労働基準法39条で理解する年次有給休暇の基本知識

目次

はじめに

本資料は、労働基準法第39条(年次有給休暇)についてわかりやすく解説することを目的としています。条文の要点だけでなく、付与の条件や日数、パートタイム労働者への適用、2019年の改正点と年5日取得義務化、繰越や管理の方法、違反時のリスクと罰則まで、実務で役立つ情報を丁寧にまとめました。

対象は、事業主や人事・総務担当者、働く方すべてです。特に有給の運用に悩む中小事業者や、パート・アルバイトを雇用する現場に役立つ具体例を多めに盛り込みます。専門用語は最小限にとどめ、実際の場面で使える考え方や手続きに重点を置いています。

本書は全7章で構成します。第2章で制度の概要を示し、第3章以降で付与日数や適用条件、特例、改正点、管理方法、違反時の対応を順に説明します。まずは第2章から読み進めると全体像がつかみやすくなります。

労働基準法第39条とは?年次有給休暇の概要をわかりやすく解説

概要

労働基準法第39条は、労働者が一定の条件を満たしたときに年次有給休暇(以下、有給休暇)を取得でき、休暇取得時にも給与が支払われる権利を保障する規定です。正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトにも適用されます。

対象となる人

雇用形態にかかわらず、一定の条件を満たした労働者が対象です。具体的な条件は次の項目で示すとおりです。

第1項の付与要件(基本ルール)

  • 雇入れから6か月間継続して勤務すること
  • その6か月間における全労働日の8割以上出勤していること
    これらを満たすと、10労働日の有給休暇が付与されます。

有給休暇の取り扱い

休暇を取得した日については、通常の賃金に基づき賃金が支払われます。会社は取得を妨げてはいけません。なお、在職中に有給の代わりに金銭を支払うことは原則認められていませんが、退職時に未消化分への金銭清算は行えます。

具体例

たとえば、月に20日働く人が6か月でおよそ120日勤務したとします。その8割は96日です。6か月のうち96日以上出勤していれば、10日間の有給が付与されます。

この章では第39条の基本的な趣旨と第1項の要点をわかりやすく示しました。以降の章で、付与日数の増え方やパート社員への扱いなどを詳しく説明します。

年次有給休暇の付与日数と条件

付与のタイミングと最初の付与

雇い入れ後6か月が経過すると、まず10日間の年次有給休暇が付与されます。これは勤怠要件を満たした場合の最初の付与です。

付与日数の変化(概略)

勤続年数が長くなるにつれて、付与日数は段階的に増えます。法定の上限は20日です。会社はこの基準に従って社員ごとに付与日数を決定します。

出勤要件(8割ルール)

各基準期間における出勤日数が、その期間の所定労働日の8割未満だと、翌年の有給付与はありません。基準期間は通常、付与日の直前1年間を指します。

具体例

  • 所定労働日が250日の年なら、8割は200日。出勤日数が199日以下だと付与がなくなります。

注意点

年次有給の計算や扱いは就業規則で具体化されます。特別な事情や部分的な勤務形態は扱いが変わるため、詳しくは就業規則や総務担当に確認してください。

有給休暇の特例とパート社員への対応

概要

週の所定労働日数が2日以下、または年間所定労働日数が48日以下のパートタイム労働者には、通常の付与方法とは別に特例が適用されます。目的は勤務実態に応じた公正な付与です。

対象となる働き方

  • 週の所定労働日数が少ない人(例:週1〜2日)
  • 年間の所定労働日数が非常に少ない人(例:短期や単発中心の契約)

計算の考え方(わかりやすい目安)

有給は原則として勤務日数に応じて比例配分します。たとえば、フルタイム(週5日)で6か月勤続して10日の有給が付く場合、週2日勤務の方は「10日×(2/5)=4日」を目安に算出します。これは一例で、実際の付与数は勤続年数や出勤率によって変わります。

