贈与税申告での源泉徴収票の重要な役割と申告ポイント

目次

はじめに

本資料の目的

本資料は、贈与税の申告における源泉徴収票の役割や必要性をわかりやすく整理したものです。申告の流れ、添付書類、申告書の記入方法、申告方法の選択肢、納税方法、特例適用時の追加書類について具体的に説明します。初めて申告する方でも実務で迷わないよう、手順や注意点を丁寧に解説します。

対象読者

贈与税の申告を検討している個人、税務署へ書類を提出する事務担当者、税理士に依頼する前に基礎を確認したい方を想定しています。専門用語は最小限にし、具体例で補います。

本書の構成と読み方

全9章で構成し、順に読めば申告を完了できるようにしています。まず本章で目的と対象を示し、第2章以降で実務的な手順や書類の扱いを詳述します。各章は独立して参照できますが、初めての方は順にお読みください。

贈与税申告における源泉徴収票の位置付け

源泉徴収票とは

源泉徴収票は、給与や報酬から天引きされた所得税額や支払金額を示す書類です。給与所得者が会社から受け取るのが一般的で、受け取った年の収入状況を証明します。

いつ、なぜ求められるのか

贈与税の申告で源泉徴収票が必ず必要になるわけではありません。税務署は申告内容を確認するために、申告者の合計所得を把握したい場合に源泉徴収票などの証明書類の提出を求めます。とくに所得税の確定申告をしていない方や、収入の内訳が不明瞭な場合に必要になります。

生前贈与と所得税の違い

重要な点は、生前贈与そのものは所得には該当しないため、贈与を受けたこと自体で所得税の確定申告は通常不要だということです。ただし、贈与税の申告義務が生じる場合は、贈与税の申告書に関連する別の書類とともに、所得の裏付けとして源泉徴収票を求められることがあります。

具体例と注意点

例として、年間110万円を越える贈与を受けた場合は贈与税の申告が必要です。このとき申告者が給与所得者で確定申告をしていなければ、勤務先が発行する源泉徴収票を添付して収入状況を示します。添付が不要なケースもありますが、税務署から追加資料を求められたときに迅速に対応できるよう準備しておくと安心です。

贈与税申告の全体的な流れ

概要

贈与税の申告は大きく4つのステップで進みます。順を追って準備すると迷いが少なくなります。ここでは各ステップの目的と具体的なポイントを分かりやすく説明します。

ステップ1:申告義務者かを確認

誰が申告するかをまず確認します。受贈者(贈与を受けた人)が原則です。たとえば親から現金100万円を受け取った場合、その受け取った本人が申告対象になります。贈与の種類や金額、非課税扱いの有無も確認してください。

ステップ2:必要書類の準備

受領を証明する書類や身分証明、贈与の内容を示すメモ(贈与契約書や振込記録など)を用意します。給与の源泉徴収票のように、第三者が発行する証明書があれば添付すると信頼性が高まります。

ステップ3:申告書の作成

税額を計算し、申告書に記入します。金額の計算では基礎控除や税率表の適用を確認します。分かりにくい場合は税務署窓口や税理士に相談すると安心です。

ステップ4:申告・納税

申告書を提出し、納税します。提出方法や納付方法は複数あります(後の章で詳述します)。申告後、税務署から確認や追加書類の依頼が来ることもありますので対応できるようにしておきます。

各ステップで早めに準備すると手続きがスムーズになります。必要に応じて専門家に相談してください。

必要な添付書類と源泉徴収票の役割

添付が必要な主な書類

  • 受贈者・贈与者の戸籍謄本(身分関係の確認用)
  • 受贈者の源泉徴収票(または給与所得の証明書)
  • 贈与が特例に該当する場合の添付書類(登記事項証明書、居住証明など)

源泉徴収票の具体的な役割

源泉徴収票は受贈者の「その年の合計所得金額」を証明します。贈与税の基礎控除や特例の適用可否を判断するとき、申告書の参考資料として使います。例えば給与所得が多く課税所得に影響する場合、源泉徴収票で金額を確認して申告書に反映します。

添付時のチェックポイント

  • 年度が申告対象年と一致しているか
  • 氏名・マイナンバー(必要な場合)・支払者名が明記されているか
  • 合計支払金額や控除額が読み取れるか

原本か写しか、どちらを添付するか

原則として写し(コピー)を添付します。税務署が求めれば原本提示を求めることがあるので、原本は手元に保管してください。

実務上の注意(具体例)

  • 副業で複数の源泉徴収票がある場合はすべて添付します。
  • 年の途中で退職や転職があった場合、前後の源泉徴収票を揃えて合算額を示します。

これらを揃えることで申告内容が明確になり、税務署からの照会に速やかに対応できます。

申告書の記入方法

準備

申告書第1表に記入する前に、贈与額、源泉徴収票、本人確認書類(マイナンバー等)をそろえてください。計算に使う控除額や領収書も用意します。

各項目の記入ポイント

  • 年度:贈与が行われた年を西暦で記入します。例:2024年分。
  • 税務署名・税務番号:居住地の税務署名を正確に記入し、税務番号は通知カードや書類を参照してください。
  • 氏名・住所:印鑑登録と同じ表記で記入します。
  • 税目:通常は「贈与税」を選びます。
  • 本税・合計額:課税価格を算出して税率表に当てはめ、本税を記入します。例:贈与額500万円−基礎控除110万円=課税価格390万円。ここから税率で本税を求めます。
  • 納期等の区分:一度きりの贈与か、年次申告かを該当欄にチェックします。

