月に入社し前職の源泉徴収票を12月に受け取った場合は、受け取り次第すぐに転職先へ提出します。
例2:年内に源泉徴収票が届かない場合は、前職に連絡するか、転職先に事情を伝えて対応を相談してください。
源泉徴収票が届かない場合の対応
まず確認すること
退職後、源泉徴収票が届かないときは、まず退職した会社に届いているかを確認します。住所変更があれば会社に新しい宛先を伝えてください。郵便事故や転送漏れの可能性もあります。
会社への依頼方法
電話で連絡した後、必ずメールや書面で再発行を依頼しましょう。伝える情報は氏名、社員番号(あれば)、在職期間、退職日、送付先住所です。可能であれば送付方法(郵送、PDF送付など)を指定すると手続きが早くなります。再発行の目安は数日から2週間程度ですが、会社の事情で時間がかかることもあります。
会社が対応しない場合の相談先
会社が対応しない、連絡が取れないときは、税務署に相談してください。税務署は確定申告や年末調整の手続きについて案内し、必要書類が揃わない場合の代替手段を教えてくれます。また、給与や書類の交付を拒否されるなど労務上の問題があるときは、労働基準監督署に相談すると助言や対応を受けられます。
記録とその他の対処法
請求のやり取りはメールや配達証明で残してください。給与明細や最終の給与振込明細があれば、確定申告の際に役立ちます。どう進めていいか迷ったときは、早めに税務署か労基署へ相談すると安心です。
確定申告との関係
年内に転職した場合
年内に新しい会社へ入社し、前職の源泉徴収票を転職先に提出すれば、原則として自分で確定申告する必要はありません。転職先が年末調整で前職分を合算して税額を調整してくれます。例えば、1月から6月まではA社、7月から12月はB社に勤めた場合、B社へA社の源泉徴収票を出すとB社がまとめて年末調整します。
年内に新しい会社に入社しなかった場合
年内に再就職せず、年末調整を受けられなかった場合は、自分で翌年に確定申告します。前職の源泉徴収票が必要です。これを基に所得や税額を申告し、過不足の清算を行います。
確定申告が必要になる主なケース
- 年の途中で退職し再就職しなかった場合
- 副業やフリーランスの収入がある場合
- 医療費控除や住宅ローン控除の初回申請など、年末調整で対応できない控除を受ける場合
確定申告の流れ(簡単)
- 前職・現職の源泉徴収票を揃える
- 控除に必要な証明書(保険、医療費、寄付など)を用意する
- 税務署で申告書を提出するか、e-Taxで申告する
注意点
源泉徴収票は所得を証明する重要書類です。紛失した場合は前の勤務先に再発行を依頼してください。期限内に申告しないと延滞税などが発生することがありますので、早めに準備しましょう。
まとめ
転職時の源泉徴収票は、新しい職場で正確に年末調整を行うために重要な書類です。基本は退職後できるだけ早く、通常は1カ月以内に前職から受け取り、転職先に提出します。
- 受け取り:退職時や退職後に前職から受け取るようにしてください。届かないときは、まず前職に連絡して発行を依頼します。
- 提出:転職先が年末調整を行う場合は原則提出します。短期間で退職して再就職した場合など、提出が不要なケースもあります。
- 不備や未提出時:源泉徴収票がないと年末調整が正しくできないため、自分で確定申告が必要になることがあります。手続きの流れを確認して、早めに対応してください。
焦らず、書類を確実に受け取り・保管し、必要な場合は速やかに転職先に提出することが大切です。


コメント