年間所定日数が48日以下の場合の取り扱い

年間の所定労働日数が極めて少ない場合、付与日数の算定方法を個別に検討します。短期雇用やスポット的な勤務では、契約時に有給の取り扱いを明記しておくと後の誤解を防げます。

実務上のポイント

  • 就業規則や雇用契約で付与ルールを明確にしてください。
  • 勤務予定や出勤実績を記録し、付与計算の根拠を残してください。
  • パート社員にも取得しやすい案内を行い、実際の休暇取得に配慮してください。

短い勤務でも公平に扱うことが重要です。不明点は労働基準監督署に相談すると安心です。

2019年の改正と年5日取得義務化

改正の概要

2019年4月1日から、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年間5日以上の取得が企業に義務付けられました。企業は労働者が自ら取得しない場合、時季を指定して取得させる必要があります。

対象となる労働者

入社や勤続年数により年次有給休暇が10日以上付与される人が対象です。付与日数が9日以下の人はこの義務の対象外です。

使用者の対応(時季指定と促進)

使用者はまず、労働者に取得を促す努力を行います。労働者が取得しない場合は、使用者が具体的な日を指定して最低5日を取得させます。指定した日でも賃金は通常どおり支払われます。

時間単位での取得

労使協定を締結すれば、年次有給休暇を時間単位で取得することも可能です。たとえば半日や2時間単位での取得を認める場合、1日の取得を細かく分けて合計5日分に相当する時間を取得させる方法も使えます。

具体例

・年間10日の付与を受けるAさんは、会社が年に5日は必ず取らせます。
・Aさんが希望しないときは会社が日程を指定します。
・パートで日数が少ない人は対象外ですが、時間単位の合意があれば柔軟に使えます。

この改正は、労働者の休息を確保するための措置です。企業は取得状況を把握し、適切に対応してください。

有給休暇の繰越と管理

時効と繰越

年次有給休暇は、付与された日から2年間で時効になります。取得しなかった分は翌年に繰り越せますが、繰越分も含めて付与日から2年で消滅します。例えば、2023年4月1日に付与された分は原則として2025年3月31日までに使わなければなりません。

退職前の買い上げ(例外)

原則として有給の買い上げは認められません。ただし、退職時に消化が不可能な場合など例外的に未消化分の買い上げが認められることがあります。具体的な扱いは就業規則や労使合意に依りますので、事前に確認してください。

管理と記録の義務

企業は有給休暇の管理簿を作成・保存する義務があります。付与日、取得日、残日数を明確に記録してください。保存は紙でも電子でも構いませんが、社員がいつでも確認できるようにしておくとトラブルを防げます。

実務上のポイント

  • 有効期限をカレンダーで明示し、期限前に通知する。
  • システムに残日数を表示して自己管理を促す。
  • 退職手続きでは未消化分の扱いを早めに確認する。
    したがって、日常的な記録と周知が何より重要です。

労働基準法第39条違反時の罰則とリスク

刑事罰の内容

労働基準法第39条に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。具体例として、有給休暇を付与しなかったり、取得を妨げたりした場合が該当します。年5日取得義務に違反した場合も30万円以下の罰金の対象です。

企業が負うリスク(具体例つき)

  • 社会的信用の低下:取引先や顧客に「労務管理が甘い」と判断され、契約機会を失うことがあります。
  • 採用難:応募者が企業の労働環境を重視するため、優秀な人材を確保しにくくなります。
  • 労使トラブルの増加:未取得の有給に対する請求や損害賠償を求められる場合があります。
  • 行政対応:労働基準監督署からの是正勧告や立入調査を受けると、業務負担が増えます。

予防と対応(実務的な対策)

  1. 就業規則で有給の付与・取得ルールを明確にする。
  2. 付与・取得の記録を正確に残す(タイムカードや勤怠システム)。
  3. 管理職に対する教育を行い、取得を促す仕組みを作る。
  4. 問題が起きたら早めに労働基準監督署や社労士に相談する。

これらを実行すると、法令違反のリスクを下げ、企業の信頼維持につながります。

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