添付書類欄と証明

源泉徴収票や贈与契約書は添付欄に明記し、必要書類を順に添付します。

訂正・署名

誤りがあれば二重線で訂正し、訂正印を押します。最後に署名(または押印)して日付を記入してください。

提出前チェックリスト

  • 年度、氏名、住所が一致しているか
  • 本税と合計が計算通りか
  • 必要書類がそろっているか
    以上を確認してから提出してください。

申告方法の3つの選択肢

贈与税の申告方法は主に次の3つです。税務署窓口、郵送、e-Tax(オンライン)です。目的や状況に合わせて選べます。

1. 税務署窓口での提出

窓口では職員に不明点を確認しながら申告書を提出できます。不備があればその場で指摘・修正できるため安心です。持参するものは申告書本体、源泉徴収票などの添付書類、印鑑、身分証明書(運転免許証など)です。提出後に受領印をもらって控えを保管してください。

2. 郵送での提出

忙しくて窓口に行けない場合に便利です。申告書と添付書類のほか、本人確認書類のコピー(運転免許証など)を同封します。発送方法は簡易書留や追跡できる方法が安心です。発送日が提出日扱いになることが多いので、期限までに余裕を持って送ってください。

3. e-Tax(オンライン申告)

自宅から24時間申告できます。マイナンバーカードによる電子署名や、税務署が発行するID・パスワード方式で利用します。書類の電子添付が可能で、郵送の手間が減ります。初回の設定だけ手間がかかりますが、一度慣れればスムーズに申告できます。

選び方の目安

  • 書類が多くて不安なら窓口
  • 来署が難しければ郵送
  • 時間外や手間を省きたいならe-Tax
    事前に必要書類を揃え、提出方法に応じた準備をすると手続きがスムーズです。

納税方法

贈与税の申告書を提出した後の納税方法は主に4つあります。ここではそれぞれの手順、メリット・注意点を分かりやすく説明します。

1. 金融機関の窓口

最寄りの銀行やゆうちょ銀行の税金窓口で納付します。税務署から受け取る納付書(バーコード付き)を持参し、窓口で支払います。高額でも対応でき、現金・振替の両方に対応しますが、窓口の営業時間に注意してください。

2. コンビニエンスストア

納付書の金額が一定以下の場合に利用できます(納付書に利用可否が明記されます)。夜間でも支払える利便性がありますが、上限額があるため事前に確認してください。支払い後はレシートを大切に保管してください。

3. クレジットカード

国が指定する納付用サイトからカード決済できます。ポイントが付くメリットがありますが、決済手数料が発生する点に注意してください。支払った際の領収情報は画面やメールで保存しておきましょう。

4. e-Tax(ダイレクト納付)

マイナンバーカード等でe-Taxにログインし、口座振替で納付できます。窓口に行かずに済むので便利です。事前に利用登録や口座情報の登録が必要です。

共通の注意点

納付期限を守ること、領収証は税務上の重要書類なので保存すること、納税額に誤りがあれば速やかに税務署に相談することが大切です。

特例適用時の追加書類

以下は、住宅取得等資金の非課税特例や相続時精算課税を適用するときに税務署へ提出・用意しておく追加書類の説明です。

住宅取得等資金贈与の非課税特例で必要な主な書類

  • 戸籍謄本(受贈者の続柄を確認するため)
  • 源泉徴収票(受贈者または贈与者の所得を確認するため。直近の年分を用意)
  • 新築工事の請負契約書や不動産の売買契約書の写し(贈与資金が住宅取得に使われたことを示す)
  • 登記事項証明書(不動産の所有関係や取得日を裏付ける書類)

これらは、贈与が住宅取得のためであり要件を満たすことを証明する目的で添付します。写しで差し支えない場合が多いですが、税務署から原本の提示を求められることがありますので、原本は手元に保管してください。

相続時精算課税適用時に必要な書類

  • 相続時精算課税選択届出書(相続時精算課税を選択する場合、最初の贈与税申告時に必ず添付)

選択届出書は、一度選ぶとその後の取り扱いに影響します。最初の申告で添付しないと適用できないため、忘れずに提出してください。

添付の注意点と実務上のポイント

  • 書類は氏名・日付・金額が分かる状態で用意してください。特に契約書や登記簿は日付や取引金額を確認されます。
  • コピーを添付する場合は、読みやすく鮮明に写してください。税務署から補足資料を求められることがあります。
  • 不明点がある場合は、申告前に税務署や税理士に相談すると安心です。

重要なポイントまとめ

  • 源泉徴収票は必ず必要な書類ではありません。贈与の内容や他の添付書類で代替できるため、条件付きで求められます。

  • 申告書を既に税務署に提出している場合は、源泉徴収票が不要となることがあります。重複した書類の提出は原則不要ですが、窓口での確認をおすすめします。

  • 生前贈与は受贈者の「所得」には該当しません。したがって通常の所得税の確定申告対象外です。ただし、贈与税の申告が必要なケースは別途あります。

  • 源泉徴収票の実務的な役割は、受贈者や資金の出所を裏付ける補助資料として使うことです。銀行振込明細や契約書と併せて提出すると説明がしやすくなります。

  • 持ち物と注意点:源泉徴収票の写しを予め用意し、必要に応じ原本を提示できるようにしてください。個人情報の取り扱いに注意し、複数の証拠を揃えるとスムーズです。

  • 税務署窓口での申告は安心です。疑問点はその場で相談できますし、必要書類の確認も受けられます。心配な場合は早めに相談してください。

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